橋本 羅名

僕は23年前にバングラデシュから来日しました。現在は東京の下町、葛飾でバングラデシュ人ではめずらしい?和牛の焼肉店を経営しています。僕の故郷であるバングラデシュという国は最貧国のひとつです。そうなった原因はインドからの独立戦争や政権をめぐる内紛などによるもので、私が生まれた1964年頃が最も苦しかった時期でした。

「今日、何か食べることができたか」といった次元の生活だったので、鞄などは物を入れて持ち歩く袋であって(当然ですが)しっかりしていて丈夫であればよく、靴にしても今、履いているものがボロボロになって穴があくまで履きたおしていたので、そこに数ある有名ブランドの靴や鞄を持つことのステイタスなど入り込む余地などありませんでした。

そんな私が日本に来て、大変驚き、感動したのは日本人の高い技術に裏打ちされた「ものづくり」へのこだわりや、繊細かつ緻密な仕事をする匠の存在。100の受注を受けたらひとつたりとも不良品や欠陥品を出すまいとするその職人魂でした。

今から6年ほど前、当時、千住にあった「リーガル」の革靴工場で年に一度の革靴の直売があると友人に誘われ、私はその時4足ほど革靴を購入しました。その内の2足は今でも履いています。

「吉田カバン(ブランド名 ポーター)」もそうで、その高い品質や技術において日本が世界のマーケットで受け入れられるブランドであることはいうまでもなく、私のように貧しい国で育ち、ひとつの物を修理不可能な状態まで使うことが身にしみついている私が、「ポーター」のブリーフケースを手に入れた時は愛着を持って大切に使おうという思いがさらに強くなったのを記憶しています。

今は、消費者側もふたとおりの選択肢で物選びをしているように思います。価格は安いが靴などは1~2年履けたら良しとする。そこには「安いから」があるのだろうが、とても高い買物になってしまう場合もあります。
私も安価な靴や鞄を購入した時、大切に使用するつもりでも、すぐダメになってしまうのは否めません。革の話から少しそれてしまいますが、エコが叫ばれる今、こういった安い大量生産にすぐ飛びつき、壊れたらすぐ処分するのではなく、「良質な物」を大切にしていく精神も大事なのだと改めて痛感しています。

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