2018年2月 7日 の記事
February 7, 2018
「Japan Leather Award 2017」受賞作品展示レポート
カテゴリー: 国内革事情
大阪・梅田 阪急うめだ本店 10F「うめだスーク」で「Japan Leather Award(ジャパンレザーアワード)2017」受賞作品展示が、1月24日(水)~30日(火)の一週間、開催されました。同アワードは国内最大規模のレザープロダクトコンペティションとしてすっかりお馴染みに。
11月29日(水)、同じく大阪・梅田 阪急うめだ本店 9F「祝祭広場」で行われた「Japan Leather Award 2017」表彰式で発表されたグランプリ、および各賞受賞作品がズラリ。
グランプリは、(フットウェア部門 ベストデザイン賞)田中 利明さん(個人)による「浮き世靴」。葛飾北斎の富嶽三十六景や凱風快晴といった浮世絵をコラージュし、アッパー全体に転写印刷を施したものです。印刷は全て手作業なのだそう。醸し出す風合いや使うほどに柄が色濃く鮮明になる独特な経年変化も特徴です。
「日本のデザインが見直されている今の流れを考慮した靴をつくりました。雨に濡れた状態で絵柄がはっきり浮かび上がります。雨の日を楽しんでください」と田中さん(授賞式コメントより)。
このほか、気になったのは特別賞(ATW Japan)浜崎 誠也さんの作品。「絶対乗ってはいけないスケボー」をコンセプトにつくられた、ひと際ユニークな革製品です。「裏表全面にカービングと透かし彫り、インレイされた西陣織の美しさを見ていただければ。乗ってはいけないスケボーですが、ウィール(タイヤ)の部分は積革で作成し実動するよう、実際にベアリングを入れています」と浜崎さん。
同社ブランドマネージャーの西村 誠さんにもお話しを伺うことができました。浜崎さんとは小学校から高校までをともに過ごした幼馴染み。フェイスブックを通じて4年前に再会。体調を崩し、パニック障害を克服した浜崎さんをサポートし、浜崎さんのテクニックと西村さんのアイディア&ブランディングにより始動したそう。
「これまでにないものをつくりたい」と、カービングと伝統工芸をハイブリッドさせ、インバウンド向けに商品開発。西陣織りを取り入れることで現在のベースができ、アート的なアプローチを模索。試行錯誤、おふたりのディスカッションの末、ルーツ・王道を追求しながらも新しい表現にたどりついたそうです。
カービングの文様も王道・シェリダンスタイルをアレンジしオリジナリティを追求。
2016年度にも出品してくださっています。こちらはその応募作品。持っているのは、セールスディレクターの森田 あずささん。「(前回のエントリーでは)ドン小西先生から"ありきたりのものをつくらないように"とアドバイスをいただき、その言葉に応えられるようにおもしろいものにトライしています。革と西陣織りの厚みのバランスをとるため、たくさんのプロセスを積み重ね、ミリ単位の細かい調整をしました」(西村さん)。美しさとおもしろさの両立は確かなテクニックはもちろん、客観的な視点とあたたかな友情があればこそ。幼馴染みを激励しながらも、ニーズを見極め、的確な方向性へと導いています。
「今回の受賞でやる気が出ました。新しい挑戦を続け、海外のかたにも知ってほしい」と抱負を語る西村さん。「中日新聞」(1月24日 1面)での紹介、京都の注目スポット<京都コンセルジュサロン>での展示販売、「クールジャパン」関連プロジェクトでの展開・・・と、さまざまなオファーが続々。今後のさらなる飛躍に期待が寄せられます。
また、会場では受賞作品に加え、2位の作品、大阪・東京会場人気投票No.1の作品もそろいました。
新しい発想、ファッションの楽しさが伝わりますね。
そのほか、すべての受賞作品を公式サイトでご覧いただけます。
会期中には今年度および歴代の受賞者によるプログラムも。「Japan Leather Award 2017」バッグ部門 フューチャーデザイン賞受賞 <Naoto+m>三木 直人さん、同じく「Japan Leather Award 2017」フットウェア部門 フューチャーデザイン賞 2位<madoromi>内山 友徳さんによる「バッグのレザーケアワークショップ」と、「Japan Leather Award 2014」日本エコレザー雑貨部門賞受賞<革工房ABALLI>加藤 光也さんの実演販売を実施。
訪日観光客のかたにも大好評で、感激した女性が加藤さんに握手を求める場面も。また、連日たくさんのジャパンレザーが来場。
ユニークなデザイン、確かなクオリティ、上質なレザーの手触りに心が動かされたようです。
会場では、グランプリをはじめ、各部門賞、ゲスト審査員賞など全受賞作品、受賞者をご紹介する「Japan Leather Award 2017」受賞作品紹介小冊子を会場で設置・配布。公式サイトで公開していますので、ぜひ、ご覧ください。
2017年11月に行われた表彰式において、審査員長の長濱 雅彦(東京藝術大学教授)から「非常にレベルが高い作品が数多く集まり、審査では審査員が意見を戦わせながらも全員納得の上で受賞作品を決定しました。ヨーロッパに負けない日本ならではのものづくりが盛り上がってきてうれしい限りです。日本の皮革産業がますます活性化していくことを望みます」と高い評価が。
さらに特別審査員のドン小西さんから「世の中が転換期を迎える今、海外からの日本の評価も大きく変化しています。オリンピックを前に日本のデザインの魅力や新たな提案が大いに期待されていますので、ぜひ、がんばってください」と熱い想いを込めたメッセージを届けてくださいました。
フリマアプリ<メルカリ>などの影響で、短期所有と長期保有の二極化が顕在化するなか、愛着による経年変化という魅力をもつ革製品の適正な価値をアピールする絶好のチャンスです。
今回のグランプリ受賞作品でも、経年変化、雨天時の使用シーンの新提案が秀逸。天候の変化が激しい現在の日本にマッチするアイテムですよね。ジャパンレザーの可能性がますます広がりそうです。来年度もどうぞ、お楽しみに!
■ 参考URL ■
Japan Leather Award 2017 <http://award.jlia.or.jp/2017/>
プロフィール
鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター
東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。
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