欧米ブランドに「負けていないぞ!」

December 28, 2022

【村木るいさん連載】皮革業界はAIで「革に役立つものを作る」という夢は見られるのか?という話

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
今回は、皮革業界はAIで「革に役立つものを作る」という夢は見られるのか?という話。AIによるイラスト生成についてレクチャーしてくれます。ぜひ、ご覧ください。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

人気イベント「本日は革日和♪」および関連イベントが明日から東京で開催されます。このほか、今後のスケジュールなどは下記のリンク先をチェックしてください。

  「本日は革日和♪」

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毎度です!「確か中学生の頃にブレードランナーの原作は読んでいるはずなんだよ。ただ、読みづらくて内容覚えきれていないな」村木です。

まぁ、SFなりが一番おもしろいのって小学生高学年や中学生の頃じゃないかなぁ、と思います。SFは「こういう技術があれば社会にどういう影響が及ぼされて、どういう商売が出るか」という想定が行われているので読んでいて勉強になります。

で。今回の話は、

・まさかAIによるイラスト生成がこの4か月でこれだけ進歩するとは・・・
・AIイラスト生成で鞄や靴のデザインはできるのか?
・でも高額なパソコンが必要なんでしょ?いえいえ!そうでもないのよ
・じゃぁ、それがどのように革業界に影響を及ぼせられるのか

という話をします。

いつものごとくオチから話しておくと、

「玉石混交のデザイン100点は作りやすくなる。そこから玉に磨くのが人間の仕事かな」

というものとなります。

さて、今年も終わりで1年振り返ると・・・

今年もコロナは解決しませんでした。

前回のスペイン風邪が終結に5年の年月を要しましたが、今回もやっぱり5年かかりそうだなぁ、と。
スペイン風邪はちょうど第1次世界大戦時のパンデミックでした。今回はインターネットやら、世界も進歩したし、3年くらいでパンデミック終結かな、と思いましたけど無理そうですね!


スペイン風邪、というけどスペインは悪くないのに、疫病に名前つけれているのはほんとにかわいそう。

AIによるイラスト生成がこんなに進歩するとは・・・

今年前半ではテレビでVRがよく取り上げられていました。「あー、VRゴーグル買うかなぁ」「でもやりたいこといまいちないんだよな。でも新技術は体験したいしなぁ」「日本タンナーズ協会の360度VR動画はほんとに面白いんだがなぁ」「VR動画なり写真の記録はやっておきたいな」とウダウダと見守っていました。ThetaVを買って、360度写真撮影は以前からちょこちょことはしていました。



が、VR新年(記憶している限り3回くらいは言われているなぁ)になるかと思った矢先、発表されたのがAIによるイラスト自動生成。これが毎週ごとに進歩進化していきました。見ていてぞっとするレベル。

AIによる画像自動生成の流れ、が突然動き始めた8月

AIによるイラスト生成ソフトはStable Diffusionが8月に発表したのがスタートかな、と思います。ここから急速に進歩進化していきました。


プロンプト、と呼ばれる呪文を入れると自動でイラストなり写真を生成する、というものです。
どんなものでもOK!ということはなく、「自動生成は指が6本になる」などの問題があったのですが、急激な進歩や進化でどんどんと発達していっています。

AIによる画像自動生成の面倒くささと、パソコンのスペックと、突然楽になった10月
AIによる画像生成に要求されるパソコンスペックは結構重ためでした。性能が足りていないと生成するのに時間がかかったり、作られるイラストの大きさが小さかったり。わかりやすくいうと「最低でも10万くらい、、できれば15万円以上お金かけないとちょっときつい」というものでした。

また、導入もパソコンにプログラム入れるなり、1か月20$なり10$なりの費用もかかりました。まぁ、ちょこっと遊んだりしましたが、10月に「Web上で無料でできるよ!」というシステム「Mage」が発表されました。えっ!マジで!と叫んだものです。


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こちら、Web上で完結するため、画像生成に30秒ほどの時間はかかりますが、私のパソコン(8年前くらいに買っていて、1万円くらいのGPU放り込んでいるもの)でも動いてくれました。

実際に自動生成でバッグや靴や財布のデザインを作ってみよう!

このMageのおかげでAIによる自動生成は格段に楽になりました。実際にやってみましょう。


バッグのデザインを作ってみる

使い方は簡単。Mageのサイトを開いて単語を英語で入れていくだけ。


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イラスト生成のコツはひたすら、トライ and エラー and リトライ!

漠然とした単語を入れるよりも限定すればするほど狙ったものは出やすいかな、と思います。下は「bag alien」と入れたものです。

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なんだこりゃ。「エイリアン+バッグ」だとこうなるのかぁ。もうちょっと細かく「Bag alien space」と入れると・・・

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「バッグの外側に宇宙かけばいいだろ!」的になっているな、これ。「bag alien shape」と入れると・・・

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違うなぁ・・・バッグの外側にエイリアンかけばいいんだろ!的に考えていやがるなこいつ。エイリアンのイメージが古いな、これまた。

「alien bag green shape」と入れると・・・

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お!ちょっと良くなってきたな。やはり限定すればするほど良いように思えます。

AIに指示することを「呪文を入れる」と表現しますが、呪文をどのように入れるか、などは試行錯誤していくしかありません。いろいろ試してみました。

AIで作ったバッグや靴や財布

バッグ

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bag alien系列で生成。

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「shoes doraemon」で生成。あぁ、なるほど。色合いか・・・

財布

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「space+wallet」や「doraemon+wallet」

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AI 自動生成の仕組みを考えると何が得意で何が苦手かわかってくる

AIによる自動生成は単語を突っ込んで、Web上に出てくる検索結果を組み合わせている、というだけのものです。AIさんはspaceやらbagやらを明確に区別しているわけじゃありません。

正直、AIはそれほど賢いわけじゃありません。ただ、彼らはこの検索して組み合わせてアウトプットする、という作業を何十回、何百回、何千回繰り返して、どんどんと蓄積して賢くなっていきます。


AIでデザインをする際に何が苦手なのか?

例えば、doraemon+shoesを見るとわかるのですが、「こちらの求める具体的なキャラクター」を「靴に移す」という場合、キャラクター画像を載せておけばいいんだろ!ではなく、「キャラクターを構成する色彩を靴に載せれば良いんだろ」と考えているんでしょうね。doraemonのフォルムを靴で表現するというのは、私の呪文では難しいわけです。

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ただ、画期的な形や機能性を生み出すのは苦手です。財布あたりを見ればそれがよく分かるかと。

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既存品の財布の形を組み合わせたり、色合い変えただけですな。「コインしまうのにこんな画期的な方法があったのか!」というようなものは、できないわけです。
AIでデザインするうえで得意なのは?
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上のバッグは「alien+bag+shape+black」を延々と行いました。20点くらいやったかな。その上で「おっ!エイリアンっぽいね!」と思ったものです。

AIが得意なのは「何度も何度も何度も何度も同じ作業を繰り返す」ということです。
玉石混交、と言われる中で、石みたいな結果を100点1000点出すのが得意なわけです。その中から「これはいいやん!」と玉を取り出すのが人間じゃないとできない役割なわけです。

上記サイトのMageは、いちいち「単語入れる>駄目だったのでブラウザーバックする>再度クリックする」という手作業が必要となります。

ですが、これもこの数か月で「高性能なパソコンなら1クリックで10点以上のAI画像を出す」というものも出てきました。

AI画像は法律的に問題はないのか?


先に書いておくと、未だにグレーゾーンで喧々諤々やられています。

AI画像は「ネット上にある画像を勝手に拾って、無断で組み合わせて作り出す」というシステムです。素となる画像が絶対に存在するわけです。

自動生成AIの中には、「こちらで用意した画像を100点なり放り込んでそこから組み合わせを延々と出させる」というものも存在します。この際に用意した画像・・・例えば手塚治虫の漫画なり画像を100点用意して学ばせる。そのうえで、「手塚治虫風のバッグを出して」などとやれば格段にそれっぽいものができあがります。これは著作権的に間違いなくブラックとなります。

では、「ネット上にある画像を特定せずに勝手に使ったらどうなるか」というのがグレーゾーンで、現在、喧々諤々言われている最中です。


革業界はAIを使えるのか?

今回は画像自動生成AIの話をしましたが、この4か月くらいでイラスト以外も急激に増えています。多分1年後にこのblogを見ると大笑いするくらいに進化が急激すぎます。

文字を入れると3Dデータ作れる、というのはものすごいですね。


じゃぁこれらがあるなら今後デザイナーや文章を書く人はいらなくなるのでしょうか?答えはもちろんNOです。

AIで生成されたものには手を加えないと、まだ現実的じゃない


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上はSFマガジン2023年2月号の表紙ですが、下記のnoteはこの表紙を作った人の作業の紹介です。


見ていただいたらわかりますが、「なんか単語入れてポンッ、でできるんでしょ?」と言えないくらいに作業と時間をかけています。

結局、人間が「これは良くてこれはダメ」という作業が絶対に必要なわけです。上記ならば「SFマガジンの表紙としてふさわしいものは」というジャッジを下せるのは人間だけです。

「新しいもの」というのは無から生み出すのではなく、既存のデザインなり考え方の組み合わせです。それをどう良いかor悪いか、と判断するのは人間がやることですね。

画像生成AI「Stable Diffusion」を使って新しいインテリアデザインを作成しまくる試み - GIGAZINE

今月のまとめ:玉石混交の中から玉を見出して磨くのは人間じゃないと無理

AIによるイラスト生成は、ほんとにこの4か月でとんでもなく変化しています。

ですが、「これはいいものだよ」というのは人間がやるしかありません。

このblogでも何度も何度も書いていますが、「企画・デザイナーがいないと売れる商品は作れない」です。
AIはこのデザイナーを助けてくれるとは思うツールです。その一方で個人レベルでも無限にある石(=箸にも棒にもかからないような雑多なもの)を手に入れやすくなり、そこから玉(=実際に金に変えられるレベルのもの)に磨きやすくなった、とは思います。

AIって大仰そう!なんて思わずに、今回取り上げMageで単語を入れるだけでも結構遊べますので気楽にいじってみてください。AIは革業界でも今後役立つ知識で技術だと思います。



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今年も一年ありがとうございました。
また来年も取り留めもなく書いていくと思いますので、読んでいただけたら幸いです。

・先月のJLIAblogの裏側、というか、文字数調整のため掲載見送りとなったテキストを完全版として下記に書いておきました。


プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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