2020年1月22日 の記事
January 22, 2020
皮革卸企業 個展 2020年秋冬レザーコレクション レポート
カテゴリー: トレンド
東京・浅草周辺の皮革卸企業の2020年秋冬レザーコレクション 個展が1月15日から3日間行われました。その一部ですがご紹介します。
富田興業
常に新しいレザーを創造し続ける、レザーライフクリエイター、富田興業では多彩なプレゼンテーションで「レザーのある生活」を提案しました。なかでも「蓼藍絞り染め」が話題です。
第101回「東京レザーフェア」の恒例企画「極めのいち素材」では、2位を獲得しました。希少な徳島蓼藍を用い、発酵と酸化を利用。さらに日本古来の絞り染めを加えてアレンジ。故事成語「青は藍より出でて藍より青し」を表現するかのような鮮やかな青。藍の青さ、魅力を引き出し、令和時代に相応しいモダンなニュアンスで表現しています。
タペストリーのように展示した一枚革はヌメ革にインクジェットプリントを施し、ハンドメイドで着色。ワックスを塗り込み高圧プレスで焼き上げているのだそう。
<オフ- ホワイト c/o ヴァージル アブロー>をはじめ、<ルイ・ヴィトン>メンズ アーティスティック・ディレクターとしても知られるヴァージル・アブローが雑誌「デイズド(DAZED)」が近年のトッププレーヤーを特集するシリーズのインタビューで、「(今後は)消費者がファッションの知識や個人のスタイルをヴィンテージで表現する、とても素晴らしい状態になっていくだろう」と語り(出典:「WWDジャパン」2019年12月26日更新分)、注目される「ヴィンテージ」感覚をいち早くとらえています。
強力な撥水機能とソフト感をハイブリッドさせた進化版をはじめとした防水加工のバリエーションも拡充。伝統文化、古き良きものが現代の生活に溶け込む我が国ならではの新しい「日本らしさ」、近年の天候不順を鑑みた防水機能など、ニーズにしっかりと応えた価値ある革づくりに信頼が寄せられます。
★富田興業 は神戸展(1月30日~31日/神戸市長田区・ホテルウィングインターナショナル)を予定しています。
吉比産業
創業以来、130年以上の歴史を有する吉比産業。ファッション性・機能性に優れた各種皮革素材を提示する革の卸売専門商社です。
「原点回帰」をテーマに展開する2020年秋冬コレクションは、第101回「東京レザーフェア」でお披露目した「チュウィーゴート」に代表されるタンニン鞣し、革らしいタッチ感、立体感を重視。
国内の原皮、クラストにこだわりすぎず、国内タンナーの技術力、豊かな感性による仕上げを最大限に生かした「ベストチョイス」×「ハイブリッド」で、時代に即したものづくりを切り拓きます。
新作として、レザー×マグネットのハイブリットが好評。建築(内装)資材メーカーと共同開発しました。インテリアコーディネートや模様替えがしやすい壁材としてはもちろん、暮らしが楽しくなる使い方を打ち出しています。
ジャケットへのダメージが少ないブローチ、コサージュやシート状のコインホルダー・・・といったアイテムへの活用もできそう。
「ビジネスとして産業として継続すべく、ファッション以外のジャンルへの訴求が欠かせません。レザーの価値を認知していただき、次世代の顧客を育成するための素材開発を進めています」(代表取締役社長 吉比 浩さん)。さらなる広がりに期待したいですね。
タテマツ
アドバンス、モードテイストのシューズ向けレザーを中心にトレンドを意識したカラー、質感をバリエーション豊富に展開するタテマツ。今回は「ナチュラル」と「エレガント」、相反するテイストが共存、調和するようなコレクションを展開。
フラワー&ボタニカルモチーフ、艶感、メタリック・・・さまざまな表現でつくり手の創作意欲を刺激します。ツイード調、デニム調、チェックの型押しレザーも多くみられました。
ニットスニーカーのヒットがきっかけとなり、ボーダレスな皮革素材が新鮮です。ファブリックのようなレザーも、その流れといえそう。ノームコア ブーム後、「脱シンプル」傾向が続きますが、振り切ったアバンギャルドではなく、ほんのりと感じられる程よい個性、価値が求められているようです。
フジトウ
オーソドックスな素材からエキゾチックレザー、その他希少性の高いものまで、多種多様な皮革がそろう老舗企業。若いスタッフが生き生きと働く溌剌颯爽な社風が特長です。
第101回「東京レザーフェア」の恒例企画「極めのいち素材」に選出された「木目革」が人気を集めています。バッグ、フットウェア、小物はもちろん、家具、インテリア関連製品への活用もできそう。経年変化し、もっとリアルなニュアンスになるそう。愛用・愛着が、育てる楽しみにつながりますね。
オットセイの革は独特のシボ感、ワイルドな雰囲気が漂います。力強い存在感、迫力抜群!
このほか、ユニークな革がそろい、目利きの業界関係者が絶え間なく訪れていました。
このほか、ユニークな革がそろい、目利きの業界関係者が絶え間なく訪れていました。
丸喜
トレンドはもちろん、時代性をいち早く提示する皮革卸、丸喜。日・EU EPA(経済連携協定)発行によるヨーロッパ向け輸出(日本製革製品)関税撤廃を受け、海外市場で販売したい企業へのサポートを開始。支持を広げています。
ヨーロッパのREACH規制(化学物質管理の法規制)に準じる国内タンナーの皮革 在庫販売もスタート。ユーザーからの関心が高まるトレーサビリティー(履歴管理)の情報発信に注力しています。
「環境配慮型のタンナーを支援していきたい」と藤田晃成社長。兵庫県たつの市のタンナーをはじめ、ネットワークを構築。2020年は「持続可能性(サスティナビリティー)」をテーマに掲げ、「Confort Elegance」、「Sustainability Japan」を基調に展示発表しました。
サスティナビリティーは、皮革関連産業全体を視野に入れ、産業を次世代へとつなぐためのサポートも。ファクトリー、メーカーとのコラボレーションも活発。社長をはじめ、若手社員がワンチームとなって取り組んでいます。
スタッフ 大熊寛太さんは、若い世代の視点、ファッションが好きなビジネスパーソンならではの発想で企画を推進。
アニマル柄、メタリック、艶感の表現、色出しもタンナー、ファクトリーとの連携により、オリジナリティを追求。
周囲を巻き込み、自らも楽しみながら、ジャパンレザーのヴィジョンを語ってくれました。新たなプロジェクトも準備しているそう。楽しみですね。
同じく丸喜ショールームでは<東京都/東京製革業産地振興協議会>「日本の革・ピッグスキン」の特別展示も行われました。
墨田エリアのファクトリーが切磋琢磨。可塑性に優れたピッグスキンを秀逸な加工技術で磨き上げています。ユニークなアート感覚、革らしい味わい・・・と表現も多様。
通気性・放熱性も高く、表面の摩擦にも耐性があるので、スマートフォン関連アイテムにぴったりですね。昨年末の「ジャパンクリエーション」「東京レザーフェア」でも公開されていますが、じっくりと見て触れることができる貴重なチャンスとなりました。
ファッションにイノベーションを感じることができない、「ワクワクする」価値を見出すことができないユーザーにジャパンレザーの魅力をどうお伝えするか?
時代の大きな変化、醸成される空気感に対応し、進化し続けること、その先のヴィジョンを明確化し提示すること、情報発信の強化で、日本の革づくり、革のものづくりの今をお届けしたいですね。
浅草周辺を駆け足でまわり、個展にお邪魔してお話しを伺うなか、ジャパンレザーの未来を照らす、各社のチャレンジングに、胸が熱くなりました。なお、今回のエントリでご紹介した企業につきましては、下記リンク先をご参照ください。
■ 参考URL ■
「東京レザーフェア」http://tlf.jp/exhibit
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プロフィール
鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター
東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。
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