August 28, 2024
【村木るいさん連載】20年靴を作っていても勉強をするし、勉強すれば成長できるかもしれない、という話
カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」
月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
今回は、20年工房をやっている靴工房さんでも勉強する、大阪で行われたJIS革(レザー)-用語の制定・日本エコレザーの改訂に関する説明会に行ってきた・・・と各地に突撃取材。ものづくりの現場の変化するいまの状況を村木さんならではの視点で伝えています。ぜひ、ご覧ください。
* * *
通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。
当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。
* * *
毎度です!「大阪商人のメリットって、お金の話をしても許されることだと思う」ムラキです。インタビューでも挨拶でも、平気で「儲かりまっか?」と平然と聞けることは強みですね。
さて今回は、
・20年工房やっている靴工房さんでも勉強する。勉強して儲かる、と思った?などの生々しい質問
・大阪で行われたJIS革(レザー)-用語の制定、日本エコレザーの改訂に関する説明会に行ってきた
などを紹介します。
今回の結論は、次のとおりとなります。
・大人になって勉強をすると、それだけ利益を出すことができる
年齢性別問わず、努力が報われると信じたいですね。
京都で20年以上!靴工房「吉靴房」さんに話を聞いた「まだまだ勉強する」という意味
吉靴房、でキッカボウと読みます。
吉靴房さんはオーダー・OEM・教室などを行っており、京都の地で20年以上工房を運営されています。
靴の型紙や理論を学ぶ古瀬シュースティリスタ研究会
大阪のフェニックスの3Fには2つの教室が存在しています。1つは「サンプル師が教える鞄教室」。
バッグ出身のサンプル師である中村さんが教えています。バッグや財布の型紙作りを教えており、実際に作ります。
で、他方が古瀬シュースティリスタ研究会というものです。
こちらの教室は、「靴を実際に作る」という方法を教えているわけではなく、「型紙をどう作るか」という型紙の作り方を教えたり、「その型紙を作るために、足の骨格や神経構造を学ばないといけない」という理論を教える教室となっています。
教室では、「革を切る」「ミシンで縫う」などの行為は一切ありません。
靴と服の型紙作りはとても似ている
靴と服は基本型を元にして型紙をおこす、という意味ではとても似ている
靴と鞄やバッグ、は考え方が根本的に違いまして。
靴は足という3次元の物体を包み込むものである「靴」を、平面である革で作る、というものです。そのため、靴は木型という足の形をした原型から型紙を作り出します。
靴の型紙は靴をバラバラにしてもあまり意味がありません。以前聞いた話では、「靴はな、型紙パクられても同じものは作れない。でも、靴の木型と型紙がセットでパクられると同じものが作れる」というもの。靴を作る際には、「木型の上に甲革と呼ばれる靴の上部パーツを載せて、底革と呼ばれる底パーツを合体!最後に靴の木型を抜く」という考え方をします。木型が基本となるパーツなわけです。服もトルソーを本体としてそこから基本となる型紙を作り出します。 3次元である基本型を元として立体物を覆うものを平面で作る、という意味では靴と服は考え方がとても似ています。
靴が怖いのは包むもの=足の中には神経や骨がある
「悪い靴は人を殺す」と言われます。足の中には骨や神経が存在しています。これらを押さえ込んだり、神経を圧迫する靴を作ってしまうと、そのままその人の健康を損なうことになります。
以前古瀬氏と話していた際に、「サンダルって型紙作成は楽なんですか??紐とかだから楽じゃないですか?」と聞いたところ、「逆です。足には神経が存在しており、この部分を圧迫したらいけない、という部分が存在します。ですのでサンダル設計の際にはそこを圧迫しない、もしくは、かかる力が分散するように型紙を作るわけです。面積が少ないサンダルのほうが設計は難しいんですよ」とのことでした。
古瀬シュースティリスタ研究会で教えている「足と靴の相関理論セミナー」では、このような人体に関しても学んでいきます。
吉靴房さんにインタビュー
このセミナー受けて良かった?という生々しい感想を聞く
先日セミナー全10回の8回目ほどが終わったところで、セミナーの感想を聞きました。
動画では吉靴房さんの半生も聞いた
下にインタビューの目次を載せておきますが、靴作りに限らず「食べていくためにはどうするか」「何を考えて作っているか」など、ものづくりで食べていきたい人にも参考になるかと思います。
0:41 どんなお仕事?
2:40 仕事遍歴 仕事遍歴 どういう仕事をしました?
4:35 個人でできて個人に売れて新しいものが生み出せそうなジャンルは靴だと思った
6:58 願書1週間遅かった!婦人靴メーカーに7年就職
8:40 仕上げ、製造企画や型紙作成や営業や鞄持ち
10:30 靴の面白さの理由は「難しかったから!」
12:30 独立したかったから全部の仕事を出来るようになりたかった
13:20 働いたメーカーさんには頭があがらないです
15:40 理論セミナー、どう?何を教わった?
17:20 このセミナーはどういうキャリアや性格の人が聞きに来たら意味があると思う?
18:40 そもそも足と靴の相関理論セミナーって何を教わりました?
20:50 このセミナー終盤ですが満足度は?費用や時間はどうだった?どういう授業方式?
22:55 授業は座学だけではなく手も動かして学ぶ
24:15 このセミナーで自分の仕事にどう役立ちそう?儲かりそう?
25:54 このセミナー受講するかどうか悩んでいる人への助言
29:10 吉靴房さん、どんな教室なの?
30:30 オーダー,OEM,教室でどれが儲かると思う?
31:10 OEMってやりがいある?楽しい?お金になる?
32:09 高いレベルに上がってはじめて見える「わからない技術」がある
35:40 違う視点を学べる。学べてよかったです
20年くらい工房やっていたらもう勉強いらない、とか思わなかったの?
「いえいえ、そんなことないです。靴が面白かった最大の面白さは難しかったからですね。簡単にできることを面白い、と思えなかったんです。いろいろなものを分解して、逆算して作ってみました。服とか鞄とかも。でも靴だけはわからなかった!それにイラッとしたので靴で働こうと思いました」(吉靴房さん)
この靴技術を身に着けたら一生食っていけると思わなかった?
「思わなかったですね。やればやるほど疑問が出ます。剣道やっていたのでわかるんですが、高いレベルになると疑問が増えていきました。このセミナーで過去の自分の考えの答え合わせをしたり、過去の先人が発見した理論を学べました」(吉靴房さん)
大阪で開催されたJIS革(レザー)-用語の制定、日本エコレザーの改訂に関する説明会に行ってきた
さて今度は、大阪で7月29日(月)に行われた「JIS革(レザー)-用語の制定、日本エコレザーの改訂に関する説明会」に行ってきました!
JISに関しては過去に取り上げたりしていますのでそちらを参照してもらいます。この説明会、オンラインでも開催されていたのですが、わざわざ行ったのは会場で質問するためです。
リアルとオンライン両方あるなら、リアルイベントに行ったほうが良い
オンラインでも聞ける時代ですが、あえて会場に行きました。会場のほうが情報量が桁違いにあります。オンラインはどうしてもカメラの範囲内でしか見ることができませんが、リアルに見に行くと会場のカメラ外の部分が目に入ったり、どういう人が質問しているのか、を実際に見られます。なによりも、講演者自身の息吹や気力やこの点に力を入れているな、などが見ることができます。
コロナ禍の初期にあったオンライン飲み会が現在行われないのは、「画面越しから得られる情報量が少ない」からですね。
講演会に行ったなら質問をしないともったいない
人の質問も聞かないともったいない
講演会にいったら必ず質問をします。セミナーや講演の最中に疑問を感じますし、専門家に直接聞ける機会はとても貴重です。
また今回の質問者を見ていると、革のメーカーなどよりもアパレル(大手メーカー)の方も多かったです。(ムートンやベロアなどの質問が多かった) ライターさんもいましたね。実際講演終了後に受講者の方々と話をしましたが、販売員関係の人などもおられました。これだけの人が勉強に来ているんだな、と感心しました。
大人になって勉強する意味とは?
大人になってから勉強をする、というと「すごく偉い!」「なんで大人になってまで勉強せないかんねん」と言われます。逆です。
「大人になったら好きなことを勉強できる」「お金になることを勉強すれば、その分お金にすることができる」「嫌なことは勉強しなくてもいいが、勉強しないと損したり、得をしないことが増えてくる」
この勉強が、型紙技術の勉強だったり、足の構造を学ぶ理論の勉強だったり、JISを学ぶことで、お客に販売する時の説得力になります。
自分が勉強しなくても競合他社が勉強すれば自分が取り残され、売れなくなる=儲からなくなるわけです。勉強は自分のために行い、勉強すれば、その努力に応じたリターンがあるわけです。
マイナーなことでもきっちり勉強していたらそれが報われる時代
マイナーなことでも勉強や記録しており、それをきちんと公表していたら、同士や助けが入る時代になりました。
例えば、下の写真は、趣味で調べている刃形の歴史調べの一環で見てきた香川のてぶくろ資料館の刃型や裁断工具です。
刃形の歴史はマイナーな調べものですが、これをやっていると結構いろいろな縁が広がり、それでビジネスにつながったりします。得をする・しない、ではなく、勉強し、行動し、公表していたら、そこから利益が得られる時代です。そういう意味では今はとてもおもしろい時代ですね。
ムラキの今後予定
さて、コロナ禍の前にあった秋のイベントが続き、地獄が始まります!
9月23日(月・祝) 愛知・名古屋「本日は革日和」
9月28日(土)・29日(日) 東京・渋谷 「ジャパンレザーアワード2024 応募作品展」革日和ぷち 出展予定
10月18日(金)~20日(土) 東京・浅草「浅草エーラウンド」
10月25日(金)・26日(土) 札幌 来年の革日和本開催前の種まきとしての「ぷち革日和」
11月8日(金)~10日(日) 大阪「O-ROUND」
プロフィール
鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター
東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。
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