2017年12月27日 の記事
December 27, 2017
「第97回 東京レザーフェア」レポート (3)
カテゴリー: トレンド
「第97回 東京レザーフェア」レポート、最終回は「極めのいち素材」コーナーからご紹介。イマジネーションと技術が織りなす、素材(皮革と布帛)・副資材(機能性素材やパーツ)など各社渾身の一点を提案。恒例の人気投票を行いました。
1位:富田興業
/クールレザー
日本伝統の白鞣し技法をアップデートした究極のホワイトレザー。
2位:坂本商店<兵庫県皮革産業協同組合連合会>
/黒桟革「極・杜若(カキツバタ)」
漆で仕上げた後さらに染色(二度染め)を施し、より深い神秘的な輝きを表現。
3位:フジトウ商事
/本ヌメ柿渋染め
日本古来の天然素材、柿渋を100%植物タンニン鞣し革に、熟練の職人が丁寧に手塗り染色を施したラグジュアリーなレザー。
そして、今回は・・・。
1位:相川商事/Fluffy Pursuit of Lightness 軽さの追求
古き良き日本の技術と新たな技術を組み合わせることで生まれた革。革本来の持ち味を生かすことで軽さを追求し、個性を表現。
2位:碓井/ディアライク
牛革を如何にディア革に近づけることが出来るか?を目的に開発。柔らかさ、軽さにも注力しています。
3位:フジトウ商事/ACT1 Next Generation
テーマは「ナチュラルだけど機能性」。相反する特性を融合させています。染料仕上げで革本来の自然な風合いと、しっとりしたタッチ感を残したまま高い防水性を有しているのがスゴイですね。
「繊研新聞」(12月26日7面)によると「革本来の風合いに立ち返った提案が増えてきた。この数年で牛革原皮の輸入が難しくなり、加工を重ねた意匠素材のバリエーションを強化する傾向にあったが、ベーシックな素材が手薄になっていたことを背景に、質のよさを感じさせる革をそろえ、マーケットの活性化につなげようとする企業が目立った」。今回の人気投票の結果ともリンクしていますね。革らしさ、機能性などの新しさをプラスしたものが支持を集めました。
*
ほかにも気になるレザーをピックアップ。
久保柳商店/麻 落 水
徳島県の阿波和紙と豚の生皮のハイブリッド。シースルー素材の組合せがポイント。
富田興業/レザーツイード2018
レザーを主体にウール、コットン、レイヨン等を織り合わせ、新しい素材感を表現。これまでにないアプロ―チが新鮮ですね。
坂本商店<兵庫県皮革産業協同組合連合会>/藍染め ダメージ革
藍の染めムラとぼかし効果によって、革本来のキズやシミ、擦れが程良い、ダメージ革に仕上がりました。「キズも含めてデザインに取り入れて、製品になった後も愛でて欲しい」という想いが込められて。
<兵庫県皮革産業協同組合連合会>ブースで坂本社長ご夫妻と、由利 佳一郎さんに写真を撮らせていただきました。
海外での評価も高い二組がまた斬新な企画を立てているんでしょうか? 楽しみです。
日本タンナーズ協会のブースでは、恒例の展示。各地のタンナーか仕上げ技術、加工技術に優れた選りすぐりのレザーがそろいます。
新喜皮革のアンティーク調メッシュは植物タンニンなめしの馬ヌメの下地をひも状にして織った後仕上げ。さらに手染め、カゼイントップの色止めプレス艶出し加工も施されて。
このほか、絞りや姫革友禅など、多様な技法と、その解説をわかりやすく提示。
絵画のように鑑賞したくなるギャラリー的な展示スタイルがひと際存在感を放っていました。
東京都、東京製革業産地振興協議会「TOKYO LEATHER」では最新トレンドを発信。「シンプル:革のベーシックが際立つ」、「精緻な加工技術:多彩な風合のバリエーション」、「新しい装飾性:色×プリント×光沢」、「トレンド力:色/光沢/タッチ」の4カテゴリーで展開しました。
カラーバリエーションはもちろん、艶感、ムラ染め、アート感覚の柄、防水加工などで各社が個性を競います。ピッグスキンの可塑性の高さをフィーチャーした豊かな表現も魅力です。
イースト東京・すみだエリア周辺で生まれたピッグスキンは、国内生産の約90%のシェアを獲得。国内で自給することができるため、見直されています。靴のライニング(裏地)に用いられることでも知られている通り、通気性が特徴。放熱性を重視するスマートフォン関連アイテムとのマッチングにも注目が集まります。
また、東京スカイツリー周辺のイースト東京エリアを拠点とした店舗、ブランドは台湾を中心とした中華圏、アジアのユーザーからの人気も根強く、年数回の旅行でまとめ買いする、というスタイルが増加。リピート率、買い上げ点数が多く、SNSでも好反応・・・とアジアとは もはやボーダレスに。越境ECでの取り扱い拡大、現地進出も期待されています。
駆け足で会場をまわらせていただくと、牛革原皮の不足傾向にある現状を鑑みた試みを引き続き拝見できました。キズなどもそのまま生かした革らしい表現をはじめ、さまざまな加工技術と生命の証である皮革をムダなく使う愛情、つくり手の皆さんによる意欲的な創意工夫が素晴らしかったです。
今年を振り返ると、メルカリを中心としたフリマアプリの急速な普及により、実店舗だけでなく、ECモールの売り上げも鈍化したとの観測もあります。気軽に中古品を売り買いできる時代、短期的な所有では満足できない、身のまわり品としての存在意義が重視されるのかもしれません。ものづくりの背景、長く愛着したくなる付加価値、経年変化する特性など、日本製革製品の魅力を改めて訴求し、ユーザーの皆さんの心に響くように、気を引き締めて取り組みたい、と強く思いました。
さて、2017年の更新は今回で終了です。一年ご愛読いただき、ありがとうございます。2018年は1月10日からスタートです。来年もどうぞよろしくお願いいたします。
■ 参考URL ■
第97回 東京レザーフェア
プロフィール
鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター
東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。
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