2014年3月19日 の記事
March 19, 2014
「足入れの良い革靴プロジェクト・最終報告シンポジウム」レポート
カテゴリー: 国内革事情
経済産業省と一般社団法人 日本皮革産業連合会(JLIA)が連携し、
推進する「足入れの良い革靴プロジェクト」
最終報告シンポジウムが東京・浅草で3月14日(金)に開催されました。
JLIAは産業技術総合研究所(AIST)
デジタルヒューマン工学研究センター(DHRC)に委託し、
「科学的な証拠に基づく靴型の設計指針づくり」を研究。
「低価格品とブランド品の流入及び 少子化といった
市場環境に対抗すべく、履き心地がよく、
歩きやすく、美しく、靴に起因する足のトラブルが少ない、
<Made in Japan ブランドの革靴>の
確立を目指しています。
独立行政法人産業技術総合研究所
デジタルヒューマン工学研究センターは、
このプロジェクトにおいて
<科学的な証拠に基づく靴型の設計指針づくり>を
2011年度から3年間、
受託研究として担当しました。弊センターでは、
足形状の計測・モデル化技術、
運動の計測・評価技術、心理評価技術を活かして、
日本人の足形状や歩行パターンに適合する
革靴製造のための靴型の研究を進めてきました」と、
独立行政法人 産業技術総合研究所
デジタルヒューマン工学研究センター センター長
持丸 正明さん。
今回のシンポジウムでは、
研究プロセスと成果が詳細に発表されました。
当日、開示された研究データは、こちらで閲覧可能です。
デジタルヒューマン工学研究センター
<http://www.dh.aist.go.jp/jp/dhrc/public_offer/leathershoes_2013/lastreport.php>
革靴のメーカーをはじめ、小売、百貨店など
幅広い業種・職種のジャパンレザー関係者が多数参加。
予想を超える来場者は、関心の高さを
窺うことができます。
というのも、研究・試作だけではなく、実証事業により、
この靴型をベースに試験販売した婦人靴が大好評 !
試験販売を開始して間もなく
記録的ともいえる売り上げを達成しているのです。
三越伊勢丹オリジナルブランド
NUMBER TWENTY-ONE(ナンバートゥエンティーワン)を
生産するメーカーと、
伊勢丹新宿店とのコラボレートを実施。
同店2Fで3月5日(水)から期間限定コーナーを設置
<3月25日(火)まで>。
「Hikari」「Sakura」「Fuji」の
開発された3タイプの靴型のうち「Sakura」のみを販売。
通常、婦人靴は、一週間 一型10足売れるとヒット、
といわれますが、
一週間で一型30足以上を販売 !
パンプスの平均価格 1万7000円よりも高額の
3万3000円と、比較的高価格にもかかわらず、
履きやすく、高品質の日本製のハイヒールは
支持を集め、売り上げにつながることが実証された
うれしいニュースです。
「繊研新聞」(3月14日(金) 2面)でも紹介され、
大きな話題になっています。
「履き心地がよければ、価格が問題にならないことがわかった。
<中略>
お客さまにとって、よい商品が、
日本最高峰の技術で実現することも証明された」と、
三越伊勢丹 松野裕 婦人雑貨第一商品部婦人靴バイヤー
(以上、「繊研新聞」3月14日(金) 2面より)
そんな科学的なデータとファッションがコラボレートして
生まれたパンプスとは ?
「元来、靴型は個人個人の足に合わせて
作成されていた。
しかし、量産社会に点火していくなかで
つくり手や売り手が
強要するものになったしまった。
だからこそ、今ある靴では合わないひとがいる。
この企画は、世の女性たちに
履きやすいと言ってもらえる靴をつくりたい
という思いから始まった」
1. 日本人の足をカバーする
2. 靴をつくりやすくするためではなく、足のために考えた
3. 足底面フラットはNG。立体凹凸カーブがある
4. 約100人に1km歩いてもらって、
疲れない、また欲しくなる靴を目指した
5. クーロン摩擦+ゴム摩擦+掘り起こし摩擦
ひとの足というのは、曲面でできている。
そのカーブは千差万別なので
既製靴だと底面をフラットにせざるを得ないが、
なるべく多くのひとがいいと思える
曲面を探した。
足の裏は、いくつものカーブを描いている。
何度もフィット感を試しながら
その曲線を再現、
隙間のないカーブをつくり上げた。
靴底の厚みが
一般のパンプスより厚め。
その理由は
靴のなかで前すべりを起こして
足の横アーチの形成が
崩れているお客さまが多い。
その対処として
中敷きにクッションをもたせる
靴が多いが
それはいつかへたってしまう。
そのカバーとして
厚みをもたせて負担を軽減している。
(以上、「SHOEPHORIA」SPRING&SUMMER 35ページより)
各メーカー独自の靴型やノウハウにより、追求されてきた
履き心地のよさを科学的に分析・証明し、
基準を制定することで、どのメーカー、どの職人がつくっても
一定の仕上がりになるよう、再現性を追求。
日本の靴づくりと、
その発展に役立つ、布石となりそうです。
開発された靴型(婦人靴/紳士靴)の展示も同時開催。
靴型に基づき製造された革靴を手にとり、
たくさんのかたがたが試履。フィット感を確かめて。
今回の販売事業で得られたユーザー、売り場の声を靴づくりにフィードバック。
今後は、
さらに統一基準の徹底を目指し、認証機関及び
認証マーク制定を視野に入れ、
活動が継続されます。
トクホ(特定保健用食品)のように
<履きやすく、品質が高い日本製の靴>をアピールする
わかりやすい目印が登場する日も近いですね。
前々回更新分でお知らせしましたが、銀座 革のショールーム
TIME & EFFORT(タイム・アンド・エフォート)でも
「女性の足を科学した、美しいハイヒールの展示」を開催中。
こちらでは開発された3タイプの靴型
(「Hikari」「Sakura」「Fuji」)のハイヒール
各サイズ計120足を展示しています。
自由に試履できるので、ぴったりの一足が見つかりますよ。
■ 女性の足を科学した、美しいハイヒールの展示 ■
3月5日(水)~3月25日(火) 開催
12:00 - 20:00(土・日・祝は11:00 - 19:00)営業
東京都中央区銀座8‐5‐4
銀座マジソンビル 1・2F
銀座 革のショールーム TIME & EFFORT
tel. 03-6274-6950
TIME & EFFORT
<http://timeandeffort.jlia.or.jp/>
銀座 革のショールーム TIME&EFFORTで
「女性の足を科学した、美しいハイヒールの展示」ほかプログラム同時開催中 !
(3月5日更新分)
<http://www.jlia.or.jp/enjoy/blog/cat4/20140305>
プロフィール
鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター
東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。
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