欧米ブランドに「負けていないぞ!」

2021年12月22日 の記事

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。今回は、皮革産地として知られる姫路の新しいレザー×コミュニケーションスポットで行われたファッションショーのレポートと、「買い物は投票」という言葉の重さ、について。

新しい生活様式へとシフトする新しい時代に向けて、ものづくり産地、姫路の新しい取り組みを探ります。2021年の最終更新です。ぜひ、ご覧ください。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしておりますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

人気イベント「本日は革日和♪」。今後の予定、スケジュールなどは下記のリンク先をチェックしてください。

  「本日は革日和♪」

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毎度です!

「これ書いている時点でコロナオミクロン株が日本で151人突破したなぁ」ムラキです。

10月に緊急事態宣言が解除されてからイベントが連続で開催され、ぐったりです。さて、来年はどうなることやら・・・。

イベント連発祭りが終わった矢先に、先日行われた姫路ペレテリアのレザーファッションショーを見てきました。

今回のblogでは、

・ペレテリアレザーファッションショー「レザーワールド」紹介
・タンナーをファッションショーで紹介する、という意味
・買い物は投票だ、という言葉の時代

というような流れで書いていきます。

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目次 [hide]

兵庫県姫路市高木にあるペレテリアという場所
高木地区にはタンナーさんが集積している
レザーワールド2021 by PELLETTERIA、というファッションショー
事前の様子
当日の様子
今からでも見られる「レザーワールド2021」
ユニタスファーイーストがこのイベントをやった、という意味合い
タンナーをファッションショーで紹介する、という意味
表に出てこないタンナー業が出てこざるえなくなってきているのかな、と。
買い物は投票、という言葉の祝福と呪い
2021年もありがとうございました&来年の予定


兵庫県姫路市高木にあるペレテリアという場所

高木地区にはタンナーさんが集積している

兵庫県の姫路市たつの市には日本全国のタンナーの7~8割が集まっています。その数は日本皮革産業連合会に登録されている数として130くらいはあると思います。

そのタンナー集積地のひとつである姫路市の高木地区でペレテリアは今年オープンしました。

姫高皮革事業協同組合

ペレテリア(Pelletteria)

村木るいさんの「人に話したくなる革の話」/革の新施設 ペレテリアを見てきた話&姫路の革イベントを紹介| JLIA 日本皮革産業連合会

過去に紹介blog書いていますので、またご覧ください。通常はカフェ、レザークラフト作業スペース、ギャラリースペースを運営している施設です。
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レザーワールド2021 by PELLETTERIA、というファッションショー

ペレテリアでファッションショーが開催されました。
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ペレテリアでファッションショー? ユニタスファーイーストさんが経営されているから、「革の手入れ剤をより知ってもらうためにやるのかな」と思ったのですが、180度違いました。


事前の様子

インスタグラムを見てみると、ファッションショー「レザーワールド2021」に参加するタンナーさんの紹介動画が作られていました。


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えっ、1社1社の紹介動画を作ったのか!
これってファッションショーというのにタンナーさんがほんとに主役なんだな!


当日の様子

12月19日の日曜日、2回公演で開催されました。行ってみると満席状態で立ち見もあるという状況。
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オープニングは自社で作ったタンナー紹介動画が流れました。

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タンナーさんを知ってもらう、というファッションショーというだけあり、実際に12社のタンナーさん社長に自社の革の紹介をしてもらっていました。「えっ、ほんとに全員社長が来ているやん! すごいな」と唖然としました。
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ファッションショーでは、神戸ファッションデザイン専門学校さんや姫路県立工業高等学校による姫路レザー使用の衣料も紹介されていました。

姫路県立工業高等学校さんは2019年のジャパンレザーアワード学生部門最優秀賞を受賞され、その作品も展示されていました。

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今からでも見られる「レザーワールド2021」

ファッションショーは盛況で無事に終了。インスタライブで生中継もされていました。

ユニタスファーイーストがこのイベントをやった、という意味合い

ペレテリアを作ったユニタスファーイーストは、東京レザーフェアにも参加している革のリペアの会社です。


このJLIAblogでペレテリアオープン時に社長にインタビューをしました。


下記の弁のまんまのイベントだな、と感心しました。ファッションショー内では自社のケア用品の宣伝とか一切ありませんでしたわ。

社長 「ペレテリアはイタリア語で革製品、という意味ですね。
この建物を作ったのは
革業界の交流の場として使っていただきたいからですね」

‐‐‐ 交流の場ってのは??

社長 「当社はご存知のように革の手入れ剤を販売しています。
この姫路の地で商売をしてきましたが、
姫路の地は革の生産地として知られていますが、
交流の場が存在しません。

この場合の交流の場は革の専門家であるタンナーさんだけではなく、
消費者や販売者、革の専門家、革製品のつくり手など、
いろいろな方々に交流してほしい。

当初は、まず姫路地域だけにしてもらっています」

 
タンナーをファッションショーで紹介する、という意味

このショーは、革の生産という意味では川上に位置するタンナーを打ち出したものでした。
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タンナーは、鞄職人や靴職人よりも人数が少なく、表に出てこない職種です。今回のファッションショーでは、よくまぁ、ここまで引っ張り出せたな、と驚きました。


表に出てこないタンナー業が出てこざるえなくなってきているのかな、と。

話変わりますが・・・
この高木のそばにヤマダストアー、というスーパーがあります。ちょっとお値段お高めなんですが、良い品を多く置いています。この10年で随分と増えたな、と思うのは生産者の顔が見えるようにした野菜が増えたものです。

このヤマダストアーでは積極的に生産者の顔が見えるようにしています。積極的に店内ポップで生産者の顔を本当に印刷して出しています。生産者の顔を見せたほうがメリットがでかい、とこのスーパーは判断しているってことですね。
上記の農家さんと同じようにタンナーさんの名前が消費者の間で高まれば、製品時のコピーのひとつにはなるわなぁ、とは思います。

前回紹介したニューレザーコンテストなんかもその一環といえるわけです。


革屋さんにせよタンナーさんにせよ、メーカーさんにせよ、職人さんにせよ、従来のやり方をより強く進めるのか、それとも新しいやり方を模索するのか。

維持をするにせよ、新しくするにせよ、大きな決断をしなきゃいけないんだろうなぁ、今の時代は・・・と思います。


「買い物は投票」という言葉の祝福と呪い

ペレテリアのファッションショーを見た帰りにヤマダストアーに立ち寄りました。だいたい姫路のタンナーさんに行った帰りはここで買い物しています。

前述しているようにこのヤマダストアー、良い品を良い値段で売っているスーパーです。いつも感心するのは良い品はこれだけ良いんだよ! と積極的にポップ書いて告知しているんですよね、この会社。

SNSやblog、YouTubeでバンバン!ではなくて、店内のポップやオリジナル製品のキャッチコピーなどがものすごく目を引きます。いつも買い物しながら勉強させてもらっていますわ。
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今回購入したのは、「姫路市の喫茶店「ムッシュさん」監修の茹で時間が13分もかかるパスタ(喫茶店ナポリタン用)」というものです。

「なんちゅう商品名つけるんだ・・・」と思いつつも、手にとっている時点でもうヤマダストアーの戦略にハマっています。自社ブランドで商品開発も行っているのですが、このポップと商品コピーの連動がほんとによく考えられているな、と感心します。

このパスタの裏面を見ると・・・。
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買い物は投票です。

という文字が。説明として下記が書かれています。

「労働集約産業である地域の喫茶店は労働人口減少の影響を受けやすく、持続可能な経営の維持のために、私達は地域の喫茶店の味を積極的に販売し応援することで地域の食の多様性を守っていきたいと考えています」

あぁ、なるほどなぁ。何を買うか。どこで買うか、ってのは投票行為なんだな、と。

その店が残ってほしいか。その商品の生産元が残ってほしいか、という意思の表明。SNSに写真を載せるための買い物、じゃなくて、意思を表明するための投票としての買い物。

相変わらずすごいな、このスーパー、と感心しました。とんでもない祝福と呪いをお客に投げかけてくるなぁ。


2021年もありがとうございました&来年の予定

今年も無事に書き終わりました。書く場をいただきありがとうございました。締め切りがないと動かない。来年の予定は、とりあえず今決まっているのはこれくらいですが、多分増えます。

2022 2/17-19

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プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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