欧米ブランドに「負けていないぞ!」

2018年7月 の記事

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

お待たせしました! 月1回恒例のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」第4弾です。

今回は、革を裁断する仕事「裁断師」にフォーカス。
皮革業界のスペシャリストの仕事を、写真、動画、イラストを加え徹底解説してくれます。

通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしておりますが、この春から人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが加わりました。

イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにもわかりやすくお伝えすべく、ていねいな解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介。

次回の「本日は革日和♪」は、「素材博覧会YOKOHAMA 2018・夏」(8月24日~26日)に出展決定。ブースでの物販のほか、セミナー、ワークショップも予定されています。下記のリンク先をチェックしてください。



*  *  *


毎度です。

今回は革業界になくてはならないのにいまいちすごさが伝わりづらい「裁断屋」という仕事です。


革業界では巨大なカッターを折り曲げたような「刃型」という工具をフルオーダーで作ります。


値段はピンキリですが、小さいから安い、ということはなく、基本的に作成時間に応じて値段が決められます。

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巨大なカッターの刃であるスウェーデン鋼を熱して柔らかくして曲げて溶接していきます。

そのため1mm以下の精度で作るのは困難な工具です。


刃型の作成依頼をする人は薄い紙を折り曲げるかのようにスウェーデン鋼を曲げられるんでしょ、と思いがちです。実際はダンボールを曲げるようなイメージですね。



それほど大雑把な素材です。


例えば下記の刃型などは小さいですが7,000円くらいはします。
その分精度抜群できちんと平行にドーナッツの形が形成されています。

刃型の話でも1回またいつか話しましょう。



で、この刃型で革を裁断するのが裁断師という仕事


刃型を裁断するのにはクリッカーという機械を使います。

重さは1トンを越えるもので、油圧の力で動きます。

スイッチを入れると体に響く唸り声をあげてゆっくりと天板が下がり刃型を押さえつけて革を切り離します。


だいたいこの機械がピンきりですが、中古で30万くらいかな? 

移動費で10万弱は見ておいたほうが良いです。重さ1トンくらいはありますので頑張ったり、人数多くしたら運べる、というものでもありません。


また、設置する地面もきちんとコンクリ引いておかないと水平が出ません。


昔々の裁断師は

クリッカーやスウェーデン鋼、という工具が日本に出回ったのは1970年台手前くらいと聞いています。
それまでは型紙をベニヤ板などに写して、革包丁1本でベニヤ板型紙をなぞって手作業で裁断していたそうです。


手で裁断していた時代があり、さらにその後に火造りの刃型が存在し、これを手作業でガンガンと叩いていたとか。


ですので当時の靴工場などはものすごくうるさかったということも聞いたことがあります。

この頃の記録写真などがさっぱり残っていなくて探し中です。

で、70年台手前くらいにようやくスウェーデン鋼とクリッカーが来たそうな。


文献記録や証言を集めていますが、工具や機械の記録ってなかなか残っていなくて難儀しますね。┐(´д`)┌



革の特性を知ろう! 

「この機械さえあれば誰でもできるの、裁断師というやつは?」というとそんなことはありません。
まず革という素材がどれだけ気を使うものなのかから理解してみましょう。


1 革は傷があって当然

革素材は食肉を取るためにトチクした動物からいただいたもととなる皮「原皮」の段階で傷があることがあります。
それらの傷は革素材を使う以上避けられません。
また、識別のために焼印がついていることがあります。


2 革には流れがある

人間と同じですが、革素材には繊維の流れがあります。
それも一方向ではありません。


下記の図のように背中から頭、おしりに。背中からお腹に繊維の流れが走っています。


この流れが曲者です。


部位的には背中の部分が一番頑丈です。
例えば人間も幼少期に「地震が起きたら頭を抱えて背中を丸くしてうずくまってください」と言われたと思います。


これはお腹よりも背中の部位が繊維が密集し、頑丈なことも一因しています。
お腹や首の下、肩の周り部分はお腹いっぱいになると膨らんだり、可動する部分なだけあって柔らかくなっています。

基本的に革は図の真ん中にある背中のほうが頑丈であり、価値も高いです。

3 革の表面が硬いか柔らかいかで話が異なる

硬い革・柔らかい革、などと言いますが、硬い柔らかいだけでは大雑把な表現となります。


・表面にピンッ!と張りがあるから硬い


・張りがあるけど、シワシワにシボが寄せられているためふんわりとしている。でも表面はピンっとしているので硬いとも言える


・背中の部分をつまむとギュッと圧縮され固く感じる。この場合は「コシがある」と言います。


・でもお腹の部分は繊維がゆるいので柔らかく感じる。この場合は「コシがない」と言います。


硬い柔らかいでも表面状態や繊維密集地帯により異なります。


これらの特性を今回の話では是非覚えておいてください。



仕事的にはスイッチ入れてポンポンと誰でもできる仕事じゃないの?

この仕事の難しさは上記にあげた特性と、裁断して作るもの=靴やカバン、により要求される内容が異なります。
靴が得意な裁断師は手袋についてはさっぱり詳しくないこともありえます。


今回はさらに作る対象物それぞれに関して、どこに注意をしなければいけないかも解説してみましょう。


靴はとにかく数が多い

教材用DVD「靴の出来るまで」 | JLIA 日本皮革産業連合会より


今回話を聞いたのは普段からお世話になっている裁断屋さんです。
クマみたいな風体ですが、ものすごく繊細に仕事をしてくれる方です。
財布や鞄から靴までいろいろと裁断しています。


で、靴の裁断の大変さってなに?


I氏「靴の場合は繊維の流れが重要やねん。
例えば大阪は婦人靴で有名やから、その裁断が持ち込まれることもある。
AからEの5つのパーツがあるならばそれぞれのパーツにより要求される繊維の方向が異なる。


が、大変なのは靴は要求される枚数が多いんや。
例えば100足分裁断、と言われても革がきちんと足りるかどうかわからないんや」


100足で1足あたり6DSかかるならば600DS。革3枚で足りる、みたいな計算じゃないの?
(※DS=日本における革の基本的単位。1DSは10cm×10cm。革1枚あたりで220DS前後)


「傷を避けたり、繊維の流れを考えると600DSできっちりとれるとは限らないんや。
そこらは裁断してみないとわからない。


だからパーツAだけ100足分=200パーツだけ取ったらあかんのや。
まずAパーツだけ100パーツだけ様子見で裁断して、その次にBも100パーツ、Cも100パーツ、、、と50足分だけ取っていく。


で、残りの量を見て『あぁ、これだけの残りならばあとは40足分くらいだけ取っておこう』と考えるんや。
何も考えずにAパーツを200パーツだけポンポンと取れたら楽なんやけどな」


「他にもスムースレザー(※均一な色一色の革)ならば楽だけど、ムラ染め的な革は裁断が大変や。
流れと模様、両方に気を使わなければいけないからな」

 

カバンやバッグは大きさがネックに

教材用DVD「鞄の出来るまで」 | JLIA 日本皮革産業連合会より


「こちらも靴のように繊維の流れを考えなければいけないんや。
靴よりもパーツの大きさがでかいから見落とすわけにいかない。


また、持ち手部分などは革の繊維の流れに沿って裁断しないと使っていたら伸びることになるな。
そしてそういうパーツは大きいからこれまたどう取るか悩みどころや」


ランドセルは表からは傷がわからない

「ランドセルの場合は6年使うことが前提の鞄やろ。
だから表面にウレタン塗装なりが施されているから表面だけ見たら傷はほぼないんや。
その分裏側から見たら、削れている傷などが存在する。それは表部分から押すとポコンと凹んでしまう。
だから、裏から目視して、傷がないな、とチェック。表も軽く撫でて凹んでいるところがないか確認するんや」


財布などの小物は小さくて注文が細かい

教材用DVD「ハンドバッグ・小物の出来るまで」 | JLIA 日本皮革産業連合会より


「財布などの小物はあまり力がかからないからそれほど革の向きは気にしない。
それにパーツが小さい。それだけ革の取りがってはいいよな。
でも一部のパーツで『こっちは隠れる部分だから多少傷が入っても良い』など細かい注文が多いんや。
さらには『このパーツは漉きを細かくするから良い部分で取ってほしい』『こちらは漉きは細かくないから腹の部分で構わない』などパーツ1つ1つの要望が細かいな」


手袋はそもそも革が難儀

教材用DVD「手袋の出来るまで」 | JLIA 日本皮革産業連合会より


手袋は四国の香川県で生産されることが多いので香川の方に聞いてみました。


「手袋は鹿や羊などのふんわりとしつつもしなやかな革がよく使われる。
また、製造工程で手の形をしたアイロンを中に入れて革を伸ばすんや。
だから裁断する時はふんわりしているけど、なるべくピンと伸ばして裁断する。
もちろん傷があるなんてもってのほか。傷がないように確認しつつ裁断するよ」



裁断師はプロの仕事


「例えば鞄メーカーや靴メーカーにはそれぞれの会社に裁断をする人がいるもんや。
ホントはそれが一番望ましい。


この傷はいいのか? 

この部位はこのパーツに使って良いのか?というのはメーカー自身が一番よくわかっているからな。


でも人手が足りなかったり、クリッカーがない場合は俺らみたいな裁断師の出番となるわけや。
裁断師もそれぞれに得意分野が異なる。
靴の得意なやつもいれば、財布が得意などもある。
全部に通じている裁断師はそうそうおらへんやろうなぁ。


だからこそ依頼者がきちんとメモで

『この刃型はこの向きで裁断してくれ』

『このパーツはこの程度の傷はokです』など

書いてくれていると助かる。
『それくらいプロなんだからそっちで判断しろ!』とか言うような依頼者は断るな」


機械だけみたら簡単そうに見える仕事ですが、実際は繊細さが要求される仕事ですね。



裁断師はどこにいる?


基本的に裁断師に限らずですが、革の加工屋さんというのは「数で稼いでなんぼ儲けるか」という仕事です。
そのため鞄メーカーや靴メーカーと呼ばれる会社が多数あるところじゃないと儲けられません。


東京ならば浅草に靴メーカーが多いですが、こちらは紳士靴のメーカーが多いです。
大阪は西成に婦人靴メーカー。ここら近辺には裁断師なりが存在します。

神戸の長田には合皮靴メーカーが集まっています。こうなると長田の裁断師は合皮の裁断が得意となります。


鞄メーカーは東京・大阪に点在しています。
大阪ならば堺市や東大阪に多いと聞きます。
ここらを対象とする裁断師さんは革や裏地となる布地の裁断を得意とします。


兵庫県の豊岡市は鞄メーカーが100社ほどあると聞いています。
豊岡の鞄メーカーは革に限らず布地などを得意としていますので、裁断師も革以外を得意と聞いています。

香川県東かがわ市は手袋を得意とします。
前述しているように柔らかい手袋用革の裁断が得意と思われます。



じゃぁ裁断師ってどうやって探せばいいの?


基本的に「~~裁断所」などと名前をあげているところはあまり見ません。


また、タウンページやインターネットで検索してもあまり見つかりません。


加工屋さんというのは「1回やっていくら。次に注文来るのは半年後」という個人や会社さんよりも「定期的に仕事をくれる取引先」を好みます。


定期的にくれるならば個人でも気にしません。


また、きちんと細かい注意点や仕様書をくれる取引先をありがたく思います。
「プロだからそこらは任せるよ!」「電話で10分かけて説明します」「口頭で説明しますからメモ取ってくださいね」などはとても嫌がります。


彼らは手を動かしてなんぼ儲けるか、という仕事ですので、口頭のみの説明というのは時間を浪費するので嫌います。

裁断師に限らず加工屋さんや専門職種というのはタウンページやインターネットに情報を載せたがりません。


なんで載せないの? と聞いてみたことがあります。


「紹介で十分やねん。
タウンページやインターネット載せると営業電話かかってきて面倒くさい」

ということでした。


材料店舗などで継続的に購入し、信頼を重ねた上で相談すると教えてくれることもあります。



どれくらい存在するの?


さっぱりわかりません。


組合があるわけでもない職業ですので、この世にどれくらいの裁断師や加工屋がいるのかはほんとにわかりませんね。



革業界っていろいろな加工屋さんや専門職種で成り立っています。


前回紹介した漉き割屋さんもそうですが、この裁断師さんもなくてはならない仕事です。


機械があるからってなんでもできるわけではなく、それぞれが経験に基づいた文章化できない知識や技術を持っていますね。




過去の関連ブログ:

カテゴリー: 国内革事情

前回に続き、日本最大級のハンドメイドマーケットプレイス<Creema(クリーマ)>が主催する「HandMade In Japan Fes 2018(HMJ/ハンドメイドインジャパンフェス)」から注目ブースをピックアップしてご紹介します。


地元の伝統技術を活用し、社会問題を解決
<DIYA(ディヤ)>
里山の現実をより多くの人に伝えていくことを目指し、始動。徳島県の祖谷(いや)地方で、有害駆除された野生の鹿を製品にすべく、ブランド化したそう。
「年間約1,500頭を超えるシカが駆除されますが、そのほとんどが山に放置されているのです。DIYA は、この里山の現実をより多くの人に伝えていくことを目指し、立ち上げた鹿革プロジェクトです。
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駆除した個体の価値を高めていくことは、問題解決につなげるための大切な視点であると考えています。柔らかな鹿革素材の魅力を最大限にいかし、丁寧に作りあげたDIYAの製品。手に取ってくださった皆様が、鳥獣被害と里山の暮らしのいまを知る、貴重な一歩となりますように」と、"シカけニン(仕掛け人)"蔦 哲一朗さん。
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2013年に地元・徳島の祖谷地方を舞台にした映画「祖谷物語-おくのひと-」を発表。東京国際映画祭をはじめ、トロムソ国際映画祭で日本人初となるグランプリを受賞するなど多くの映画祭に出品され話題となり、2014年、個人として徳島県庁より『阿波文化創造賞』を受賞しました。
異なるジャンルから飛び込み、プロデュース。新たな風を吹き込んでいます。


ステイショナリー感覚の革小物がアイキャッチに
<KUGIRI(クギリ)>
デザイナーの藤本さんがブランドを立ち上げ、シンプルかつ機能的なバッグ、革小物をリリース。特にステイショナリーの評価が高く、専門紙・誌の編集者から高く評価されています。
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現在、カードケースがブレイク中。フラップに小さなパーツを配することでカードスタンド替わりに。名刺交換時、有効に活用でき、ビジネスシーンのコミュニケーションが円滑になりそう。
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バッグクラフトマン養成スクール<アトリエフォルマーレ>卒業生で活動するユニット「JAPAN レザークリエイターズ」では、藤本さんがリーダーシップを発揮。百貨店に催事出店し人気です。


「革らしさ」を生かした「革らしくない」プロダクト
<革作家 ayato(アヤト)>
ナチュラルマーク(個体の特性、キズなど)をそのままに使用するなど「革らしさ」を生かしながらも、ドット柄や蟻の刺しゅうなど、相反するポップなテイストのものづくりがユニーク。
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作家自身が裁断、染色、縫製・・・とすべてのプロセスを手がけ、ぬくもりのあるニュアンスが漂う作風がオリジナリティにあふれています。
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革小物から野球用グローブまでと、幅広いコレクションを展開。好みの型と柄の組み合わせでセミオーダーも可能だそうです。
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フォトジェニックなルックスと、熱いトークで女性ユーザーから注目を集めています。


ショップのような空間と接客で差別化
<chi.wata(チ.ワタ)>
ショップのようなしつらえの大きなブースで、ひと際、存在感を放っていた<chi.wata(チ.ワタ)>。東京・高円寺に構えるアトリエ兼ショップの世界観を移設したような、スタイリッシュな雰囲気です。
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姿見を設置、全身のバランスを見ながら、丁寧に接客し「素材感、サイズ感を確認してから買いたい」というリピーターのニーズにしっかりと応えて。
デザイナーの千綿さんをはじめ、応対するスタッフも多く配置し、マンツーマン、ハンドトゥーハンドで次々と売れていくようす、拝見していてホッとしました。
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スタイリングに合わせやすく、使うひとの魅力を引き出すバッグたち。すれ違うひとが思わず目を留めてしまうような、さり気ない個性が光ります。


人気のおにぎりケースをシンプルに表現
<Natural Intelligence(ナチュラルインテリジェンス)>
「持つことで特別感を感じられるような製品をつくりたい」との思いを込め、活動するブランド。
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イヤホンクリップやキーケースなど、革小物に加え、なかには、超個性派アイテム、おにぎりケースも。
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会場では、おにぎりケースをほかにも見かけましたが、シンプルなデザインで革の持ち味を引き出しています。パーツが少なく女性も使いやすそうですね。


ブランドの核となるスモッキングでさらなる進化
<kaunis sormus(カウニスソロムス)>
スモッキングの技法を生かしたコレクションが目をひく同ブランド。昨年もピックアップさせていただきましたが、今年は進化した表現に感激。
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スモッキングというと、70年代テイスト、ペザント(農夫)ルックなどに代表されるナチュラルなニュアンスが特徴ですが、技法を生かしながらも、素材を艶感のあるレザーにチェンジし、ゴールドをあしらったパール調のパーツをプラス。フェミニンかつエレガントなアクセサリーに昇華しました。
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厚手の素材が多いので、指ぬきをしていても、作業はなかなかハードだと思われますが、クラフト感だけにとらわれない自由な発想がいいですね。今後の活動が楽しみです。


ハンドメイドマーケットプレイスやリアルイベントがあることで、若いクリエイターたちが伸び伸びと自由な活動をしているのがうれしいです。ユーザーと向き合い、直接つながることでいままでになかったマーケットが醸成されています。
ジャパンレザーが身近になり、「革製品を使いたい」「革製品を贈りたい」といったニーズが広がっていきますように。


■ 参考URL ■
 HandMade In Japan Fes <https://hmj-fes.jp/>

カテゴリー: 国内革事情

日本最大級のハンドメイドマーケットプレイス<Creema(クリーマ)>が主催する「HandMade In Japan Fes 2018(HMJ/ハンドメイドインジャパンフェス)」が、7月7日(土)~8日(日)の2日間、東京・有明 東京ビッグサイトで行われました。
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HandMade In Japan Fes 」は日本各地で活動する多くのハンドメイドクリエイターが集結する人気フェス。アート、雑貨、ファッション、アクセサリーほか多彩なプロダクトがそろいます。

クリエイターエリアでは、伝統工芸職人・人気クリエイターたちの作品に触れ、ものづくり体験ワークショップも。このイベントでしか出会えないつくり手たちとコミュニケーションも楽しい。
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新進気鋭のアーティストや人気フェスバンドによるライブステージをはじめとしたミュージック&プレイエリア、フードコーナーなど、ファッション以外のプログラムも充実しています。

開催時期の七夕に合わせ「織姫と彦星」をテーマに展開。天の川をイメージしたトンネルの中にクリエイターによる「織姫と彦星」をモチーフにした100作品の展示、フリーワークショップも実施。クリエイティビティあふれるサマーバレンタインとなりました。
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「HMJの思い(=初心)に返る」との方針のもと、あえて規模を縮小したものの、昨年より10%多い国内外から5万人を超える来場者を記録。顧客満足度も大きく高まったようです。

駆け足でお邪魔してきましたので、注目ブースをピックアップしてご紹介します。


日本最大のレザープロダクトコンペティション「Japan Leather Award(ジャパン・レザー・アワード)」が昨年に続き出展。
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6月1日にオフィシャルサイトがオープン。事前エントリーの受付がスタートしました。
「ファッション産業である皮革産業に、その時々の消費者ニーズなどに即応できる新たな"発想・表現"のできる人材を発掘・育成したい」。このような目的のもと、一般社団法人 日本皮革産業連合会(JLIA)が毎年開催する同アワード。誰もが無料で応募できるのが魅力です。今年は東京・二子玉川ライズで審査会・表彰式・受賞作品展示が行われます。

応募部門はフットウェア部門/バッグ部門/ウェア部門/フリー部門の4部門。フューチャーデザイン賞(新奇性、新たな市場形成の可能性を評価/賞金10万円)、ベストデザイン賞(優れた商業的な価値を評価/賞金10万円)の各2賞が。さらに学生部門(最優秀賞/新奇性、発展性を評価/賞金10万円)があり、グランプリは上記9賞の中で最も優れた作品から選ばれ、賞金30万円と3つの中から選べる副賞も用意されます。

プロ審査員としてウェブメディア「Fragments」編集長 伊藤瞳さんが加わりました。審査員長は東京藝術大学美術学部教授 長濱雅彦さん。特別審査員としてドン小西さん。
阿部浩さん(レガーレ)、天津憂さん(エーディグリーファーレンハイト)、有働幸司さん(ファクトタム)、鎌倉泰子さん(フリーランスバイヤー/ライター)、佐藤直人さん(NAOTOSATOH)、中山路子さん(ミュベール)、橋本太一郎さん(ノーノーイエス)、矢口真弓さん(PR・アドバイザー)と活躍中のデザイナー、ビジネスパーソンが審査員を担当予定。厳正に審査されます。
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皮革業界関係者だけでなく、幅広いジャンルのクリエイター、海外のかたも立ち寄り、日本製革製品の魅力を知っていただく、きっかけに。ブースでは今年度の特長や応募部門などの説明とともに、それらの内容をまとめた印刷物を設置・配布。事務局スタッフがおひとりおひとりに丁寧に応対、説明しました。
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また「Japan Leather Award 2017」グランプリ受賞作品を展示。雨や水に濡れることで、グラフィックが鮮明に浮かび上がる特性を伝えるべく、その場で水をスプレー! その変化がとても好評。
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グランプリ受賞作品だけでなく、トロフィーを展示することで、受賞のイメージがわき、モチベーションが上がったかたも多いようです。
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なお、ご応募には事前エントリーが必須となっています。現在、事前エントリーの申し込みを受付中です。くわしくは下記リンク先公式サイトをご参照ください。

「HandMade In Japan Fes 2018」レポートは次回に続きます。


■ 参考URL ■
 HandMade In Japan Fes <https://hmj-fes.jp/>
 Japan Leather Award <http://award.jlia.or.jp/2018/>

カテゴリー: トレンド

キャッシュレス化が進行し続ける時代ですが、財布は縁起もの。一粒万倍日、天赦日などといった幸運日に買い替える習慣も浸透するなど、エモーショナルな要素が重視されます。

近年では「春財布」「秋の実り財布」に続き、「七夕財布」に注目! 風水の第一人者として知られる、Dr.コパさんが提唱しています。「ご先祖様に守られる」「ご先祖様が使いきれていない金運を引き寄せる」といった意味合いがあるそう。

七夕は地域によって7~8月に行われるため、対象とする期間が比較的長いのもうれしい。そんな時季におすすめしたい夏財布をまとめました。


雨の時季に咲く紫陽花を愛でるように
ハンドバッグ、革製品の企画・製造・卸<ヤマニ>の自社ブランド<ぺラム>。さまざまなものがあふれるなかで、原点に立ち戻り、シンプルで機能的な袋を追求。味わいのあるナチュラルなテイストに女性らしいスパイスを加えてフレッシュさのあるレザーグッズを提案しています。
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紫陽花をモチーフにしたオリジナルパターンをエンボス加工でグラフィカルに表現。オイルバケッタ革にさり気なく散りばめられています。立体的な花のチャームにウッドビーズもプラス。経年変化で色合いが変わるのも紫陽花と共通していて素敵ですね。

裏地にはコットンリネン混紡の生地を使用し、ナチュラルなテイストを盛り上げます。紫陽花は今が見ごろですね。花言葉のなかに「家族団らん」「家族の結びつき」といった意味もあるのでギフトにしてもよろこばれそう。


メタリックレザーがひんやり涼やか
インキュベーション施設<台東デザイナーズビレッジ>に入居する<フィオライア>。「私の手もとで咲く魔法」をコンセプトに展開。花を持ち歩くように使うことができるアイテムを提案しています。
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メタロシリーズは、牛革の上に箔を貼り、その上からボタニカル柄を型押し。メタリックカラーがひんやりとして涼やか。カッパー、ガンメタル、ライトゴールドの3色展開です。エレガントな華やかさが大人っぽく、クラッチバッグ感覚で楽しめます。

 <フィオライアhttp://www.fioraia.net/


ミントチョコのようなスイート革財布
ワッフルなどのスイーツをモチーフの革雑貨を手がける<ティールームス>。なかでも人気なのはチョコレートモチーフのシリーズ。上質な牛革に型押し、箔加工を施しています。繊細な仕上がりに目を奪われますね。
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ブラウン系に加え、パステルカラーが続々ラインナップ。ミントブルーは、まさしくチョコミント! 板チョコのラッピングの銀紙のニュアンスもしっかり再現され、甘く爽やかな味わいそのままの雰囲気に。大人にも愛されるセミスイートな財布です。

 <ティールームス> http://trooms.jp/


浴衣に似合う 藍染牛革 虫よけ効果に期待
インキュベーション施設<浅草ものづくり工房>に入居する<ラ・ジョイア>は、埼玉県指定無形文化財技術保守者が在籍する老舗<中島紺屋>が手がけた伝統の武州正藍染を生かし、コレクションを展開。藍染牛革を用いた革財布、革小物は構想から完成まで3年かけた力作です。
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「藍染牛革バイアスメッシュ革小物が仕上がりました。手染めで染め上げた革は一つ一つの表情が異なる作品です。内側には栃木レザーの牛ヌメを使用しています。使い込むほどに風合い豊かな色味があらわれ、愛着が増していきます」とラジョイア 和田義治さん。がまぐち(コインケース)は刷毛塗りした藍染牛革を7mm幅に裁断し、バイアス編みしたシートを使用しているそう。

藍には防虫効果があり、かつては農作業で虫除けのために藍染めの作業着を着ていたのだとか。ワークウェアとして重宝されたインディゴ染めのジーンズも同様です。花火大会やフェスなどアウトドアへのお出かけのパートナーとして効果を期待したいですね。

 <中島紺屋> http://www.izome.jp/


キャッシュレス時代のオールインワン革小物
明治32年に創業した老舗メーカー<山藤>。現在の代表 山本浩司さんが五代目当主に就任し、オリジナルブランドを始動。著名なセレクトショップや百貨店で取り扱われるほか、メディアでも数多く取り上げられ話題です。

こちらはラウンドファスナー型のキーケース。乗用車やマンションなどの大きめサイズのスマートキーがすっぽり収納できます。カードポケットが2枚分あり、ETCカード、カードキー、ICカード乗車券などを収納。
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コインスペースがないものの最低限の財布機能は有したオールインワンアイテムキーフックの裏にもカード1枚分のポケットがあり、折りたたんだ紙幣を入れることも可能です。電子マネー決済を少額利用するかたにとってはマルチユースできて便利ですね。
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リングが配され、ベルトに引っかけられるのもポイント。「ヒップポケットに入れると蒸れたり、汗によるダメージが心配」というかたも快適に使えそう。

レザーは山藤オリジナル<カモフラージュ・ツリー>。街路樹のプラタナスに着目し、樹皮をそのままプレスし、美しい模様を革で表現。街路樹の木陰のような涼感が漂います。トレンドとして注目のカモフラージュ柄、というのもいいですよね。


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プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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