欧米ブランドに「負けていないぞ!」

2017年1月 の記事

カテゴリー: トレンド

セールもひと段落。そろそろ春夏シーズンの立ち上がりですね。ファッションのロングトレンド、ノームコア(究極の普通、究極のシンプル)の終焉がさまざまなメディアで報じられ、ノームコアブームと同時期に始動したジュングループ<ル・ジュン>のブランド休止が発表されるなど、潮目の変化を実感します。そんな今シーズンのバッグと革小物の傾向を探ってみました。


■ トレンドカラーは暖色系から寒色系へ

2016年はテラコッタ、バーガンディ、レッドと暖色系に人気が集まりましたが、この春夏はアビス(深海)カラーが話題(写真:<キソラ>フェイスブックページより/<キソラ>横浜マークイズ店限定カラー)。

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深みのあるブルーに注目が。ストリートでは、その橋渡しとなるようなライトブルーのアウターや小物を取り入れているかたを見かけます。

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店頭ではライトブルー、ラベンダーといった寒色系のアイテムがローンチ(写真:ともに<エフィー>フェイスブックページより)。グレー×ホワイト、ベージュなどのコーディネートの差し色的な感覚で取り入れることが多いようです。


■ ネコモチーフに続き、フラワーモチーフにも注目

昨年、ブームとなったネコモチーフは人気継続。

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プリントを施したレザー、ネコをかたどったデザイン(写真:<高屋>/「東京ギフトショー」にて)に加え、繊細なディテールの金具使い(写真:<サクラヤマ>オフィシャルサイトより)などで個性を打ち出すなど、差別化も見られます。

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アパレルでは、花柄のワンピースがキーアイテムとして浮上していますが、バッグ、革小物でもフラワーモチーフは大注目です。

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バッグだけでなく、アップリケで立体的に表現した財布(写真:<フィオライア>オフィシャルサイトより)から花をかたどったレザーアクセサリー(写真:<セリュ>オフィシャルサイトより)まで幅広く展開されているようです。

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■ バッグ&財布の小型化

バッグと財布の傾向として顕著なのは、小さめサイズの増加。ロングヒットが続く、リュックもかなりコンパクトに(写真:<キソラ>フェイスブックページより)。

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小柄な女性も合わせやすくなり、裾野が広がりました。小さめバッグの流行にともなって、収納しやすいよう財布も小さめにシフトしています。


「全体的に(需要が)小型の商品に移っています。財布などもそうですが、数年前までカードが多く収納できる大きなサイズが主流でした。しかし、今は小ぶりになっています」とバッグ小売大手<サックスバーホールディングス>木山剛史社長(「繊研新聞」1月20日5面【トップインタビュー2017】より)。


大手メーカー<クイーポ>でも小さめ財布の流れをとらえ、新作として発売するそうです(「ワールドビジネスサテライト」1月10日(火)放映分「白熱! ランキング」より)。


iPhoneでの新決済サービス、アップルペイはもちろん、カード決済の普及によって財布に求める機能も変わりつつあります。

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それぞれの小型化だけでなく、財布機能を内包する一体型バッグ、財布ポーチ(写真:人物<キソラ>フェイスブックページより/売り場<のむら>「B.A.G.Number」より)も浸透。普段使いだけでなく、旅行、フェス...と多様なシーンで活躍する汎用性の高さも人気を後押ししているようです。


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そんなスタイルフリーな潮流は、ウエストバッグ(写真:スタイルストアより)復活にも波及。ファッショントレンドとしてのウエストマーク、ベルトマークの注目とともに再浮上しています。


2017~18年秋冬パリ・メンズコレクションでは<ルイ・ヴィトン>×<シュプリーム>のコラボレーションにより、小さめのショルダーバッグを発表。全面に配されたロゴもさることながら、ボディバッグのようなストラップの短さも気になりました。エクストリーム(極端な)シルエットやユニークなレイヤード(重ね着)と呼応する新しいバランス感も要チェックです。


■ 新決済サービス、ICカード化、電子化の影響

前述のアップルペイだけでなく、使用シーンが広がるフェリカ。<スターバックスコーヒー>と<ビームス>のコラボレーションにより、フェリカ内蔵型レザーキーホルダーの発売が発表され、話題になっています。

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スターバックス カードの非接触決済シリーズSTARBUCKS TOUCH(スターバックスタッチ)に、STARBUCKS TOUCH The Drip(スターバックスタッチザトリップ)が登場。ウェアラブルな新しい決済体験という<スターバックス>が掲げたテーマにもとづき、ビームスがデジタルとクラフトの融合をキーワードにプロデュース。かざすだけで支払いができ、使い込むほど表情を変える革の味わいも楽しめるプリペイドアイテムとなっています。国内の職人が手がけたレザーを使用し、フェリカチップというデジタルアイテムと融合。新しい感覚の革小物が生まれました(写真:STARBUCKS TOUCH The Drip オフィシャルサイトより)。


レジのない実験店舗アマゾンゴーをはじめ、国内で指紋認証、顔認証による決済サービスの実験もスタート。財布の在り方、その近未来はどうなるのか? 時代に合わせたものづくりと使い方の提案にビジネスチャンスがありそうです。


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世界的タバコメーカー<フィリップ モリス>が開発した加熱式電子タバコ アイコスの人気にともない、アイコスのレザーケースがヒット中(写真:「B.A.G.Number」より)。


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愛知県名古屋市では、2016年9月、シルバーパスをICカード化。リールつきレザーパスケースへの買い替え需要が生まれています(写真:<エフィー>フェイスブックページより)。スマートフォン以外にも技術革新に合わせた革製品の領域拡大にワクワクしますね。


■ レザーのアップサイクル

先日、「繊研新聞」(1月20日)で報じられ話題のリレザー。生産過程で生じてしまう商品に用いることができない残革をつなぎ合わせアップサイクル(写真:「繊研プラス」(1月20日更新分より)。

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サステイナブル(持続可能)な価値、エシカル(倫理的)なデザインが支持を広げそうです。

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インキュベーション施設<浅草ものづくり工房>卒業生ブランド<トートーニー>では、人気作家・曽田耕さんとのコラボレーションにより残革を利活用。ピース・2ピースでできているアイテムを中心に、その余り革をA・B・C 3種類のパーツに裁断し、それぞれをつなぎ合わせてつくるシリーズを展開しています。生産ラインでは避けざる得ない大きなキズ・スジ・検品時につけるペン跡をそのままに商品化。クッション、ボックス、カップなど、インテリア雑貨アイテムが好評です。


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雑貨ブランド<mhd>が手がけるリボンブローチ<Re:born(リボーン)>も財布やバッグなどをつくる際、どうしても出てしまう革の端切れを有効活用。クリエイターの祭典「ハンドメイドインジャパンフェス」におじゃました際も数多くのユーザーが手にとっていましたよ。


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農林業への被害軽減を目的に頭数調整された鹿の革を利活用する鳥獣被害対策レザーも大きな流れ。「日本皮革デザイン促進委員会国内展示会」で拝見して、生命の証を無駄にせず、生命のバトンをつなぐような取り組みに感激しました。


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インキュベーション施設<浅草ものづくり工房>入居ブランド、<シス・クー・ド・フードル>でも同様に野生の鹿・熊・猪などのジビエ革を使用し、エシカルでスタイリッシュなレザーアイテムを提案。特に熊の革製品化は世界的にみても非常に珍しい試み。クラウドファンディングサイト<マクアケ>では目標の2倍以上の金額を達成。ユーザーの関心の高さが感じられます。

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また、日本皮革産業連合会のキッズレザープログラム(KLP)でも残革をアップサイクル。実際に革に触れ、革製品づくりを体験できる機会を提供することで、本物の革の良さ、革に対する正しい知識、革製品づくりの楽しさ、などを知ってもらい、将来、「消費者」として、「生産者」として皮革産業とかかわることになる「こども達」に皮革文化を学び育んでもらうことを目的としています。KLPの承認を受けた全国の児童館やNPO団体などが革で遊べる場をつくり、すっかりおなじみとなりました。


トレンドや時代の変化に合わせて、革製品がますます進化しています。いまの気分に合うジャパンレザーに出会ってください。


カテゴリー: 国内革事情

ケア製品のトップメーカーとして知られる株式会社コロンブスが神奈川・厚木 湘北短期大学にて、学生向け「シューケア特別講義」を2016年12月8日(火)に行いました。

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「社会でほんとうに役立つ人材を育てる」ことを教育理念とした湘北短期大学は、1974年にソニー株式会社が設立。ソニーと同様にチャレンジ精神をもって新しい短期大学教育の創造に取り組み、21世紀という「変化の時代の社会」でも輝き活躍できる人材を育てる先端的な教育を追求しているそうです(校舎の画像は湘北短期大学公式ツイッターより)。

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この講義は2012年から実施され、4年連続の4回目。湘北短期大学 総合ビジネス学科「社会文化論」<「身だしなみ」の文化とビジネス>講義内にて、36名の学生を対象にシューケア方法を伝授。当日はメディア関係者が数多く取材に訪れるなど、注目されました。


【今回、湘北短期大学 総合ビジネス学科 小森潔教授と学生の皆さんにご了解いただき、取材させていただきました。お顔なども画像処理を加えず、そのままにさせていただいております。ご了承ください】


学生たちの関心が高いトピックからスタート。「靴を磨く女性がメディアに取り上げられる昨今、就職活動でも靴が重視されるそうです。100社の人事部面接官を対象としたアンケート<面接官がどこを見るか>では、髪型、表情、姿勢、靴、スーツ、ワイシャツ、ネクタイという順位に。1位~3位が身体の身だしなみ。4位以下は身につけるものでした。身につけるもののなかでのトップが、靴。印象が大きく変わるポイントとなるアイテムです。靴は自分で磨くものであり、自分磨きにもつながります」とコロンブス 小高公次さん。


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特製リーフレットをもとに進行。まずは、皮革とは何か?という基本的な知識から再確認。

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ケアの基本となるブラッシングをはじめ、クリーニング、クリーム塗布、防水スプレー...とプロセスとその効果をレクチャー。「革は、人間の肌と変わりません。スキンケアと同じようにお手入れしてください」との説明に女子学生たちは納得。大きくうなずいていました。


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座学の後は3つに分かれてグループワーク。間近で行われる靴磨きに真剣な眼差しで見つめる学生たち。

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代表者が靴磨きにトライしました。革靴を所有していない学生も多く、革製品のケアには興味津々。


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「靴用防水スプレーを知っていますか?」との質問には約50%が「知っている」と回答。防水スプレーの実演では、教室を出て、屋外へ移動。靴とスプレーボトルの距離感、まんべんなくかける方法などを紹介。

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教室に戻り、ペットボトル飲料(ウーロン茶)を靴に注ぐ、大胆なプレゼンテーションに大きな歓声が。ウーロン茶が靴のアッパー部に浸透せず、テーブルへと流れるようす、その効果がしっかりと伝わりました。なお、このあと、テーブルを拭き、素早く現状回復し、続けざまに次の内容へと展開し、飽きることなく集中し、講義が終わりました。


<就職の湘北>と称されるほど、人材教育と就職率の高さに定評がある同校。「卒業後は企業の受付や観光(ホテル、サービス業)といったジャンルへと旅立ちます。社会の第一線で活躍するかたを講師に招くこの講義は、実際のビジネスパーソンのかたがたと対面できるリアルな体験。学生たちにとって大きな刺激になっています。(この講義を)はじめたころは靴磨きを知らない学生も多かったのですが、最近は社会人の常識が身につくきっかけとして、とてもよろこんでいるようです」と、総合ビジネス学科 小森潔教授。


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学生たちの退室時には、ひとりひとりに、ケア製品セットをプレゼント。

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百貨店など商業施設での啓蒙イベントでは、若年層が訪れることが少ないですが、大学での講義というプログラムは効果が抜群。就職活動という大人の階段を昇る、重要なタイミングということもあり、学生たちの姿勢も真摯で貴重な体験を有効に活用してくれると確信できました。革製品の魅力を伝える草の根的なアプローチとして、また社会貢献として大きな意義を感じられます。このような活動が継続され、広がっていくことを期待したいですね。



■ 参考URL ■

 コロンブス <http://www.columbus.co.jp/>

 湘北短期大学<http://www.shohoku.ac.jp/>

カテゴリー: 国内革事情

日本皮革デザイン促進委員会による「国内展示会」が、2016年11月8日(火)~10日(木)の3日間、東京・市ヶ谷 クイーポ本社ビル1Fロビーで行われました。

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日本皮革デザイン促進委員会は、国内有数のハンドバッグメーカー、<クイーポ>が代表、主幹事として、皮革製造、卸、職人をはじめ、皮革産業に携わるメンバーにより構成。経済産業省の皮革産業振興対策事業における「皮革産業高付加価値化事業」の一環として、日本の皮革製品デザイン促進事業を推進すべく、国内外において、日本の皮革製品を広報し、海外市場の開拓と国内市場の充実を図ることを目的に活動しています。

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2015年には京都とイタリア・フィレンツェにおいて開催した<琳派>をテーマとしたファッション展示会に続き、今回は日本を代表する浮世絵師、<葛飾北斎>をテーマに展開。


2016年11月22日(火)には、生前ゆかりのあった、東京・墨田にすみだ北斎美術館がオープンしたほか、日本国パスポートの新デザインとして北斎の代表作のひとつ「富岳三十六景」の採用が決定。日本のイメージアイコンとしても注目が集まっています。

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同展示会では、北斎をテーマとするオリジナルブランド<創悦>新作コレクションを初お披露目。「現在版機会転写×北斎名作」、「焼印×北斎漫画」ほか、さまざまなアイテムが出品されました。


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皮革業界内で最も高性能と評される高精密インクジェット機により、名作を再現した「現在版機会転写×北斎名作」。


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百物語の妖怪「小はだ小平二」、「お岩さん」をプリントしたレザーバッグと帽子。和装にも似合うと好評。個性的なスタイリングが楽しめそう!


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江戸時代のゆるキャラともいえる、キャラクターたちを北斎漫画からピックアップ。昔ながらの職人技を生かした金属彫刻にて焼印を製作し、革製品へと落とし込んだ「焼印×北斎漫画」。「判を彫り、画を記す」というアートワークがスタイリッシュなライフスタイル雑貨として現在に蘇りました。


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コーヒーカップホルダー、ブックマークなどはすみだ北斎美術館のミュージアムグッズとして館内で販売されています。外国からのお客さまへのおみやげに最適。


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「持ち帰ることができる絵画」をテーマにしたパズル型のコースターには、北斎漫画の「百面相」、「魚」、「浮膜巻」を配して。ユーモラスな表情と上質な素材感とのコントラストが絶妙です。


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京都友禅彫刻の伝統工芸士 西村武志さんとのコラボレーションが実現。友禅彫刻の技法のすべてを引き継ぎ、第1回京都市「未来の名匠」に認定された西村さん。今回は北斎の名作を点描で表現しました。繊細な仕上がりに見入ってしまいます。


発表されたコレクションの一部は、雑誌「和楽」とのコラボレーションにより、ECサイトで販売中。大人世代に人気です。


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ほかにも、植物性タンニン鞣しレザー、鳥獣被害対策レザー(農林業への被害軽減を目的に頭数調整された鹿の革を利活用)のカテゴリーも展示。

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同じデザインのバッグを20種類の異なる革でつくることにより、それぞれのレザーの個性や表情の違いが感じられます。


同展示会は、国内だけでなく、フランス・パリ、イタリア・フィレンツェにて開催され、大きな反響がありました。クイーポ広報室室長 岡田育美さんは「(今回のコレクションは)アニメに代表される日本のカルチャーとも共通するポップなテイストで表現しました。北斎の作品は数が多くて、セレクトが大変でしたが、海外のかたにも受け入れていただきやすいと思います。次回、東京オリンピックに向けて、日本の伝統文化と日本製皮革製品の魅力を発信していきたい」と意欲的に語ります。


今後、海外と日本をつなぐ、レザーファッションの架け橋、親善大使のような存在になってくれそうですね!



■ 参考URL ■


 クイーポ<http://www.kuipo.co.jp/>


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プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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