欧米ブランドに「負けていないぞ!」

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」 の記事

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。今回は、革屋さんのSNS活用について。日々情報発信をし、多くの支持が寄せられる村木さんならではの取材、解説、ぜひぜひ参考になさってください。


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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしておりますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

人気イベント「本日は革日和♪」。これまでの内容や今後の予定、新たな取り組みなど、下記のリンク先をチェックしてください。また、今回のエントリの文末にも書かれていますので、最後までじっくりご覧ください。


 「本日は革日和♪」
 <http://ccrui.sakura.ne.jp/kawabiyori/>


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毎度です!「blogやSNSは口調が伝わらないから怖いな、と思っている」ムラキです。

神戸にて行われた素材博覧会、無事に終了しました☆
ムラキは会場では「人に話したくなる革の話セミナー」2種や「しくじりハンドメイド作家さん」「お金の話をしよう!職人の値段の出し方セミナー」「ハンドメイドイベントレポート」などを行いました。

普段引きこもって量産仕事ばかりしているのでたまに喋り続けるとグッタリします。(;´∀`)
で、今回のJLIAさんのblogですが何か希望のネタあります??

Sさん「ムラキさん、革屋さんはネットでSNSをどう使って宣伝しているか、という話出来ます?革屋さんから参考事例聞いて来てもらえます?」

SNSかぁ。HPやらBlogやらSNSやら触って*0年経つけど、頭いたい問題ではあるんですよね。
Blogなり書くのはできるけど、SNS運用は個人的には苦手なんですわ。

だから今回は革屋さんのSNS担当を捕まえて話を聞いてみましょう。
すみません、いつも以上に文字が多めでお伝えします。

 


前提として「革屋さん、というのはちょっと特殊な商売」という話

・革屋さんという商売はちょっと特殊です。

「自分たちが素材を販売して、購入した人が趣味として楽しむ or 販売する。その後に再度購入する」

こういう循環となります。

1回買って終わり、ではなくて、同じ革や扱っているものを2回、3回と購入されることで利益が出る仕事です。継続的に買ってもらうとありがたい、という商売なわけで。

つまり「購入した人が楽しんでほしい or 儲かってほしいことを心の底から祈る」という商売なわけです。
だって楽しむor儲からないと継続的に売れませんので。

 

・革屋は他社と似たような革を扱うことはあっても同じ革を扱うことはそれほどないからです。

革を作ってくれるタンナーさんとフェニックスが相談して作った「ソフトヌメ」という名前の革は、他社では販売出来ません。仮にフェニックスで作っているタンナーさんを調べた他の革屋が「あんたのところはフェニックスのソフトヌメ作っているだろ?うちにも作ってよ」といってもタンナーさんは「それはフェニックス専売ですから」と断るわけです。

結果的に「同業他社より安く値段つければ売れるだろう」という考えもなく、「半径1km圏内の同業他社は潰れればいいのに」なんて思いません。少なくとも私が働いていたり付き合っている会社に関してはそうですね。


・品質も安定していません。

昨年秋に入荷したものよりも今年入ったものが悪かった、ということもありえます。
革の吟面に傷は少ないけど、今回コシがなかった。吟面に傷あるのは全体の1割で残り5割はそこそこ、4割はきれい、ということもありえるわけで。

そんなときにお得意さまだけに全部良いものを送ることも出来ません。「今回はこういう状態なので傷アリの革も何枚か入れさせてください」とお願いするのが革屋です。「うちは常連だぞ!全部良いものをよこせ!」と言われたら「ほな、無理です」となるわけです。

ここらへんは過去のblogでも書いていますね。

村木るいさんの「人に話したくなる革の話」良い革の定義は難しい・悪い革の定義は簡単 | 欧米ブランドに「負けていないぞ !」 | JLIA 日本皮革産業連合会

さて、上記を踏まえて革屋さんのSNS戦略をご紹介しましょう。


寿屋さんのSNS戦略

寿屋さんは大阪に本社があり、東京に営業所がある革屋さんです。

寿屋 | 革の専門店。卸売り販売・小売りも営んでいます。

特徴は寿屋さん独自の革が多い。特にエナメル・型押し革の扱いには関してはピカイチ☆

レザーフェアなどでも「あぁ、寿屋さんのブースは遠くから見てもわかるなぁ」と毎回思います。

インスタグラム

さて、寿屋さんはインスタグラムを主戦場としており、社員の1名さんがメインで運営されています。

株式会社 寿屋 皮革卸・小売さん(@kotobukiya_leather) • Instagram写真と動画

会社アカウントと別に「会社の中の個人としてのアカウント」もあります

@kotobukiya_oku • Instagram写真と動画

インスタの運用はじめてどれくらいでしたっけ?

「2017年7月だからちょうど今で2年ですねぇ」

どういうものをインスタに載せています?

「会社で扱っている革素材がメインです。」

どういう時間に載せています?

「通勤時の行き帰りで載せていますね。写真を前日にとって行き帰りで文章考えて、みたいな。問い合わせが来ることもありますが、配達の最中の隙間を狙って返答などをしています」

大変な。(´・ω・`) 問い合わせ増えた?

「増えましたよ~。ただ、インスタグラムは個人のつくり手さんが多く、メーカーさんなどからは問い合わせはそれほどないかな。あぁ、でもインスタグラムのおかげで会社や営業所に実際に見にくる方は増えましたね。」

増えたならええやん!

「それが日曜日に来られた方もチラホラとおられて。土日は休みですよ~と書いていたんですけどね」

革屋さんは土日休みが普通、と知らない人も見てくれた、ということならすごいな!

「そうですね。それはすごくありがたいです。」

なんでインスタ始めたの?

「僕自身が当社寿屋の革が好きだし、より知ってもらいたいと思っています。
その魅力を知ってもらう一環として始めたのが一つですね。

あと、どれだけネットが進歩しても革は手で触らないとわからない情報が多いです。
硬さも張りや腰の強さなどもあります。当社も春秋にイベントを行いますし、展示会も行います。
興味持つ方が増え、イベントに来てもらう際の告知手段になりえたらな、と思いました。」

インスタ始めたことで会社に問い合わせ増えたので現場の人は困る、とかないんですか?

「インスタを見た人が電話かけてくる、ということはあまりないですね。
インスタを見た人はインスタ経由で問い合わせをしてくれます。そうしてくれると僕が返答します。

あぁ、でもインスタは写真中心となりますが、当社の革の場合は模様がついていることも多く、その大きさが写真だと伝えづらいのは難点ですね。『これは直径5cmの模様です』と書いてもわかりづらいですし」

革屋あるあるだね。直径3cmと書いても実際に見たら「あれ、結構大きい」とか言われますものねぇ
会社の上から怒られたり、とかないの?

「基本的にないですね。自分の好きな革の推し部分は書きますが、他社の動向なり、政治のことなどは言いませんよ。炎上怖いですから」

今後はどうしたい?

「インスタ見てくれる人が手に取って見てもらえる機会を増やしたいですね」


今現在寿屋さんの新作革は?

今なら下記の革がありますよ。卸用の革などもありますのでそこらはお問い合わせください。

国産牛型押しの金箔押しの「ジラフ」

国産牛革の「ライフワックス」

ヤギインポートの「カルラ」

ヤギインポートの「ニナ」

など寿屋は新作革も多数存在していますのでぜひ店頭までお越しください( ´∀`)bグッ!

 

レザークラフトフェニックスのSNS戦略

 

フェニックスのSNS戦略は私じゃなくて別のスタッフが担当しているから、そいつを捕まえてふんじばって話を聞いてみました。

フェニックスでは現在インスタグラム・twitter・facebookにblogも行っています。


フェニックスのSNS媒体はこれだけある

Twitterレザークラフトフェニックス(@LeatherPhoenix)さん | Twitter

FACEBOOK Leather Craft Phoenix FunPage - ホーム

インスタグラム:Leather Craft Phoenix - フェニックスさん(@phoenix_1926) • Instagram写真と動画

会社のアカウントに加えて社員による「フェニックス社員としての個人アカウント」が存在しています。

iso(いそ)@レザークラフト フェニックスさん(@iso_1314) • Instagram写真と動画

で、さらに3人の社員も「フェニックス社員として個人のアカウント」というものがあります。

phoenix_moriさん(@phoenix_mori7) • Instagram写真と動画
PHOENIX YOKOIさん(@phoenix_yokoi) • Instagram写真と動画
kotaro_nakachiさん(@phoenix_nakachi) • Instagram写真と動画


たくさんのアカウントはなぜあるの?

なんでこんなにたくさん存在するの?

「blogはムラキさんが長年書いていたので、そちらは任せようかな、というのは建前で今更手を付けるのもなぁ、と思いました。で、1月に1回の定点観測だけは僕が必ず書くようにしています。

SNSは色々とありますが、facebookは告知用として、インスタグラム・twitterはまた別な物と考えて運用しています」

別、ってのは?

「ん~と、説明が難しいんですが、

facebook...非匿名性空間なので密接な告知を文章主体で行える
twitter...匿名あり・140文字制限があるので、告知や新商品・イベントの入り口になる告知手段として優秀
インスタグラム...写真主体・リンクが貼れないのでイメージを伝える・ブランディングする

というように使い分けていますね」

インスタのブランディング、ってのは?

「なんというかな~。フェニックスは会社のインスタが1つ。それに加えて各社員が個々にフェニックスアカウントを持っています。会社のインスタ1つ+社員が個々人もっているので4つ。フェニックスの名前を冠したインスタアカウントが合計5つも存在しています。

これら社員のアカウントが4つもあるのはお客さんにフェニックスという会社の中の雰囲気を感じ取ってもらいたいからですね。
フェニックス、という1つだけのインスタアカウントだけ運用もありなんですけど、社員ひとりひとりの個性が見えることでお客さんとの距離が親密になる。個々人のアカウントを見ることでお客さんがフェニックスという店の中の雰囲気を感じ取り、フェニックスに来ている感じを持ってもらいたいな、と思いました。

それがブランディングかなと思っています。」

そんなに考えていたんだ!あんためんどくさく考えているわねぇ (;´∀`)

「革素材販売って大変じゃないですか?値段が高いから良い・安いから悪い、というものじゃなく、革素材の品質に安定性がない。そうなると、どれだけその会社、さらにはその会社の担当さんを信用するか、だと思うんですよね。

最終的には革の販売というのは会社とその担当者を信用信頼できるかどうか、です。だからこそ個々人の顔や人となりを見てもらいたい。そのための社員1人1人のアカウント設置ですね」

あなたインスタで配信までやっているけど勇気あるよなぁ。私はビビリだから出来ないわ。

「僕だってビビってますよ!でも社員の顔や喋り方、振る舞い方を見せることで接点が増えて会社を信頼してもらえるなら配信したほうが良いかな、と思ってやっています。」

今後もインスタグラム中心でやるの?

「お客さんがよく見てくれるSNSがインスタであるならばインスタで続けますが、お客さんが今後違うSNSを利用するならば新しいSNSに移ります。SNSは人に見てもらうのが重要なわけで、お客さんが見ているSNSを選ぶのが一番なわけですから」

という彼のインスタアカウントは下記となります

iso(いそ)@レザークラフト フェニックスさん(@iso_1314) • Instagram写真と動画


結局革関係でSNSをやる意味ってなに?

今回は革素材を販売する革屋さんのSNS担当者から話を聞きました。

両者ともインスタに重点をおいているのですが「なぜblogではなく、SNS。SNSの中でもインスタグラムを重視しているのか」というのは面白い点です。

blogではなく、インスタを重視しているのはなぜか。引いては革をネットで紹介する意味合いなどを紐解いてみましょう。


長文になるので

結論だけ先に書いておきます。


・インスタは写真のみなので更新がしやすい。また、現在の消費者層は文章読む前にまず写真やイラスト、短時間動画を入り口とする。

・ネットでは革という素材の「手触り」「匂い」などを表現出来ない。でも興味持ってもらえないと触ってもらえないからそのための入り口としてSNSを運用する


なぜblogじゃないのか


ムラキなどは古い世代の人間ですのでインターネット初期のころからHPで日記などを書いていました。
blogじゃないです。日記ですよ。おじさんが若い頃はタグでHPを作って、そこで日記を書く、という文化があってね、、、という昔話なら延々と出来ます。

で、ある一定年齢、、30代後半~40代中盤くらいまでのネットをやっていた世代は文章を読むのも書くのも、他の世代よりも早いように思います。(まぁ、私の周辺にたまたま多かっただけかもしれませんが)

が、「文章で表現」というのは時代に即さなくなってきています。
今の時代は「写真で表現」「動画で表現」という時代になってきているわけです。


blogにはメリットデメリットが存在します。

blogには下記のメリット・デメリットが存在します。

メリット
・長期的に影響を及ぼしやすい
・自分の好きなように書ける。レイアウトなども自由にいじれる

デメリット
・影響を及ぼすために長時間書き続ける積み重ねが必要
・短期的な爆発的な影響が見込めない
・どれだけ影響力を及ぼしたか、と数値化しづらい
・更新作業にパソコンがないとちょっとつらい

blogは書き続けることで「積み重ね」が生じます。それはgoogleに対するSEO対策だったり、blogを見に来た人に対する信頼などです。blog書いて3日間、というものよりもblog書かれて3年のほうが信頼度は高いわけですね。

ですが、その効果を出すには時間がかかります。また、SEOの成果や信頼というのは目に見えづらいです。
(BlogもSEO成果は目に見えやすい、という人もいるでしょうが、ここらは細かく書くと炎上の可能性高くなるので、明言は避けます)

それに対して各種SNSやyoutubeなどは「フォロワー数が~~~人」「視聴閲覧が~~~~回数」など目に見えやすいわけです。

さらにネット閲覧者による「文章を読む」という習慣は年々低下しています。
短い文章や漫画などは読むのですが、文章は読まない。それだったら写真のほうが良いわけです。

blogで読んでもらうためには最低限「読みやすくする技術」が必要となるわけです。


文章をダラダラと書くと今の時代読まれません。

上記の文章は「読まれづらいblog」です。
空間あけて書いていますが、メリハリが少なく、途中で読むのが苦痛になっているかと思います。

読んでもらうためには最低限ここまでしなくちゃいけない、と思う装飾を前述の文章に行ってみましょう

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

つらつらと考えてみると下記のメリット・デメリットが存在します。

メリット
・長期的に影響を及ぼしやすい
・自分の好きなように書ける。レイアウトなども自由にいじれる

デメリット
・影響を及ぼすために長時間書き続ける積み重ねが必要
・短期的な爆発が見込めない
・どれだけ影響力を及ぼしたか、という数値化しづらい
・更新作業にパソコンがないとちょっとつらい


blogは書き続けることで「積み重ね」が生じます。
それはgoogleに対するSEO対策だったり、blogを見に来た人に対する信頼などです。
「blog書いて3日間」よりも「blog書かれて3年」のほうが信頼度は高いわけですね。
ですが、その効果を出すには時間がかかります。また、SEOの成果や信頼というのは目に見えづらい。

それに対して各種SNSやyoutubeなどは「フォロワー数が~~~人」「視聴閲覧が~~~~回数」など目に見えやすいわけです。

さらにネット閲覧者による「文章を読む」、という習慣は年々低下しています。
短い文章や漫画などは読むのですが、文章は読まない。それだったら写真のほうが良いわけです。

blogで読んでもらうためには最低限「読みやすくする技術」が必要となるわけです


blogを書くのって正直めんどくさい

上記のように文字を太くする・色をつけることで強調する。改行を多くして余白を取る。
合間合間にはイラストを入れる、などのテクニックが必要となるわけです。

ここらのテクニックが今の世代には習得がめんどくさいわけです。
それに加えてblogはスマホなどを使って手軽に更新出来ないのが致命的に「今の若い人が手を出しづらい広報手段」になっているわけです。


それに対して各種SNSは

・Twitter...文章140文字のみ+写真4枚のみ
・インスタグラム...写真と文章のみ。表示されるのは基本的に写真のみ
・facebook...写真文章載せられるが、非匿名性ではないので敷居が高い

と簡単、かつ、フォーマットが一定にされているので「文字を太くする」「レイアウトを考える」などの細かなテクニックが不要となります。前述している寿屋さんのように通勤時に更新も可能です。


じゃぁインスタグラムは便利かつ簡単か?

もちろんそんなことはありません。
文章の装飾テクニックなどは不要ですが、「きれいに写真を撮る」「写真を加工する」などのテクニックは必須です。さらには今現在は「写真に文字を入れる」なども重要ですし、タグにどんなものを入れるかも重要です。

まぁ、結局はblogもインスタもそれぞれに応じたテクニックは存在します。


革屋さんがインスタグラムをする理由

革素材や革のカバン、靴などは手触りや感触、匂いなどが重要な要素となります。
どれだけネットが発達してもこれらの情報はネット経由では相手に伝えづらいわけです。

カバンや靴などは文字情報で「機能性」、視覚情報で「デザイン」をアピールすることは出来ますが、革素材が持つ「手触り感触」は実際に触る=触覚で情報を得るしかありません。

革素材・製品をより知ってもらうためには「ほら、魅力的だからネット世界を超えて現実に実際に触りに来てね」とアピールするしかないわけです。

そのための入り口が写真によるインスタグラムなわけです。

寿屋さんは「写真で革を外見だけでも見てもらい、興味を持ってもらい、実際に店に来てもらいたい」と思いインスタを更新しています。

フェニックスのスタッフは「革素材の魅力以外にも会社を知ってもらいたい・スタッフを信用して革の注文を任せてほしい。店に来てほしい」という意味合いを込めてインスタを更新していますね。

どちらの革屋が正しいわけでもなく、インスタグラムが良い、という問題ではなく、どちらもきちんとコンセプトを定めてSNSを運用しています。

コンセプトを決めずに会社としてSNSを運用すると炎上する確率が高くなります。


炎上しないために

炎上しないためのテクニックもいくつかあるのですが、「会社としてどのように運用するか、のコンセプトを定めてそれを維持する」のがメインとなります。

SNS運用者は「会社は何を考えて行動しているか」「目標はなにか」「どこにターゲットするのか」などを事前に会社で相談してきっちりとコンセプトを固めて運用していかなければなりません。
この手順を曖昧にして運用を始めると炎上、もしくはSNS運用者がある日突然上司から「君は全然SNSでフォロワー数が増えないじゃないか!君はセンスがないねぇ」などと叱られてブチギレる、という会社内炎上が生じます。

会社のトップはSNS運用をしないほうが無難です。大概ろくなことになっていません。
これは「トップは一番えらい人」だからです。

一番えらい人、というのは会社の顔となります。
会社の方針やコンセプトを一番理解しているのはトップの人なのは間違いないのですが、SNSにより消費者なりから直接苦情を受けた際に「ついカッとなって」対応してしまう確率が非常に高いわけです。

SNS運用はある意味戦場の前線に存在し、矢玉が飛んできます。王将が戦場最前線にいるのは問題なわけです。

他にも「政治的なことは発言しない」「ターゲット層が何を望んでいるかを考えて発信する」など細かいテクニックは存在しますが、SNSやHP運用の話を書き始めるとキリがないですね (´・ω・`)


JLIAではこんなSNSをやっています!

JLIAでも各種SNSを運用しています。JLIAの場合は範囲が広いからSNS運用も大変でしょうに。。Sさん、お疲れ様ですわ。

facebook:JLIA 日本皮革産業連合会 - ホーム

Twitter JLIA 日本皮革産業連合会(@JLIAtweet)さん | Twitter


今後の予定

直近ですが、6/28(金)はフェニックスは夜20時半まで営業します。3か月ほど「毎月最終金曜日は20時半まで試験営業して仕事終わりの人が来てくれるか」という実験を行います。で、私はパンダとして店頭でゴロゴロしています。

9/26~28(木・金・土)は横浜素材博覧会で革日和ブースで出展しています。詳しい情報はメールマガジンなりで告知しています。

MailMagazine | 本日は革日和♪



カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
今回は、特別感のあるレザーイベントをレポート。100回記念「東京レザーフェア」、「JAPAN LEATHER PRIDE GINZA」を見てきた話、です。村木さんがつくり手からの視点でくわしく紹介してくれます。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしておりますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

人気イベント「本日は革日和♪」。次回開催は「素材博覧会 -KOBE 2019- 夏」(6月13日~15日)にブース出展予定。今回のエントリの文末でも村木さんからメッセージがありますので、最後までじっくりご覧ください。

 「本日は革日和♪」
 <http://ccrui.sakura.ne.jp/kawabiyori/>

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レザーフェア主催の委員さん「ムラキさん、今回のレザーフェアは100回記念で前日にTHE・前夜祭、というのをやりますよ。

ん~、確かレザーフェアは5月22日・23日の水曜・木曜でしたよね? 日曜日から東京入りしているけど、前夜祭のために火曜日までいるのもなぁ。

「でも次に前夜祭やるとしたら、年2回開催のレザーフェアならば50年先ですよ?」

50年後はさすがに生きている可能性は低いので見ておくか!

「ムラキさん! 東京来ているならば銀座三越でJAPAN LEATHER PRIDE GINZAやっていますよ!」

一気に行き先が増えたな、ということで今回のblogは「JAPAN LEATHER PRIDE GINZA(日本革市)」や「東京レザーフェア」などの紹介です。


日本革市 in 銀座三越(「JAPAN LEATHER PRIDE GINZA」)


日本革市ってなに?

日本革市はタンナーズ協会による催しで、全国の消費者に日本のなめし革・革製品の魅力と価値を恒常的に訴求するため、全国の主要百貨店様と連携を図り開催するPR事業です。

日本革市

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★今回は、「日本革市」から派生したイベント「JAPAN LEATHER PRIDE GINZA」として開催。レザークリエイターとインフルエンサー10組のコラボレーションにより、日本の革と革のものづくりの魅力を発信しました。

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 (画像:「日本革市」公式サイトより)


今回訪れたのは銀座三越。

会  期:

5月15日(水)~5月20日(月)
会  場:
銀座三越  7階
営業時間:
10時00分~20時00分 ※最終日は18時閉場
(日曜日 10時00分~19時30分)

兵庫県、和歌山県、東京都を中心に、全国に300余りある革製造メーカー。そこでは誇り高き日本のタンナーたちが、日々革づくりをおこなっています。そのきめ細やかな感性と、卓越した技術。
ひと手間ひと手間に、職人としての思いを込めて仕上がった革は、皮革製品メーカーによってさまざまな製品に仕立てられます。
日本の革に魅せられたレザークリエーターたちが、インフルエンサーとともに"革の新たな魅力"、"革のさらなる可能性"に挑む。それがジャパンレザープライド・ギンザです。10人のインフルエンサーと10人のレザークリエーターがペアを組み、それぞれのキャラクターを生かした類いないレザーアイテムを多数ご提案します。

銀座三越 | 日本革市開催情報 | 日本革市


この銀座三越会場での革市は、革を作る「タンナー」と革のクリエイターとのコラボ、ということでタンナーの名前も出ています。

ちょうど会場に、上の高見澤氏がおられたので簡単に話を聞きました。


出展者に話を聞いてみた

高見澤篤氏(Six coup de foudre

「今回の革は熊や猪の皮を手に入れて、姫路市のオールマイティーさんに鞣してもらいました。
上の写真にあるお皿やがま口がそうですね。熊や猪はワイルドな風合いに仕上げてもらいました。
銀座三越、という場所は来店客の2割強が外国の方です。そうするとこれらの革がどのようにして作られ、どういうコンセプトで作ったのか、というのは伝え甲斐がありますね。

エプロンはこれも姫路市のタンナー アークレザージャパンさんに鞣してもらった馬の革です。エプロンですがこれも従来のエプロンと違うテイストのため外国の方に好まれています。
私の作るものは日本の方よりも外国の方に好まれる傾向があるので、この銀座三越という場所はすごく良かったですね」

どれだけインターネットが発達しても"感触"というのはまだ伝えられません。革の質感・匂い・感触を伝えるのはまだ20年ほどかかるとおもいます。興味持った方はぜひ直接見に行ってみてください。

高見澤篤氏(Six coup de foudre

高見澤さん、JLIAのblogに写真と話載せても良い?

「良いですけど、今度開催するジビエ展の案内もこっそり載せてください!」

じゃぁこっそり載せておくね!( ´∀`)bグッ!


【ジビエ展のご案内】
現在日本では、鹿や猪による農作物被害が大きな問題となり、害獣駆除としての捕獲が進められています。お肉はジビエとして利活用が全国的に広まっていますが、革や角の活用は多くありません。SDGsが叫ばれる昨今ですが、まだまだ一般的には知られていないのが現状です。
3回目の開催となる本展では、作家それぞれのアプローチで、小物、ブローチ、カトラリーなどへと活用され、商品へと昇華されています。自然の恵みに想いを馳せ、多様な創造性を愉しんで頂ければ幸いです。ぜひご高覧ください。
会期:6/14(金)→6/18(金)12:00→18:00
会場:と革 台東区松が谷2-29-8 #105 

googlemap
www.to-kawa.com


タンナー工場見学のVRがすごい

革市会場ではタンナーのVR動画が見れるようになっていました。これがすごい。


日本最大規模のタンナー  山陽の様子が見ることが出来る

兵庫県姫路市の山陽は日本でも最大規模のタンナーです。兵庫県たつの市、姫路市で130~150のタンナーは可動している、と言われていますが、これだけの設備を持っているタンナーはそうそうありません。

山陽TOP


VR設備がなくてもyoutubeにあげてくれているので見ることが可能

VRがなくてもYou Tubeでも見ることが可能です。これだけタンナーの製作風景を臨場感抜群に解説した動画ははじめてかもしれません。

革関係の知り合い共々「えっ!ここまで見せてくれるの!」と驚く動画でした。

(「皮革のできるまで」というJLIAが作ったDVDは全体的に細かく解説してくれているのでもっと詳しくみたい、という方にはおすすめです。>JLIAライブラリ | JLIA 日本皮革産業連合会の下の方にDVD販売があります)


360channelというアプリでお手持ちのスマホで見ることも可能

さらに360channelというアプリを入れたらお手持ちのスマホでもVR動画で見ることが可能です。
「VRってなんか目の前にメガネのおばけみたいな道具つけて見ないといけないんでしょ?」と思われがちですが、手持ちのスマホを手でもって動かすだけでも感動できますよ。

 

360Channel(サンロクマルチャンネル) | VR動画配信サービス

アプリを入れなくても、下のリンク先でも動画を左右にスクロールさせることが可能です。

タンナーズVR「Make One Leather」 | 動画視聴 | 360Channel | VR動画配信サービス


日本革市 今後の予定は

日本革市では、今後も上のVR動画や日本の革を使った革製品販売などを全国百貨店で行っていく予定です。今後の開催情報は下のHPを御覧ください。

日本革市開催情報 | 日本革市


第100回 東京レザーフェア 記念イベント「THE・前夜祭」

今回のレザーフェアは開催100回目!という記念すべき回でした。そのため前日、5月21日(火)18時より浅草神社にて前夜祭が開催されました。

日本全国の皮革関連企業57社で構成されている協同組合資材連は、日本最大級の皮と皮革関連資材のトレードショー「第100回東京レザーフェア」(以下略:第100回TLF)を令和元年5月22日(水)・23日(木)に開催します。記念すべき第100回目を迎えるにあたり、第100回東京レザーフェア記念事業"THE・前夜祭"(以下略:前夜祭)を令和元年5月21日(火)18:00から開催いたします。
前夜祭は革の郷・浅草の氏神様「浅草神社」にて関係者一同が集結し、今までの歩みを振り返り、その歴史に誇りを抱き、そして感謝し、これからの更なる業界発展の誓いを立てる目的で行います。その中で注目のコンテンツは、特別に製作された「50着のレザー半纏」のお披露目と、それを纏った高校生50名が里アンナさんの歌と共に合わせたダンスパフォーマンスを行います。

5/21 第100回記念事業「THE・前夜祭」開催!|協同組合資材連のプレスリリース


浅草寺本堂右隣にある浅草神社は三社祭が有名です。

前日から当日朝までの土砂降り雨のため開催するかどうかの協議が重ねられましたが、無事に定刻どおりに開催。前夜祭の間は一切雨が降らず、終了後にパラパラと雨が。ラッキーに救われました。

私は背後でひっそりと見守っていましたのでダイナミックな写真がありません。
当日の血湧き肉躍る革半纏をまとっての踊りの模様などはレザーフェア公式HPのレポートをお待ちください。(後日レポートがアップされたらリンクつなげます)

会場ではお神酒も振る舞われました。なんとコップ1つ1つにレザーフェア100回目のシール付き


レザーフェア当日の模様

TLF 東京レザーフェア - 革の展示


さて、東京レザーフェア当日本番。

様々な革が並んでいますが、ここで「この革がいいんだよ!」などと書くのは前回のblog趣旨と反します。

2019年4月24日の記事 | 欧米ブランドに「負けていないぞ !」 | JLIA 日本皮革産業連合会

「この革好き!」などは書けるんですが、ここのblogで書くと「うちのは駄目なのか!?」と怒られちゃいそうで。
ですので、今回はレザーフェア100回目の見どころや、次回来た際はここを見て!という点をあげておきましょう


100回記念の前夜祭で使われたレザー半纏展示

レザー半纏は前夜祭でダンスパフォーマンスで使われましたが、こちらの品は5月16日(木)にペインティングが行われ、わずか1週間弱で半纏50着作ったかと思うと縫製者さんの苦労が偲ばれます。頑張ったなぁ、これは。。。

ダンスパフォーマーはクラーク記念国際高等学校と台東区にある岩倉高等学校の生徒50名が担当します。
5月16日(木)には山本寛斎さん自ら台東区富士小学校へ出向き、同小学校の小学6年生約70人がレザー半纏に「太陽」と「富士山」をテーマにペイントを施すのを指導します。

5/21 第100回記念事業「THE・前夜祭」開催!|協同組合資材連のプレスリリース


半纏自体はレザーフェア参加社から寄贈された革を使っているのですが、中には本物のクロコもあり、「えっ、これ型押しじゃないの?本物のクロコ」と思うとゾッとします。主に値段とか値段とか値段とか。(´・ω・`)


100回記念の過去のレザーフェアポスター展示が面白い

100回、50年弱の歴史の積み重ねがこのポスターです。全点展示ではないのですが、第1回目や2回目や、バブル期、それ以降の時代と、ポスターの変遷を見れるのが非常に面白いです。

こうしてみると近年のポスターは随分と「攻めている」な、と感心しました。こういうのは1枚だけ見てもわからないものですね。

やはりタンナーの風景が写っていると、「おっ!ちょっとほしいな」と思ってしまいます。

 

こちらでもVR体験が可能

日本革市でも見られるVRですが、レザーフェアでも見ることができました。機会があればぜひ見てください。


日本皮革研究所の展示が面白い

日本皮革研究所は皮革の試験を行っている試験所であり、一般財団法人です。

住所:〒302-0017 茨城県取手市桑原520-11

TEL:0297-71-3020 FAX:0297-71-3021

品目:皮革試験

分析センターでは皮革やコラーゲンなどの依頼試験を行なっています。皮革分野では国内唯一の財団法人組織です。色落ちや退色などの各種試験を行ってくれます。

一般財団法人 日本皮革研究所|皮革分析


なんとYou Tubeでチャンネルまで作ってどういう検査をしているかの解説をしてくれているんですな。今回知ってびっくりしました。

一般財団法人日本皮革研究所 - YouTube


当日は下のような色落ち検査に使う機械を実際に動かしてくれていました。

まぁこれだけだと「へ~~~」で終わりなのですが、一般来場者向けに下のような体験も行っていました。

・顕微鏡による皮革の違い体験
革のみならず合皮も並べているのが素晴らしい。顕微鏡で見ることで違いを解説してくれます。

・革と人工皮革 判定体験
合格しても不合格でも回答するとボールペンをプレゼントしてくれます。
初級編は6枚の中から人工皮革3種・革3種を見極める、というもの。これはまぁ裏面やコバ面(革の断面部分)見れば正解できます。さくっと正解。

じゃぁ、上級編を、と思うとコバと裏面をわざわざ布地で覆い隠して見れない・さわれないようにしてある。一気に難易度あがったな!吟面(革の表部分)のみだけで正解しろと(;・∀・) 難易度あがりすぎだろ、これ。

散々悩むが最後の1枚だけ間違える。あぁ、やはり引っ掛けだったか、あの革は。顔料仕上げの革は区別が難しいなぁ。

おまけの問題は牛豚羊爬虫類などの見極め。これは楽勝。

革製品の相談でよく持ち込まれるのはこの手の「この革製品はほんとに革?人工皮革じゃないんですか?」というものです。今の時代の人工皮革は、どんどんと発達していますので判定がどれだけ難しいかを知る面白い体験でしたね。次回もぜひやってもらいたいものです。

他にもクレーム事例紹介など学べる物が多いブースでした。


ニューレザーコンテストの受賞作展示が面白い

4Fには兵庫県皮革産業協同組合連合会によるひときわ大きなブースがあります。ここでは各タンナーさんが実際に訪れ小ブースに革を展示しています。

このタンナーさんのブースも面白いのですが、見方が分かれば面白くなるのがニューレザーコンテスト受賞作展示コーナー。

このコンテストは毎年秋に行われる「ひょうご皮革総合フェア」&「たつの市皮革まつり」で展示されるもので、様々な革が並ぶイベントです。このイベントは過去のblogでも解説しています。

「ひょうご皮革総合フェア」&「たつの市皮革まつり」レポート | 欧米ブランドに「負けていないぞ !」 | JLIA 日本皮革産業連合会

村木るいさんの「人に話したくなる革の話」ほんとに日本のタンナーって面白くてすごい。姫路城皮革フェスティバルとひょうご皮革総合フェア&たつの市皮革まつりレポート | 欧米ブランドに「負けていないぞ !」 | JLIA 日本皮革産業連合会


実際にイベント会場まで行って触ってみるのが一番なのですが、受賞作だけでもぜひ触ってほしいものです。見て、触ることで多数の情報を得ることが可能となります。

この兵庫県皮革産業協同組合連合会のブースを見て、ニューレザーコンテストの受賞作を見ると「日本の革って面白いやん!」と思えます。


次回のレザーフェア101回目は

例年通りだと12月の頭になりますね。業者個人や革好きな人ならば自由に入れるイベントです。
受付で住所など書きますが、入場料などもかかりません。多分ちょっとだけムラキも手伝いをするかもしれません。


今後の予定

3月、4月は忙しくドタバタと動いていました。普段は人と会わずに職人仕事をしていますので、イベントやら出張が続くとグッタリしますね。

・最近Brotherが販売したスキャンカット、という革も切れるカッティングプロッターを色々とイジクッています。6月2日(日)にその体験会を企画運営しています。

6/2(日) 革もカットできる「スキャンカット」+革も縫えるミシン「極」体験会 inフェニックス3F | phoenix blog

<参考リンク Brotherのスキャンカット SDX1200と1000で革のものづくりがもう一段階先に行けそうだ、という話 | phoenix blog

・6月13~15日(木・金・土)は神戸にて素材博覧会に革日和として出展。そこで無料・有料セミナーを行います。

19.6/13-15(金土日) 素材博覧会 KOBE 2019 夏 革日和4社出展します+inks+アルファレザー ハンドメイドレポートなど | 本日は革日和♪

・それが終わると、予定に入っているのは9月の素材博覧会 YOKOHAMA 2019 秋を予定しています。


カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。前回の兵庫・姫路のタンナー取材に続き、革のクオリティについて、くわしくレクチャーしてくれます。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしておりますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

人気イベント「本日は革日和♪」。次回開催は「素材博覧会 -KOBE 2019- 夏」(6月13日~15日)にブース出展予定。今回のエントリの文末でも村木さんからメッセージがありますので、最後までじっくりご覧ください。

 「本日は革日和♪」
  <http://ccrui.sakura.ne.jp/kawabiyori/>

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毎度です!

「革関係の資料探しに毎日4時間録画中」のムラキです。100時間ほど色々な番組を見ていると1時間ほどはすごい情報に出会えますね。

前回のBlogでは鞣しと仕上げの違いについての話でした。

2019年3月27日の記事 | 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」タンナーという仕事には色々あって、それぞれに世界が全然違う、という話欧米ブランドに「負けていないぞ !」 | JLIA 日本皮革産業連合会

で、今回は次の流れで話していきます。

・良い革・悪い革の定義って難しい
・タンナーや国で革の定義する無意味さ
・でも、悪い革ってこういうの

結論は「良い革の定義は難しい・悪い革の定義は簡単」というものとなります。

良い革・悪い革って定義が難しい

私が革屋さんの店頭に立っていたのはもう5年ほど前になります(今は裏方なり、人の前で革の解説なりしていますが、一応革屋でもあります)。
店頭で立っていた時の質問で簡単なものは「店員さん、好きな革はなんですか?」というもの。これは店員それぞれが好きな革があるので簡単な回答となります(私は下の写真のようにふわっと柔らかなわりにしっとりとした手触りのクロム革が好きです)。

それに対して一番難しい質問は「良い革・悪い革ってどんなもの?」というものでした。

「万人が良い・悪い」というものは基本的に存在しません。特に革の場合は難しいです。

例えば、、、
ナチュラルな革が売りな鞄・小物屋さんにしたらタンニン鞣しの革が一番良い革、ということになります。
靴屋さんにしたら吊り込み(靴の工程上必要なもの。ギュムッ~~~~~~~と引っ張り工程)ができるクロム革が一番良くなりますし、靴底にはピット鞣しのタンニン革が最高、となります。
家具屋さんにしたら傷がなく、色落ちの可能性が少ない顔料仕上げのクロム革が一番良い革となります。

つまり、お客さんによって良い基準なんてバラバラなわけです。

だから店頭で答えるときは「お客さんが好きな革が一番良い革です」と答えざる得ませんでした。

~~国製だったり、~~タンナーだったら良い革じゃないの?

革という素材はとにかく安定性に欠けます。
素材である「皮」の供給量は世界で食べられる肉の量でも左右されますし、天候でも左右されます。育て方でも「皮」の品質が変わります。育てられている牛の品種やその国の情勢によっても左右されます。

この元となる素材「皮」を革業界では「原皮」(げんぴ)と呼びますが、この原皮がものすごく重要です。

原皮~皮革用語辞典より

 の製造原料となる脊椎動物皮。主に家畜のと体から剥皮し、革や毛皮製造工程に入るまでのキュアリングを施した塩蔵皮乾皮をいい、生皮も含めて脱毛されていない皮を総称する。

例えば、、紛争があると原皮の状態がいまいち悪い

以前手袋業界の方から聞いた話。
「昔アフリカの某国で紛争があってな。数年間手袋用革の原皮である羊が全然入らなかったんだよ。紛争が終わってようやく原皮が日本に入るようになったんだが、質は良くなかった。紛争をするくらいだから食糧事情が悪く、結果的に羊に食べさせる余裕もなかったんだろうなぁ。あれは悲しかった」

この原皮の状態が良くないと、タンナーがどれだけ手間をかけたとしても「良い革」というのは難しくなります。

例えば、、原皮の状態が悪いことなんてざらにある

原皮は選別されて購入されていますが、鞣し工程の後半になって「あ、これ傷が浮き上がってきた」という事態もあるわけです。

下の革は馬革タンナーのアークレザージャパンさんに無理難題をいって作ってもらった特別な革です。

「アークレザージャパンさん。セミナーとかでみんなに見せたいんだけど、すべての傷がある革がほしい」

すごく嫌な顔をされましたが、半年待って作ってもらったのが下の特別な革。半年待ったのは「これほど傷があるのは珍しい」という原皮が出てくるのを待ったからです。

この革はおそらく、、虫傷、バラ傷、マニュア、ナイフ傷あたりは全部入っています。ですが下の文章でもわかるように他にも様々な傷が存在します。

原料皮の損傷

動物の皮膚は、下図のように、虫による傷(ダニ皮チックコックル)、イバラや鉄柵などによるかき傷(バラ傷)、病気や糞(マニュア)などによる皮膚の障害などを受ける。また、焼き印(ブランド)といって牧場主が所有を明らかにするため、臀部などに焼きゴテで印をつける場合がある。この部分は火傷として皮膚が損傷されている。
その他に、剥皮の際、ナイフで真皮を傷つける。不溶性の塩により線維構造が破壊され、白色、黄色、褐色の斑点となる塩班。施塩の遅れた皮や塩の不足などでヘアスリップ、アンモニア臭、肉面の変色、銀面の損傷を起こす中ぐされ。原料皮中の油が酸化し、コラーゲンタンパク質と結合して生ずる褐色斑状の油焼け。さらに輸送中にオーバーヒートによる損傷もある。遺伝的要因で発生するパルピーハイドなどが存在する。
 このように、原料皮は様々な損傷を受けている場合があり、革の品質に大きく影響する。損傷の大きな原料皮は下級品に位置づけられる場合が多い。 

原皮・鞣し・仕上げの3工程がすごく重要

この3つの工程が重要であり、特に原皮が悪いと鞣しの工程で苦労することになります。

つまり、「~~国だから全部良い」「~~タンナーだから全部良い」「~~の地域だから全部の革が良い」というわけではないわけです。

鞣しや仕上げでリカバリーはできる

「じゃぁ原皮が悪いとできた革は悪いの?」というとそんなことはありません。鞣しや仕上げ工程で変化させることも可能です。

例えば、、、バッフィングという工程があります。

革の銀面(ぎんめん。表面)や裏側である床面(とこめん)をヤスリがけすることで起毛させた状態です。

これなどは銀面部分に小さな傷が細かくあったとしても起毛させることで目立たなくすることが可能です。

起毛革

「じゃぁ起毛させる、ってのは傷がある革をごまかしているということ?」

いいえ、私はそうは思いません。
革に傷がある状態のものをなんとか活用するための知恵だと私は思っています。実際に起毛させた革=スエードやヌバック、ベロアが喜ばれる業界にしたら「起毛させた革が一番良い革」となるわけです。

例えば、、、銀面ではなく床面を使う

下の革は昨年のニューレザーコンテスト」で高度加工部門にて受賞したアルファレザーさんの革です。

この革は羊革なのですが、銀面部分に傷が多いので、床面部分を細かくバッフィングで起毛させ、染料で模様をつけ、さらに金箔を施しています。起毛させることでより金箔の定着が強くなっています。薄く、軽く、ゴージャスな革となっています。

 

「原皮」を「鞣し」工程で革とし、その上に「仕上げ」工程を施していくわけです。どの部門が良い・悪い、ではなく、どの部門も大切なわけです。

悪い革の定義は簡単

革は布地のように見えますがコラーゲンというタンパク質が繊維で複雑に絡み合っています。

コラーゲン
コラーゲンの構造

定期的にこのコラーゲンに油分なりを補給してあげないと繊維がブチブチとちぎれます。

油分が切れたら脆くなる

で、この写真の革ですが、革のセミナーをする際に持っていくようにしている「悪い」革です。
2年間、紙でくるまずに机の下に放置されていた革をA4サイズに裁断したものです。表面上はまともに見えるのですが、油分が切れてパサパサ状態です。この状態ですと切れ目を入れて引っ張るとブチブチとちぎれます。

 

油分が切れた革の見極め方

製品状態(靴や鞄、財布)になると見極めは困難です。せめて素材段階ならば見分けやすいです。

・銀面ではなく床面部分を触って、指先から油分が吸い取られる感じがする
・床面部分をこっそりと爪でカリカリと削ってみるとボロボロと崩れそう

油分が切れた革はどうすればいい?

製品状態でも油分が切れます。そうなれば油分補給としてクリームやオイルを入れてあげてください。
ただし、オイルを入れると染みになる場合もありますし、油分補給をしても完全に元の状態には戻りません。

油分を切らさないためにはどうすればいい?

製品状態でしたら定期的に油分を補給してあげてください。
素材状態でしたらせめて紙で包んで酸素と紫外線から少しでも守ってあげてください。また、1年以内には使ってあげたほうが良いですね。

革屋さんで売っている革は基本的に回転(定期的に売り切れている)しているので、油分が切れることはありません。不安でしたら棚の下に眠っている革などは避けておいたほうがよろしいかと思います。

結論:良い革の定義は難しい・悪い革の定義は簡単

ということで良い革の定義は難しいです。悪い革は「油切れた革はボロボロになっている」というものです。

ですので皆さん、革のお手入れは忘れずに。タンスにしまいっぱなしが一番可哀想ですので。

今後の予定

6/13~15(木・金・土)は神戸素材博覧会で革日和ブースで出展しています。
9/26~28(木・金・土)は横浜素材博覧会で革日和ブースで出展しています。

それまでに姫路バスツアーをやろうかどうか考え中です。詳しい情報はメールマガジンなりで告知しています。

MailMagazine | 本日は革日和♪


カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。今回はタンナーにフォーカス。皮革産地・姫路でつくり手の皆さんに現地取材した盛りだくさんのレポートです。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしておりますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。
イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。
当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。
人気イベント「本日は革日和♪」次回開催は、ホームグラウンド・大阪で4月5日(金)・6日(土)。今回のエントリの文末でも村木さんからメッセージがありますので、最後までじっくりご覧ください。

 「本日は革日和♪」
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毎度です! 「ゴージャスでブリリアントでデラックスな革も好き!」な村木です。

今回のお話は、

・タンナーのお祭りに行ってきたのでその報告
・タンナーは鞣しをしているのがタンナー
・仕上げ、という仕事の凄さと面白さ

という話の流れになります。



今回のテーマが決まるまでの流れ

で、JLIAさん、ここしばらく続けていた「革製品を作る上での周辺業種の面白さと凄さ」が一段落しましたが、次に何やります? 一応、次の2つを仕込んではいますが。

「靴や鞄メーカーってなんのためにあるの? メーカー飛ばして職人さんとちょくにやり取りすれば商品は安く作れるの?」
「革屋ってなんのためにあるの? タンナーってそもそもなに?」

JLIAさん「そりゃ話してもらいたいのは後者かなぁ」

じゃぁ、前者はその次くらいにしますか。
んと、写真がいくつか必要となりますね。それじゃ姫路でお祭りあるからそれ見に行きがてら写真と証言集めてきましょう。


3/22.23は新喜皮革のレザーフェスティバルが行われていた

2019.3/22.23は新喜皮革さんでレザーフェスティバルが開催されていました。

レザーフェスティバル2019

会期中は新喜皮革のコードバンなども販売されています。あくまでアウトレットセールですね。
私が行ったのは昼過ぎでしたが午前中に革や財布などを求める人が多数来場、昼過ぎからはまったり、とのことでしたが在庫は潤沢に残っていましたね。
「初日のほうが良いの?」と思いますが、2日目も追加で品を入れているので2日目に行っても楽しめるかと思います。

今回会場でfacebookのライブ配信という機能を使ってみました。手持ちのためブレがありますが、会場の雰囲気が伝われば幸いです。

会場内ではチャリティーオークションも開催。鞄や財布などがオークションかけられているなぁ、、と聞き流していたのですが「新喜皮革が鞣したブラックバスの革~」というので慌てて参戦。無事にget。水産革も色々と面白い話が存在しますがまたの機会に。


さて、タンナーってそもそも何?

秋のタンナー見学バスツアーで毎回ご協力頂いているオールマイティーさんを訪れ。

レザー素材オリジナル受注生産|姫路の皮革・革素材/タンナー オールマイティ

ここは革1枚から鞣しをします、というトンデモナイところで、毎回行くたびに変わったものを鞣している。今回は?


オールマイティーさんで見た変わった革

オールマイティーさん「これはな、四国の鹿革なんだけど、オイルをたっぷり含んでくれ、という依頼やねん」

触ってみるとモニョモニョとしたオイルの手触り。べったりとしています。
このスワッチ(材質見本。 見本の小片)から色を再現、っていっても水分とオイルが入って濡れた状態で同じような色合いにできるものなの?

「前回作っているから、きちんと色の処方は置いている。でもそれも原皮(革の元となる皮の状態。今回ならばハンターさんが捌いた毛皮状態でやってくる)の状態によっても変わるからな」

原皮の状態ってのは保存期間とか?

「ちゃうよ。極端な話、餌が豊富な秋と餌がなくなってきている冬では動物の栄養状態が変わるだろ。皮付近の肉や脂ってのは栄養状態でものすごく左右されるから処方をきちんとやっていても元の素材の状態が変わりすぎる。それに応じて処方を変えてやらなきゃいけない。」

大変やん(´・ω・`)

「大変だよ。でもそれが面白いのが革やんか!」

こちらはちょっと変わったもの。オーストリッチ(=ダチョウ)の足ですね。現在の学説では恐竜が進化して鳥になったと言われていますが、これを見ると確かに恐竜っぽいですよね。

ダチョウも日本でダチョウ牧場などで飼育が始まっています。肉も食べるので、革も使うし、足の部分の革も取れるならば使います。さすが最大の鳥類だけあって足まで革として使えます。興味ある方は「オーストレッグ」で調べると販売されているのを見つけられると思います。

これはもしかして、、

「熊の顔の革やな。」

やっぱり、、(゚A゚;) まぁ熊の皮も持ち込まれて革にして、という依頼もあるようで。
鞣しをすると一回り二回りは小さくなりますね。

これは鹿ですね。昨今はジビエなども知られるようになり、鹿肉やイノシシ肉も食べられるようになりました。そうなるともちろん革も使われます。

姫路やたつの市にたまに無茶な質問が来るそうな。

「私達の地方でイノシシ肉や鹿肉を加工して販売している。この革も有効活用したいんだが、自分たちで鞣し加工もしたいのだがどうやるの?」

無茶です(*´∀`)キッパリ

基本的に鞣しという工程は知識と技術と設備、それに大量の水が必要とされる産業です。趣味のものを作るならばまだしも、きちんとした「革」を作ろうと思うと知識、技術、設備、それらを習得する時間と気力が重要となります。

で、それで「確かにそりゃ無理だ!」と思った方がこのオールマイティーさんに持ち込んでくるわけです。

 

タンナーの定義ってなんだと思う?

オールマイティーさん、JLIA blogでタンナーについて書こうと思うんだけど、タンナーの定義ってなんだと思う?

「大雑把な質問やなぁ~
例えば現在、姫路市、たつの市で130~150ほどのタンナーが稼働している、と言われているけど、俺はそこまで存在しないと思う(※ここらの数字は体感です。登録数は多分もっと多いです)。

それは『あそこのタンナーは実際には動いていないで!』という意味ではなくて、『タンナー』という言葉の定義やな。」

どういうこと?

「タンナー、、、つまりはtannnerやろ?
TAN、ってのは鞣しをする、という意味や。それにerがついて、tannner、タンナーと読むわけや。
ってことは、うちのように大量の水と設備を使って皮から革に鞣しをしているのだけをタンナーというと思う。

でも実際は、鞣しではなくて、染色やスプレー吹きで色付け、型押しや仕上げ加工を得意とする加工所と言われるものも多い。それらは厳密にはタンナーとは言えないと思う。

これは、『鞣しをするタンナーがえらい!』という意味ではないんやで。仕上げ加工をしてくれるところはうちも世話になっているし、そういうところがいないとものすごく困る。ただ、厳密にいえばタンナーとは言いづらいな、と思っとる」


じゃぁ仕上げってなに?

皮革大学というのがある

姫路には兵庫県立工業技術センターの中に皮革工業技術支援センターというものがあります。

ようこそ皮革工業技術支援センターへ

で、ここで秋くらいに兵庫県中小企業支援事業の一環で、「皮革大学」というものが今のところは毎年行われています。

これは座学や実技などもありますが、後半には実際に革を鞣す講習も行われます。詳しくは過去に書いたblogをご覧ください。

平成29年度の皮革大学申し込み始まりました。昨年はすごかった。。 | phoenix blog

個人的にはものすごく面白く勉強にはなったのですが、化学用語は飛び交いますので物見遊山で行くとギャフンと驚くことになります。

で、この鞣しを勉強する皮革製造技術部門実習は次のような日程となります。

製革実習  9月 5日間(昼間30 時間)
仕上げ実習 9月 3日間(昼間18 時間)

製革は要は鞣しですね。仕上げ実習は今回説明する「仕上げ」工程となります。


「鞣し」「仕上げ」は設備も考え方も違う

鞣しは毛もついた状態の生々しく塩漬けされた「原皮」を、みなさんが日常で使う革製品で使う「革」にする工程です。

厳密に言うとこの流れはちょっと異なります。順番に見ていくと、、、

塩漬け屋...屠畜場やハンターが剥いだ皮を塩漬けにする工程を行う。
タンナー...皮を大量の水を使い鞣しを行う。革になる。
仕上げ屋...型押し、染色、エナメル加工などを行う

動物からお肉を取り、皮を取った後に、革になるのに最低でもこれだけの会社が関わります。
前出の新喜皮革さんも鞣しを行い、染色までは行いますが、型押しやエナメル加工などは外部の会社にお願いするわけです。それらの工程はそれぞれが専門の高額な設備が必要となり、専門知識が必要となるからです。


仕上げはすごく面白い工程

ムラキ個人は、皮革大学の皮革製造実習で学んで一番面白かったのは「仕上げ」工程でした。
仕上げ工程は「お化粧」だと思ってください。なめされた革の上に様々な化粧=工程をどんどんと載せていく工程です。

で、新喜皮革、オールマイティーの次は、「あれだけ手間かかることはしたくない」と同業他社からも言われるアルファレザーの革をご紹介しましょう

上の写真は、革の鱗1枚1枚にカッティングが施されています。
その上に色を染めています。蛇の模様部分も手作業で塗りの作業を行っています。
塗りの作業を手でひとつひとつ塗ると効率が悪すぎます。そこは特殊な技術が施されているわけです。

柔らかな革の上にハート型で箔押しが行われています。
見てわかりますように広いハートの面の内部がおぼろげに箔が剥がれています。
こちらはハートの縁はきっちりと箔が押され、内部がおぼろげに剥がれるように処理をしなければいけません。この剥がす作業も手作業です。

こちらもギュムっと圧縮してシワが出ています。普通にイメージするような圧縮方法では無理ですね。特殊な機械が必要となります。

こちらは型押しをした後に凸凹で凸の部分だけに染を行い、その上にエナメル加工を行っています。

こちらも型押しですが、凸凹の凸部分に色を載せて、その上にエナメル加工を行っています。
型押し加工には数百種類のパターンが存在し、極論すればそのすべての型押しの凸部分に同じような加工をし、異なる色合いで同じことができるわけです。

他にも様々な加工をアルファレザーさんは手がけています。

もちろん、「私は革らしいナチュラルさが好きなんです!」という人には全く面白くない世界だと思います。ゴージャス!デラックス!ブリリアント!が好き、という人にはものすごく面白い世界です。


仕上げの本質は

私程度の人間が「仕上げの本質はこうだ!」と書くと色々なところから「若造が!」とツッコミが入ってしまうのですが、、、それでも私が思う仕上げの本質とは「こういう加工をお客さんが望む色で、望むパターンで行うことができます」ということです。

元となる土台の革を仕上げ屋さんはタンナーから購入し、その上に様々な仕上げを施します。
土台となる革はキャンパスと同じです。その上にどのような仕上げをするかを考えるのはデザイナーさんなりの仕事であり、それを表現するのは仕上げ屋さんの仕事なわけです。


帰りは革の神様にお参りして

今回紹介した新喜皮革、オールマイティー、アルファレザーは姫路の高木と呼ばれる地域に固まっています。

ここには「高ノ木神社」という革の技術を日本にもたらした神様が祀られている神社も存在します。最後にお参りして帰宅しました。


今後の予定

ムラキが行っているイベント「本日は革日和♪」では、2019.4/5.6は大阪の革屋さん共々イベントを行います。その際に、このアルファレザーさんに来てもらいセミナーというか座談会というかトークショーを行う予定です。

詳しくは下記をご覧ください。

19.4/5.6(金土)の大阪革日和 5日は営業時間延長や展示会など | 本日は革日和♪

4月20.21の土日は東京浅草のA-ROUNDに。こちらはセミナーワークショップ予定。
4月26-28は東京のハンドメイドメーカーズにも出没予定です。


カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
今回は沖縄探訪編。現地に根差した革の文化とものづくりを探ります。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしておりますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。
イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。
当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

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今年1月に沖縄革日和、というイベントを行いました。

19.01.25(金)革日和 ぷち in沖縄 | 本日は革日和♪

今回は私とサンプル師中村さんによるセミナーのみ。私は展示とセミナーを行いました。

会場は沖縄県立博物館・美術館のレンタルしていただける場所を使わせてもらいました。

沖縄県立博物館・美術館(おきみゅー)


当日お越しいただいた皆さんありがとうございました( ´∀`)bグッ!

で、どこにいようとも革のネタ探しをするのが仕事ですので、フラフラと見に行きました。

首里城に革がない!

沖縄革日和終了後、モノレールで首里城駅からテクテクと見学。

見て驚いたのは城壁の緻密さと美しさ。曲線をここまで形成している城壁は見たことないが、調べてみると沖縄の地は石灰岩が多く、加工が容易とのこと。あぁ、なるほどなぁと納得。あれだけの曲線を描き、隙間なく作るのは通常の岩出は無理だろうなぁ、と。
写真にあるように城壁に角がたっているのは魔除けの意味もあるとか。

で、首里城。歴史的に見たら革は貴重な素材のため、展示されている品の材料に革が使われることはよくある。で、首里城というほどだからどこかしらなり展示する品に革が使われているかな、と見てみるのだが、驚くほど革が使われていない。なんせ写真のように皮弁冠と書きながら革が使われていない。

沖縄には革の文化はないのか?という考察

沖縄の地で革が使われてこなかった理由はいくつか考えられる。

昔から豚やヤギを食べる文化なのだが、料理の源流としては沖縄は中国に近いのかと思われる。そのため豚やヤギを食べる際にも皮まで食べてしまうから、皮から革への利用が行われなかったのかな、と。

また、島国だけあって水が根本的に少ない。台風などは存在していても水を貯蓄できるかどうかは別問題。昔から水不足、というほどではないが、水は貴重で大事にする土地柄だったと思われる。
皮を革にする鞣し工程には莫大な水が必要とされる。牛1頭を鞣すのに現在でも1~2トンの水が使われると言われている。実際、タンナーのそばには大きな河川が存在するのだが、沖縄ではそのレベルの大きな河川が存在しません。

下の写真はモノレール牧志駅前にあるシーサー像ですが、その隣には再生水の説明が書かれていました。

原材料としての皮を食べてしまう&水が貴重。沖縄に革を使う文化が発生していないのはここらが主因かな、と思います。

で。

「ムラキさん、知り合いの知り合いレベルなんですが、沖縄ではハブの鞣しをして製品作っているところもあるんですよ」 
へー、姫路かたつの市あたりで鞣しているのかなぁ
「いえ、そこは自分のところで鞣しもしているとか」
自分で鞣し!?そりゃ俄然面白くなってきたなぁ、ということで訪問。

ハブの革を求めてyu-i FACTORY

首里城後にテクテクテクテクテクテクと30分ほど。「タクシー使えばよかったかな」と思いつつハブの鞣しまでやっている、というyu-i FACTORYへ。

yu-i FACTORY

外から見ても小洒落た店舗、中から見ても小洒落た店舗。ほんとにここで鞣しやっているのかな?とスタッフ金城氏に挨拶。

小洒落ているけど所々に通常ではないようなものがちらほらと。
挨拶した最中にも黙々とハブ革の乾燥工程真っ最中でした。

自分の立場や目的説明が毎回一苦労します。

まぁ、革の材料店舗で働いて、請負職人していて、一種のブロガーで革の歴史など調べていて、と喋ると「で、なに?」となるわなぁ。
なんとかしどろもどろに挨拶させていただき生産工場を見学させてもらえました。

この地で鞄や財布なども全部作っているんですか?

金城さん「もちろんです。自社で裁断から漉き、縫製までやっていますよ」

沖縄の地は風に塩が含まれているので何でも錆びやすいってのはほんと?

「あ、それはほんとです。車は早いですね。幸いにもここの機械はそれほどでもないですが、沖縄はサビに気を使わないと行けないですね」

鞣しも見せてもらっていい?とお願いして見せていただきました。
(工場や鞣しの現場を見せてもらったのは特別に見せていただきましたので誰でもokということではありません)

ハブの原材料、皮はどのように?

「沖縄本島や一部の市町村では駆除の一環で1匹3,000円くらいで買い取ってくれるんですよ。で、生きた状態だったならばハブ酒などに使われるんですけど、住民から買い取るハブは殆どが死んでいる状態です。こうなると使いみちがない、と焼却処分されちゃいますね。で、当社はこれを購入して使っています。」

でも鞣しをなんで自社でやろうと思ったの?

「例えば2015年ならば年間800匹ほど買い取っています」

800匹か、、姫路やたつののタンナーさんにしたらドラムの大きさによるけど、1回で終わる仕事だねぇ。継続的に2か月に1度100匹だけ、なんて言ったら怒られるものなぁ

「全くそのとおりです。
沖縄独自の革をやりたかったんですよね。そうあんるとハブだな、と。
誰もやってくれないならば自社でやるしかないですよね。」

やるのって専用設備回してやっているの?

「そこまででもないです。下の動画でもちょろりと見れますよ。冷凍されたハブを仕入れて、解凍して、皮剥がして骨も取って、ですね。製法確立するのに2年かかりましたよ」

よくやっているなぁ、これ!!冷凍状態はコチコチやねんね

「あ、気をつけてくださいね!冷凍状態でもトゲが刺さると毒はまわりますから」

((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

「またHP上でも解説していますのでぜひ見てみてください」

PROCESS - yu-i FACTORY

一通り挨拶させていただき出立。金城さん、ありがとうございました!

帰りにてくてくと店から歩いていくと、「2」「8」の数字がブラブラと揺れている。下の写真の画面中央部分ですね。

てくてくてくてく、、、、、、、、( ゚д゚)ハッ!8と2でハブか!わかりにくいネタ仕込んでくれるなぁ。

沖縄でもオンリーワンな珍しい会社かと思いますし、ハブの鞣しをやっているところもないと思われますので沖縄にお越しの際は是非に。首里城観光の後にてくてくと歩けばたどり着けます。


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プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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