欧米ブランドに「負けていないぞ!」

April 25, 2018

村木るいさんの「人に話したくなる革の話」姫路&たつので皮革がつくられる理由

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

いつも当ブログをご愛読いただきありがとうございます。

れまで皮革業界のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしてまいりましたが、この春から新コンテンツがスタート。頼もしいサポーター、村木るいさんが加わり、月1回(担当する週は不定期です)、西日本の情報を中心としたエントリを更新します。

村木さんは人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する傍ら、セミナーなど精力的に活動。皮革に関する確かな見識を有し幅広い情報発信に支持が寄せられています。当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介! 初回は国内有数の皮革産地、兵庫・姫路のタンナー見学から・・・ぜひ、ご覧ください。

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ちらのサイトでは、はじめまして。すでにご存じのかたは、関西人らしく「毎度です」で。

大阪の革屋「レザークラフトフェニックス」で働きつつ、普段は請負職人をしています。また、「革がもうちょっと楽しくなる」がコンセプトの「革日和」というイベントを開催。革や靴、鞄の歴史や工法を調べて情報発信もしています。今年度からこちらで「人に話したくなる革の話」をいろいろとご紹介していきます。


先日、「革日和バスツアー」(2018年3月24日)を行いました。姫路駅集合&解散で1日で3社を巡りますが、道中のバスでは、革の歴史や革を作ってくれる「タンナー」さんの実情などを解説しました。今回の「人に話したくなる革の話」は、この「皮と革の違い」から「タンナー」さんについて話してみましょう。


「皮」と「革」は何が違う?

皆さんが食べた肉をと畜する際に副産物として「皮」が取れます。お手持ちの革靴や革鞄は「革」素材です。「皮」も「革」も同じ「かわ」と呼びます。

ですが、意味合いが違います。これらの間には「皮が腐らなくなる工程=鞣し工程」があります。だから、焼き鳥屋にあるのは「鶏皮」。対して皆さんお持ちの鞄は「革鞄」です。漢字の違いで意味は全然異なります。これらの鞣しをするのが「タンナー」さんなわけです。


タンナーさんは日本にどれくらいあるのか?

現在稼働しているタンナーさんは全部あわせておそらく250くらいかと思います。地域で言うならば 栃木に1社、東京・埼玉・和歌山に10社弱。兵庫県の姫路市、たつの市に200以上が存在しています。そう、日本のタンナーの9割が兵庫県に集中しているわけです。


なんでそんなに集中しているの?

諸説ありますが、下記ページではこのように書かれています。


2.播磨の皮鞣(なめ)し─その中心は姫路 | 兵庫県皮革産業の歩み / 皮革の館

  1. 皮なめしをするのにふさわしい市川という穏やかな流水と、広い河原があった。
  2. 西日本では多くの牛が飼われていたので、原料である牛皮の集荷が容易であった。
  3. 瀬戸内海気候の特長として、比較的温暖で雨も少なめの土地であった。天日に干す革晒しに好都合であった。
  4. 皮の保存とか処理に必要な塩の入手も容易であった。
  5. 大阪・京都など政治・経済・消費の中心地と近い関係にあった。

 

じゃぁ鞣しってどんなもの?

大きく分けて、タンニン鞣しとクロム鞣しです。

このふたつを覚えておくだけで人に話したくなります! この記事でここだけ読んでおけば人に話したくなること間違いなしです!( ´∀`)bグッ!


タンニン鞣し

例えば赤ワインなどでタンニンが含まれている、という表現が使われます。「この赤ワインは渋みが強い」という場合はタンニンが含まれています。例えばお茶。濃いお茶などにはタンニンが含まれています。そのため飲むと「渋いな」という言葉が出ますよね。この渋みがタンニンです。

この「タンニン」はそもそも植物が持っていた毒。動物に対して「僕らを食べないで!」というアピールするための毒だったわけです。

この毒が肉に触れると肉が縮む=収縮されます。濃い日本茶や紅茶を飲むと口の中が水分がなくなったようにキューーーっとなる、これがタンニンの作用です。

ですが人類は紀元前にタンニンが含まれている木が浸かった水に生皮を入れて放置しても「おや、腐りづらくなったぞ」と気づいてしまいました。「そうか、木の樹皮を砕いた水に皮を入れておくと腐りづらいんだ!」と気づいたわけです。タンニン鞣しの誕生です!

タンニン鞣しの革の特徴のひとつとして「ギュッと締められているので固く仕上がる」というものです。


クロム鞣し

人類はずっとタンニン鞣しを使ってきました。ですが1890年代。ドイツで開発された鞣し方「クロム鞣し」が画期的でした!

薬剤を入れて巨大なドラムと呼ばれるドラム型洗濯機のような機械に入れてぐるぐるぐるぐるとかき混ぜたら完成! この革はぐるぐるかき混ぜるためタンニン鞣しよりも柔らかく、軽く仕上がります。しかもタンニン鞣しよりも引っ張る力に対して強い、という特性があります。軽く頑丈な革の完成です。


タンニンとクロム、ふたつの鞣し方の違い

このタンニン鞣しとクロム鞣しでは特性が全く異なります。革という素材がおもしろく厄介なのは、この鞣しにより見た目も風合いも硬さも特性も異なります。


タンニン鞣しの特徴

デメリット...水でシミができたり、傷つきやすい。放っておくとタンニンが酸素や紫外線に反応して色が変わってしまう。固く重い。作るのに数か月以上かかる。

メリット...色が変わるからこそ使っていると風合いが変わり、エイジングという現象が生じる。


クロム鞣しの特徴

デメリット...タンニンと違い使っていても風合いは出てこない。
メリット...軽く、しなやかで引張や汚れや水に強い。作るのに1か月以内で済むケースが多い。

同じ「革」といっても鞣しにより性質が全く異なるわけです。


革の世界は千差万別。革屋さんでもわからない

「じゃぁボクが買った~~靴の革はどういう革なの? タンニン? クロム?」「有名鞄ブランドの革はどこのなの?」と言われても全くわかりません。

「えっ!ムラキさんは革屋さんで働いているのに!?」「職人なのに!?」と言われてもわかりません。恐ろしいことに革屋さんやタンナーは、それぞれが異なる革を作り、販売しています。東京や浅草に行けば革屋さんは多数ありますが、その1軒1軒が違う革を扱っています。ここの革屋さんや革の職人さんはあくまで自分たちが扱っている革についてしかわかりません。

当サイトの一般社団法人 日本皮革産業連合会に「手持ちの靴はどういう革なんですか?」と聞かれても答えようがないわけです(´・ω・`)


革の世界はものすごく深くておもしろい

今後このように革の話や靴や鞄の製作技術の話などを解説していきます。革って、すごくおもしろいので聞けば聞くほど、「なるほど、これは人に話したくなるな」という内容でお送りします。「もっと詳しく知りたい」というかたは、私がこれまで書いたブログのアーカイブ(下記のリンク)をご覧ください。

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プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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