欧米ブランドに「負けていないぞ!」

November 28, 2018

村木るいさんの「人に話したくなる革の話」ほんとに日本のタンナーって面白くてすごい。姫路城皮革フェスティバルとひょうご皮革総合フェア&たつの市皮革まつりレポート

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。今回は、「姫路城皮革フェスティバル」と「ひょうご皮革総合フェア&たつの市皮革まつり」をレポート。超充実! 盛りだくさんの内容となっています。来週、12月6日からは「東京レザーフェア」(東京・浅草 都立産業貿易センター)、そして、
TATSUNO LEATHERのPRイベント「PENET」(東京・蔵前 CAMERA)も開催予定です。村木さんのレポートを予習復習としてお役立てください。

通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしておりますが、この春から人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが加わりました。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。
なお、「本日は革日和♪」では、バスツアーなど、さまざまな予定が目白押し! 詳細につきましては、本エントリ文末の近況報告および、下記リンク先をチェックしてください


*  *  *

毎度です!
職人 兼 革材料店 兼 革ブロガー 兼 今月はツアーコンダクターのムラキです。

兵庫県の姫路市とたつの市と隣り合う2つの市にはタンナーさんが100以上存在します。
毎年11月頃には姫路市・たつの市両方で皮革のお祭りが開催されています。
今回両方を訪れましたのでそれぞれの見どころなどを解説してみましょう。

また、同時開催でタンナーバスツアーというものを個人的に開催しているのでその紹介もしてみましょう。

なぜ姫路市たつの市に革を作るタンナーさんが多いのか?

過去にblogで紹介していますのでご覧くださいな。

村木るいさんの「人に話したくなる革の話」姫路&たつので皮革がつくられる理由 | 欧米ブランドに「負けていないぞ !」 | JLIA 日本皮革産業連合会

また、下記サイトでも解説されています。

背景と歴史 - 兵庫県皮革産業協同組合連合会

姫路城皮革フェスティバル2018

10月31日(水)~11月4日(日)には、「姫路城皮革フェスティバル2018」が姫路城の前の公園にて開催されます。

兵庫県皮革産業協同組合連合会による開催となっています。

姫路城皮革フェスティバル2018目玉は

皮革フェスティバルでは姫路市のタンナーさんによる皮革素材の直売が行われています。
販売されている方は実際のタンナーさん自身が行っていますので、それぞれの革の特徴などを聞くこともできます。

当日は革製品の販売もありますが、体験型ワークショップも例年数多く行われています。お子様連れにもぴったりです☆

また、姫路城前公園で行われますので姫路駅から徒歩10分ほど、という行きやすい場所にあります。晴れの日には姫路城がくっきりはっきりと見えます。

同時に姫路を中心に兵庫県下の菓子が集まる「第10回姫路菓子まつり」と、全国30以上の産地から集まった選りすぐりの陶器を販売する「第31回全国陶器市」も同時開催されていました。

 

ひょうご皮革総合フェア&たつの市皮革まつり

11月16日(金)・17日(土)には、「ひょうご皮革総合フェア&たつの市皮革まつり」がたつの市で開催されます。

こちらも大きなイベントとなっています。

ひょうご皮革総合フェア&たつの市皮革まつりの目玉は

屋台が出ており地場の食べ物や農作物なども購入可能です。

もちろんタンナーさんによる革素材の直売も行われています。

ニューレザーコンテンスト、と言われるタンナーさんそれぞれの技術が惜しみなく注ぎ込まれた革素材のコンテストが開催されています。

皮革試験所などによる展示や歴史的な展示も行われています。
下記は昔の革なめしの工程で使われていた工具などの資料展示です。

下記は昨年の様子ですが、リーガルコーポレーションさんによる靴のできるまでの資料展示です。

革製品の販売も行われています。

ニューレザーコンテストはここらが面白い!

たつの市皮革祭りを見に行き、タンナーさんを訪れる、というバスツアーを開催してもう5年ほどになります。

ニューレザーコンテストとは、「加工部門」「我が社の一押し部門」などの各部門にタンナーさんそれぞれが「これは!」と思う品を出展し、賞を与える、というコンテストです。

なぜそんなコンテストがあるのか?

革素材屋にも足を突っ込んでいる立場から言うならば、各タンナーさんが技術を注ぎ込んだ面白い革、というのは革素材屋としてはちょっと仕入れづらいわけです。

「一部の人にしか理解されないほど技術の粋を注ぎ込んだ素晴らしい革」、よりも「需要が高く、無難な革」のほうが販売しやすいからです。
もちろん各革屋さんは「いや、この革は素晴らしいからぜひ売りたい!」と仕入れることもありますが、それ以上に多いのは「今年の流行色やテクスチャーはこういうものだからそれに近い革を作ってもらって仕入れよう」と考えるわけです。

で、このコンテストでは、「革素材屋にアピールする意味合いもあるけど、それ以上にうちの技術をさぁ見てくれ!」というアピールをする場でもあります。

ですので、見ていると「えっ!こんなことできるの!?」というような革も多数展示されています。

展示方法はこのように行われています。

例えば各賞を受賞されるとこのようにズラリと展示されて、「この革は~~のタンナーさんが作りました」と紹介されます。

受賞されなかった革はこのように2Fのテラスにぶら下げて展示されます。

記載されている情報は

・どの部門か
・展示番号
・色落ち検査の結果
・用途

などが書かれています。

「どのタンナーさんが作ったのか」などは書かれていません。
タンナーさんが書かれていないのは審査する時に公平性を保つためです。
審査員が「あ、この革は~~のタンナーさんが作ったのか。それじゃ、ここは昨年受賞したから今年は遠慮してもらおう」などという不公平さをなくすためですね。

また革によっては「販売可能」なども書かれています。
これは「1枚からでも売るよ!」という意味合いではなく、「当社はこういう革が作れますが、ミニマム20枚なり50枚は覚悟してね」という意味です。
入り口で展示番号と出展タンナーさんの住所なども書かれたリストが渡されます。
ですので、革素材屋なり鞄メーカーなり靴メーカーなりは見に行くとすごく面白いかと思います。

ニューレザーコンテストは前知識がないと面白さが半減されてしまう

このたつの皮革祭りを見てタンナーさんを2社巡る、というバスツアーを開催してもう5年ほどとなります。

「タンナーさんを実際に見てみたい!」という人に応えるため、というのもありますが、「ニューレザーコンテストはこういう点が見どころがある」という解説をし、知ってもらいたい、という意味合いもあります。それくらい革製品が好きな方や革製品販売、製作されている方が見ると面白いコンテストとなっています。

その一方で、このコンテストは見方がわからないと面白さが伝わりません。

例えば、、、

下記は「成牛革で我が社の一押し革」部門の徳永剛三製革所さんが作られた革です。
黒の革ですが、手袋用で防水加工を施し、導電性能も与えられています。スマホなどをいじれる手袋を作るには革素材の段階から考えなきゃいけないし、そういう工夫をしているタンナーさんもいる、ということがわかります。

例えば、、、
こちらは「高度加工成牛革」部門で受賞されたアルファレザーさんの革です。
革を作る段階で「表面に傷がある!でも何かしら加工しないと元の牛にも申し訳ないし、これでもお金稼がなきゃいけないし」というB反というものは必ず出ます。生じます。
高度加工成牛革部門とは、それらB反を手間暇かけてどのようにお金に変えるかという技術を見せる、すごく面白い部門です。

その中でもアルファレザーさんは「革の表面=吟面に汚れなり傷があるのはしょうがない。よし、それなら裏表逆に使おう!裏面を2色に染めて金箔をランダムに貼ろう!」というとても手間暇かかっている革です。

革素材屋の立場的に言うならば、「すごく手間暇かかっているし、個人的に好きだけど、素材店で売るには勇気がいるなぁ、これ。。でもすごい!」と思った革です。

例えば、、、

こちらは「高度加工・中小牛・馬・床革・その他革」部門のV.Lナカシマさんが作った革です。
ヌメ革に型押ししてアンチック、メタリックアンチックなど鮮やかに染め、型押しをしています。型押しをした後に凸凹の凸部分のみに金箔を貼っています。そのため写真で伝わらない立体感とキラキラとした鮮やかさと艶やかさが存在します。

と、このような革が50枚以上出展されています。
すべての革はどこで作られたかがわかるようになっています。

これらを見ると、「あぁ、日本のタンナーさんっていろいろな技術もっているんだな!」と感服します。写真ではだめなんです。実際に手に取らないと質感や鮮やかさはわかりません。

これらの革で受賞されたものだけは東京で12月6日(木)・7日(金)に開催される東京レザーフェアでも展示されますので興味ある方はご覧ください。

TLF 東京レザーフェア - 革の展示

受賞された革だけ、ですので、下記のような革が展示されている、はずです。

タンナーバスツアーってどんなもの?

ムラキ個人が開催しているものですが、今回は姫路市花田の新喜皮革さんと高木のオールマイティーさんの2社を訪問しました。

姫路駅集合、姫路駅解散ですので東京や山口の方も参加されていました。

「バスツアーとかあるなら情報ほしい」と思われましたら革日和メールマガジンに登録していただくか、facebookを見ておいてくださいな。

新喜皮革さん

馬革やコードバンで有名な会社さんです。当日は専務自らが解説してくださり、コードバンのグレージング加工(艶出し)も見学させていただきました。

新喜皮革さんは春には工場見学や自社製品展示販売などを行っていられます。

新喜皮革 :

オールマイティーさん

オールマイティーさんは、「1枚からオリジナル革を作ります」というとんでもないタンナーさんです。

レザー素材オリジナル受注生産|姫路の皮革・革素材/タンナー オールマイティ

当日は社長自らがどのように行っているのかを解説していただきました。
イノシシや鹿などの昨今日本列島で問題になっている鳥獣被害からの革の有効活用や、ダチョウなどの革を実際に見ながら解説していただきました。

バスツアーでは「1枚から受注というのはどういう意味か」「こういう点を気をつけて取引しましょう」などの解説も行いました。

日本のタンナーって結構すごい

日本の革の鞣し技術は結構、すごい!、です。
ただ、前述していますように、革素材屋としてはどうしても需要が高い革を優先的に仕入れて販売せざるを得ません。

ニューレザーコンテストにしても各タンナーのリストが手渡され、展示されている革には「販売可能」かどうかも書かれています。
役員の方に「販売可能、って書かれていると革屋さんは嫌な顔しないんですか?」と遠慮なく聞いたところ、「革屋さんが昔ほど買ってくれないからだよ(;´д`)」と言われました。(´・ω・`)

各タンナーさんと直接話しができたり、見聞きできる姫路城皮革フェスティバルやひょうご皮革総合フェア&たつの市皮革まつりは、なかなか貴重な機会ですので興味ある方はぜひ行ってみてくださいな。


プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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