欧米ブランドに「負けていないぞ!」

2018年12月 の記事

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。今回は、革業界周辺の職業紹介シリーズ「漉き屋」さんの仕事をご紹介。革小物、特に財布づくりに欠かせない、縁の下の力持ち。財布はパーツ、工程数が多いアイテムですが、その仕上がりをよりよくするためになくてはならないプロセスを担っています。

冬至、クリスマスが終わると、迎春ムード一色。「成人の日」のお祝いなどを探すかたのご来店で、財布売り場が活気づく時季ですね。
つくり手、つかい手のかたはもちろん、販売スタッフの皆さんにもご覧いただきたい内容です。製品づくり、手仕事をご理解いただくことで、よりよくおすすめしていただけると思います。

通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしておりますが、この春から人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが加わりました。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。
なお、「本日は革日和♪」につきましては、下記リンク先をチェックしてください


なお、年内の更新は今回で終了です。新年は1月9日からスタートします。一年、ご愛読いただき、ありがとうございます。2019年もどうぞよろしくお願いいたします。

*  *  *

毎度です!めっきりと寒くなりました。1か月に1回のお約束、「人に話したくなる革の話」です。

村木るいさんの「人に話したくなる革の話」 | 欧米ブランドに「負けていないぞ !」 | JLIA 日本皮革産業連合会

さて、ここ数か月はタンナー話が続きました。
以前から書いていた「革業界周辺の職業紹介」シリーズも、残りはもう「漉き屋」と「刃型屋」の2つです。どちらを紹介しようかなぁ

「ムラキさん、春になると春財布ということで財布の需要が高まります。ですので漉きと財布の話をしていただけるとありがたいですね」

あぁ、なるほど。そらごもっともですわ。

それでは今回は革業界にはなくてはならない「漉き」という工程と、それを専門とする「漉き屋」という仕事を紹介しましょう。


漉きという工程

布をやっている人からみて革という素材はどうしてもハードルが高く感じられます。
値段が高い・切り売りしてもらえない・流れが複雑などもあります。その中でも、この「漉き」という工程は布業界の人が聞くと「えっ!そんなめんどくさいことしているの、革の世界は!」と驚かれることがよくあります。

どういう工程か?

革は厚みがあり、パシッとした張りがあります。
そのため端っこや真ん中部分の厚みを薄くすることで曲げやすくしてあげる工程。これが「漉き」です。

以前見た漉き割りとは違うの?

以前こちらのblogでも紹介した「漉き割り」とはまた違う工程となります。

村木るいさんの「人に話したくなる革の話」 革を薄くする仕事「漉き割り」の世界 | 欧米ブランドに「負けていないぞ !」 | JLIA 日本皮革産業連合会

漉き割=全体を均一に薄くする
漉き=端っこや真ん中などを均一、もしくはイビツに薄くする

どうやるの?

高速回転している刃に入れることで上と下に分割します。

手では出来ないの?

機械でやるほうが早く、美しくできます。

漉きに違いがあるの?

漉きに使う機械を「漉き機」と言います。新品で購入しても30万円ほどで揃うのですが、こちらの品は「買えば全部できるよ」というものでもありません。

漉きの工程にはさまざまな種類が存在し、それぞれに見合ったアタッチメント=「押さえ」を使い、革に合わせて漉き機の微調整が必要となります。

(鞄・ハンドバッグ・小物 標準用語集より)


(動画あり)「鞄・ハンドバッグ・小物 標準用語集 」: レザークラフト・フェニックス

ベタ漉き...全体を均一に薄くします。


ヘリ漉き...ヘリ返し、と呼ばれる鞄や靴に多用される革の端っこ部分を薄くします。


ヘリ下漉き...ナナメ漉き、とも呼びます。バッグや袋物で内縫いをしてグルンとひっくり返す際に使います。


折れ漉き・溝漉き...中漉きとも呼ばれ、財布の外側部分の真ん中などに多用されます。これによりスムーズに曲がります。

例えば斜め漉き

上記写真で書かれている「ヘリ下漉き(別称:ナゾエ漉き)」ですが、私は普段は斜め漉きと呼んでいます。見た目通りナナメに薄く削ぎ落として薄くしています。

この斜め漉きは内縫いのハンドバッグや財布などに多様されます。
内縫いは2枚のパーツを表で貼り合わせて縫う。くるっと表にひっくり返します。単純な工程ですね。

が、革の場合は厚みと革の表面の張りやコシがあります。
ナナメ漉きをすることで内縫いをひっくり返しやすくします。

下記に2種試してみました。

・漉きをしていないもの
・端の厚み 0.5mm ナナメの幅が15mm

の2種です。
これを内縫いしてひっくり返した写真を見てましょう。

漉きをしていないものは論外ですね。
カーブがきれいに出ていません。

それに対してナナメ漉きをしたパーツは緩やかなカーブを形成しています。

このような緩やかなカーブを出すためにもナナメ漉きは重要な工程なわけです。

毎回同じ結果が出るとは限らないのが漉きという工程

問題はこのナナメ漉きという工程は非常に再現性が難しいということです。

今回使った革は合成タンニン鞣しの1.6mmの革を使いました。
が、これが鞣しや厚み、革を購入した会社が異なると、漉きを同じ設定でしたとしても、バッグにした際に同じカーブが出るとは限りません。
さらに言うなら、同じ革を購入していても春購入したものと秋購入したものでは微妙に革のコシと張りが変わる可能性があります。

毎回同じようなカーブを再現できるとは限らないわけです。

「えっ!安定性がないの!?」

そう、革という素材は品質も供給も全く安定性がないんですよ!
前回と同じ設定なんだから同じ漉きができて、バッグのカーブも同じカーブができるなんて保証は一切無い。それが革という素材の面白くて恐ろしいところです。

ここらの素材の安定性がない、という話は過去にも裁断師の話で紹介しています。

2018年7月25日の記事 | 欧米ブランドに「負けていないぞ !」 | JLIA 日本皮革産業連合会

これらの素材の不安定性さを見極めた上で、技術を必要とするのが漉きという工程です。

「そんなに難しいんですか。じゃぁどうすればいいんですか!」

そのために存在するのが今回ご紹介する漉き屋さんです。

漉き屋という仕事

漉き屋さんはこの「部分的な漉きをやる」というのがメインな仕事です。
サブの仕事としてはバンドマシンを使った幅20cm程度までの漉き割りも行います。

漉き屋という加工屋はどれくらいの数存在するのか

人づてに色々聞いていますが、東京と大阪あわせておそらく20件弱と思われます。兵庫県でおそらく数件。他の地域は難しいですね。

漉き屋という仕事は加工業です。言い方悪いですが、自分たち自身で商品を作るのではなく、商品を作っているメーカーさんから「漉き」の仕事だけをもらってお金を稼ぐ加工業です。

加工業は仕事を取ってくるメーカーさんのそばで仕事をしないとお金は稼げません。靴やカバンなどのメーカーがない地域では商売がしづらいわけです。

仮にこのblogを読んだ人が「よぅし、僕は漉きの仕事を極めて、故郷の札幌or沖縄なりで加工業をやるぞ!」と思っても、稼ぐのは難しいわけですね。

漉き機という仕事で家族を養う

漉き機という機械ですが30万円程度で新品を購入可能です。
この機械だけでも昔は家族を養えました。現在はこれ以外にもバンドマシンという機械がないとちょっと生きづらいですね。

漉き屋という機械1台購入で終わる、という仕事でもない

漉きという工程は前述しているナナメ漉きやヘリ漉きなどがありますが、機械に装着するアタッチメント=押さえは長さが異なる基本的な4種類ほどしかありません。

これを漉き屋さんは自分たちでグライダーで削って加工します。
望んだ形状にするために4種の押さえで漉き加工は可能ですが、「いちいち手作業するよりも押さえを加工したほうが手間かかるけど、安定性を維持できる」と判断したならば押さえを削っていきます。

このようにして加工した押さえが何十個もあるわけです。

「どのようにすれば望んだ形状になる」という知識と技術、両方がなければ美しい漉きはできないわけです。

漉きが一番細かい業界は財布業界

革業界の中でもこの漉きが一番細かいのは財布業界です。
カバンなどは大きいので、1mmなり2mmなり寸法が狂っていても色々な箇所で微調整や修正ができます。靴はカバンほど大きくないのですが、吊り込み工程で木型に合わせる、という作業ができますので1mmなり2mm程度の誤差は微調整が可能です。

財布はカバンと違い小さいため、微妙な誤差が目立ちます。また、靴のように吊り込み工程で木型に沿わせることができないので微調整がしづらいわけです。

「そんな1mm程度のズレなんてたいしたことないだろ?」と思われがちですが、ぶっちゃけ、一般消費者でも財布の1mmのズレは気づきます。

例えば下記写真は財布を作っている最中のパーツです。カードを入れる部分を「見込み」、土台部分を「カード台」といいますが、この見込みとカード台が3枚重ねる際に1mmナナメにずれただけで消費者は気づきます。0.5mm狂うと作り手は気づきます。人間の目ってのは結構優秀です。

漉き工程はこのような0.5mmのズレを許さない財布業界ではとても重要な工程となります。

春財布ってなに?

3月なり4月の春のシーズンに財布を買うと「お財布がパンパンに張るほどお金がはいる」という縁起担ぎですね。メーカーさんにもよりますが、今の時期くらいから春に向けて財布メーカーさんは忙しくなりますね。

漉き屋さん、行ってみたい!どこにあるか教えて!

基本的に業者さん向けの専門職種となり、気軽に見学などができる場所でもありません。そのためどこにあるのか、取引できるのか、などのお問い合わせはご遠慮ください。

漉き屋さんも皮革業界を支える縁の下の力持ち的な商売です。

皮革業界はこのような加工職種が多数存在する業界です。
専門職種ですし、現存数も少ない職種のため目立たないといや目立たない仕事ですが、なくてはならない仕事となっています。


カテゴリー: トレンド

前回に続き、「第99回 東京レザーフェア」レポートをお届けします。<TLF Trend Laboratory>でお披露目される恒例企画「極めのいち素材」が好評!
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協同組合 資材連からのメッセージは、「感性と機能、そして使い込める道具として、人との親和性を誇る。その素材力を信じる。クリエイションに刺激を与え、使う人に寄り添いたい。24社が開発した渾身の一点です」。
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それぞれの自信作を展示するとともに来場者による人気投票を行いました。こちらは、前回「第98回 東京レザーフェア」の上位入賞作品です。

1位:フジトウ商事(株)/オルフェ
2位:富田興業(株)/とろけるピッグスキン
3位:(株)協進エル/アスコット

革本来の持ち味、風合いを生かしながらも、時代に合わせアップデートされた、新しい付加価値が評価されたようです。
そして、今回の展示素材からピックアップしました。

相川商事(株)/Grain
「ここまでの"プリっと立った"シボを見たことがあるでしょうか? 栄養を十分に含んだ大麦の穂のように」<相川商事(株)>
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厳選した国内原皮を使用したタンニンなめしの革に、ウォッシュ加工、焦がしなどをプラス。さまざまななプロセスにより、日本伝統の技術を盛り込んでいます。

(株)碓井 /インディゴポニーレザー
「インディゴ、ネイビーの染料を併用して色合わせしている完全素上げです」<(株)碓井>
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ポニーの特長のひとつ、「軽さ」「柔らかさ」を表現。ジャパンブルーがさらに魅力を添えています。

カドヤ商店<兵庫県皮革産業協同組合連合会>/タンニンなめし小馬革
「あえて馬革独特の天然のシワやキズ、たてがみの痕などを隠すことなくタンニンなめしで仕上げています」<カドヤ商店
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「じゃじゃ馬」「暴れ馬」といった表現があるように馬革はなかなかワイルド。近年はそんな特性を生かす流れです。個体差を楽しみ、愛でるユーザーさんが増えてくださるとうれしいですね。

吉比産業(株)東京支店/イグナー
「できるだけ革のよさを消さないよう、染料のみで仕上げました。使うひとの生活に溶け込み、愛着のあるアイテムになるでしょう。ふと気がつけば、いつもあなたのそばにはイグナーがいますよ~」<吉比産業(株)東京支店>
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オイルを塗りこみ、ソフト感を引き出しています。しっくりと手のひらに馴染むコンパクト財布など、革小物にぴったり。

富田興業(株)/フレンチキップ
「牛革では世界最高といわれるフランス産のカーフ(キップ)をグレージング(めのう磨き)で仕上げた本格的なボックスカーフです」<富田興業(株)>
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日本国内の熟練職人たちの手わざが息づき、独自のエレガンスが漂います。シンプルなデザインで上質感を引き立ててほしい一枚です。

(株)ストック小島/ユーロBF
「日本原皮を使用した植物タンニンなめし革です。オイル仕上げとワックス仕上げの融合を生かした素材になっています」<ストック小島>
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使い込むほどに深まる味わいと奥行きのある色合いを追求した逸品。革好きの男性ユーザーに人気を集めそうです。

(株)久保柳商店/Botanical Sakura
「同じ色には二度と出会うことがありません。それも草木染めの魅力のひとつでしょう」<(株)久保柳商店>
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原料となる植物、木は2週間で色が変わってしまうそう。プロセスや工房、手仕事・・・複雑な組み合わせも影響し、同じ色には二度と出会うことがないのだとか。そんな草木染めによる さくら色は繊細でたおやか。持つひとの内面を反映するようなフェミニンなデザインに。

墨田革漉興業(株)<東京製革業産地振興協議会>/晩秋の比叡
「晩秋の比叡の山々と平安時代を頭に描き、イメージの表現を試みました。素材は地元産ピッグスキンを用いています」<墨田革漉興業(株)>
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ハンドバッグ、和装小物だけでなく、海外からの観光客、海外へ赴任するビジネスパーソンやご家族のかたに向けた製品開発にも。日本の美への共感とその広がりを期待したいですね。

フジトウ商事(株)/アルト
「原皮から仕上げまですべて国産にこだわったオールジャパンレザーです。ヌメ本来の味わい、ムラ感や質感を大切にし、あえて武骨な風合いを表現しました」<フジトウ商事(株)>
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紅に染め上げたスムースレザー。経年変化しやすく、独特のツヤ感でエイジングを楽しめそう。サンプルの帽子も存在感があり、目をひきます。

ミツワ産業(株)/ナディア
「日本で欠かすことができない防水革。そこに焦点をあて、フッ素が入っていない薬品を使用することで、ひとや環境にやさしい素材を目指しました」<ミツワ産業(株)>
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年々、豪雨による被害が深刻化するなか、防水加工は標準的なスペックへと拡大していきそうです。防水加工が施されたレザーというとマット、という印象がありますが、こちらはムラ感が際立ちます。フェスやアウトドア向けのサコッシュなどにも。

(株)ミヤツグ/ブラウニー
「セミアリニン仕上げの型押しですが、均一になりすぎないシボ感を出すことにより、革のよい風合いを実現しています」<(株)ミヤツグ>
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革小物からバッグ、スニーカーまで幅広く使える万能レザー。2019年注目のサックスブルーも新鮮ですね。

インバウンド需要をはじめ、2019年秋に実施予定の消費税増税にともなう駆け込み需要、2020年の東京オリンピックなどをとらえ、「革らしさ」「日本らしさ」「時代性」を意識した素材がそろいました。製品、ユーザーなども想定された提案も続々と。日本の革のものづくり、進化していますね!
ジャパンレザーだから実現できる加工、体感できる表現、クオリティーとバリエーションのさらなる充実にご期待ください。

当ブログでの「東京レザーフェア」レポートは、今回で終了ですが、引き続き、一般社団法人 日本皮革産業連合会フェイスブックで会場スナップをお届けいたします。
恒例のコラボレーション企画、ファッションショーについても投稿予定です。どうぞ、お楽しみに。

■ 参考URL ■
 東京レザーフェア
 <http://tlf.jp/>
 一般社団法人 日本皮革産業連合会フェイスブック

カテゴリー: トレンド

国内最大規模のレザートレードショー「東京レザーフェア」が12月6日(木)から2日間、東京・浅草 都立産業貿易センター 台東館で行われました。
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「東京レザーフェア」は、新たなマテリアルの提案及びトレンド情報の発信をするトレードショーとしてクリエイターに刺激を与え、創作意欲の向上、皮革の需要の拡大及び業界の発展につながることを目的に開催。2019年-20年秋冬コレクションをひと足早く提案しました。まずは「トレンドラボラトリー」をレポートします。

各出展社の自信作をピックアップし、集積・編集する東京レザーフェア発「トレンドラボラトリー」から最新情報をご紹介。同ブース ディレクションご担当 ジャルフィック 池田さん、岡村さんにお話を伺いました。
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2019年-20年秋冬のカラートレンドは「インスピレーションでアップデートする」。

シンプルに美しい色であることが、インスピレーションを刺激し新しい感動をつくり出します。濃密+カラフル+グラデーション、そして響きあうハーモニー。これまでになかった色彩世界が素材を進化させ商品をアップデート! 4つのカラーパレットで提示しています。

パレット:1
「冬のリッチなカラフル感」
情感のあるデジタルデトックスなカラー

パレット:2
「ドラマチックなブルーノート」
偏光するブルーの階調

パレット:3
「鮮やかに透明なレッドノート」
華やかな革色の期待に応える色相

パレット:4
「基軸となる文脈」
カラフルな色調の奥行きをつくり出すニュートラル

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レザートレンドは、こちらの3テーマ。

テーマ:1
「リッチなポップ感」
「秋冬らしさにとらわれない軽やかさとカラフル感。自然を抽象化したデジタルデトックスなカラー展開がポイントです。ナチュラルな革感を生かすリッチなポップ感覚で、コンテンポラリーなベーシックを標榜。自由でスポーティーなファッションを示唆する展開となっています」(ジャルフィック 池田さん、岡村さん)

ナチュラルをベースに鮮やかさを探求した素材感、革らしさが生きた本質的な装飾性、とともにピンクが注目されています。女性の自立した生き方を象徴するようなピンク。甘口×きれいめではなく、カジュアルでパワフルに。
パントンが発表した2019年「カラー・オブ・ザ・イヤー(Color of the Year)」の「Living Coral(リビングコーラル)」。サンゴのような色合いが楽観的なマインドと楽しさの追求への人々のニーズを具現化しているそう。
イエローも継続。「プルミエールビジョン」(2019年春夏)でも提示されたピスタチオはここでも。クールかつ知的なニュアンスをプラスして。また、コニャックブラウンなど黄味の強いブラウン ~ ベージュも浮上。

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「色に弾みをつけるピンク」

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「光のイエロー」

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「ボタニカルな調和のブラウン」

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「鮮やかなブリックレッド」

テーマ:2
「クールにドラマチック」
「中性色ならではの静けさを鮮やかに展開。静謐さにコントロールされたブルーとグリーンの調和。偏光するような静かな階調により、鎮静感と鮮やかな印象を描き出します。深海を思わせる色彩と水面の煌めき感のサーフェイス。さまざまなメタリックやパーリ―な艶のマッチングも目をひきます」(ジャルフィック 池田さん、岡村さん)
 
マットと煌めき感のコントラスト、静けさを湛えたクールな装飾性、圧倒的なブルー×グリーンの美しさがポイントとして挙げられています。なんといってもブルーのバリエーションが幅広い! サックスブルー、ターコイズブルー、コバルトブルー・・・と色味の違いと素材、加工との組合せで表情がとても豊か。
流通業界では社員の服装自由化とともにスニーカー通勤も広がっているそう。コンビニエンスストア大手、ローソンでは通勤時のスニーカーをブラック、ブラウンに加えネイビーと規定。バッグ、ベルトなどのコーディネートの選択肢としてネイビーの存在感が大きくなりますね。他の業界への影響・波及を想定すると、クールビズ、オフィスカジュアル向けとしてブルー系の革製品に可能性が。
近年ではモテ色としても話題のブルー。トレンドと二ーズがマッチし、マーケットに変化があるかもしれません。

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「冬のターコイズが効く」

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「ブルージーにウォーミー」

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「深い深いグリーンの階調」

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「闇に揺れる光を写す」

テーマ:3
「投影された情熱」
「鮮やかさの典型であるレッド群のミックス。革感を引き出すバーガンディーから赤への展開。色調と抑制されたマットな質感の対比は洗練されたモダニズムを感じさせます。シンプルなサーフェイスにシャイニーな輝きを添えて、鮮やかさとシックな印象に」(ジャルフィック 池田さん、岡村さん)。

濃密なレッド群の濃淡、マットな質感が生きるオフブラック、密やかに仕込まれたメタリックなどがそろい、穏やかなパッションを表現しているかのよう。
レッドのパレットに添えられたオレンジも見逃せません。「プルミエールビジョン」(2019年20年秋冬)では、深いオレンジをピックアップ。存在感が高まるベーシックカラー、ネイビーと相性がいいオレンジ。イエロー ~ マスタードの流れで新鮮に映ります。

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「レッド・レッド・レッド」

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「赤みのブラウンに潜む装飾性」

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「とろみのあるオフブラック」

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「シックにナチュラルなブラウン」

来春のリアルクローズトレンドとして、リネン、ベージュ、パステルカラーなどを使ったリラックス、ナチュラルテイストへのシフトが「繊研新聞」で報じられました。秋冬はさらに深化し全体的に穏やかでやさしいトーンへの移行を予感させます。そんなカラーを纏った新しい革製品の登場が楽しみです。レポートは次回に続きます。


■ 参考URL ■
 東京レザーフェア
 <http://tlf.jp/>

カテゴリー: 国内革事情

平成最後の12月。街にはイルミネーションが煌き、クリスマスシーズンが盛り上がっています。そんななか、ジャパンレザー関連イベントが各地で開催予定。ユーザー向けのDIYワークショップから、タンナーたちのプロジェクト、クリエイター向けのセミナーまで多様なトピックを加え、まとめました。ぜひ、参考になさってください。

*  *  *

東京・池袋「パンプスメソッド研究所i/288 2018AWコレクション 特別オーダー会」~12月10日
<パンプスメソッド研究所i/288>2018AWコレクションの特別オーダー会がi/288 SHOP<LADIES'KID >(東京・池袋)で開催されています。
毎回大盛況となる特別オーダー会。この秋に追加された新トゥデザインも含め、7パターンのサイズすべてをお試しいただけます。秋冬限定の新しいカラーもチェックしてください。
  パンプスメソッド研究所i/288
  <http://www.pumps288.jp/news/detail.php?news=431>

東京・原宿「efffy×ヤナギダマサミ ローンチイベント」12月5日
革バッグ 革財布<efffy(エフィー)>新コレクション「efffy×ヤナギダマサミ」のお披露目イベントが本日12月5日(水) 14:00~20:00、東京・原宿 JOINT 2nd. HARAJUKUで行われます。
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同会場限定アイテムやプログラムに注目! 人気クリエイター ヤナギダマサミさん ご本人が来場。先着で来場者の似顔絵をその場で描きプレゼントしてくれます。
  efffy

東京・浅草「東京レザーフェア」12月6日~
国内最大規模のレザートレードショー「東京レザーフェア」が12月6日(木)から2日間、東京・浅草 都立産業貿易センター 台東館で行われます。
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「東京レザーフェア」は、新たなマテリアルの提案及びトレンド情報の発信をするトレードショーとしてクリエイターに刺激を与え、創作意欲の向上、皮革の需要の拡大及び業界の発展につながることを目的に開催。
日本最大のマテリアルの展示会としてもお馴染みです。今回は2019年-20年秋冬コレクションを展開。ひと足早く、最新のジャパンレザーに出会えます。
各出展社の自信作がピックアップされた「トレンドラボラトリー」、「極めのいち素材」をはじめ、東京、兵庫、和歌山など皮革産地の革づくり、インキュベーション施設<浅草ものづくり工房>のクリエイターの作品など幅広い内容となっています。
  東京レザーフェア
  <http://tlf.jp/>

<東京ソラマチ>「レザークリスマスマーケット」12月7日~
東京スカイツリーの商業施設<東京ソラマチ>内、東京都墨田区のアンテナショップ<すみだまち処>で、墨田革バッグスクール協会主催イベント「レザークリスマスマーケット」が行われます。
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革の街、墨田区内には、世界で活躍するバッグデザイナーや職人などのプロの育成、日常を豊かにする趣味の向上など、多彩な校風のレザースクールが運営されています。そんなスクールの講師・生徒による革作品の販売・ワークショップを実施。クリスマスを意識し、ギフト向けのアイテムが充実しています。パワフルなものづくりに触れてみては?
  すみだまち処
  <https://machidokoro.com/events>

東京・新宿 日本バッグ技術普及協会 主催セミナー「キャッシュレス時代のバッグ・財布はどうなる?!」12月7日開催
日本バッグ技術普及協会 主催セミナー、「2019年の新傾向を徹底解説! キャッシュレス時代のバッグ・財布はどうなる?!」が12月7日(金)に行われます。
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11月の展示会ウィークで100ブランド以上の新作をチェックした編集部が独自調査・分析で新傾向を提示。
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2019年-20年秋冬のレザートレンドもピックアップ。財布・革小物・バッグのトレンド、傾向を探ります。
  日本バッグ技術普及協会セミナー詳細
  <https://www.kokuchpro.com/event/bagtrend2019/>

東京・蔵前「PENET」12月8日~
皮革産地、兵庫・たつの のタンナーたちによるNPO法人<TATSUNO LEATHER(タツノレザー)>のPRイベント「PENET(ぺネット)」が、12月8日(土)から2日間、東京・蔵前の人気カフェ<CAMERA(カメラ)>で行われます。
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「日本の革の素晴らしさをマーケットに、そして世界に伝えたい」、そんな思いでタンナーの若手経営者が集まりスタートしたNPO法人タツノレザー。昨年冬に続き、東京でイベントを開催。

靴の街・浅草、ものづくりクリエイターの街・カチクラに集まるクリエイター、職人、ものづくり企業との交流を図り、連携、コラボレーションの可能性を探ります。会期中は、たつののタンナーが在廊。皮革素材・製品が展示され、直接、革に関する話、説明を聞くことができます。革の聖地とそのものづくりの魅力を体感してみませんか? (写真は昨年開催時のようすです)

  TATSUNO LEATHER
  <http://tatsuno-leather.or.jp>

<ものづくり館 by YKK>コラボイベント「レザークラフトDAY」12月21日
世界有数のファスニングメーカーとしてお馴染みの<YKK>のイベント&コミュニティ施設<ものづくり館 by YKK>が、1978年に誕生した革財布・小物ブランド<ミック>とのコラボレーションによるイベントを行います。
当日はワークショップが盛りだくさん。本格的なトートバッグづくり(要予約)に加え、キーケース、インナーケース、スナップケース(以上 予約不要)など気軽にトライできるプログラムも充実。ビギナーさんにもおすすめです。
  ものづくり館 by YKK
  <https://monozukuri.ykkfastening.com/>

島根・松江<サンプル師が教えるバッグ教室>「がまぐち講座」12月27日
<サンプル師が教えるバッグ教室>の「がまぐち講座Part1・2が12月27日(木)、島根・松江で行われます。
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がまぐちの型紙づくりの基礎を学ぶ、人気の講習。思い描いたイラストから実際の型紙をつくっていきます。コツを習得すると簡単にフォルムをコントロールできるので、とても便利。このほか、東京、大阪など各地で開催予定ですよ。
  サンプル師が教えるバッグ教室
  <http://bagsample.net/>

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プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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