February 24, 2022
【村木るいさん連載】イベントで「知ってもらう努力をすることは、相手を知ることだな」と実感した話
カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」
皮革業界総合研修のオンラインセミナーをしてみた
今年は「小さな会社にこそ必要な自前の『情報発信』戦略」という講座をオンラインで行った
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「プレスリリースを送って、新聞が取材に来るとこっちが思ったものと違う点が紹介される。それは他者が見たらそちらのほうが記事になる、と判断したから」
今回話していただいた内容で印象に残ったのが、上記にあげた言葉。
どういう意味?
「プレスリリースを新聞やラジオに送ったとするよね。そうすると取材に来てもらえる(場合がある)。
このときにこちらとしては記事に口出しもできないし、事前チェックもできないと思っておいたほうがいい。そうなると『自社の製品、イベントの特長はこれ! 』と思っていたのに、記事になるとその点じゃなくて他が使われることはよくあることなんだよ。
それは悪いことじゃない。今までさんざん自分で見てきたもの・開発したもの・売っているものの良さってのは、自分では気づきにくくなりやすいんだよね」
当日は3つのセミナーを行いました。
「人に話したくなる革の話 革の買い方や歴史編」
「ラウンドファスナーコインケースを目の前で実演して作るセミナー」
「3Dプリンタデータ作成実演と雑談質問」
このセミナーを1日3回×3日間行いました。
この3つのセミナーは、話す内容はそれぞれ異なります。
「人に話したくなる革の話 革の買い方や歴史編」
レザークラフトや革製品に興味がある人向けの革の歴史や雑学。
「ラウンドファスナーコインケースを目の前で実演して作るセミナー」
目の前で工具を使いながらコインケースを手縫いで仕上げつつ、「この工具は便利です」「こうやると時間短縮できます」など雑談をする。
「3Dプリンタデータ作成実演と雑談質問」
3Dプリンタで何ができて、そのためには何がいるか。いくらくらいかかるのか。聞いている人は何がしたくて、それが可能なのか?そのためにはどれを買えばいいのか、何を勉強すればいいのかをお伝えする。PCで実際にデータも作ってみる。
意識しないと消費者や初心者のつまずきは理解できない
これらのセミナー、2つ目、3つ目は有料ですが、主目的としてはお金がほしい、というわけでもありません。
目的は2つ。
1つ目は、客寄せパンダ。
ブースの取りまとめが私の仕事なので、素材博覧会開催中は特にやることはありません。
セミナーを開催することで、「このセミナーが聞きたいからこのイベント行こう!」と思ってもらうことがイベント開催中の私の仕事なわけです。まぁ、客寄せパンダ、ですね。
2つ目は、「初心者さんなり消費者が何がほしいか」を知ることです。
最初のセミナーはレザークラフト初心者さんや革製品が好きな人向けのセミナー。2つ目はレザークラフトを今後はじめよう、と思う人や実際始めたばかりの人が対象。3つ目は3Dプリンタ初心者か、買おうかどうか迷っている人が対象です。
革の販売や職人仕事をしていると、最初に自分がどう苦労したのか。何がほしかったか、という気持ちを徐々に忘れてしまうんですよ。
キャリアを重ねるごとに「自分はものを知っている」と勘違いしがちですが、それは同時に「初心者や消費者が何がほしいのか」という気持ちがわかりづらくなっている、ということもありえるわけで。
これが恐ろしい。ものすごく恐ろしいわけです。
だからこそ、こういうセミナーをすることで「どの部分にお客は食いついているか」「どこで寝そうになっているか」「何に頷いてくれるか」などを逐一見ています。人に教える、ってのは自分が教わることだな、と自分の心に入れるために初心者向けのセミナーをやっています。
3Dプリンタのセミナーで正しい質問をしないと、相手が望む願望を聞き出せない、と学ぶ
3Dプリンタセミナーでは受講生さんに聞き取り調査を最初に行います。
「あなたは何が作りたいですか?」と。
今回のケースでは、女性で「フィギュアを作りたいんです」とのことでした。この一言で、「じゃぁ、こういうプリンターで、こういうソフトで、ソフトと3Dプリンタで~くらいの金額かかりますよ」などはすぐ回答ができます。
ただ、見た限り相手さんはフィギュアがほしい、という感じではありませんでした。フィギュアなのか、ドールなのか、動物のフィギュアなのか、、、
じゃぁ、フィギュアを何にどう使って、どれくらいの大きさのフィギュアがほしいですか?と追加質問です。
「~~という工芸品を作っており、その中にフィギュアを入れています。それを自分で作りたいな、と」
ん?それは鉄道模型で使われる情景小物と呼ばれるものですよね?Nゲージの大きさにあわせて極小サイズの人間や動物、のやつ?最近はテラリウムや盆栽の添え物としても使われている小さなやつよね?
「そう!それです!」
あぁ、なるほどなぁ。
受講生さんの言う「フィギュア」という単語と、私が脳内に設定する「フィギュア」の前提が異なりました。
最初の質問、「何が作りたい?」に対しての「フィギュア」だけ聞いて話を進めていたら、お互いが想定しているフィギュア像が異なるため、話す内容が受講生さんの望む内容と異なります。最終的に「聞きに来た意味なかったな」となりかねません。
あぁ、恐ろしい。正しい質問ってほんとに大事。そのためには相手の回答以外にも声色や表情、手の動き、年齢や性別などの実際の「言葉以外の情報」がないと正しい情報は得づらいです。
「ネットにある情報は情報過多すぎて、自分がほしい情報にたどり着けない」と言われた
受講生さん、正直私の知識や技術って3Dプリンタやっている人のトップレベルが10だとするならば、多分レベル2レベルです。それでも受講されて価値はありましたか?
「価値ありました!
私がやりたいことを理解してもらって、それに対応する知識を提供してもらえたと思います。
ネットにある情報って『3Dプリンタでこんなに細かいフィギュアが作れます!』などとよく書かれていますが、そうじゃないんですよ。最初の一歩で『私もそんな細かいフィギュア作りたい!』という人がいるのもわかります。ですが、私はそうじゃないんです。
私がやりたいことが困難なのか。それ以外の解決方法があるのか、ということが知りたいんです。ネットは情報過多すぎて、自分がほしい情報までたどり着けないんですよ!」
なるほどなぁ。
私以上に3Dプリンタに詳しい人はざらにいます。山程います。もっと詳しく専門的に話せる人もたくさんおられます。ですが、初心者がほしいのは「自分が作りたい、という願望に対する回答」なんだろな、と思います
そういう意味では私のセミナースタンスはあながち間違いではないな、と思います。ものすごい上級者の回答じゃなくて、「初心者がどこでつまづくか。どこで苦労したか。お金はどれくらいかかるか」などの話が受講生には必要なわけですから。
姫路で姫路革アピールのイベントを見てきた
で、横浜の次の日は電車で姫路までイベントを見に行ってきました。知り合いのタンナーさんが姫路駅ビルにて姫路革アピールのイベントを行う、とのこと。駅ビルのピオレ姫路の1Fイベントスペースで行っていました。
姫路市民でも姫路が革の産地、ということを知っている人は3割位。これを5割にしたい
このイベントを行ったのは姫路レザーディレクション協議会。姫路の高木・御着の皮革組合員さんによるポップアップイベントです。
-- めちゃ失礼ですが、姫路レザーディレクション協議会ってのはいつできたの?
「4月に立ち上げます。このイベントは決起イベントというか協議会を行う前の事前イベントです」
-- 姫路の高木・御着、という2つの地区のタンナーさんがこのイベント行うのはなぜ?
「姫路市民でも、姫路が革の産地、ということを知っているのは3割くらいなんですよ、これを5割にしたいな、と思っています」
-- めちゃ失礼な話ですけど、「東京でアピールだ!」とか「世界だ!」とか思わないの?
「東京なら、東京向けに他の組合なりがアピールされています。世界に対してはそれこそJLIAさんがアピールしてくださっています。大きな方向はほかの人がやればいいんです。私たちはまずは地元からです。
ターゲットは狭く絞れば絞るほど、芽が出やすいですからねぇ」
-- 今回姫路の革を使った製品を展示されていますが、学生さんのも展示されていますよね?
「姫路工業高校専門学校と神戸ファッション専門学校の生徒さんの作品も展示しています。若い人に革を使って作品を作ってもらい、さらに若い人にはワークショップも行っています」
-- 最後に挨拶お願いしますわ。
「姫路レザーディレクション協議会は4月から開始します。姫路の革をより知ってもらうための活動を行いますので、よろしくお願いいたします」
今回のまとめ
消費者なりの考え方なりを理解するためには、他者の目を入れたり、実際に消費者に当たらないとわからないな
さて、3つのイベントを通して思ったのは、「消費者なりの考え方なりを理解するためには、他者の目を入れたり、実際に消費者に当たらないとわからないな」ということ。
自分一人だとどうしても視野が狭くなります。他者の目も入れるのも手ですが、自分から積極的に初心者なり消費者なりにぶつかりに行き、話をするのも手ですよ、というオチでした。
今後のイベントについて
5月の「レザーフェア」にあわせて「革日和♪ in 大阪」予定
イベント参加の際には、本日は革日和♪で告知します。
プロフィール

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター
東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。
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