欧米ブランドに「負けていないぞ!」

June 24, 2020

村木るいさんの「人に話したくなる革の話」/姫路市&たつの市のタンナー訪問して いろいろな仕上げ革を見てきた

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。

今月は、「姫路市&たつの市のタンナー訪問して いろいろな仕上げ革を見てきた」
都道府県をまたぐ移動の自粛要請 全面解除後、初投稿に相応しい内容です。姫路のイベントのお知らせも必見ですよ。

*   *   *

通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしておりますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。
当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

人気イベント「本日は革日和♪」。今後の予定、スケジュールなどは下記のリンク先をチェックしてください。

  「本日は革日和♪」
  <http://ccrui.sakura.ne.jp/kawabiyori/>

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毎度です!

コロナのおかげでお店もさることながらイベントが中止でまぁ大変、です。

自粛解除が出た際に兵庫県姫路市&たつの市のタンナーに行ってきました。
県を越えた移動は自粛を、ということでしたが、幸いにも住まいは兵庫県ですので、県をまたいでいません。( ̄ー ̄)bグッ!



目次 [hide]

コロナでどう大変だったか

なぜこのご時世にたつの市&姫路市に行ってきたのか

姫路市高木のタンナーアルファレザーに挨拶

7月5日に革の市

たつの市のシンヤ工業所へ

シンヤ工業所ってどんなところ?

ニューレザーコンテストの革を見せてもらった

姫路市御着のレザーカフェに

革の仕上げ工程、という面白さ

今後予定


コロナでどう大変だったか

わらじを3足~4足ほど履いているので、村木個人は収入激減などは個人的にはなかったです。

わらじのひとつ、レザークラフトフェニックスはSTAY HOMEの影響か、レザークラフトを始める方が多かったように思えます。そのためネット販売部門は大忙し。


・店頭は自粛期間中は休業にしておりました。


ネットショップは運営していたので、店内ではスタッフがドタバタとしていました。社員・パート・バイト問わず、「出勤時にコロナが怖い」というスタッフには休業補償を支払い、休業してもらっていました。

そんな中、出勤してくれていた社員・パートさんには、「コロナの中出てきてくれてありがとう」ということで500円の昼食補助が支給されていました。

5月21日現在:店頭営業の再開時期についてのご案内 | phoenix blog


・6月に入り自粛解除。店頭は世間が自粛解除しても全面解除は怖い、ということで「月曜~金曜の平日のみ11時~16時まで。水曜定休日。土・日曜臨時休業」という変則的な営業を行っていました。

6月1日より段階的に店頭営業を再開します!まずは時短と曜日の制限ありから。 | phoenix blog


・で、6月15日から通常営業。


6/15(月)より営業時間を通常に戻します。 | phoenix blog


6月23日現在も営業時間は通常通りですが、店内に3組以上のお客がいると2mの距離を保てない、ということで店内入場規制を行っています。

 

・これらの情報を各種SNS、Blog、グーグルビジネス、などで発信し続けていました。


たまに「どのSNSだけやればいいですか」という質問を受けますが、「お客がやっている可能性がある媒体は全部やるしかねぇ(;´Д`)」というのが回答となります。

ほんとに「遊びじゃねぇんだ、SNSは!」ってなものです。


あ、グーグルビジネスは営業時間修正や定休日変更などがある際は、こまめに変えたほうが良いです。

さて、6月下旬に入りコロナも一段落(第2波怖いが、、) 以前からやりたかったタンナー訪問を開始しました。


なぜこのご時世にたつの市&姫路市に行ってきたのか

毎年11月に兵庫県たつの市で行われているひょうご皮革総合フェア&たつの市皮革まつり

もう5年〜6年バスツアーをこの日にあわせて決行していますが、個人的に一番の目玉はニューレザーコンテストです。


村木るいさんの「人に話したくなる革の話」/ニューレザーコンテストでタンナーの底力を見てきた、という話を動画で解説しよう | 欧米ブランドに「負けていないぞ !」 | JLIA 日本皮革産業連合会

ここで行われているニューレザーコンテストはタンナーさんが様々な革を出展しています。中には販売用もあるし、到底販売には向かない品などもあります。

で。
このコンテストの上位入賞の革はそれはそれで面白い革も多いのですが、入賞していない革も面白いものが多数存在します。いや、むしろ入賞していない革ほど尖っている革は多いように思えます。

上記の革などは面白い作り方をしているな、と思ったのですが入賞していませんでした。


今回JLIAのblog仕事にかこつけて、タンナーに直接訪れてタンナーを紹介しつつ、どういう作り方やどういう考え方でこの革を作ったか、を聞きたおそうと思います。


姫路市高木のタンナーアルファレザーに挨拶

アルファレザーさんは2年前のニューレザーコンテストで高度加工部門で受賞されたタンナーさん。この革は私は個人的に購入し使っていますが、使ってみてわかる面白い革でした。


で、行ってみると加工の真っ最中。

この革って小さいからカーフ(子牛)、、、にしてはちょっと繊維がゆるい感じがするなぁ


アルファレザーさん

「これはな、鹿やで。鹿革を預かって

表面加工、その後に

透明フィルムを貼っている最中やね」

透明フィルムを貼ることで汚れ防止や染料の色移り減少にもなります。


この表面にある血筋のような模様は鹿本来が持っているもの?


アルファレザーさん

「いや、これはこちらで模様をつけているんだよ。

印刷じゃなくて手作業で

このように模様をつけることで、

より面白い表情にすることが可能になるんよ」


アルファレザーさんは、仕上げが得意なタンナーであり、この鹿革にしても同業他社さんからの依頼で仕事を行っています。


最近なにかおもしろい革作った?


アルファレザーさん

「もちろんあるで( ´∀`)bグッ!」

こ、これは革の中央にクロコの背中 1本型押し、、、これ、通常のやり方では面倒くさいやり方なのに(;・∀・)


これ、面白い型押し革なんだが、「これを買って鞄にする」よりも「このまま壁に飾る」ほうが見栄えするだろうになぁ。素材としての革ではなくて、インテリアとしての革になる。


※革に型押しする版は畳一畳ほどの大きさがあり、その中にクロコの背中模様が3~4ほど連なっています。そのためこのように1つだけを真ん中に押す、というのはすごく面倒くさく、かつ、嫌がられる。

写真の加減で金色に見えますが、表は金色・裏面は銀色のリバーシブル模様の革となっています。


革は表面の銀面と裏面の床面では繊維の密度が異なります。通常の鞄や財布などは裏面床部分が見えなくなるように布や薄い革を貼る、という工程が必要となります。
この革の面白さは表に金・裏面部分の床に銀にすることで、作業工程の簡略化・軽量化などが可能となります。


ALPHA LEATHER'S GALLERYさんの作品一覧 | ハンドメイドマーケット minne


アルファレザー | LINE Official Account



7月5日に革の市

アルファレザーさんが所属する姫路市高木では、革の里(in ポケットパーク花田)という場所で7月5日に革の市が開催されます。アルファレザーさんもこの日に出店されます。


毎月、第1日曜日に「革の里」構内駐車場において開催される「革の市」。
皮革素材や革製品の販売はもちろん、革の里館内にてキットによるコインケース、ペンケースなどを作れる体験ワークショップも行われます。

みなさま、是非ご来場ください。

<≪姫路 革の市≫毎月第一日曜日開催 皮革の即売市 - 革の市≪姫路市で毎月開かれる皮革製品、レザークラフト革素材の直売市≫

革の里紹介:レザータウン姫路 革の里 レザークラフト教室|財布・靴・革細工|革の市|皮革工場見学 -はりまるしぇ


ポケットパーク花田 - Google マップ 



たつの市のシンヤ工業所へ

シンヤ工業所さんへは事前にアポを取り、日本皮革産業連合会のblogを書いています、と挨拶してから行っています。普段見学などを受け入れているわけでもありませんので突然訪問!などは絶対にやめて下さい。



シンヤ工業所ってどんなところ?

皮革素材メーカーのシンヤ工業所

紹介:シンヤ工業所 | 日本のタンナー | 日本革市


上記リンク先サイト「日本革市」の説明が丁寧でまとまっています。
HPでもありますように車用の革、クラフト用革、クロム革、グローブ革、ドラムタンニンなど多岐に渡る革を作られています。


タンナーさんは各社によって得意分野が異なります。シンヤ工業所さんの革は、触った限りではコシのある革が得意なように感じられました。

工場は大きく、大勢の人が働いているように感じました。今回訪問した際にはコロナの影響で少し規模を縮小して働いておられました。

ニューレザーコンテストの革を見せてもらった

さて、念願の昨年のニューレザーコンテストの革を見せてもらいました。

この革をコンテストで見て面白いな、と思ったのは「革1枚にこれだけランダムに線が書かれている」のが面白いわけで。例えばA4なりA3 1枚にランダムに線を書くのはそれほど難しくないです。腕を動かしたら描ける大きさはそれほど苦労しません。

ですが、革1枚全体になるとそれを行うだけの場所とその作業をするだけの体力と気力が必要となります。

コンテストでは赤地に黒のみだったのに随分と多色がありますね?


シンヤ工業所さん

「これはサンプルとして

作ったものですね。」


これって、このような模様が存在するわけではなく、実際に筆を使って革1枚に自由自在に書いていますよね?


シンヤ工業所さん

「そうですね。模様がついたプリントも

存在するのですが、

このような模様は存在しません。

ですので、

当社の人間が一人で

このように筆で書きました」


これって、「素晴らしい革だ!じゃぁ鞄で使うから50枚注文!」とか来ると大変じゃないですか


シンヤ工業所さん

「そうですね(;・∀・) 1枚1枚

手で書いていきますので、

作業量が大変です。

あと、この革は割れがあるんですよ」


表面が割れるんですか? プレスか型押しの問題ですか?


シンヤ工業所さん

「いえ、そうではなくて、

この筆で黒い線を書く、という際に

筆の加減で

ボタッと垂れてしまうと

ダマになってしまいます。

その黒いダマの部分に

厚さが生じてしまい、

曲げると割れることがあるんですよ」


あ~、仕方ないんじゃないですか、それはもう。アヴァンギャルドの代償でしょう。

色々と貴重なお話が伺えました。グローブや車用革などのブレが許されない革を作るシンヤ工業所というタンナーがこれだけブレ幅の広い革をコンテストに出しているのは面白かったですね。


シンヤ工業所様、ありがとうございました!


皮革素材メーカーのシンヤ工業所


シンヤ工業所 - Google マップ



姫路市御着のレザーカフェに

帰りに、「そういや行ったことなかったな」と思い姫路市御着のレザーカフェに。

ここは御着四郷皮革協同組合が17年9月に作ったスペースです。内容としては御着のタンナーさんの作った革の販売を行っています。レザーカフェ、という名称ですが、カフェ機能は自動販売機によるお茶購入くらいだと思ってください。


なんで飲食業してないの?


レザーカフェさん

「飲食業の許可を得ようと思うと

すごく大変で」


あぁ、保健所の管轄ですからトイレの設置やら、資格やら色々ありますからねぇ。。じゃぁ、この場所のメイン機能は?


レザーカフェさん

「御着のタンナーが作った

革の販売となります」


例えば「この革が次回もほしい」、といった場合は?


レザーカフェさん

「ここで販売しているのは

御着のタンナーが作った

革のサンプル品などになります。

そのためここの在庫のみと

思っていただいたほうが良いですね」


例えば「私はメーカーなので30枚ほしい」とか「定期的に10枚ずつほしい」などの話になると?


レザーカフェさん

「ここは組合が運営しておりますので

『その革ならば~~

タンナーが作っていますので、

紹介します』

ということは可能ですよ」


常設展示場みたいなものですな。下記の革はまたちょっと変わった風合いで面白いですね。

Leather cafe

営業日:月曜日・水曜日・金曜日
営業時間:午後1時30分から午後5時まで
場所:姫路市四郷町山脇150-1  (株)三昌 内
電話番号:080-6219-3403
運営:御着四郷皮革協同組合

Leather cafe - Google マップ

※現在コロナの影響で変則的な営業時間となっています。必ず電話してから行ってみてください。


革の仕上げ工程、という面白さ

以前も紹介しましたが、革の仕上げ工程は「革に対するお化粧」みたいなものです。
革のナチュラルな仕上げも面白いのですが、上記にあげたようなアヴァンギャルド、、、一歩間違えば突拍子もない表情も出せるのが革素材というものの懐の深さです。


村木るいさんの「人に話したくなる革の話」タンナーという仕事には色々あって、それぞれに世界が全然違う、という話 | 欧米ブランドに「負けていないぞ !」 | JLIA 日本皮革産業連合会

革屋さん、という商売は「見た人の4割(6割かな)がほしいと思うんじゃないかな、この革は」「あの会社なら50枚は使いそうだ!」という革じゃないと怖くて仕入れられません。

上記にあるような仕上げ加工の革は、それほど需要が高いというものでもありません。ただ、ほしい人は地球の裏側からでも買いに来てくれる革だと思います。

「じゃぁそういう革はどうやって手に入れたら良いんですか?」 仕上げの革は少数からでも対応可能なものもあります。

「そういうものを実際に見たいならばどうすればいい?」 そこで11月のたつの市皮革まつりのニューレザーコンテストなわけです。ここで革を見て「これ面白い!」と思ったら直接タンナーに相談してみるべきです。

 

今後予定

6月に入って依頼があり、チラホラと機械の講習や革の講習などに行っていました。


今後は・・・

7月11日(土)・12日(日) 革日和 in 熊本のために会場探しの視察。で、視察だけじゃつまらないのでレザークラフトショップ ANGEL 《熊本レザークラフト教室・革材料販売.革製品販売》にて、革の講習予定。空き状況などはレザークラフトショップANGELさんにお問い合わせください。


7月19日(日) 7月19日(日)教えるフェスタ2020《11人の数珠つなぎライヴ配信》 | サンプル師が教えるバッグ教室参加


10月2日(金)・3日(土) ジャパンレザーアワード(現在、事前エントリースタート)審査会にて革日和出展予定




プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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