2016年12月 の記事
December 28, 2016
「第95回東京レザーフェア」レポート (3)
カテゴリー: トレンド
前回に続き、革と皮革関連資材のトレードショー「第95回東京レザーフェア 2017-18 A/W Collection」レポートの第三弾は、各ブースをご紹介。
リーディングカンパニーとして知られる富田興業では、「Gender Bending」「Glamorus Soul」「NOCTUREN」「Urban Utility」をシーズンテーマに展開。ヨーロッパで注目される日本の革、エコレザーに加え、機能革をフィーチャー。ファッション素材として革素材にも機能性を求める要望が高まっています。
同社では撥水、抗菌、反射に加え、軽量革(ライトウエイト)に注目。軽さを出すために、厚さを薄くする表面仕上げ層を薄くする繊維の絡みを強くするための加脂剤を軽いものにするといった手法をバランスよく設定して強度、風合い、質感を高いレベルで実現。視覚的にも艶感や発色のよさを追求しているそうです。
購買層として見逃せない、アクティブシニア世代の女性たちは、バッグや靴のセレクトポイントとして「軽さ」を重視しています。これまでは、ナイロンなど革以外の素材が求められていましたが、その領域を切り拓くトライアル。時代をとらえた着眼点が秀逸です。
仕上げにこだわるタンナー 山陽では「100BASIC」と題した展示が目をひきました。
同社にとっての基本中の基本。ここから、それぞれのつくり手からのリクエストに応え、革の可能性を追求するそうです。
横軸(レザーの種類)と縦軸(仕上げの方法)でチャートをつくり、微妙な色合いの違いを巧みに表現しています。シンプルなレザーが100通りの仕上がりに。受け継がれた技術の素晴らしさに圧倒されました。
また、レザープロジェクト第一弾として2015年に発表された「絹革」も展示。革が本来、動物の体を包むものだったということを発想の原点とし、カーフに特別なクロム鞣しを施し、布のように柔らかく「包む」ことができる革として開発され、好評です。
日本タンナーズ協会では、次世代PR事業活動の一環として、展示方法を刷新。
コンテストで受賞するなど国内外で高く評価されたレザーをはじめ、各地のタンナーでつくられた皮革素材をそろえ、スタイリッシュに紹介。生産者とその連絡先、特長だけでなく、靴、バッグ、ベルトといった用途なども提示しています。
絞り革(和歌山・和歌山市/藤本安一商店)
希少価値が高い鹿革をベースに、すべて手作業で絞り加工を施し、その後特殊な色付けを施すことにより、従来にない感覚の絞り革に。世界じゅうに絞り技術はありますが、この有松絞りは名古屋地域特有の絞り方法です。
墨流し(兵庫・たつの/岡本製革所)
日本の伝統技法を皮革素材で生かせないか、というテーマで開発。京都・西陣で着物などに用いられていた伝統技法で仕上げられています。
オルガノ II(東京・墨田/福島化学工業)
国内のピッグスキン原皮のなかから10~20%しか出ない、キズが少ない皮革を厳選し、ノンクロム、ノンホルマリンによる環境と人にやさしい製法で仕上げています。黄変しにくく、耐光性に優れており、ホワイトレザーでありながら、日やけなどに強いのも特長です。
生産者とその連絡先、特長だけでなく、靴、バッグ、ベルトといった用途なども提示。革になじみのないアパレル業界関係者にもわかりやすく伝えています。触ることもでき、ジャパンレザーの魅力をよりよく体感できるブースでした。
吉比産業ではポップなテイストのレザーをラインナップ。
美しい発色と独特な立体感が楽しい。TLFトレンドラボラトリーにもピックアップされたため、注目度が高く、アイキャッチに。
学生や若い世代の来場者が数多く立ち寄っていました。
この秋、ファブリックメーカー 小松精錬が、国際見本市「プルミエール・ヴィジョン」にて新世代の素材としてフェイクレザー<KOMATSU レザー>を発表し、国内外で話題に。すでに鞄用途としてヨーロッパのラグジュアリーブランドで採用されている素材もあるとか。
フェイクレザーの評価が高まるなか、問題意識をもち、皮革だからこそできる表現、個性、機能の創造に取り組む つくり手たちが多く頼もしい限りです。さまざまな新しい挑戦、新しい価値を提案する情熱に感激しました! 「脱シンプル」傾向が強まり、トレンドの変化が顕著ないま、パワフルなジャパンレザーの潮流がピンチをチャンスに変えて。さらなる進化に期待が寄せられます。
■ 参考URL ■
東京レザーフェア
<http://tlf.jp>
さて、当ブログは年内の更新は終了し、次回は2017年1月11日からとなります。本年中はご愛読いただき、誠にありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。
December 21, 2016
「第95回東京レザーフェア」レポート (2)
カテゴリー: トレンド
前回に続き、革と皮革関連資材のトレードショー「第95回東京レザーフェア 2017-18 A/W Collection」レポートの第2弾は、レザートレンドをご紹介します。
7F TLF トレンドラボラトリーでは、2017年秋冬シーズンに向けて、グローバルな視座に立ち、日本の華、翳り、水、空などの色彩、そして、風をとらえて鮮やかに、たおやかに素材感を提示。トレンドセレクションとして参加各社の提案を3つのテーマに分類しています。
ベーシックシーン:「伝統を継承する和のニュアンスでカラフルなベーシックを描き出す」
ポップシーン:「弾むような秋冬のポップから―はやわらかく洗練されたイメージの調和」
ニュアンスシーン:「ナチュラルな空気感のニュアンスを軽やかに楽しむ」
それぞれのテーマは・・・
ベーシックシーン:「伝統の継承」
基本に学び、ブラッシュアップ! 今年らしさで未来につなげる「伝統の継承」。革らしさこそ、頼れる素材の決め手。革の表面にあらわれる素材の資質とその個性を堪能したいものです。ヴィンテージ的な表現も見逃せないですね。
「深いグリーン」
2016-17年秋冬からじわじわと頭角をあらわすディープカラー。フォレストグリーンからこっくりとしたオリーブグリーンまで幅広く。
「ナチュラル感を活かすライトブラウン」
2017年春夏シーズン、ブレークが期待されるフォークロアテイストから継続するライトブラウン。「土っぽい」色合いが人気を集めそう。
ポップシーン:「冬にポップ」
やわらかく弾むように革らしさに新鮮さを加える「冬のポップ」。重厚になりがちな秋冬素材にフレッシュさ、軽やかさをプラスする、新味あるポップセンス。ソフトで洗練されたテイストの表現が増えています。
「グラフィカルなアニマル」
「脱シンプル」傾向を強く打ち出す潮流が感じられます。「ファッションの楽しさ」を再確認できるデザインはインパクト抜群ですね。
「軽やかな色・パターン」
2016-17年秋冬、トレンドとなったレオパード柄を中心に、アニマルパターンが進化。多様なバリエーションが登場しています。
ニュアンスシーン:「ニュアンス」
オーソドックスな均衡にしなやかさをプラスする「ニュアンス」。穏やかなナチュラル感、スエードやヌバックのあたたかなタッチ。さまざまなニュアンスの変化をつくり出してくれる色と素材がフィーチャーされました。
「ソフトな布帛のように」
イースト東京・すみだエリアで生産されるピッグスキンは、可塑性の高さが特長。そんなメイドイントーキョーの魅力を詰め込んだレザーは、工夫を凝らした表面効果と軽やかさが表現されています。
「艶感を効かせるブルーのタッチ」
2016年冬から17年春にかけて、テラコッタ、レンガといった暖色系から、寒色系へとシフト。特にパステルブルー、パープルが先行しています。その流れでブルーが再浮上しそうです。大人っぽい艶やかさをまとって。
ポップな色柄、華やぎあふれる色合い・・・。これまでのシンプル&ベーシックのトレンドとは、大きく変化していますね。つくり手たちの想像力・創造力が最大限に生かされたジャパンレザーでファッションがもっともっと楽しくなりそうです。レポートは次回に続きます。
■ 参考URL ■
東京レザーフェア
<http://tlf.jp>
December 14, 2016
「第95回東京レザーフェア」レポート (1)
カテゴリー: 国内革事情
先日もお知らせしました、革と皮革関連資材のトレードショー「第95回東京レザーフェア2017-18 A/W Collection」が、東京・浅草 都立産業貿易センター台東館で12月8日(木)~9日(金)に開催されました。
そのスペシャルコンテンツとして、"次世代を代表する日本のデザイナー"と評価が高い<ミキオサカベ>の坂部三樹郎さんと、出展企業とのコラボレーションプロジェクトが実現。前回の「東京レザーフェア」で行われた公開コンペティションで<株式会社ニッピ・フジタ>、<墨田革漉工業株式会社>、<株式会社コロンブス>の3社が選出。10月22日に披露された<ミキオサカベ> 2017年春夏コレクションに続き、オリジナルレザーファッションショーとしてお披露目されました。
このプロジェクトが進行するなかで、タンナーやファクトリーを見学したという坂部さん。食肉の副産物として生命のバトンをつなぐようにして利活用される皮革。その製造現場を知ることで湧きあがった生命への感謝や畏怖のような想い、真摯な姿勢が作品から伝わります。
コレクションのコンセプトは「ホラー」。クール且つポップに表現しています。死を迎えた後に蘇り、生き生きと踊る、マイケル・ジャクソンの「スリラー」ミュージックビデオに登場するゾンビたちの躍動感を表現したかのような、ユニークなクリエイションですね。
金箔加工を施したレザーにプリーツ加工を施したシャツ、ワンピースほか、多様なデザインを展開。
ルーズさを強調したボトムの腰履き、ゴールドのミニスカートとメンズライクなシャツとの着合わせ、装着部から剣先までの長さを通常よりも極端に伸ばし、ひざ下まで垂らしたベルトなど、スタイリングのバランス感が楽しい。
コレクションの一部には和牛のレザーを使用。「和牛は柔らかくて着やすいし、海外の革よりも和牛の方が安い。(食用の)和牛は世界的にも有名だし革もブランドとして価値があるのではないか」と坂部さん(「Fashionsnap.com」12月8日更新分より)。既成概念を打ち砕く発想とアプローチがとても新鮮でした。
東都製靴工業協同組合が出展するブース<ニッポンバリュー>ではデコレーター細貝泉さんとコラボレーション。
細貝さんが手がけるリメイクフラワー<パコス>による、アート的なインスタレーションが素敵でした。
<パコス>は結婚式で使用されたり、役目を終えた花を回収してアップサイクル。生命を吹き込み、蘇らせています。<ニッポンバリュー>出展メーカーが生産過程において生じてしまう端革やパーツを大胆にコーディネート。
これまでにないアプローチにより、ジャパンレザーの新たな風が吹き込み、皮革業界の活性化のきっかけになりそうです。レポートは次回に続きます。
■ 参考URL ■
東京レザーフェア
<http://tlf.jp>
December 7, 2016
「ジャパン・クリエーション 2017」レポート(2)
カテゴリー: トレンド
前回に続き、繊維総合見本市「ジャパン・クリエーション 2017」のレポートをお届けします。
11月29日(火)、30日(水)の2日間、東京・丸の内 東京国際フォーラムで行われ、407社が2017年~18年秋冬向けの素材を発表。素材だけでなく、製品ブースもあり、その存在感が際立ちます。
東京皮革製品展示会実行委員会による「東京レザー&グッズエキシビジョン 2017」にも多くの来場者が立ち寄りました。東京皮革製品展示会実行委員会は、東京の皮革・革製品産業のいまと未来を伝えるべく発足。「ジャパン・クリエーション 2017」に継続的に出展し、「メイドイン東京」を発信しています。
<フルグレイン>は<上質なナチュラル>をベースとしたものづくりが人気。来春のトレンドカラー サックスブルーが目をひきました。
バリエーション豊富な素材づかい、デザインで40年以上、日本製レディスベルトを手がける<高梨>。OEMではスピーディーな対応が好評です。
東日本ハンドバッグ工業組合では野村製作所が出展。ロングヒット中のお財布ポーチなど、財布、革小物がズラリ。「時代の変化にいかに対応するか。メイド・イン・ジャパンであるということは責任の所在も明確になりますし、国産を強化しようとしています」と野村製作所 大泉和也さん(「繊研新聞」11月16日7面より)。
また、東日本ハンドバッグ工業組合の有志による新通販サイト<KAWANOWA(カワノワ)>がこの夏始動。<オトナと革のいい関係>を提案し上質なバッグ、革小物を紹介。参加各メーカーのブログも次々に更新され、革好きのユーザーに人気を集めています。現在、クリスマスギフト特集も公開中。こちらも要注目です。
金具メーカー<上白石>は真鍮金具を中心に展開。その表情はレザーとともに豊かな経年変化が楽しめますね。熟練職人の手仕事により仕上げられ、大量生産品にはない、ぬくもりが漂います。
<KNOT>は実際に使用されている道具とともに展示。ものづくりの魅力がさらに伝わりますね。
「伝統の力に加えて、たゆみなく進化を続けることで生まれた高い付加価値により、国際的な見地からも高い評価を受けている<東京皮革産業>の現在をシンボライズする多彩な旬の製品を提案します。時代の感性やファッション性に加えて、品質・耐久性などにも気配りのなされた逸品の数々は、ご来場いただいた皆さまのご期待にお応えできるものとなっています」と、東京皮革製品展示会実行委員会委員長 依田光展さん(ナース鞄工 社長)。(「繊研新聞」11月16日6面より)
国産回帰の流れ、そのニーズにしっかりと対応してきた東京のものづくり、その自信と誇りが感じられました。2020年東京オリンピックへ向け、<体験型消費>に注目が集まるなか、歴史的背景、立地特性を生かした新たな提案が楽しみですね。
■ 参考URL ■
JFW JAPAN CREATION 2017
<http://www.japancreation.com/>
プロフィール
鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター
東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。
最近のブログ記事
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