欧米ブランドに「負けていないぞ!」

2020年12月24日 の記事

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
村木さんの視点で一年を振り返ります。
2020年の投稿も今回が最終更新。2021年は1月6日から始動します。
今年もご愛読いただき、ありがとうございました。引き続き、よろしくお願いいたします。


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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしておりますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。
当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。
人気イベント「本日は革日和♪」。今後の予定、スケジュールなどは下記のリンク先をチェックしてください。

  「本日は革日和♪」


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毎度です!「まぁ、なに話そうとしてもコロナにたどり着かざるえないよね(´・ω・`)」と諦めているムラキです。

1年を振り返って、ということで革に関して色々とあったりもしたのですが、どれを話しても最終的にはコロナコロナですな。(´Д`)ハァ...


・キッズレザープログラムの会議でお子さんたちを対象に行うイベントがこの1年どう大変だったか

・イベントってどうやって、どこまで対策すればいいのか。実際のイベントから見てみる。

・ジャパンレザーアワードで見た「手触り」

・実在店舗とネットショップ。2点の連動。

・革は触ってなんぼ、という結論

などをつらつらと書いていこうと思います。



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目次 [hide]


キッズレザープログラム会議に出た「革素材のウィルス対策」という話

キッズレザープログラムってどんなプログラム?

革に付着したコロナウィルスはどれくらい気を使うべきか

11月に行われたイベントにおけるウィルス対策を見てみる

素材博覧会ってどんなイベント?

素材博覧会のコロナ対策

厚生労働省による新型コロナウィルス下におけるイベントの注意点

イベント出る意味はあるのか?

各種SNSや動画は重要だけど、最後のひと押しは「触る」こと

ジャパンレザーアワードの受賞作品で感じた手触り

実在店舗とネットショップの相互連携がコロナで崩れる

ネット店舗と実在店舗は相互に影響しあう

革をネットで知ってもらう難しさと解決策の1つ

After コロナか、With コロナか。どちらにせよ、コロナに対応する社会がやってくる





キッズレザープログラム会議に出た「革素材のウィルス対策」という話


いつのまにやらもう8年協力しているキッズレザープログラムの会議に出てきました。キッズレザープログラムは皮革産業連合会(=JLIA)が行っている事業です。



キッズレザープログラムってどんなプログラム?








20120032.pngのサムネイル画像




内容としては革靴やカバン、財布などを作る工程で出ている革の端切れを1箇所に集約。そこから全国の児童館や学校などの子どもたちが工作をする場所で革の端切れを使ってもらおう、というプロジェクトです。

着払い送料は必要となりますが、依頼があればダンボール1箱が送られます。このようなものを作りました、などのレポートは必須となりますね。

このプロジェクトは「3年やったから革業界が儲かった」というものではなく、おそらく10年20年単位で成果が出てくるようなプロジェクトとなります。三つ子の魂百まで、というだけあって幼年期に触れた素材や食材はその後の一生まで残ります。
始まって8年経ちますが、ちょこちょこと「将来カバン業界で働きたい」というような相談も寄せられるようになってきた、とのことです。



コロナ禍での児童館や学校の大変さ


KLP実施者さん「例年に比べると各地の児童館などの協力先による革利用のイベント実地回数は9月までで半減しています。これはコロナ禍により児童館や学校などがどのように対応すればいいのか、というのを模索していたからですね。ですが、10月になると実地回数が例年よりも増えました」

なんで?

「10月からGOTOが始まったからです。GOTOが始まったことで、国のお墨付きが出た、ということでイベントなども活発に開催されました。今までを取り返すかのように、開催されましたね」

9月までは例年の半数程度しか開催されていない、ということは、その半数は「開催する」という覚悟があった、ということですよね?

「そうです。コロナ禍でも子供は成長する、ということで試行錯誤で開催されたところも多いです。中にはこのようにネットを使ったワークショップなどを開催したところもあります」


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「資料にあるようにZOOMなりを使って、子ども向けのイベントをやる児童館なりも存在はします。ただ、おしなべて皆さんネットを使ったツールが苦手なところが多いですね。今後この動きも変わるとは思いますが、現状では少ないですね」


なるほどなぁ。








革に付着したコロナウィルスはどれくらい気を使うべきか


「各地のKLP実施者さんから、革にコロナが付着していないのか?付着したとして消毒は出来るのか?という相談はよくあります」





・アルコール消毒は革製品には行わないほうが良い。染料仕上げの革は色が落ちる。

・コロナウィルスの革の素材上での生存時間は厳密に調査はされていないが、布や紙などが4~5日生存と言われているのでそれに準じる、と考えられる。多数が触った品は5日以上は放置する。その際に換気の良い場所で放置したほうが望ましい。

というところです。

コロナウィルスは水分が保持されていると長く生存します。紙や布、革よりもプラスチックやガラスのほうが長生きするそうですわ。

「布や紙、革のほうがウィルスは長生きしそうだけど?」

布、紙、革などは水分を吸収するんですよ。コロナウィルス自体がもっている水分を吸収してしまうので、結果的に生存時間が短くなります。ガラスやプラスチックは水分吸収しないので、結果的に長生きします。


「キッズレザープログラムの革は宅急便で送られてくるが大丈夫なの?と聞かれますが」


現状キッズレザープログラムの革は1箇所の倉庫に集積され、そこで1週間以上は寝かせられますから、ウィルスの生存は少ない、と思われます。
ただ、児童館などに到着後に、外部からウィルスが持ち込まれたら対応が難しいですね。そこはもう児童館や学校入り口で消毒液で消毒してください、としか言いようがないです。

ウィルスは脂質の膜に覆われています。換気することでウィルスの表面の膜を乾燥により破壊することでウィルスを殺すことが出来ます。石鹸で手を洗いましょう、というのも流水で洗い流し、石鹸で脂質の膜を破壊することが出来るからですね。

魔法みたいな予防策はなく、政府が提唱する「新しい生活様式」に書かれている「身体的距離の確保」「マスク着用」「手洗い」を着実にやっていくしかないですねぇ。









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各地の児童館や学校でもコロナ対策しつつ活動をされています。では、人が多数集まるイベントではどのような対策をしているのか次に見てみましょう。




11月に行われたイベントにおけるウィルス対策を見てみる



11月下旬に神戸にて「素材博覧会」が開催されました。

「本日は革日和♪」(村木個人がやっているイベント)として革関係数社を取りまとめてブース出展しました。コロナ禍時代のイベントのやり方を見てきましたので見てみましょう。




素材博覧会ってどんなイベント?



手芸の材料を展示販売するイベントで神戸で年2回、横浜で年2回行われています。
現状コロナのため神戸は1回おやすみしており、1年ぶりの開催となります。横浜は来年2月開催になりますね。







  




素材博覧会のコロナ対策



1 コロナ対策 COCOAの登録必須。





>事前に登録されていない場合はその場で登録してもらっていました。

2 検温
3 消毒
4 入場カウント
>「A」の箱にビー玉を置いておき、来場者は「B」の箱に移してもらう。退場する際には「B」から「C」の箱に移動させる




     



5 飲食スペースの制限


>飲食スペースでは密にならないように空間をとり、長時間の滞在を禁じていました。







厚生労働省による新型コロナウィルス下におけるイベントの注意点



新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)|厚生労働省

問6 イベントを開催する際には、どのような点に注意する必要がありますか。
問7 イベントの開催には、具体的にどのような制限がなされていますか。



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「イベント」という言葉は政府は「1万人規模のコンサート」から「数十人規模の展示会」まで指し示しますのでかなり大雑把な言葉と言えます。

今回の素材博覧会は押しなべて上記のガイドラインが遵守されていたように思えます。


イベント出る意味はあるのか?


あると思います。リスクはありますが、革素材などは触ってなんぼ、だと思います。

どれだけインスタなりTwitterなりYOUTUBEなりで十の写真を載せ、百の動画で伝え、千の言葉を費やしたとしても、手触り一つ伝えられません。革素材の面白さ、というのは「手触りがとても重要」「それはネットで伝えられない」、という点です。

「それはデメリットだ」という声も多いですが、私はメリットだと思っています。それだけネットで売りづらい素材だからこそ、実際に触れる機会は貴重です。


各種SNSや動画は重要だけど、最後のひと押しは「触る」こと

「Twitterやインスタ、動画、どれをやれば良いんですか?」

回答は「ターゲットとしている層がやっているものは全部やるしかない」です。

そして、SNSでもインスタでもライブでも動画でも、どれだけやっても最後に重要なのは「実際に触る」ことです。これだけはネットでは伝えきれません。

実際に触らないと情報を伝えきれない、というのが革という素材がもつ最悪のデメリットであり、最高のメリットといえます。

革屋、という素材に限らず、革の靴でもカバンでも財布でもこの「触ってもらう」のはとても重要です。だからイベントや実在店舗は重要なわけです。


今年開催されたジャパンレザーアワードではこの「手触り」が面白い作品が賞を受賞していました。

ジャパンレザーアワードの受賞作品で感じた手触り



今年秋に開催されたジャパンレザーアワード

村木るいさんの「人に話したくなる革の話」/「ジャパンレザーアワード2020」を解説してみる  | JLIA 日本皮革産業連合会

今回の大賞は個人的にとても驚いたことに小林仁太氏の小銭入れが受賞しました。
過去において財布や小物って大賞とったことないんですよ。



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今回のアワード、個人的に面白いな、と思った作品として上記の大賞をとった小銭入れと、審査員賞を受賞した日本酒を入れるバッグがあげられます。





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この2点、個人的に面白かったのは「手触り」です。


革の手触り、ではなく、小銭入れならば開け閉めしたとき感じる革越しに感じる磁石の磁力。それと、3Dプリンターで型出ししたためきっちりと革同士が合わさる「パタン」という感触がとても素晴らしいです。

日本酒入れは日本酒を入れていない状態で畳んだとき。最後に空気が革に保持され、それが抜ける「フス~」という感触がとても気持ちいい品でした。

これらが「ネットで伝えられない感触」です。
どれだけの言葉や写真、動画を費やしても実際に触ってもらわないとこれは伝えきれません。

では、ネットと現実。この2つをどう連動しているか、を私が協力している革屋「フェニックス」からちょっとだけ戦術を紹介してみます。




実在店舗とネットショップの相互連携がコロナで崩れる


私が協力しているレザークラフトフェニックスは大阪なんばに実在店舗がありますが、大阪府の自粛要請が出ると店舗を閉めてしまいます。ネットショップは開いていますので、従業員は内部で勤務しています。




自粛要請が出ているため、従業員が感染するリスクを下げるためにも店頭を閉めています。が、これは経営的には怖いです。

ネットで宣伝なりアピールして、「じゃぁ実際に店頭で革を触ろう」「実際にお店に行って会社が信用できるか見てみよう」「そんな良い工具ならば触ってみよう」という戦術が取れなくなります。

現状は過去の信頼があり、お客さんは信用してくれていますが、仮に3ヶ月なり店頭を閉めてネットショップのみにしたら結構エライことになるでしょうなぁ。(エライこと=関西弁で「とっても大変」という意味です)


ネット店舗と実在店舗は相互に影響しあう


1社の中でネット店舗と実在店舗があるとしたらお互いが敵なわけではありません。
どちらの売上が高い・低いはたいした問題ではなく、「ネットで見たものを実在店舗で触ることが出来る」のが重要なわけです。どちらがあるから良い、というわけではなく、どちらもあるからこそ、良いわけです。

現状実在店舗は閉めざるをえないのですが、実在店舗に新規のお客さんを呼べないのはかなり痛手です。せっかく遠方イベントに出てアピールしても実在店舗が閉めていたら、イベントに出る意味合いが薄くなりますねぇ。┐(´д`)┌




革をネットで知ってもらう難しさと解決策の1つ




現在革業界でコロナ禍でも元気な会社さんは以前からネットに力を入れている所が良いように思えます。
過去のネットでの蓄積が現在成果を最大限に発揮していると言えます。

「ネットで販売はじめたけど、売れない!」「ネット対応なり始めたけどまだ成果は出ていない」 まぁ、そりゃそうだろうなぁ、と。(´・ω・`) すぐさま効果は出ません。

"革"(素材、製品問わず)をネットで販売するのは結構難しいです。写真の難しさなどもありますが、再三言うように「手触り」が伝えきれないからですね。

コロナ禍でもイベントをやったらいけない・店を開いたらいけない、というわけではありません。
これからネットに力を入れようと思う会社さん、もしくは、ネットやっているけど、いまいち成果出ない、という会社さんはぜひ「現実で触ってもらう」という機会を重視してもらいたいな、と思います。

革は触ってなんぼ、です( ´∀`)bグッ!



After コロナか、With コロナか。どちらにせよ、コロナに対応する社会がやってくる



コロナ、というか、今回のような突発的なウィルスに対応した社会や会社づくりが必須な時代がもう来ています。

今までの考え方やシステムが全部無駄になる、とは思いません。かといって「これやればOK!」という万能解決策はありません。結局は試行錯誤を高速で回転するしかないかな、と思います。

コロナが笑い話になればいいとは思いますが、多分それは無理。(´・ω・`)

来年も革に関する話をつらつらと書かせてもらえるとは思いますのでよろしくお願いします。







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プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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