欧米ブランドに「負けていないぞ!」

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」 の記事

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

お待たせしました! 月1回恒例となったスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」第3弾です。


今回は革を薄くする仕事「漉き割り」とは? 皮革業界の「縁の下の力持ち」に敬意を込めて、写真、動画、イラストを加えて徹底解説してくれました。


通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしておりますが、この春から人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが加わりました。

イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。

なお、「本日は革日和♪」の次回以降のスケジュールにつきましては、次のリンク先をチェックしてください。

 「本日は革日和♪


***


普通に電話かけたら「毎度です!大阪のムラキです!」と挨拶をしています。


毎度です!って大阪の商売人ってほんとに使うの?と思われがちですが、私はほんとに使っています。儲かりまっか?は気心がしれたら使っていますね。


さて、人に話したくなる革の話。


革業界には「この職種がないと製品が作れない」「この人たちがいないと革業界はまわらない!」という専門職種の方々がおられます。

靴の職人50年やっている!という人やカバンの先生をやっています!という人でも会うことが少ない職種を紹介してみましょう。


今回は「漉き割り屋」という職種です。


同じ革でも製品のパーツによって厚みが違います

例えば、財布などでしたら外側部分は1.2mm、内側は0.8mmで作ることがあります。

「表も裏も同じ厚さでいいんちゃう?」

いえいえ、鞄や財布などは表は厚く、裏は薄く作ったほうが全体的に軽く、メリハリがあり美しく作ることができます。

「たかだか0.4mm程度、たいした違いじゃないだろ!」と思いがちですが、革の業界では大きな違いです。

ですが皆さんもご家庭でこれらの厚みがどれだけ違うのかすぐわかる方法があります。

 

厚み0.2mmの大違いを実感してみる

女性の髪の毛と男性の髪の毛、触ってみたらわかりますが男性のほうが明らかに太いとわかります。
では、その太さの違いは、というとわずか0.1から0.2mm程度しかありません。

ほかにもお札1枚で0.1mm、新聞紙を2枚重ねると0.1mm、分厚いカレンダーで0.3mm。

こう考えると0.4mmって結構分厚いものです。

人間の手ってのは優秀ですね。革も1mmと1.2mmを触ってみると明らかに違うことがわかります。


漉き、という作業が革業界ではものすごく重要


じゃあ、革を販売している革屋さんはそれらの厚みをそれぞれで在庫を持っているのか、というとそんなことはありません。

注文を受けて「革1枚を1.3mm、革1枚を2mmに薄くします」「革の半分を0.6mm、残りをそのままで納品」などそれぞれに対して薄くしていきます。

革を薄くする工程を「漉き」と言います。

全体を薄くすることを「割り漉き」や「漉き割り」と呼びますが、「漉き」という一言で終わることも多いです。

「割り漉き」「漉き割り」の違いは東西の違いです。西が漉き割り、という言葉を使います。

この革1枚を薄くしてくれる加工屋=「漉き割り屋」さんですが、日本全国で東京・大阪で数軒、姫路に1軒程度しか存在しません。

おそらく日本全国足しても10軒ないと思います。多分5か6軒。それくらいレアな職種です。

以前撮影してYOUTUBEで紹介した割り漉き屋さんの動画があります。

ぜひ、見てみてください。そのうえでもうちょい詳しく解説していきましょう。


漉きって結局革を削っているの?

違います。

輪っか状の刃物が高速回転しており、その上を滑らせることで革を上と下に分割して薄くしていきます。上の面を銀、下の面を床革と呼びます。

革の世界的にはこの銀の部分がとても価値があります。

銀の部分を均一に、穴をあけることなく、仕上げる漉き工程はとても重要なわけです。

下記の写真で説明するならば上と下部分にベロリと分割されているわけですね。


動画見てみたけど、単に厚み調整して革を送り込んでいるだけじゃないの?

彼らのすごさを解説すると平気で1時間かかります。

それくらい奥が深く、技術を有する仕事です。

簡潔に説明するならば・・・

革、というのは馬や牛、豚による動物種の違いや、ギュッとしまっているタンニン革、ふんわり柔らかいシワありのクロム革など、様々な種類が莫大に存在します。

お願いしている漉割り屋さんは厚み調整のゲージがありません。

大きな大きなハンドルがあるだけです。

ゲージがあったほうが便利じゃないの?


「ゲージはあかん。信用できない。革は安定性に欠ける。表面の張りやなめし方、仕上げにより変わってしまうからゲージは信用できないんや」


この言葉を解説しますと・・・


ギュッと締まっている革の2mmとふんわりとしたシワありの2mmでは同じ革でも密度が異なります。
割り漉き屋さんはそれらの表面の硬さや締まっているかどうか、などを指先の感触で確かめて微調整を行っていきます。

その上で「こっちの革は1枚だけ0.6mm、その次はふんわりとした革を1.2mm」など1枚1枚を瞬時に判断して機械をいじるわけです。

結局は指先の感覚が一番信用できます。


また、革は1枚1枚が形状が異なり、大きさが異なります。

大きい革は1人では到底作業できません。

送る人として最低でも1人、受け取る人として1人が必要となります。

機械があれば誰でもできる、という商売でもないですし、1人では到底できません。

ミスをしたら1枚数万円が消し飛ぶ経済的な危険性。もちろん高速回転する機械ですから物理的な危険もある商売です。


さぞかし工賃お高いんでしょ?

例えば私が働いている会社 フェニックスでは自社の革は400円、他社持ち込みの革でしたら600円となります。

革の基本的な大きさ1枚だろうが、その1/5の大きさだろうが一律です。あれだけの作業をたったの400円で行ってくれるんです、この仕事は。

割り漉き屋さんってのは本来は一定の厚みで大量に作業をしてなんぼ、の商売です。

1日あたり数百枚は作業しないとお給料が出せません。

彼らは本来「この20枚の革を全部一律1.0mmにしてね!」と言われて利益を出す商売です。

「この締まっているタンニン革1枚は1.2mm、このふんわりしたクロム革2枚は0.8mm、ほかにも・・・」という1枚1枚がバラバラな指定を1日20枚以上持ち込むフェニックスみたいな会社は本来割り漉き屋さん的には美味しいお客さんではありません。

ほんとに迷惑をかけているなと頭が下がる思いです


こういうことをすると割り漉き屋さんは怒ります。

私が何回かやってしまった失敗として、ホッチキスを革についたままにしてしまったことがあります。

高速回転している刃物の先端にホッチキスがあたってしまうとカツンっと欠けてしまいます。

ほんとうにわずかな欠けです。1mmあるかないかの世界です。

ですがこれを放置すると「薄くすけているゾーン」と「欠けているためその部分だけ分厚いゾーン」が交互に存在してしまいます。

これは虎模様のように見えるため「トラが出ている」と言われてしまいます。

これは手持ちの革を手持ちの機械で漉いたものですが、裏面に縞模様が出ています。

これがトラ模様ですね。「トラが出ている」といいます。

厚みが均一ではなく、場所により革の厚みが分厚い・薄いが交互に出てしまうわけです。

で、このような事態になると、欠けを治すために割漉き屋さんは欠けていない部分を全部研いで均一の厚みにしてしまいます。

それだけの刃物を浪費してしまい、研ぐ作業で時間がなくなってしまいます。

ほかにもクリップやタグをつけている細い針金なども刃を欠けさせる一因となります。


刃物ってどれくらいで交換するの?

動画の最後付近で刃物交換風景が見られます。

これらはだいたい7日~10日に1回程度交換するそうです。

彼らは常時研ぎながら仕事をしています。動画の中で火花が飛んでいますが、あれは漉きの作業をしながら砥石を当てていることで研ぎ作業も一緒に行っているからです。

もちろん研ぎをケチればその分刃物を買うお金を減らせます。その分儲かりますが、きれいに漉けないと信頼を失ってしまいますし、訂正作業などで時間を浪費してしまいます。

信頼と時間を考えると刃物はガンガンと研いで消費していったほうがいいわけです。


行ってみたい!どこにあるか教えて!

基本的に業者さん向けの専門職種となり、気軽に見学などができる場所でもありません。そのためどこにあるのか、取引できるのか、などのお問い合わせはご遠慮ください。


漉き割り屋さんは皮革業界を支える縁の下の力持ち的な商売です。

以前バスツアーで見学をしましたが、参加者は「これを見たら厚みが0.2mm程度狂っても文句言えませんね」と驚かれていました。

皮革業界はこのような仕事がまだまだたくさんあります。

折を見て紹介していきたいと思いますのでよろしくお願いします。

 

過去の関連blog:



カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

4月からスタートし、大好評! 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」第2弾は、革の鞣しを大阪で学びます。大阪・貝塚の精肉店を描くドキュメンタリー映画、レザーショップ&博物館取材を通して、皮を革にするプロセスとその歴史、海外での状況を皮革のエキスパート 村木さんが徹底解説!


通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしておりますが、この春から人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが加わりました。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介。月1回(担当週は不定期です)の更新をお楽しみに。


次回の「本日は革日和♪」は東京へ出張。「東京レザーフェア」「モノマチ」などの時期に合わせ開催されます。展示販売会、セミナー、ワークショップなど盛りだくさんのプログラムが超充実! くわしくは下記リンク先をチェックしてください。


 「本日は革日和♪


***


「ある精肉店のはなし」という映画がありまして


 - ある精肉店のはなしHP


関西人らしく「毎度です!」の挨拶を定番化しようとしている村木です。月イチ連載「人に話したくなる革の話」をお届けします。東京・浅草の恒例イベント「A-ROUND」で先日、ムラキ主宰「本日は革日和♪」が主催するプログラムとして上記映画の上映会を行いました。

大阪・貝塚のこのお肉屋はちょっと変わっていまして。


子牛を買ってきて育てる「肥育」、大きくなってお肉にする「屠畜」、それを直接販売する「お肉屋」を全部1軒で行っていました。この映画のなかで屠畜からお肉屋店頭に並べるまでをドキュメンタリーで描いています。この作品はDVD化されておらず上映会でしか見られません。


人が来るか不安でしたが、4回上映で80人弱ご参加くださいました。来られたかた、ありがとうございます! 上映の開始前と終了後に「食肉と革の歴史」という内容を短く15分程度お話ししました(普段は「人に話したくなる革の話 ~皮?革?どう違う」など、2時間セミナーも行っています)。今回のエントリでは、セミナーなどでお話する内容をちょろりと書いてみましょう。


革の歴史は食肉の歴史

基本的に革の歴史は、食肉産業との歴史です。


欧州などでは肉が食生活の中心だったため、原材料となる「皮」が出てきました。となると、この皮を「革」にして靴から衣料などに使わないともったいないですね。


例えば、1991年にアルプス氷河で発見された通称アイスマンは、5300年前に生存していたとされています。彼が身にまとっていたのはヤギと羊のコート、ヤギ革のレギンス、クマの毛皮の帽子。羊革の腰布。靴紐は牛革。矢筒は鹿の革。上から下まで全部革でした。当たり前ですがこれらは全部食べたもの、と思われます。食べた以上は使わないともったいないわけですね。


 アイスマンの衣類に使われた動物を特定 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

 アイスマン - Wikipedia


革の鞣しはどんなものがあったのか

食べた後の皮はほっておくと乾燥して固くなります。カッチンカッチンになります。わかりやすいものとして身近にあります。犬のガムと呼ばれているものです。これは皮を乾燥させたものですね。

じゃぁ、ほっておいたらこんなにカチカチになる皮を鞣しによってどう柔らかく、腐らないような「革」にするのか。これは世界の地域によって、さまざまに存在します。


古代エジプトの鞣し

鞣しの初期によく使われていたのはタンニン鞣しです。


渋柿や濃いお茶を飲むと口がキュッーーーーーとなりますね? これらは渋柿やお茶に含まれるタンニン成分の作用です。タンニンにはこのように肉を収縮させる作用=収れん作用があります。この作用のおかげで皮は腐らない革に変化します。エジプトの壁画を見る限りこのタンニンなめしが行われていたんじゃないか、と言われています。


例えばエジプトでは、紀元前に作られた遺跡からは鞣しの風景が書かれた石画が見つかっています。

 エジプトの古代の鞣製技術(テーベン壁画) 澤山 智「鞣製学」より引用

 日本皮革技術協会 皮革の知識 皮のなめし


昔の日本の鞣し

日本ではタンニンなめしがあった、という説となかったという説で分かれています。


確実に行われていた鞣しとしては燻煙鞣し=燻しがあります。木を焼いた煙を当てることで虫を除き腐りづらくします。ただ、これだけだと硬さが残りますので更に脳みそを刷り込む脳漿鞣しという技法も発達しました。今でも甲州印伝などは燻しが使われています。


正倉院の中には今でも聖武天皇が履いていた履物が存在します。こちらは燻しと脳漿鞣しを行った鹿の革が使われていたと言われています。


 衲御礼履(のうのごらいり)

 宝物詳細画面 - 正倉院 - 宮内庁


北海道の地に住んでいたアイヌ民族は鹿や鮭を採って生活していました。で、鹿がある以上革を使います。彼らが行っていたのは煙を使う燻しが行われていました。大阪・吹田 千里万博公園の国立民族学博物館では、鮭革のコートが展示されています。これなども鮭を食べた後の皮を煙で燻して革にしていたと言われています。

 民族学博物館で革の勉強をしてみようpart2 アイヌが使っていた鮭の革: レザークラフト・フェニックス


奈良時代などでは、日本でも革の鎧が存在しました。ここらの話は下記ブログで解説しています。

 革の話をしてみよう:革の鎧の歴史や作り方をダラダラっと紹介: レザークラフト・フェニックス


極寒のアラスカの鞣し

極寒の地のアラスカではどうやって革を鞣していたんでしょうか? アラスカは樹木が少ないため、樹皮もとれずタンニンも取れません。樹木が少ない、ということは火を起こすこともできません。火 が使えないと日本のように燻しも行えません。


アラスカの地域は極寒で農業も牧畜もできませんが、海から魚やアザラシなどが採れます。アザラシからは肉や油が採れます。骨も有効活用し、血液も飲むことで栄養を補給していました。


さて、皮はどうしていたかというと、口鞣し、という珍しい技法で鞣しをしていました。これは固まりそうな皮を口で延々と噛んでいく、という作業です。


 エスキモーと鞣製(澤山 智「鞣製学」より引用)
 日本皮革技術協会 皮革の知識 皮のなめし


このように鞣した革で衣料や舟=カヤックを作ったりしていました。


 シーカヤックの歴史


誰かが食べてくれないと皮は出てこないし、革も作れない。

前述のように革、というのはあくまで食肉産業の副産物でしかありません。肉を食べないと発生しない、という不安定な素材です。


「いや、肉を食べないなんてことないでしょう。安定的な素材じゃないの?」


それがこの日本においてはそうでもなかったんです。


肉食禁止の国、日本の革文化

飛鳥時代の675年。仏教が伝来した際に天武天皇は肉食禁止の令を出しました。「牛羊鶏豚犬」とも「牛羊鶏豚犬」「牛馬犬猿鶏」とも諸説言われています。実際はこっそりと山の民は食べていたり、「ウサギは飛ぶように走るからあれ、鳥だよね? だから食べていいよね」などとこじつけて食べていました。ウサギを今でも「1羽、2羽」と数えるのはその名残と言われています。


肉食の禁止は皮が出てこず、革の供給が少ない、ということです。肉食禁止=革が使えない、というわけでもありません。労働・病死・寿命でなくなった牛や馬などは皮をとり革として使われていました。特に戦国時代などは武具甲冑を作る際に革は重要な素材だったため、革を作る職人は重宝されました。やはり革素材のしなやかさがありつつも頑丈という特性は魅力的です。


戦国時代から下って江戸時代。長崎の出島には、おもしろい資料が残っています。長崎には「出島 dejima」という体験施設があります。ハウステンボスなどに行かれた際には是非行ってみてください。歴史好きにオススメです!

 

 nagasakidejima.jp


こちらなどに行くと出島での主要な貿易品目の一つとして鹿革や鮫革(実際はエイの革)などがあったと記録が残っています。鹿革は羽織や足袋手袋、鎧のパーツなどに使われ、鮫革は刀の柄などに使われていました。


この出島から横浜に居留地ができ、そこから肉を食う文化が広まり始めました。江戸時代の末期にはすき焼きが始まりました。明治維新以降は革の鞣しが始まり、靴工場が作られ、日本における革の産業が本格的に始まったと言えます。


明治維新以降は肉食も普通に行われ、国は肉食を推進し、体をより頑丈かつ健康に、と働きかけました。その際には牛や豚の肉が食され、皮が供給され、革に鞣され、靴や軍人さん用の背嚢(はいのう。リュックサック)やベルト、地図鞄などが作られるようになりました。この時代の鞄などは東京のエース世界の鞄博物館でも見ることができます。


 世界のカバン博物館|エース株式会社 - Ace

 久々に行ったら写真撮影可になっていた世界のカバン博物館&近辺で見ることの出来る革資料やら | phoenix blog


こんな狭い国なのに西と東でも違う

JLIA担当さん

「ムラキさん! 西の人らしく西の情報も書かなきゃだめですよ!」


ん~っと、、、それじゃ更に長くなるけど、食文化の違いが革にも如実に関わる実例あげてみましょうか。うちの実家って父が東京、母が大阪の人間なんですよね。そうすると肉じゃがに豚を入れるか牛を入れるか、すき焼きにはどっちを入れるか、で喧嘩になっていたわけですわ。

「どういうことですか?」

関西人は肉、っていうと「牛!」なんですよ。関東人は肉っていうと「豚!」の文化なんですよね。

で、これは革屋さんにも影響します。


関西の鞄や財布のメーカーさんは豚革っていうと「なんや、豚なんて肉としてはイマイチや!だから革も内側に使うようなものだろ! メインに使うものじゃないだろ」というところが多いです。そうなると豚の革で財布や鞄なんて作りません。結果的に関西の革屋さんってのは豚革の選択肢が少ないです。


東京の鞄や財布のメーカーさんは「豚革? 普段から食べているよ。別にこれで財布や鞄作ってもいいじゃん」と考えます。だから豚の革で財布や鞄を作ります。で、結果的に東京の革屋さんってのは豚革の種類が多いですね。


下記は私が働いている革屋さん「レザークラフトフェニックス」での風景ですが、牛や馬の革はこれくらい選択肢があります。


他方豚の革は選択肢が棚1段分くらいしかないですね。それも裏用の革ばかりです。

「そんなに違いあるものなんですねぇ」

あるんですよ。
まぁ、革屋さんもそれぞれに得意分野が異なりますね。


革を鞣してくれるタンナーさんも兵庫県の姫路市やたつの市には200以上あると言われていますが、豚の鞣しをメインとしているタンナーさんって1割以下だと思います。そのかわり牛や馬の鞣しをするタンナーさんが多いです。それに対して東京のタンナーさんは豚革を得意としているところが多いですね。


結果的に西のタンナーさんは使っている設備が巨大だったりします。


「なんでですか?」


豚よりも牛や馬のほうが大きいからですね。その分大量の水も使いますし、人手もかかっちゃいますね。

さすがに全部のタンナーさんを把握しているわけではないんですが、このように西と東で違いがあります。


突き詰めると、「その地域の人たちが何をよく食べているか」

その後に

「牛をよく食べるならば、牛の皮が出る」>

「だから牛の鞣しを得意とするタンナーさんが増える」>

「だから西の革屋さんは牛や馬が得意で豚は苦手」

となります。

あるいは「西の鞄や財布メーカーは豚革使わない」>

「じゃぁ革屋さんとしても豚革あまり置かないな」となります。


どちらが正しいかは断言できないのですが、食文化の違いが革の扱いにも影響が出ていると言えます。


何度も書くけど革の歴史は食肉の歴史

最初にも書いていましたように革の歴史は食肉の歴史です。みなさんが食べる肉は栄養となり、皮は革になり靴や鞄などに使われています。革の鞣しに興味もたれましたら、過去に書いたアーカイブ(下記リンク)をまた読んでみてくださいな。



関連ブログ:


革の話をしてみよう:なめしって個人でできるの?: レザークラフト・フェニックス

民族学博物館で革の勉強をしてみようpart1 動画資料で皮なめしやらを見る: レザークラフト・フェニックス

革の話をしよう!:マッドマックスの世界で革はどのような意味合いがあるか? | phoenix blog


カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

いつも当ブログをご愛読いただきありがとうございます。

れまで皮革業界のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしてまいりましたが、この春から新コンテンツがスタート。頼もしいサポーター、村木るいさんが加わり、月1回(担当する週は不定期です)、西日本の情報を中心としたエントリを更新します。

村木さんは人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する傍ら、セミナーなど精力的に活動。皮革に関する確かな見識を有し幅広い情報発信に支持が寄せられています。当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介! 初回は国内有数の皮革産地、兵庫・姫路のタンナー見学から・・・ぜひ、ご覧ください。

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ちらのサイトでは、はじめまして。すでにご存じのかたは、関西人らしく「毎度です」で。

大阪の革屋「レザークラフトフェニックス」で働きつつ、普段は請負職人をしています。また、「革がもうちょっと楽しくなる」がコンセプトの「革日和」というイベントを開催。革や靴、鞄の歴史や工法を調べて情報発信もしています。今年度からこちらで「人に話したくなる革の話」をいろいろとご紹介していきます。


先日、「革日和バスツアー」(2018年3月24日)を行いました。姫路駅集合&解散で1日で3社を巡りますが、道中のバスでは、革の歴史や革を作ってくれる「タンナー」さんの実情などを解説しました。今回の「人に話したくなる革の話」は、この「皮と革の違い」から「タンナー」さんについて話してみましょう。


「皮」と「革」は何が違う?

皆さんが食べた肉をと畜する際に副産物として「皮」が取れます。お手持ちの革靴や革鞄は「革」素材です。「皮」も「革」も同じ「かわ」と呼びます。

ですが、意味合いが違います。これらの間には「皮が腐らなくなる工程=鞣し工程」があります。だから、焼き鳥屋にあるのは「鶏皮」。対して皆さんお持ちの鞄は「革鞄」です。漢字の違いで意味は全然異なります。これらの鞣しをするのが「タンナー」さんなわけです。


タンナーさんは日本にどれくらいあるのか?

現在稼働しているタンナーさんは全部あわせておそらく250くらいかと思います。地域で言うならば 栃木に1社、東京・埼玉・和歌山に10社弱。兵庫県の姫路市、たつの市に200以上が存在しています。そう、日本のタンナーの9割が兵庫県に集中しているわけです。


なんでそんなに集中しているの?

諸説ありますが、下記ページではこのように書かれています。


2.播磨の皮鞣(なめ)し─その中心は姫路 | 兵庫県皮革産業の歩み / 皮革の館

  1. 皮なめしをするのにふさわしい市川という穏やかな流水と、広い河原があった。
  2. 西日本では多くの牛が飼われていたので、原料である牛皮の集荷が容易であった。
  3. 瀬戸内海気候の特長として、比較的温暖で雨も少なめの土地であった。天日に干す革晒しに好都合であった。
  4. 皮の保存とか処理に必要な塩の入手も容易であった。
  5. 大阪・京都など政治・経済・消費の中心地と近い関係にあった。

 

じゃぁ鞣しってどんなもの?

大きく分けて、タンニン鞣しとクロム鞣しです。

このふたつを覚えておくだけで人に話したくなります! この記事でここだけ読んでおけば人に話したくなること間違いなしです!( ´∀`)bグッ!


タンニン鞣し

例えば赤ワインなどでタンニンが含まれている、という表現が使われます。「この赤ワインは渋みが強い」という場合はタンニンが含まれています。例えばお茶。濃いお茶などにはタンニンが含まれています。そのため飲むと「渋いな」という言葉が出ますよね。この渋みがタンニンです。

この「タンニン」はそもそも植物が持っていた毒。動物に対して「僕らを食べないで!」というアピールするための毒だったわけです。

この毒が肉に触れると肉が縮む=収縮されます。濃い日本茶や紅茶を飲むと口の中が水分がなくなったようにキューーーっとなる、これがタンニンの作用です。

ですが人類は紀元前にタンニンが含まれている木が浸かった水に生皮を入れて放置しても「おや、腐りづらくなったぞ」と気づいてしまいました。「そうか、木の樹皮を砕いた水に皮を入れておくと腐りづらいんだ!」と気づいたわけです。タンニン鞣しの誕生です!

タンニン鞣しの革の特徴のひとつとして「ギュッと締められているので固く仕上がる」というものです。


クロム鞣し

人類はずっとタンニン鞣しを使ってきました。ですが1890年代。ドイツで開発された鞣し方「クロム鞣し」が画期的でした!

薬剤を入れて巨大なドラムと呼ばれるドラム型洗濯機のような機械に入れてぐるぐるぐるぐるとかき混ぜたら完成! この革はぐるぐるかき混ぜるためタンニン鞣しよりも柔らかく、軽く仕上がります。しかもタンニン鞣しよりも引っ張る力に対して強い、という特性があります。軽く頑丈な革の完成です。


タンニンとクロム、ふたつの鞣し方の違い

このタンニン鞣しとクロム鞣しでは特性が全く異なります。革という素材がおもしろく厄介なのは、この鞣しにより見た目も風合いも硬さも特性も異なります。


タンニン鞣しの特徴

デメリット...水でシミができたり、傷つきやすい。放っておくとタンニンが酸素や紫外線に反応して色が変わってしまう。固く重い。作るのに数か月以上かかる。

メリット...色が変わるからこそ使っていると風合いが変わり、エイジングという現象が生じる。


クロム鞣しの特徴

デメリット...タンニンと違い使っていても風合いは出てこない。
メリット...軽く、しなやかで引張や汚れや水に強い。作るのに1か月以内で済むケースが多い。

同じ「革」といっても鞣しにより性質が全く異なるわけです。


革の世界は千差万別。革屋さんでもわからない

「じゃぁボクが買った~~靴の革はどういう革なの? タンニン? クロム?」「有名鞄ブランドの革はどこのなの?」と言われても全くわかりません。

「えっ!ムラキさんは革屋さんで働いているのに!?」「職人なのに!?」と言われてもわかりません。恐ろしいことに革屋さんやタンナーは、それぞれが異なる革を作り、販売しています。東京や浅草に行けば革屋さんは多数ありますが、その1軒1軒が違う革を扱っています。ここの革屋さんや革の職人さんはあくまで自分たちが扱っている革についてしかわかりません。

当サイトの一般社団法人 日本皮革産業連合会に「手持ちの靴はどういう革なんですか?」と聞かれても答えようがないわけです(´・ω・`)


革の世界はものすごく深くておもしろい

今後このように革の話や靴や鞄の製作技術の話などを解説していきます。革って、すごくおもしろいので聞けば聞くほど、「なるほど、これは人に話したくなるな」という内容でお送りします。「もっと詳しく知りたい」というかたは、私がこれまで書いたブログのアーカイブ(下記のリンク)をご覧ください。

過去の関連ブログ:

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プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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