欧米ブランドに「負けていないぞ!」

2022年3月30日 の記事

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
2022年第三弾は、レザーソムリエとSDGsと職人募集話から見る「言葉と意識をあわせる重要性」という話。幅広く活動する村木さんが、イベントや生産現場で感じたこと、聞いたことをつくり手の立場からリアルにレポート。ぜひ、ご覧ください。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

人気イベント「本日は革日和♪」。今後の予定、スケジュールなどは下記のリンク先をチェックしてください。
  「本日は革日和♪」

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毎度です!
「まんぼうが解除されましたが、先はまだ長いよね」としみじみ思うムラキです!

まん延防止等重点措置に基づく要請が3月21日に解除されました。1月27日から2か月ほどありました。前回の世界的パンデミックであるスペイン風邪が1918年から20年。

沈静化するのに5年ほどかかりましたが、今回のコロナも特効薬が開発されるのにまだ数年はかかるかな、というところです。それでも引きこもって生きるわけにはいきません。

2月からイベント参加やイベントお手伝い、求人話取材などに行ってきました。それぞれを行いながら感じた「言葉と意識を定義づけする重要性」という話をしてみようと思います。
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レザーソムリエ 中級セミナーのお手伝いに行ってきた


レザーソムリエの皮革講座 Professional(中級)が大阪で開催されました。
前回は2年前に東京ではじめて開催。大阪では今回はじめて開催されました。次回は東京で4月20日に開催されます。
で、大阪のお手伝いに駆り出されました。まぁ、面白いそうなのでお手伝いお手伝い、です。

「今回の講師の方の紹介です。え~っと、あそこにいるムラキさんは・・・ユーチューバーで大阪弁喋れますので」(と司会からの紹介)

えっ!ユーチューバーだったの、私!? 今回私が雇われたのって大阪弁喋れるからなのか!?
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ここがすごいよ、レザーソムリエ中級講座!利き革試験がある

このレザーソムリエ中級、受講料が3万弱かかります。それに見合うだけのものを提供しなくちゃいけないので運営さんもドキドキだと思います。

で、見ていて「すごいな」と思ったのが最後に行われる「利き革」試験。
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30分の時間内に20種の革の動物の種類と10種以下の仕上げ加工を見極める、という利き酒ならぬ利き革試験。

「えっ!カンガルーとゴートの見分け方ってかなり難しくないか!? これは専門家でも難しいだろ」と度肝を抜かれました。

受講生の前にはこのすべての種類の革がサンプルとして講座の間中触れます。更に、会場の後ろには利き革で使われる革がもとの大きさのままで陳列されています。

カンガルーやゴートにしても、元の大きさや厚み、視覚でわかるものですが、これを10cm×20cmほどの大きさで統一されるとほんとに難しいです。

講座の休憩時間中に「この!陳列された革の利き革、と赤文字で書かれているものは後で試験に出るから!ほんとに難しいから手と視覚、匂いなどを覚えて!ほんとに難しいから!」と主張するのが今日の私のお仕事です。


この講座の価値があるな、と思ったのは「さまざまな革や仕上げ革を実際に触れる」ということ。

受講者さん「いや、この見極めは難しすぎじゃないですか! 」

難しいよ!  私は今質問してくれているあなたがなんの商売されているかは知りません。

ですが、お客さんから「あなた革の専門家なんだからこれがなんの革かわかって当然だろ!」と言われても、「革の専門家だからこそ、試験にかけないとわかりません」と主張してください。

大丈夫! 革の専門家になればなるほど、それがなんの革かを気軽に断定して回答しなくなります。

私自身は革屋さんで働いていますが、お客から「お前は革屋だから革製品触って、革の種類わかるだろ!」と言われたら「うちは魚屋さんだと思ってください。魚屋さんが白身魚のフライを食べて『これはキスです』『こっちはベトナムのパンガシウスというナマズです』なんて全部わかるわけがないんです。
うちがわかるのはうちの会社で売っているものだけです」と答えます。それくらい革の断定って難しいんです。
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だから、今日、あなたはこの場でこれだけの革を触ったことによって、「こんなの見分けつくわけがない」とわかって絶望したと思います。

だからこれからは、「革製品触って素材なんてわかるわけないんです! 革はそれだけ広い世界なんです」と自信を持って答えてください。

それを答えられるだけのさまざまな革を今日あなたは実際に触ったわけですから。今日の経験は、他者に対して胸を張って「わからなくて当然だ! 」といえる経験です。

40種類近くの革が並んでおり、これを片付けるのもひと苦労でした。

ここがすごいよ、レザーソムリエ中級講座!革のSDGSの話が出た

中級講座は10時から17時30分まで行われます。

で、驚いたのが「皮革産業とSDGs」という講座があったこと。は~~~、触れるんだなぁ、この話題。

SDGsは近年盛んに言われるようになった目標です。
「SDGsとは、『持続可能な開発のための2030アジェンダ』に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。」と定義されています。

皮革業界もこの流れに対してどのように対応しているかをきちんと表明しなければいけないな、という状況です。今回のソムリエで講義として話されたのは驚きました。SDGsは17の目標と言われるだけあって、目標数が多いです。

このSDGsの17の目標が、皮革業界のどこにどう当てはまるか、は業界によって異なります。これが非常に難しいわけです。

SDGsは17の目標があるので、SDGsの話をするときはどれに対しての話か、きちんと定めないと会話が大変

革を作るタンナーや靴、鞄、財布、などではそれぞれ注視しなければいけないSDGsの目標が異なります。

今回のレザーソムリエ中級講座では、「脱炭素社会のスローガンから生み出された偏見と誤解」に対して皮革業界としての解説が行われました。

それに対して、兵庫県のタンナー山陽さんは下記のようにHPでSDGsについて表明されています。

SDGsの17のうちの8つに対して、タンナー山陽として解説されています。

2 飢餓をゼロに
3 すべての人に健康と福祉を
6 安全な水とトイレを世界中に
8 働きがいも経済成長も
9 産業と技術革新の基盤を作ろう
12 つくる責任、使う責任
13 気候変動に具体的な対策を
15 陸の豊かさも守ろう
17 パートナーシップで目標を達成しよう

SDGsの難しさは、「SDGsという言葉を使う人、一人ひとり、それぞれが注視している目標が異なる」という点です。

これを読んでいるあなたが、誰かから「革業界はSDGsに対してどのように思っていますか?」と言われた際に、あなたは「6 安全な水とトイレを世界中に」という目標に対しての革業界の取り組みを説明されるかもしれません。ですが、質問した誰かは、「それじゃなくて、15 緑の豊かさも守ろう、に対してどう思っているんだ」と言われるかもしれません。

SDGsは17の目標があり、SDGsの言葉を使う人は一人ひとりが見ている目標が異なっていると思ったほうがいいです。

これが今回のblogタイトル「言葉と意識をあわせる重要性」にかかるわけです。
同じ言葉を使っていても、見ている目標が異なるわけで、こうなると話をしても平行線になるわけです。

他の事例として、「職人」という言葉も人によってイメージが異なりすぎますので、最初に定義付けをしっかりしないと混乱のもととなります。

職人、という言葉は人によってイメージが違いすぎるから、きちんと「言葉」をあわせないといけない


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先日、大阪の財布メーカーさんから求人の話が来ました。くわしくは下記blogをご覧ください。

求人:財布メーカーのナダヤさんが職人を募集、というので聞いてきたし、音声動画もアップしてみた | phoenix blog

で、職人募集、という話を聞く場合、私が毎回やるのが「職人の言葉の定義」です。

日本の革業界では、「職人」という言葉の定義が業界や業種、さらには個人個人でも意味合いが異なることが本当に多いので、それをしっかり定義づけしなくちゃいけません。

「職人」という言葉は人によってイメージばらばら

普段私は、自分の職業を説明する時に意図的に「革の請負職人です」という言葉を使っています。
ちなみに請負職人、という言葉は革業界では一般的ではありません。でも私の職種をきちんと表している言葉がないんですよ。

セミナー冒頭でよく言うのですが、「普段は請負職人をしています。請負職人、というのは作りたくもないキーホルダーを500個作ったり、依頼された財布を50個作る、などある程度の個数を依頼されて作るのが仕事です。」と説明しています。決して自分の仕事はYouTuberなんて言いませんわ。

他方、「お客様からオーダーをもらって革鞄を作る」という人も「僕は革職人」と自称されます。
革を作ってくれるタンナーさんも「革職人です、私は」と言われる方も多いですね。

革業界ではあやふやなんですよ、「職人」という言葉は。

財布メーカー社長に聞く「職人」の定義

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今回求人をする、というナダヤさんに話を聞いたところ、彼の定義する職人、というのは「サンプルが作れて、型紙が作れて、量産のやり方をパートや内職、外注先に解説できる」「将来的に見積もりが作れる」というものでした。

 ん~、それは品質管理と技術管理をする職人さんですね。ミシンをがんがん使える、というタイプじゃ駄目なの?

「駄目です。ミシンを縫う、というのはパートの仕事です。職人を社員として雇う以上、品質と技術を管理できる人じゃないと駄目なんです。『俺だけが作れる超絶技術!』では困るわけです。それを下の人間が作れるようになってくれなきゃ困るんです」(ナダヤ社長)というように、メーカー社長さんでも「職人」という言葉をこれだけ重い意味合いで使う人もいるわけです。

しっかり「言葉と意識をあわせる」という作業をしておかないと、「職人、というから、お客とじっくり話し合う職種だと思ったのに違うじゃないか!」「ミシンを延々と踏んで人と話さなくて済むと思ったのに!」などとなり、雇いたい側・雇われたい側の時間と労力が無駄になるわけです。

ここらへんの話を50分インタビューして聞いてきました。下記YouTubeにあげていますので、興味ある方は聞いてみてください。

「言葉と意識をあわせる」という工程はものすごく重要

SDGsや職人などを例にとって解説しましたが、子育てだって、夫婦や親子生活だって、経営や仕事だって、この工程は重要です。

「そんなの言わなくてもわかるやろ!」ということはありえません。

自分の常識は非常識、と思って、相手とコミュニケーションを取る努力をしないといけないよ、というお話でした。

次回レザーソムリエ中級は東京で4月20日!

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興味ある方はぜひ。多分大阪人のわたしはお手伝いに呼ばれないと思います。

レザーソムリエは登録したら無料で見られる「オンライン皮革講座Basic」はほんとに価値あるのでオススメです。



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プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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