欧米ブランドに「負けていないぞ!」

2019年1月23日 の記事

カテゴリー: トレンド

皮革産業関連企業が集積している東京・奥浅草エリアの革問屋各社で、個展(2019年-20年秋冬)が1月第3週に行われました。その一部をご紹介します。

【丸喜】
皮革業界のキーマン、藤田晃成さんが新社長に就任し話題の同社。高いトレンド性でマーケットを牽引します。

「婦人靴用素材の皮革卸として46年の歴史をもつ丸喜で、このたび、まったく血縁のない私がバトンを引く継ぐことになりました。皮革素材のサプライヤーという立場ではありますが、製造メーカーや職人、卸業者、小売業者など、それぞれのプロフェッショナルが横串で連携していくシステムを構築していかなければという考えは常々抱えておりました。
問屋からメーカー、メーカーから素材業者に発注が来るという流れが一般的ですが、逆に素材業者が製造メーカーに対して発注するような、そんなことにもチャレンジしてみたいですね。
社会動向や世間の空気感を敏感にキャッチし情報収集しており、細かなニーズを吸い上げ、それにマッチした商品の企画段階から素材提案を行うなど、優れた技術をもったメーカーとともに高付加価値なものづくりをしていく素材サプライヤーでありたいですね」と藤田さん(「バガジン」1月1日号13面より)。

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そんな先進性は、ディスプレイからも感じられます。
「東京レザーフェア」の「トレンドラボラトリー」で発表された内容をさらに磨き上げています。アパレルでヒット中のオートミール、マッシュルームカラーを、レザーでいち早く集積しました。
ベージュからグレージュ、赤みのあるライトブラウンのレンジ、トレンドとして継続のレッドとのコーディネートが美しいですね。

2019年春夏シーズンに注目される、「フォークロア×アーバン」ミックス感のあるテイストを、秋冬に向けグレードアップ。裏革の起毛感のあたたかみとエレガントな表革、異なる素材のリズム、新しいハーモニーを提案。
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の秋冬ヒットしたアニマル柄も継続。充実のラインナップです。ゼブラ柄も復活傾向。
ヴィンテージ感のあるニュアンスが漂うピッグスキンも目をひきます。通常、トリミングしてしまう乳腺の部分もあえて残していて、インパクト抜群。
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TPP、日欧EPA発効により、輸入革の動向が気になりますが、逆に海外へ輸出すべく開発されたそう。ヨーロッパでは食文化の違いから豚革の生産が少なく、その希少性が認められています。
ピッグスキンを生産する東京都墨田区を中心としたタンナー、ファクトリーの技術力も秀逸。革らしさ、日本らしさ、東京らしさのハイブリッドが素晴らしい。

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人気ファクトリー、宮城興業とのコラボレーションによる靴もキャッチ―。
「豚革は、軽くて滑らか」というイメージを刷新する重厚感とファッション性。靴のライニングに用いることが多い豚革を、主役としてアッパーに、という新鮮な発想がとても好評でした。豚革は放湿性に優れているので、素足でも蒸れにくく快適に履けそうです。
企画を担当した若手スタッフ 大熊寛太さんの熱意は藤田社長譲り。周囲を巻き込み、新しいムーブメントを発信しています。

【東京都/東京製革業産地振興協議会】
同じく丸喜ショールームでは、<東京都/東京製革業産地振興協議会>による「日本の革・ピッグスキン」の特別展示が行われました。
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ピッグスキンは国内で自給自足できる日本の革。その製革技術、表面加工技術はメイドイン東京ならでは。ヨーロッパのブランドも認める、独自の素材力に磨きをかけ、幅広い生活シーンを彩る素材として進化し続けています。

1.「シンプル」:革のベーシックが際立つ
2.「精緻な加工技術」:多彩な風合いのバリエーション
3.「スエードの装飾性」:色×プリント×光沢
4.「トレンド力」:色、光沢、タッチ
これら4つの特長を生かした最新コレクションは、下記の3テーマで展開されました。

テーマ1:「ファンダメンタルズ」/ベーシック
アメ豚のリデザイン、タンニン鞣しを生かした新領域の探求などでピッグスキンらしさを再発見できる表現がそろいます。
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テーマ2:「レリーフ」/エフェクト
グラフィカルでモダンな立体感を追求し、プリーツ加工、塩縮加工・・・といった高度な加工技術のバリエーションが、クリエイターのマインドを刺激。
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テーマ3:「カラーズ」/カレイドスコープ
スエードを生かす濡れ色(エナメル)との対比や、自然を連想されるメタリック効果が浮上。プロダクトデザインにフィットするプリントへの取り組みも進んでいます。
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可塑性に優れたピッグスキンをアップデート。多様な表情の幅広いコレクションとなりました。放熱性・通気性に加え、表面の摩擦にも耐性があるので、スマートフォン関連製品に最適です。財布、バッグ、小物といった従来のカテゴリーでは語れないボーダレスなアイテムが登場しそうですね。
<東京都/東京製革業産地振興協議会>は2月開催の「東京インターナショナル・ギフトショー」にもブース出展。ご来場予定のかたはご注目を!

【吉比産業 東京支社】
続いて、革の卸売専門商社・吉比産業にお邪魔しました。
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「革の真ん中に。」をコンセプトに、タンナーとメーカー、仕入先と卸先、職人とデザイナー、日本の革と海外の革など、革にまつわる すべての真ん中にある老舗企業です。
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130年以上もの歴史があり、皮革素材を通して生活文化の向上に尽力。 皮革関連の各産地特有の個性を生かしつつ、二―ズをとらえた皮革素材を研究開発、提案に信頼が寄せられています。

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こちらは皮革産地・和歌山でつくられた星柄のエナメル。加工を組み合わせ、染色を重ねて仕上げられました。陶器のような質感、にじむような色のグラデーション、ラメの穏やかな光沢もいいですね。
同社では、このところ何シーズンも星柄をフィーチャー。個性的なデザイン、加工が見つかると、業界関係者の話題に。

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そんなPRの立役者がSNS。日本でいちばん歴史のある革の会社が、積極的にSNSを活用し、情報発信しています。
新人の女性スタッフを担当者に任命。瑞々しい感覚と写真のセンスが、若い世代のビジネスパーソンをとらえています。
先輩スタッフに名称、特長を確認しながら、投稿するなかで着実に学んでいるようすが伺えるのも素敵ですね。SNSの業務が人材育成と社内コミュニケーションにもつながって。風通しがいい社風が伝わります。
そんな同社の取り組みを語るSNSセミナーが2月に開催予定。場所は東京・奥浅草のインキュベーション施設<浅草ものづくり工房>です。トークショー形式なので、リラックスして聞けそう。詳細は、当連合会SNSでお知らせいたします。

レポートは次回(2月6日投稿分)に続きます。
なお、次週は村木るいさんの「人に話したくなる革の話」です。どうぞ、お楽しみに。

■ 参考URL ■

 東京インターナショナル・ギフト・ショー
 <https://www.giftshow.co.jp/tigs/>

 吉比産業
 <http://www.kibi-1882.co.jp/>


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プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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