欧米ブランドに「負けていないぞ!」

2022年6月29日 の記事

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
今回は、ライブコマースという実況販売の実状や問題点を聞いてみた。いま、展示会やイベントで起きている問題をレポート。つくり手の立場からリアルにお届けします。ぜひ、ご覧ください。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

人気イベント「本日は革日和♪」および関連イベントが明日から東京で開催されます。このほか今後のスケジュールなどは下記のリンク先をチェックしてください。

「本日は革日和♪」

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今回はライブコマースの実況販売の実状や問題点について取材しました。
要は「スマホ片手に買い物しつつ、解説して、スマホ越しに見ている人が注文する」というシステムですね。

・ライブコマースはいくつかの意味がある

・ライブコマースはどういう場所で行われているか

・何が問題か。ライブコマースは悪か?

・では今ライブコマースに対して何をするべきなのか

というような内容です。

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ライブコマースってなに?

スマホ片手にオンラインで配信・実況しつつ商品を解説。その場で販売、というものです。


使うシステムは様々です。ライブコマース用のアプリ使うこともあるし、YouTube使うこともあるし、インスタグラムの動画機能でやる人もいます。

集金にせよ配送方法にせよ千差万別です。


"ライブコマース"というと、受け取り方が2つある
「アジア人が日本の手作り品市場なり販売イベントにやってきて、販売ブースの前に陣取って、ガサッと商品さらっていく」という形態のライブコマースが問題になっています。

日本での日本人相手のライブコマース市場って成長が伸びてはいるが、コロナ禍でも思ったほど伸びていないです。これに対してアジアのライブコマースはずっと成長していますねぇ。

先日、百貨店で6日ほど革の解説なり手縫いの実演をやっていたんですが、イベント初日・二日目や最終日にアジアの方が購入に来ていましたわ。で、その際に百貨店や販売者さん、さらには他の業種でライブコマース販売された方からも聞き取り調査しました。

ライブコマース、と聞いたら「あぁ、ネット経由のテレビショッピング的なものだよね」とイメージする人もいます。
他方、ライブコマースと聞いたら「イベントでガッサガッサと買い漁っていた」と少しネガティブなイメージを持つ方もおられます。

今回はこの後者の話を中心に解説します。

ライブコマースは日本向けとアジア向けで意味合いが全く異なる

国内のライブコマースに関しては下記サイトにまとめられています。ヤフオクやBASEなどでもライブシステムはあったのですが、2020年にサービスは終わっていますね。


日本におけるライブコマースの現状は下記レポートに詳しく解説されています。どういう年代が使っているか。そもそもどれくらいの人間がライブコマースで買い物をしたことがあるのか、などが載っています。
このblogをここまで読んでいる人は、読んでおいて損はないです。


他方、アジアのライブコマースですが、こちらは彼の国にて様々なアプリで行われています。どういうアプリでやっているか、などはここで論じてもあまり意味がないです。ライブコマースはやろうと思えばどんなSNSでもやることは可能です。YouTubeでも可能なわけです。ただ、彼の国では自国の内製アプリで行っているため、詳しく書くのはこのblogの本旨ではありません。重要なのは「彼の国の人がどういう場所でやっているか」「それに対して日本サイドはどう思っているか・どう対処しているか」ということです。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2020年6月に公表した資料ライブコマースの動向整理によると、日本でのライブコマースを知っているか、という質問回答は「内容も含めてよく知っている」のは4.1%。「聞いたことはある」を含めた認知度は21.9%。

ネットショッピングのためのライブ配信を観たことがあるのは19.1%。商品を買ったことがあるのは3.3%。

それに対して同じ資料の中国のライブコマースの市場規模は4,338億元(2019年)。2020年には2倍以上となる9,610億元になるものと予測されている。ライブコマースの利用者は2億6,500万人(2020年3月)。

インターネット利用者の29.3%、ライブ配信利用者の47.3%に相当。

圧倒的にアジアのほうが隆盛です。

どういう場所で彼の国のライブコマースは行われているのか

私が意識しはじめたのは東京のものづくり販売系イベントでした。そこから興味持って2年ほどいろいろ調べましたが、他にも百貨店やサブカル系のイベントなどでも見聞きしました。

石の販売イベント

今回の調査では国際宝飾展、という宝石などのルースと呼ばれる石の販売イベントでも見受けられたとか。
こちらは後で出展者のまとめを載せておきます。

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某大型手作り品販売イベント

東京で年2回やるイベントですね。前回視察に行ってみてきました。こちらは会場内でのライブコマースは全面禁止でした。

某百貨店

先日客寄せパンダ的に百貨店のイベントに出ました。材料販売のイベントですが、こちらでもライブコマース配信者は来ていました。

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どういう風にライブコマースは行われるの?

国際宝飾展出展者にきいてきた

ねぇ、国際宝飾展に出展していた石関係の業者さん、どうだったの、ライブコマースは?

「ライブコマースはめちゃありがたいですよ。うちは国際宝飾展がお願いしているアンバサダーさんがうちの品を紹介してくれました。石販売の世界ではすでにライブコマースは一般的です。国際宝飾展なんてライブコマースの人のためのブースが用意されています」

!!!!
ライブコマースのブースがきちんとあるの?

「えっ! ムラキさん知らなかった!? 宝飾展は宝石などのルースが中心だけど、ライブコマースがめちゃくちゃ盛んだよ。単価でかいからねぇ。うちはアンバサダーさんがうちの品をガンガンと紹介してくれました。おかげでバンバン売れましたよ」

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入金や発送はどうするの?

「アンバサダーさん自身が使っている配信のコメント欄なりから注文を集めます。その後、うちから定価で購入し、アンバサダーさんサイド自身で発送して、お金も回収しています。うちはその場で現金なりクレジットカードで支払ってもらっておくので、楽なものですよ」

なるほどなぁ。

「むしろムラキさん、逆にライブコマースが嫌だ、という市場はあるんですか?売ってくれるんだから何が文句あるんですか?理解できません」

では、次は下記のようなtwitterまとめができてしまっている手作り品市場で、ライブコマースが何故問題か、というのを調べてみましょう。

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こちらは5月下旬に行われたイベントですが、入ってすぐの場所に貼ってある「ライブコマース禁止!」のマーク。すでにこんな状況に・・・。

革屋のフェニックスからの仕事の一環としてお土産袋(お菓子詰め合わせと広告を入れた袋)を50個ほど会場で手渡しました。

会場内であった人に、「ライブコマースってそんなにいるものなの?」ときいてみました。

「あー、twitterまとめでもありましたように、前回のライブコマースではアジア人の方のライブコマースは盛んでした。あのまとめにもあるように、商品をがさっと一気に全部買おうとする・見ている他の人のことを考えない、というのが主要な問題点だと思います。

売れるのはありがたいんですけどねぇ」

某百貨店の社員さんにもきいてみた

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客寄せパンダとして実演などをしていました。6日間。

さて、このイベントは「縫う素材の販売」というイベントです。
こちらでも初日・二日目や最終日にライブコマースの人は見受けられました。こんな間近でライブコマース演る人を長時間見られるなんてラッキーと思いつつ見ていましたが、思ったほどえげつない買い方はされていませんでした。

大声でアジアの言葉を喋らず、スマホ片手に喋っている・周りの人が映らないように気を使っている・買い物もガッサガッサと集めていないな、などなんというか、、、上品な配信をしているな、と思いました。

で、某百貨店さんにライブコマースどう?迷惑なの?ありがたいの?ときいてみると

「ライブコマースも来てくれたらそれだけ買ってくれるのでありがたい存在ではあるんです。彼らも日本語通じる人・通じない人はいますが、話せばわかってくれます。わかってくれない人はお断りします。販売されている方が対処できないなら百貨店社員である私達に言ってくれたらきちんと警告や対処をしていますね」

では、彼の国のライブコマースを日本国内で行われるのは"悪い"行いなのか??

国際宝飾展出展者にきいてきた

「全然悪くないです。むしろ来てくれなきゃ困ります。宝飾展・・・宝石や化石の販売ですが、これは出展者も海外から来ていますよね。それなのに来場者が少ないと確実に出展者はブチギレます。このライブコマースで売上があがるからこそ、コロナ禍でもイベントが開催でき、販売で利益出せる、という話なわけですよ。

手作り品の場合は供給量限度があるから手放しで喜べない、ってのはわかります。ですが、それなら供給量増やせばいいじゃないか!としか僕らは思えません」

んー、面白いなぁ。立場が変わると見方も違うわねぇ。

某大型手作り品販売イベントの出展者にもきいてきた

「私は自分で作って販売していて、イベント出展の際にはライブコマースお断り、と書いています。

ですが、ライブコマースが悪い、とは思っていません。ライブコマースのほうがよく売れる、という人もいるだろうし、ライブコマースって一般的な転売、と同じとはいえないんですよ。配信者は良い品をきちんと紹介して、配信を見ている人に買ってもらいたい。より良い品を販売したら自分の次回の配信にもつながるわけですし。安易な転売と同じ迷惑な行為、とは思いません。

何かを見出して価値を説明して販売する、というのはすごい行為です。それに対して対価を制作者じゃなくて、配信を見ているお客さんから取る、わけですから、すごい良心的だと思います。

ただ、すべての品をガサッと買おうとしたり、いつまでもブースの前で陣取る、などは勘弁してほしいな、とは思います」

じゃぁこの巨大販売イベントはライブコマース禁止!を大きく打ち出しているけど、どう思う?

「全面禁止はもったいないです。それならライブコマースokゾーンを作る、とか、極悪ライブコマース配信者をきちんとイベント主催で取り締まってほしいです」

某百貨店のイベント出展者にも聞いてきた

「んー、うちは布販売だけど、初日に『全部売ってほしい!』と言われたよ。断ったけど。『それはなぜ!?私が日本人じゃないからか?』と言われたけど、日本人かどうかなんて関係ない。私たちはイベントに出展していて、残りの日数もお客さんに品をきちんと売りたい。最終日なら全部持っていってもいいよ、と説明しましたよ。

ムラキさん、ライブコマースが良い悪い、じゃなくて、その相手の行動がきちんと良いか悪いかを販売する私達が判断して、それを伝えるんだよ。駄目なものは駄目、と言う。さっき全部買いたい!と言ったアジア人の人には『5mずつならいいよ』と言ったら全商品5mずつ買ってくれた。でも一廻りした後に『もう1回5mずつ買っていいか?』と聞かれたからNO!と伝えた。伝えることが大事」
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なるほどなぁ。

このイベント二日目の朝礼で、他の出展者から「ライブコマースで目に余る人には注意を言ってくれ、と言われたがその基準を教えてほしい」という意見がありました。

これに対して百貨店社員さんからは、

・長時間場所を占領していて他の人が見れない、ので注意を発する

・カゴ1個分保持したら、一度会計してもらう旨を伝える

という基準が伝えられました。不安なら遠慮なく社員呼んでね、とのこと。

ねぇねぇ、社員さん。カゴ1個分ってどういうこと?

「アジア人のライブコマース配信者さんは配信を続けてやらなきゃいけないから、商品を配信>コメントで購入!と言われるとかごに入れる>次の配信、という流れです。

この間かごは放置されます。お客様によっては『あのかごの中の品がほしい。でもずっと放置されているんだが、あれは売れたものなのか?』と聞かれるわけです。ですのでカゴ1個ごとにきちんと会計してほしい、というのは配信者さんに伝えています」

今、突きつけられているのはイベント主催者のルールづくり

ライブコマースは販売チャンネルとしては非常に優秀だと思います。ネットが繋がり、スマホが見れるならば地球の裏側でも購入は可能です。

ですが、上記のインタビューでも感じましたが、

「イベント主催者なりの"場"の人間がライブコマースに対してのルールと、監視をきっちりとする」

が一つの回答かな、と思います。

全面禁止にするのも一つの対処法です。ですが、売上あげたいならばルールをきちんと決める・ライブ配信者を登録制にする・ライブ配信ブースをきちんと作る、なども手です。

商品を独占する・商品を見ている他の来場者に迷惑をかけるようなライブコマース配信者が得をするような環境ではイベント参加者(購入者も出展者も両方)は得をしません。ですが、1回でも迷惑ライブコマース配信者が暴れようものならば、イベントへの満足度はガクンと下がり、twitterまとめなりが作られるのが現状です。

もちろんそのためにはイベント出展者は監視・見回り・警告・叩き出す、などの管理をしなきゃいけません。コストまたかかるなぁ。ほんとにイベント主催者さんは大変だなぁ。

一番駄目なのは「ライブコマースなんて個々人の出展者で判断して対処してください」というものですな。

これは間違いないです。

自分でライブコマースやってみたらいいんちゃう?

前向きでいいね、その気持ち。それはそれでありだと思います。日本国内も茨の道ですが、海外でも茨ではあるとは思います。

その場合は、テレビ東京系のテレ東BIZの下記動画をご覧ください。

アジアでのライブコマースの現状や、「俺たちはここまで真剣にライブコマースしているんだよ!」というのがよく伝わってきます。ほんとにすげぇな、あの国は。

ライブコマースについて調べましたが、追記を別の場所で書こうと思います。面白いよ、この世界。

今後イベント予定

6/29(水) レザーソムリエ講習会中級 お手伝い
7/9(土)〜10(日) 信州ハンドクラフトフェスタ2022
7/23(土) 宮城県・仙台 革日和ぷち
...仙台で革日和イベントをやるための場所探しに行きます。ついでになにかセミナーなどします

9/1(木)〜3(土) 素材博覧会小倉


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プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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