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February 27, 2019

村木るいさんの「人に話したくなる革の話」 沖縄で革の文化・ものづくりを見てきた

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
今回は沖縄探訪編。現地に根差した革の文化とものづくりを探ります。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしておりますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。
イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。
当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

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今年1月に沖縄革日和、というイベントを行いました。

19.01.25(金)革日和 ぷち in沖縄 | 本日は革日和♪

今回は私とサンプル師中村さんによるセミナーのみ。私は展示とセミナーを行いました。

会場は沖縄県立博物館・美術館のレンタルしていただける場所を使わせてもらいました。

沖縄県立博物館・美術館(おきみゅー)


当日お越しいただいた皆さんありがとうございました( ´∀`)bグッ!

で、どこにいようとも革のネタ探しをするのが仕事ですので、フラフラと見に行きました。

首里城に革がない!

沖縄革日和終了後、モノレールで首里城駅からテクテクと見学。

見て驚いたのは城壁の緻密さと美しさ。曲線をここまで形成している城壁は見たことないが、調べてみると沖縄の地は石灰岩が多く、加工が容易とのこと。あぁ、なるほどなぁと納得。あれだけの曲線を描き、隙間なく作るのは通常の岩出は無理だろうなぁ、と。
写真にあるように城壁に角がたっているのは魔除けの意味もあるとか。

で、首里城。歴史的に見たら革は貴重な素材のため、展示されている品の材料に革が使われることはよくある。で、首里城というほどだからどこかしらなり展示する品に革が使われているかな、と見てみるのだが、驚くほど革が使われていない。なんせ写真のように皮弁冠と書きながら革が使われていない。

沖縄には革の文化はないのか?という考察

沖縄の地で革が使われてこなかった理由はいくつか考えられる。

昔から豚やヤギを食べる文化なのだが、料理の源流としては沖縄は中国に近いのかと思われる。そのため豚やヤギを食べる際にも皮まで食べてしまうから、皮から革への利用が行われなかったのかな、と。

また、島国だけあって水が根本的に少ない。台風などは存在していても水を貯蓄できるかどうかは別問題。昔から水不足、というほどではないが、水は貴重で大事にする土地柄だったと思われる。
皮を革にする鞣し工程には莫大な水が必要とされる。牛1頭を鞣すのに現在でも1~2トンの水が使われると言われている。実際、タンナーのそばには大きな河川が存在するのだが、沖縄ではそのレベルの大きな河川が存在しません。

下の写真はモノレール牧志駅前にあるシーサー像ですが、その隣には再生水の説明が書かれていました。

原材料としての皮を食べてしまう&水が貴重。沖縄に革を使う文化が発生していないのはここらが主因かな、と思います。

で。

「ムラキさん、知り合いの知り合いレベルなんですが、沖縄ではハブの鞣しをして製品作っているところもあるんですよ」 
へー、姫路かたつの市あたりで鞣しているのかなぁ
「いえ、そこは自分のところで鞣しもしているとか」
自分で鞣し!?そりゃ俄然面白くなってきたなぁ、ということで訪問。

ハブの革を求めてyu-i FACTORY

首里城後にテクテクテクテクテクテクと30分ほど。「タクシー使えばよかったかな」と思いつつハブの鞣しまでやっている、というyu-i FACTORYへ。

yu-i FACTORY

外から見ても小洒落た店舗、中から見ても小洒落た店舗。ほんとにここで鞣しやっているのかな?とスタッフ金城氏に挨拶。

小洒落ているけど所々に通常ではないようなものがちらほらと。
挨拶した最中にも黙々とハブ革の乾燥工程真っ最中でした。

自分の立場や目的説明が毎回一苦労します。

まぁ、革の材料店舗で働いて、請負職人していて、一種のブロガーで革の歴史など調べていて、と喋ると「で、なに?」となるわなぁ。
なんとかしどろもどろに挨拶させていただき生産工場を見学させてもらえました。

この地で鞄や財布なども全部作っているんですか?

金城さん「もちろんです。自社で裁断から漉き、縫製までやっていますよ」

沖縄の地は風に塩が含まれているので何でも錆びやすいってのはほんと?

「あ、それはほんとです。車は早いですね。幸いにもここの機械はそれほどでもないですが、沖縄はサビに気を使わないと行けないですね」

鞣しも見せてもらっていい?とお願いして見せていただきました。
(工場や鞣しの現場を見せてもらったのは特別に見せていただきましたので誰でもokということではありません)

ハブの原材料、皮はどのように?

「沖縄本島や一部の市町村では駆除の一環で1匹3,000円くらいで買い取ってくれるんですよ。で、生きた状態だったならばハブ酒などに使われるんですけど、住民から買い取るハブは殆どが死んでいる状態です。こうなると使いみちがない、と焼却処分されちゃいますね。で、当社はこれを購入して使っています。」

でも鞣しをなんで自社でやろうと思ったの?

「例えば2015年ならば年間800匹ほど買い取っています」

800匹か、、姫路やたつののタンナーさんにしたらドラムの大きさによるけど、1回で終わる仕事だねぇ。継続的に2か月に1度100匹だけ、なんて言ったら怒られるものなぁ

「全くそのとおりです。
沖縄独自の革をやりたかったんですよね。そうあんるとハブだな、と。
誰もやってくれないならば自社でやるしかないですよね。」

やるのって専用設備回してやっているの?

「そこまででもないです。下の動画でもちょろりと見れますよ。冷凍されたハブを仕入れて、解凍して、皮剥がして骨も取って、ですね。製法確立するのに2年かかりましたよ」

よくやっているなぁ、これ!!冷凍状態はコチコチやねんね

「あ、気をつけてくださいね!冷凍状態でもトゲが刺さると毒はまわりますから」

((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

「またHP上でも解説していますのでぜひ見てみてください」

PROCESS - yu-i FACTORY

一通り挨拶させていただき出立。金城さん、ありがとうございました!

帰りにてくてくと店から歩いていくと、「2」「8」の数字がブラブラと揺れている。下の写真の画面中央部分ですね。

てくてくてくてく、、、、、、、、( ゚д゚)ハッ!8と2でハブか!わかりにくいネタ仕込んでくれるなぁ。

沖縄でもオンリーワンな珍しい会社かと思いますし、ハブの鞣しをやっているところもないと思われますので沖縄にお越しの際は是非に。首里城観光の後にてくてくと歩けばたどり着けます。


プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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