欧米ブランドに「負けていないぞ!」

2017年1月25日 の記事

カテゴリー: トレンド

セールもひと段落。そろそろ春夏シーズンの立ち上がりですね。ファッションのロングトレンド、ノームコア(究極の普通、究極のシンプル)の終焉がさまざまなメディアで報じられ、ノームコアブームと同時期に始動したジュングループ<ル・ジュン>のブランド休止が発表されるなど、潮目の変化を実感します。そんな今シーズンのバッグと革小物の傾向を探ってみました。


■ トレンドカラーは暖色系から寒色系へ

2016年はテラコッタ、バーガンディ、レッドと暖色系に人気が集まりましたが、この春夏はアビス(深海)カラーが話題(写真:<キソラ>フェイスブックページより/<キソラ>横浜マークイズ店限定カラー)。

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深みのあるブルーに注目が。ストリートでは、その橋渡しとなるようなライトブルーのアウターや小物を取り入れているかたを見かけます。

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店頭ではライトブルー、ラベンダーといった寒色系のアイテムがローンチ(写真:ともに<エフィー>フェイスブックページより)。グレー×ホワイト、ベージュなどのコーディネートの差し色的な感覚で取り入れることが多いようです。


■ ネコモチーフに続き、フラワーモチーフにも注目

昨年、ブームとなったネコモチーフは人気継続。

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プリントを施したレザー、ネコをかたどったデザイン(写真:<高屋>/「東京ギフトショー」にて)に加え、繊細なディテールの金具使い(写真:<サクラヤマ>オフィシャルサイトより)などで個性を打ち出すなど、差別化も見られます。

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アパレルでは、花柄のワンピースがキーアイテムとして浮上していますが、バッグ、革小物でもフラワーモチーフは大注目です。

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バッグだけでなく、アップリケで立体的に表現した財布(写真:<フィオライア>オフィシャルサイトより)から花をかたどったレザーアクセサリー(写真:<セリュ>オフィシャルサイトより)まで幅広く展開されているようです。

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■ バッグ&財布の小型化

バッグと財布の傾向として顕著なのは、小さめサイズの増加。ロングヒットが続く、リュックもかなりコンパクトに(写真:<キソラ>フェイスブックページより)。

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小柄な女性も合わせやすくなり、裾野が広がりました。小さめバッグの流行にともなって、収納しやすいよう財布も小さめにシフトしています。


「全体的に(需要が)小型の商品に移っています。財布などもそうですが、数年前までカードが多く収納できる大きなサイズが主流でした。しかし、今は小ぶりになっています」とバッグ小売大手<サックスバーホールディングス>木山剛史社長(「繊研新聞」1月20日5面【トップインタビュー2017】より)。


大手メーカー<クイーポ>でも小さめ財布の流れをとらえ、新作として発売するそうです(「ワールドビジネスサテライト」1月10日(火)放映分「白熱! ランキング」より)。


iPhoneでの新決済サービス、アップルペイはもちろん、カード決済の普及によって財布に求める機能も変わりつつあります。

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それぞれの小型化だけでなく、財布機能を内包する一体型バッグ、財布ポーチ(写真:人物<キソラ>フェイスブックページより/売り場<のむら>「B.A.G.Number」より)も浸透。普段使いだけでなく、旅行、フェス...と多様なシーンで活躍する汎用性の高さも人気を後押ししているようです。


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そんなスタイルフリーな潮流は、ウエストバッグ(写真:スタイルストアより)復活にも波及。ファッショントレンドとしてのウエストマーク、ベルトマークの注目とともに再浮上しています。


2017~18年秋冬パリ・メンズコレクションでは<ルイ・ヴィトン>×<シュプリーム>のコラボレーションにより、小さめのショルダーバッグを発表。全面に配されたロゴもさることながら、ボディバッグのようなストラップの短さも気になりました。エクストリーム(極端な)シルエットやユニークなレイヤード(重ね着)と呼応する新しいバランス感も要チェックです。


■ 新決済サービス、ICカード化、電子化の影響

前述のアップルペイだけでなく、使用シーンが広がるフェリカ。<スターバックスコーヒー>と<ビームス>のコラボレーションにより、フェリカ内蔵型レザーキーホルダーの発売が発表され、話題になっています。

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スターバックス カードの非接触決済シリーズSTARBUCKS TOUCH(スターバックスタッチ)に、STARBUCKS TOUCH The Drip(スターバックスタッチザトリップ)が登場。ウェアラブルな新しい決済体験という<スターバックス>が掲げたテーマにもとづき、ビームスがデジタルとクラフトの融合をキーワードにプロデュース。かざすだけで支払いができ、使い込むほど表情を変える革の味わいも楽しめるプリペイドアイテムとなっています。国内の職人が手がけたレザーを使用し、フェリカチップというデジタルアイテムと融合。新しい感覚の革小物が生まれました(写真:STARBUCKS TOUCH The Drip オフィシャルサイトより)。


レジのない実験店舗アマゾンゴーをはじめ、国内で指紋認証、顔認証による決済サービスの実験もスタート。財布の在り方、その近未来はどうなるのか? 時代に合わせたものづくりと使い方の提案にビジネスチャンスがありそうです。


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世界的タバコメーカー<フィリップ モリス>が開発した加熱式電子タバコ アイコスの人気にともない、アイコスのレザーケースがヒット中(写真:「B.A.G.Number」より)。


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愛知県名古屋市では、2016年9月、シルバーパスをICカード化。リールつきレザーパスケースへの買い替え需要が生まれています(写真:<エフィー>フェイスブックページより)。スマートフォン以外にも技術革新に合わせた革製品の領域拡大にワクワクしますね。


■ レザーのアップサイクル

先日、「繊研新聞」(1月20日)で報じられ話題のリレザー。生産過程で生じてしまう商品に用いることができない残革をつなぎ合わせアップサイクル(写真:「繊研プラス」(1月20日更新分より)。

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サステイナブル(持続可能)な価値、エシカル(倫理的)なデザインが支持を広げそうです。

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インキュベーション施設<浅草ものづくり工房>卒業生ブランド<トートーニー>では、人気作家・曽田耕さんとのコラボレーションにより残革を利活用。ピース・2ピースでできているアイテムを中心に、その余り革をA・B・C 3種類のパーツに裁断し、それぞれをつなぎ合わせてつくるシリーズを展開しています。生産ラインでは避けざる得ない大きなキズ・スジ・検品時につけるペン跡をそのままに商品化。クッション、ボックス、カップなど、インテリア雑貨アイテムが好評です。


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雑貨ブランド<mhd>が手がけるリボンブローチ<Re:born(リボーン)>も財布やバッグなどをつくる際、どうしても出てしまう革の端切れを有効活用。クリエイターの祭典「ハンドメイドインジャパンフェス」におじゃました際も数多くのユーザーが手にとっていましたよ。


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農林業への被害軽減を目的に頭数調整された鹿の革を利活用する鳥獣被害対策レザーも大きな流れ。「日本皮革デザイン促進委員会国内展示会」で拝見して、生命の証を無駄にせず、生命のバトンをつなぐような取り組みに感激しました。


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インキュベーション施設<浅草ものづくり工房>入居ブランド、<シス・クー・ド・フードル>でも同様に野生の鹿・熊・猪などのジビエ革を使用し、エシカルでスタイリッシュなレザーアイテムを提案。特に熊の革製品化は世界的にみても非常に珍しい試み。クラウドファンディングサイト<マクアケ>では目標の2倍以上の金額を達成。ユーザーの関心の高さが感じられます。

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また、日本皮革産業連合会のキッズレザープログラム(KLP)でも残革をアップサイクル。実際に革に触れ、革製品づくりを体験できる機会を提供することで、本物の革の良さ、革に対する正しい知識、革製品づくりの楽しさ、などを知ってもらい、将来、「消費者」として、「生産者」として皮革産業とかかわることになる「こども達」に皮革文化を学び育んでもらうことを目的としています。KLPの承認を受けた全国の児童館やNPO団体などが革で遊べる場をつくり、すっかりおなじみとなりました。


トレンドや時代の変化に合わせて、革製品がますます進化しています。いまの気分に合うジャパンレザーに出会ってください。


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プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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