欧米ブランドに「負けていないぞ!」

2015年3月11日 の記事

カテゴリー: 国内革事情




一般社団法人 日本皮革産業連合会(JLIA)が手がける
注目プロジェクト
「Kids' Leather Programs(キッズレザープログラム)」。


こども達を対象に
革のものづくり体験を各地で開催し、じわじわと
支持を集めています。


このプロジェクトでは、JLIA 会員団体 参加企業をはじめ、
皮革産業の事業者の有志から提供された
製品にできない残革を産業廃棄物にすることなく利活用。



こども達が安全に遊べる遊び場を"出前"する
コドモ・ワカモノまちing「移動式こども基地」とのコラボレートで
首都圏を中心に全国各地で活動。

被災地の石巻や気仙沼などへ継続的に出張しています。

同プロジェクトで、
こども達に革のものづくりと魅力を伝える
実践スタッフ育成ワークショップが都内で行われました。



80年以上の歴史がある老舗タンナー 
三恵産業へ見学。

東京都墨田区の本社・工場でピッグスキンの鞣し、
染色・加工を一貫して行っています。


多用途で使用できるライニング、スエードを主力とし、
定番のスエードは、44色展開。


微妙な色合いの違いと美しさが高く評価されています。

自社オンラインサイトで一枚から販売。

クラフト作家や個人事業者からオーダーが入り、人気です。


また、同社 石田美和さんがプロデュースし
オリジナルファクトリーブランド<Cetra(チェトラ)>を始動。


カジュアルなイメージが強いピッグスキンの常識を変える
大人向けのエレガントなバッグコレクションを展開。

「第79回東京インターナショナル・ギフト・ショー」
<東京都産業労働局・東京製革業産地振興協議会ブース>で発表し、
注目されています。


当日は瀬下工場長 自ら、ファクトリーをご案内くださいました。

なめされる前の、皮とご対面!

(なめされたものが革。加工の前後で表記が変わります)




タイコ(見た通りの打楽器の太鼓をかなり大きくしたような見た目!)に

入れ 素材を洗浄し、染色していきます。

そのプロセスで大量の水が必要なので、タンナーは

昔から河川の近くにあり、

同社もイースト東京を流れる荒川沿いにあるんですよ。

(東京都下水道局の事業場排水 水質規制に対応し、環境に配慮するために、

なめしの工程は姫路市にある第二工場で行っています)

 

その作業はとても難しく、季節ごとに気温、

水温、湿度によって 異なる

コンディションを 熟練の技術と知識でコントロールしていくそうです。


色にこだわる同社は、染料染めだけでなく顔料染めも得意。

豊富な薬剤の種類に圧倒されます。

それらを計測するための専用ハカリもありました。


ハンドスプレーでの染色も職人技ですね。

乾燥するための専用室があり、 自然乾燥と送風による乾燥を組み合わせて。



空タイコ(水分が入っていない状態)をまわすことで

革をより柔らかくします。 一度に100~200枚も入るそうです。

 


大きなアイロンで艶を出し、仕上げます。


靴のライニング材に用いられる皮革は乳腺がついたままで出荷されるそう。

なかには型押しで豚革らしさを強調したものも。

多様なニーズに対応しているんですね。


営業部 吉田達郎さんが見せてくださったグローブ。

協力関係にある皮革加工会社のご子息によるスペシャルな試作品です。

モニターとしてお借りして、昼休みに練習しているそう。

薄くて軽い豚革でしっかりと丈夫なアイテムができるんですね。

トレンドの迷彩柄がファッショブル。

つくり手の遊び心、レザーにかける想いがあふれています。





参加者の感想は・・・

「クロムなめしの工程を初めて見学させていただいて、
 新しく知れたことがたくさんありました。
 また、豚のことについても学べてとてもタメになりました」

「非常に貴重な体験でした。
 やはり一から工程を見ると見方が変わってきます。
 ものづくりをしていく人は
 素材を深いところまで理解することが大切だと思いました」

「豚のなめし前の皮の毛にびっくりしました。
 塩漬けのにおいはそんなにきつい匂いでなかったです。
 だんだんつやが出ていく工程が間近で見られてよかったです」

「タンニンなめし工場とはまた違う良さがありました。
 染料の細かさは職人技で、
 管理の仕方で色みやムラが変わってくるのだと知りました」

「クロムの加工、さらに豚革を見学でき勉強になりました。
 国内の豚革ならではの
 メッセージ性も伝えていけそうだと思いました」

・・・などなど。


この日、見て、知って、感じたことが
こども達へしっかりと伝えられていきます。



豚革は日本国内で自給自足可能な

数少ない素材。

東京都内、東京スカイツリーのおひざもとでつくられ
地産地消されている点がほかにない魅力。


また、豚の脂肪はラードとして、惣菜の揚げに使ったあと、

飼料、石鹸、インク、ボイラー燃料へと

再利用されるなど

昔から循環型のシステムが構築されています。


食肉の副産物として生まれる
皮革はエコロジーにつながる素材。

なかでも、豚革は
さまざまな用途に利用されているのもうれしいですね。


「Kids' Leather Programs(キッズレザープログラム)」でも、
製品にできない残革を産業廃棄物にすることなく
生命のバトンをつなぎ
こども達の輝く未来へアップサイクル。

今後も各地でワークショップが行われますので、
どうぞ、お楽しみに。



次回は、革製品がつくられる現場での実技体験。

老舗メーカー 猪瀬で行われた
ワークショップ レポートをお届けします。






■ 参考URL ■


 Kids' Leather Programs(キッズレザープログラム)

 <http://leatherkids.jlia.or.jp/>


  三恵産業

  <http://sankei-sangyo.com/>






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プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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