2017年3月 1日 の記事
March 1, 2017
合同展示会「ルームス 34」レポート
カテゴリー: トレンド
国内最大級を誇るファッションとデザインの合同展示会「rooms(ルームス) 34」が2月15日(水)から3日間行われました。2020年開催の「東京オリンピック」を控え、主会場としてきた国立代々木競技場第一体育館が使用できなくなるため、従来のスタイルでの開催は今回で終了。
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「代々木の会場に合わせて完成形となった今の形は、今回で最後。展示会という名前もやめると思います。
(中略)
ルームスがインキュベーションの役割を担う、という点は変えません。今まで見えなかったものを発信し、さなぎから蝶となるときに、いちばんいい姿で飛ばせたい。そうして、<ルームスに出たほうがいいよ>とクチコミが広がることがいちばんのブランディングになるし、形は変えても、そのブランド価値を継続させていきたいと思っています」とアッシュ・ペー・フランス ルームス エグゼクティブプロデューサーの佐藤美加さん(「繊研新聞」1月30日2面/<インタビュー>より)。
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時代に先駆け、変革を遂げる「rooms」で、進化し続ける日本製革製品に出会いました。その一部をご紹介します。
日本の革と革のものづくりの魅力を発信する<TIME & EFFORT(タイムアンドエフォート)>がブース出展。
2017-18年秋冬コレクションは、ブラックとホワイトを中心に展開。ファッショントレンドとして華やかなカラーリングが復活するなか、そのコーディネートに相応しく、多様な着こなしに馴染みながらも存在感のある革製品を出品。バイヤーの秀逸な編集力も光ります。モノトーンだからこそ、デザイン、素材、縫製といった基本的な要素が際立ち、クオリティの高さをしっかりと訴求。
国産スニーカーの代表格<スピングルムーヴ>で知られる<スピングルカンパニー>が始動した新ブランド<33(サーティースリー)>も登場。<スピングルカンパニー>の工場が創業した1933年(昭和8年)からネーミングされたそう。伝統的なバルカナイズ(加硫)製法によるレザースニーカーが国内外で高く評価された同社。さらに高みを目指すチャレンジは、新感覚のドレススニーカー。
アッパーの奥深い艶めきに目を奪われます。レザーケア製品のトップメーカー<コロンブス>の最高級クリーム<ブートブラック>を使用し、熟練の技術者が磨き上げているそうです。さらにハイテクスニーカーのようなソールをプラス。どこまでも歩いて行けそうなポジティブな気分が満ちる、大人のための至福の一足ですね。展示品を触れるとディスプレイの動画も変わるというサプライズな演出も。インスタレーション的なアプローチが楽しい展示でした。
東京都台東区を中心にイースト東京を拠点とした地場メーカーがそろう<TAITO FASHION ZAKKA(台東ファッションザッカ)>のブースでは、イラストレーションと実演でお出迎え。
伊勢丹新宿店ほか、百貨店でブレーク中の人気シューズブランド<U.(ユードット)>を展開する<ヴァ―ブクリエーション>代表取締役社長の中川宏明さんが実演を披露。業界の常識を変える若いパワーと熱気が伝わります。
同社は、経済ジャーナリスト 内田裕子さんが上梓した話題の書籍「三越伊勢丹モノづくりの哲学」でも紹介されたそうです。
3月11日(土)、神奈川・横浜で行われる出版記念トークショーに著者とともに中川さんが登壇。日本のものづくりの現在と未来を語ります。お見逃しなく。
同じく、イースト東京・北千住を拠点とするファクトリーブランド<ビアベリー>。
バッグ、財布、小物が並ぶなか、気になったのがこちらのケースです。
メガネやペン、コ―ムといったアイテムを収納できるのはもちろん、留め具をつけるとトレーにチェンジ。
外出先、室内で形と使い方を変えられるのがいいですね。旅行にも重宝しそう。
東京周辺の中小企業を広く支援する<国際ファッションセンター(KFC)>と、クリエイティブチーム<SELF>の協業によるプロジェクト<東東京モノヅクリ商店街>にも常にたくさんの来場者が。
富裕層のリピート買い殺到、ウォッシャブル加工を施したピッグスキンのエコバッグ(ティグレ<レザリア>)、メンズのがまぐち(写真/<紗蔵>)といった、特徴的な商品開発が奏功。メイドイントーキョーのプロダクトとしてファッションの地産地消に取り組んでいます。
新たな使い方の提案により、市場を開拓するアイテムはほかにも続々。
デザイナー 喜多理恵さんが手がける<kitakikaku(キタキカク)>では、東京特産のピッグスキンを使用した東京から発信するコレクションを発表。
特にこのマスク! インパクト抜群です。ハロウィンにもぴったり。ハロウィンの市場規模はバレンタインを超えたともいわれます。これまで革製品では対応できていませんでしたが、非日常的な時間と体験を楽しめるアイテムとしてニーズも掘り起こせそう。
大手手袋メーカー<ヨークス>からは、アームカフを提案。手袋とアクセサリーの中間領域が新鮮です。
アクセサリークリエイターとのコラボレーションなどにより、これまでになかったレザーファッションの楽しさを開拓。ブレスレット、バングルとの重ねづけも素敵ですね。
革素材では、付加価値性をアピール。
エシカル&エフォートレスシックをキーワードに仕上げた地球にやさしいレザー<ポルティラ>。皮革産地、兵庫・たつのを拠点とし、なめしや染色のプロセスにおいてクロム、ホルマリンといった人体に対して有害な物質を不使用。工場排水にいたるまで安全性も重視しています。
鹿革のシリーズでは野生の鹿を使用。農林業への被害が深刻となっていることから相談を受けることが増え、取り組みをスタート。日本の野山で育んだ生命を無駄にせず、資源化し有効に利活用。
過度な表面塗装や加工をせず、原皮の段階であった傷跡もそのまま表面に残したナチュラルな仕上げ。革がもつ本来の柔らかさ、軽さ、自然の風合いを大切にし 従来、製品に用いられてこなかったキズをデザインの一部ととらえるなど、それぞれの動物、個体が有していた個性を生かしています。
2017年春夏のシーズンカラーはヤマモモ、クチナシ。天然由来の草木染料を主原料として丁寧に染め上げたそう。ぬくもりあふれる色合いも魅力的。スモールアイテムも豊富にラインナップ。レザーを身近に感じることができますね。
特殊加工を施した<アクサレザー>は、水洗いが可能に。革本来のしなやかさを保ちながら、水洗いによる色落ち・硬化というデメリットも解消。
特にシューズがヒット中。大手通販サイトで2016年下半期で売り上げランキングトップとなったそう。発色のよさもいいですね。
クリエイターの繊細な表現も目をひきました。
<logsee>は京都を拠点に活動。自然に囲まれた森の京都、京丹波町にアトリエがあるそうです。
クラシカルな手法を大事にし、自然から学んだ配色や形状をもとにつくられたバッグ。サークルのフォルムやショルダーストラップなど見慣れたバランス感をアレンジ。心地いい変化と律動、そして、上品なエレガンスを。伝統と革新が調和する古都のDNAが息づいているかのよう。
<ガールズプロダクト>エリアに出展した<yoshiko>。
独創的なバスケタリーワークが支持されています。レザーを使用したバッグ、花器も発表。
異なる質感の対比により、奥行きが生まれて。ふんわりとした甘さと、女性らしいしなやかな力強さが融合した作品世界に引き込まれます。DIYワークショップは告知とともにすぐ満席になってしまうなど大人気。「ファッションテック」(ファッションとテクノロジーを掛け合わせた造語)が注目されるときだからこそ、やさしさとぬくもりを実感できるクリエーションに心が動かされますね。ファンのかたとの関係性、ネットワークも強固。共感力と熱量の高さがうかがえます。
今回をふりかえり、「コミュニティー感が今の時代をあらわしている」とルームス エグゼクティブプロデューサーの佐藤美加さん(「繊研新聞」2月27日11面/<第34回ルームス つながり、コト提案増える>より)。
画像共有アプリ、インスタグラムやフェイスブックをはじめとしたSNSが急速に普及。知りたいこと、ほしいものを媒介とした共感により、ネット上の新しいコミュニティーが形成され、そのなかで飛び交うリアルな意見、情報が重視されています。
クラウドファンディングによる、ものづくりのサポート体験が消費行動の変化を後押し。時間と対価に見合う満足感・価値と共鳴する想い。専門性が高いコアなものにこそ、つくり手とつかい手との絆もより強く。今後、日本製革製品の可能性もさらに広がっていきそうです。
■ 参考URL ■
ルームス 34
<http://www.roomsroom.com/>
プロフィール
鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター
東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。
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