欧米ブランドに「負けていないぞ!」

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」 の記事

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
今回は、80歳の鞄メーカーと、靴の型紙作れても靴は作れない、という話。ひとつの道を極めている、つくり手(サンプル師)にじっくり取材。幅広く活動する村木さんが、つくり手の立場からリアルにお届けします。ぜひ、ご覧ください。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

人気イベント「本日は革日和♪」。今後の予定、スケジュールなどは下記のリンク先をチェックしてください。
  「本日は革日和♪」

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毎度です! 「久々に東京でイベントやると思ったら立て込んできて真っ青」のムラキです。3月は過去一番忙しく、5月はイベントが連続で入ってきています。

次回の「東京レザーフェア」の日程は、5月26日(木)~27日(金)となりますので、これにあわせて、5月27日(金)~28日(土)で「本日は革日和♪ in 東京」をやります。「東京レザーフェア」を見た帰りにでもお立ち寄りくださいな。コロナ対策のために時間帯・予約制・完全入れ替え制となっています。
今月の投稿では、ふたりのサンプル師に聞いた話を紹介します。バッグのサンプル師のお父さんが80歳でメーカー業をしているので、その展示会をやる、という話。そして、靴のパタンナー(まぁ、サンプル師の方です)は職人の靴作りには敵わない、という話です。両方ともひとつの結論、「餅は餅屋」につながっています。

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80歳のバッグメーカーの個展をやるってどういうこと?何売りつけられるの?


大阪のバッグサンプル師の中村さんは、生まれた時から家業としてバッグを作っていました。このたび、80歳になるお父さんが東京・表参道で個展を開催する、とのことで話を聞きました。

―――
こういう個展とか展示会って行く人間としては、「なにか売りつけられるのかな?」とか「仕事頼まなきゃいけないのかな」「同業他社はいけないのかな」、とか思いがちだけどどうなの?

中村さん
「あ、そういうふうに思われちゃうか~。ないよ、なにも売るものは。来たからって何か買わなきゃいけない、ということはない。なーーーんもないよ。
だからお金なんて持ってこなくて良い。それに同業他社だろうが、ハンドメイド作家さんだろうが、職人さんだろうが自由に来てもらってほしい。趣旨は、『ほら、この業界で80超えたじいちゃんでもこうやって生きている』『若い人ならもっと出来ることはある』と励みになればいいなぁ、というだけのことやで」

―――
えっ! 本当にそれだけの目的?

生き残れたのは人の縁があったから

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別に何か売る、とかもなしにこのイベントやるのかよ。

中村さん
「せやで。でもな、うちの父さん、超絶技巧がある! というわけでもないねん。僕はサンプリ師やけど、その父ちゃんだからすごい技術がある! というわけちゃうんよ。
技術ちゃうねん。メーカーとして生き残れているんは、技術じゃなくて人の縁を作ってきたからやねん。
OEM主体だから取引先の問屋さん、仕入先の材料屋、外注先の裁断屋や漉き屋、縫製職人さん、などの人の縁があったから生き残れたんよ」

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人の縁、って曖昧だよね? 素人考えで言うなら、モノつくれるなら、金儲けできるやん、と思うけどちゃうの?

中村さん
「何度も言うけど、うちのお父ちゃんって超絶技巧あるわけちゃうねん。
ムラキくんは僕をサンプル師と見てくれるよね。でも、サンプル師だから超絶技巧ある、というわけちゃうねん。ただ、世間一般でいう超絶的な技工はできないけど、超絶技巧があるように技術を分解して、できるように見せているだけやねん。
技術を分解して、誰でもできるように仕立てているだけにすぎない。誰でもミシン縫ってス~~~~~っと縫えるように技術を分解しているだけやねん。
アタッシュケースを作るなら、うちの父ちゃんができるように父ちゃんが持っている技術に分解しているだけに過ぎない」

---
あぁ、なるほどなぁ・・・。

技術を"分解する"という意味。メーカーは自分ができることをやるだけ、という意味

中村さん
「自社でブランド作るなら、超絶技巧でもいいと思う。でも、うちの父ちゃんや僕がやってきたように、OEMで大量に数をある程度の工賃や金額で回そう、と思った場合、超絶技巧じゃあかんねん。僕だけができます! という技術じゃ数は作れない。昨日バイトで入った人が縫えるように技術を分解して誰でもできるようにしなくちゃいけない。それが"数を回す"という意味やねん」

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メーカーっていうと、すごい技術がある! と思うけど違うの?

中村さん
「違う。誰でもできるように自分が持っている技術を分解して運用するのがメーカーの仕事やねん。
メーカーは自分が作れない仕事は受けるべきじゃない。工程が右から左にス~~~~~っとこなせる仕事をやらないと火傷する。作法が違う」

というような話を動画で公開しています。

上記の話を軽く文章でまとめていますが、実際は1時間弱あります。

「メーカーという仕事は超絶技巧があるわけじゃない」
「ただ、量産という仕事はメーカーに任せた方がいい」

などをまとめていますので、ご興味のある方はご覧ください。

結論として言うなら「餅は餅屋」という話です。

また、過去の下記blogでも同じことを書いていますので、ご覧ください。



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前述の、サンプル師 中村さんによるバッグ教室は、大阪のレザークラフトフェニックス 3Fにて開講しています。


さらに、古瀬シュースティリスタ研究会(現在、受講生募集中です)も、レザークラフトフェニックス 3Fで開講しています。この古瀬シュースティリスタ研究会は「靴の型紙を感覚じゃなくて論理的に解説する」がモットー。でも・・・

靴の型紙をつくれるけど、靴の吊り込みは時間がかかる、という話

古瀬シュースティリスタ研究会 | 足を熟知して靴を考える

古瀬さん
「ムラキさん、バッグのサンプル師 中村さんと僕の話は同じだよ。僕は型紙をつくれる。でも、靴の吊り込みができるわけちゃうよ」

---
でもあなたは大阪で靴の型紙を教えているよね? 受講生的には靴の吊り込みなり靴を作る、ということができる、とイメージしちゃうよね?

古瀬さん
「あぁ、ちゃうよ。僕は靴の型紙をつくれる。木型がちゃんと型紙とあっているか、などの検査はできる。でも、型紙から革を裁断して靴を作る、というスキルは低いよ。それは吊り込みの職人さんのほうが優れている。絶対に。僕は単に型紙をつくれるだけやで」

---
素人考え的には型紙作るなら靴つくれるんちゃう、と思うやん?

古瀬さん
「それは違うスキルだよ。

靴の型紙作るってのと、靴を実際に作るは全然違う。
靴の型紙を作る場合はどこに神経が通っているか。どこに筋肉が通っているか。その上で革がどこを押さえるか、などをきちんと把握して作らなきゃ駄目。感覚の前に理論が必要なんだよ。

僕は間違いなく靴の型紙を作る。木型の検査とかもできる。

でも、靴を作る、ってのは別のスキル。僕が作ると吊り込みの職人さんが10分でできることが、僕がやると1時間かかっちゃう。型紙を作る、というのと、靴を作る、は別のスキルやねん。一人の人間が全部やるのは大変やで」

職人という言葉を日本人は好きすぎる

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前回のJLIAblogでも書きましたが、言葉と意味の定義はすごく重要です。量産をする窓口である"メーカー"と実際に量産生産をする"職人"というのは似ているが全く違う職種です。


職人、という言葉から「全部できる」と思いがちですが、実際はサンプルを作る職人仕事と、量産仕事は全く別の世界です。実際に量差をするために段取りを組んでくれるメーカーという仕事は人の縁を基調というプロの仕事です。

餅は餅屋です。 

ネットがどれだけ発達しても人が積み重ねた"縁"は安易に手に入るモノではありません。

もし、これを読んでいる方が「僕は売れっ子Youtuberだから、自分オリジナルの財布を100個作りたい」「100個作るから、手作りイベントでつくる人を探そう」と思ってもうまくいくかどうかは博打です。「量産」、と「1個を丁寧に作る」のは別の問題だからです。

職人、とメーカーは別の世界です。上記のサンプル師 中村さんや、靴の古瀬さんに量産を相談しても無意味です。量産ならば職人、ではなくて、メーカーの仕事です。

鞄なりバッグなり小物メーカーは下記のリンク先から組合を見て、そこから加入社を見ることは可能です。

餅は餅屋

今回長文のblogを読んでいただいた方にはこれを覚えておいてくれたら幸いです。

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今後のイベント予定

5/27.28(金.土) 

本日は革日和 in 東京」(事前予約制)を行います。

本日は革日和♪in東京 22.5/27.28(金土)久々の展示会・初心者枠作りました | 本日は革日和♪

6/2~6/4(木土) 

「素材博覧会 KOBE 2022 夏」に、「本日は革日和♪」でブース出展予定です。

素材博覧会 KOBE 2022 夏


カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
2022年第三弾は、レザーソムリエとSDGsと職人募集話から見る「言葉と意識をあわせる重要性」という話。幅広く活動する村木さんが、イベントや生産現場で感じたこと、聞いたことをつくり手の立場からリアルにレポート。ぜひ、ご覧ください。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

人気イベント「本日は革日和♪」。今後の予定、スケジュールなどは下記のリンク先をチェックしてください。
  「本日は革日和♪」

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毎度です!
「まんぼうが解除されましたが、先はまだ長いよね」としみじみ思うムラキです!

まん延防止等重点措置に基づく要請が3月21日に解除されました。1月27日から2か月ほどありました。前回の世界的パンデミックであるスペイン風邪が1918年から20年。

沈静化するのに5年ほどかかりましたが、今回のコロナも特効薬が開発されるのにまだ数年はかかるかな、というところです。それでも引きこもって生きるわけにはいきません。

2月からイベント参加やイベントお手伝い、求人話取材などに行ってきました。それぞれを行いながら感じた「言葉と意識を定義づけする重要性」という話をしてみようと思います。
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レザーソムリエ 中級セミナーのお手伝いに行ってきた


レザーソムリエの皮革講座 Professional(中級)が大阪で開催されました。
前回は2年前に東京ではじめて開催。大阪では今回はじめて開催されました。次回は東京で4月20日に開催されます。
で、大阪のお手伝いに駆り出されました。まぁ、面白いそうなのでお手伝いお手伝い、です。

「今回の講師の方の紹介です。え~っと、あそこにいるムラキさんは・・・ユーチューバーで大阪弁喋れますので」(と司会からの紹介)

えっ!ユーチューバーだったの、私!? 今回私が雇われたのって大阪弁喋れるからなのか!?
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ここがすごいよ、レザーソムリエ中級講座!利き革試験がある

このレザーソムリエ中級、受講料が3万弱かかります。それに見合うだけのものを提供しなくちゃいけないので運営さんもドキドキだと思います。

で、見ていて「すごいな」と思ったのが最後に行われる「利き革」試験。
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30分の時間内に20種の革の動物の種類と10種以下の仕上げ加工を見極める、という利き酒ならぬ利き革試験。

「えっ!カンガルーとゴートの見分け方ってかなり難しくないか!? これは専門家でも難しいだろ」と度肝を抜かれました。

受講生の前にはこのすべての種類の革がサンプルとして講座の間中触れます。更に、会場の後ろには利き革で使われる革がもとの大きさのままで陳列されています。

カンガルーやゴートにしても、元の大きさや厚み、視覚でわかるものですが、これを10cm×20cmほどの大きさで統一されるとほんとに難しいです。

講座の休憩時間中に「この!陳列された革の利き革、と赤文字で書かれているものは後で試験に出るから!ほんとに難しいから手と視覚、匂いなどを覚えて!ほんとに難しいから!」と主張するのが今日の私のお仕事です。


この講座の価値があるな、と思ったのは「さまざまな革や仕上げ革を実際に触れる」ということ。

受講者さん「いや、この見極めは難しすぎじゃないですか! 」

難しいよ!  私は今質問してくれているあなたがなんの商売されているかは知りません。

ですが、お客さんから「あなた革の専門家なんだからこれがなんの革かわかって当然だろ!」と言われても、「革の専門家だからこそ、試験にかけないとわかりません」と主張してください。

大丈夫! 革の専門家になればなるほど、それがなんの革かを気軽に断定して回答しなくなります。

私自身は革屋さんで働いていますが、お客から「お前は革屋だから革製品触って、革の種類わかるだろ!」と言われたら「うちは魚屋さんだと思ってください。魚屋さんが白身魚のフライを食べて『これはキスです』『こっちはベトナムのパンガシウスというナマズです』なんて全部わかるわけがないんです。
うちがわかるのはうちの会社で売っているものだけです」と答えます。それくらい革の断定って難しいんです。
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だから、今日、あなたはこの場でこれだけの革を触ったことによって、「こんなの見分けつくわけがない」とわかって絶望したと思います。

だからこれからは、「革製品触って素材なんてわかるわけないんです! 革はそれだけ広い世界なんです」と自信を持って答えてください。

それを答えられるだけのさまざまな革を今日あなたは実際に触ったわけですから。今日の経験は、他者に対して胸を張って「わからなくて当然だ! 」といえる経験です。

40種類近くの革が並んでおり、これを片付けるのもひと苦労でした。

ここがすごいよ、レザーソムリエ中級講座!革のSDGSの話が出た

中級講座は10時から17時30分まで行われます。

で、驚いたのが「皮革産業とSDGs」という講座があったこと。は~~~、触れるんだなぁ、この話題。

SDGsは近年盛んに言われるようになった目標です。
「SDGsとは、『持続可能な開発のための2030アジェンダ』に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。」と定義されています。

皮革業界もこの流れに対してどのように対応しているかをきちんと表明しなければいけないな、という状況です。今回のソムリエで講義として話されたのは驚きました。SDGsは17の目標と言われるだけあって、目標数が多いです。

このSDGsの17の目標が、皮革業界のどこにどう当てはまるか、は業界によって異なります。これが非常に難しいわけです。

SDGsは17の目標があるので、SDGsの話をするときはどれに対しての話か、きちんと定めないと会話が大変

革を作るタンナーや靴、鞄、財布、などではそれぞれ注視しなければいけないSDGsの目標が異なります。

今回のレザーソムリエ中級講座では、「脱炭素社会のスローガンから生み出された偏見と誤解」に対して皮革業界としての解説が行われました。

それに対して、兵庫県のタンナー山陽さんは下記のようにHPでSDGsについて表明されています。

SDGsの17のうちの8つに対して、タンナー山陽として解説されています。

2 飢餓をゼロに
3 すべての人に健康と福祉を
6 安全な水とトイレを世界中に
8 働きがいも経済成長も
9 産業と技術革新の基盤を作ろう
12 つくる責任、使う責任
13 気候変動に具体的な対策を
15 陸の豊かさも守ろう
17 パートナーシップで目標を達成しよう

SDGsの難しさは、「SDGsという言葉を使う人、一人ひとり、それぞれが注視している目標が異なる」という点です。

これを読んでいるあなたが、誰かから「革業界はSDGsに対してどのように思っていますか?」と言われた際に、あなたは「6 安全な水とトイレを世界中に」という目標に対しての革業界の取り組みを説明されるかもしれません。ですが、質問した誰かは、「それじゃなくて、15 緑の豊かさも守ろう、に対してどう思っているんだ」と言われるかもしれません。

SDGsは17の目標があり、SDGsの言葉を使う人は一人ひとりが見ている目標が異なっていると思ったほうがいいです。

これが今回のblogタイトル「言葉と意識をあわせる重要性」にかかるわけです。
同じ言葉を使っていても、見ている目標が異なるわけで、こうなると話をしても平行線になるわけです。

他の事例として、「職人」という言葉も人によってイメージが異なりすぎますので、最初に定義付けをしっかりしないと混乱のもととなります。

職人、という言葉は人によってイメージが違いすぎるから、きちんと「言葉」をあわせないといけない


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先日、大阪の財布メーカーさんから求人の話が来ました。くわしくは下記blogをご覧ください。

求人:財布メーカーのナダヤさんが職人を募集、というので聞いてきたし、音声動画もアップしてみた | phoenix blog

で、職人募集、という話を聞く場合、私が毎回やるのが「職人の言葉の定義」です。

日本の革業界では、「職人」という言葉の定義が業界や業種、さらには個人個人でも意味合いが異なることが本当に多いので、それをしっかり定義づけしなくちゃいけません。

「職人」という言葉は人によってイメージばらばら

普段私は、自分の職業を説明する時に意図的に「革の請負職人です」という言葉を使っています。
ちなみに請負職人、という言葉は革業界では一般的ではありません。でも私の職種をきちんと表している言葉がないんですよ。

セミナー冒頭でよく言うのですが、「普段は請負職人をしています。請負職人、というのは作りたくもないキーホルダーを500個作ったり、依頼された財布を50個作る、などある程度の個数を依頼されて作るのが仕事です。」と説明しています。決して自分の仕事はYouTuberなんて言いませんわ。

他方、「お客様からオーダーをもらって革鞄を作る」という人も「僕は革職人」と自称されます。
革を作ってくれるタンナーさんも「革職人です、私は」と言われる方も多いですね。

革業界ではあやふやなんですよ、「職人」という言葉は。

財布メーカー社長に聞く「職人」の定義

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今回求人をする、というナダヤさんに話を聞いたところ、彼の定義する職人、というのは「サンプルが作れて、型紙が作れて、量産のやり方をパートや内職、外注先に解説できる」「将来的に見積もりが作れる」というものでした。

 ん~、それは品質管理と技術管理をする職人さんですね。ミシンをがんがん使える、というタイプじゃ駄目なの?

「駄目です。ミシンを縫う、というのはパートの仕事です。職人を社員として雇う以上、品質と技術を管理できる人じゃないと駄目なんです。『俺だけが作れる超絶技術!』では困るわけです。それを下の人間が作れるようになってくれなきゃ困るんです」(ナダヤ社長)というように、メーカー社長さんでも「職人」という言葉をこれだけ重い意味合いで使う人もいるわけです。

しっかり「言葉と意識をあわせる」という作業をしておかないと、「職人、というから、お客とじっくり話し合う職種だと思ったのに違うじゃないか!」「ミシンを延々と踏んで人と話さなくて済むと思ったのに!」などとなり、雇いたい側・雇われたい側の時間と労力が無駄になるわけです。

ここらへんの話を50分インタビューして聞いてきました。下記YouTubeにあげていますので、興味ある方は聞いてみてください。

「言葉と意識をあわせる」という工程はものすごく重要

SDGsや職人などを例にとって解説しましたが、子育てだって、夫婦や親子生活だって、経営や仕事だって、この工程は重要です。

「そんなの言わなくてもわかるやろ!」ということはありえません。

自分の常識は非常識、と思って、相手とコミュニケーションを取る努力をしないといけないよ、というお話でした。

次回レザーソムリエ中級は東京で4月20日!

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興味ある方はぜひ。多分大阪人のわたしはお手伝いに呼ばれないと思います。

レザーソムリエは登録したら無料で見られる「オンライン皮革講座Basic」はほんとに価値あるのでオススメです。



カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。2022年第二弾は、イベントで「知ってもらう努力をすることは、相手を知ることだな」と実感した話。
先日、展示会に出展した村木さんが感じたリアルなできごとを中心に、皮革産地 兵庫県姫路市のものづくりのニュースもご紹介。ぜひ、ご覧ください。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

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毎度です!
「三寒四温という言葉は中国由来で中国の気候を表す言葉だそうです」ムラキです。

なんだ、てっきり3日寒いのが続いて4日暖かいのが続く、と思ったけど、中国の言葉で中国の気候を表すそうですから、日本では関係ないんですな。それくらい寒い日が続いたり、たまに暖かくなってきましたな。


1月・2月はあまりに寒く、バイク乗り的には身動き取れないので例年あまり動きません。が、今月はまん延防止等重点措置が発令されていましたが、 イベントに出たり、イベントを見に行ったりしていました。

今回は行ってきたイベントから、「消費者なりの考え方なりを理解するためには、他者の目を入れたり、実際に消費者に当たらないとわからないな」ということを学んだ話をテロテロとしてみたいと思います。
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皮革業界総合研修のオンラインセミナーをしてみた

今年は「小さな会社にこそ必要な自前の『情報発信』戦略」という講座をオンラインで行った

毎年、大阪府と近畿経済産業局が行ってくれる「皮革業界総合研修」では、皮革関連産業の復興のため、業界の傾向やトレンド、実践的な経営の知識を身に着けてもらうために、講師を招いて時流にあったテーマで実地しています。

で、数年前からこのセミナーでコーディネートを頼まれています。まぁ、「毎年専門家にお願いしているが、ちょっと変わった切り口で1コマあげるから君の伝手で専門家呼んでしゃべってよ」というものです。

呼ぶ専門家は専門家ではあるんですが、セミナーなどを行ったことがある人はほとんどいません。だから、必ず毎回打ち合わせをして、当日はそばで狂言回しor司会or突っ込み、としてセミナーに挑みます。

今年は知り合いの日本橋のフリーペーパーを製作している会社さんの社長を呼んで、「SNSの時代だからこそ、新聞なりラジオに載るためのプレリリースはどう書くか?ここがコツだ!」という趣旨でしゃべってもらいました。

驚くことに今年はオンラインで開催されましたわ。結構長くやっている研修事業なのですが、オンラインでやる、と振り切ったのは驚きました。
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技術的に話すならば、、、

・ビデオカメラとPCをHDMIでつなぐ。その間に変換器を繋げる

・PCの中ではOBS STUDIOで取り込んでレジュメと話者の顔を映して配信

・回線は楽天SIMを確保。回線速度は安定していたが、2時間経過すると一気に速度落されて焦る

というもの。ここらも話すと平気でblog 1回分かかります。まぁ、詳しくは専門のページ見た方がいいです。ここまでの知識が無料で入るとはすごい時代です。

一眼カメラやデジタルビデオのHDMI映像でテレビ会議やライブ配信ができる「GV-HUVC」 | IODATA アイ・オー・データ機器

「プレスリリースを送って、新聞が取材に来るとこっちが思ったものと違う点が紹介される。それは他者が見たらそちらのほうが記事になる、と判断したから」

今回話していただいた内容で印象に残ったのが、上記にあげた言葉。

どういう意味?

「プレスリリースを新聞やラジオに送ったとするよね。そうすると取材に来てもらえる(場合がある)。

このときにこちらとしては記事に口出しもできないし、事前チェックもできないと思っておいたほうがいい。そうなると『自社の製品、イベントの特長はこれ! 』と思っていたのに、記事になるとその点じゃなくて他が使われることはよくあることなんだよ。

それは悪いことじゃない。今までさんざん自分で見てきたもの・開発したもの・売っているものの良さってのは、自分では気づきにくくなりやすいんだよね」


へぇ~と思いながらセミナーを聞いていました。


「新聞記事になるメリットってのは、取材のプロにより『あなたの事業なりは良いものですよ。この点が良いね!』と評価してもらえることです。自分が見ている良い点と他者が見る良い点、ってのは異なることはよくあるんだよ」


横浜素材博覧会に出展

で、セミナーの翌週は横浜の素材博覧会に出展しました。

素材博覧会

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今回はまん延防止重点措置発令下での開催だったため、人出は少なかったですね。出展者も少なかったですが、「このイベントはじめてきました!」という人も多かったように思えます。

当日は3つのセミナーを行いました。

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「人に話したくなる革の話 革の買い方や歴史編」
「ラウンドファスナーコインケースを目の前で実演して作るセミナー」
「3Dプリンタデータ作成実演と雑談質問」

このセミナーを1日3回×3日間行いました。
この3つのセミナーは、話す内容はそれぞれ異なります。


「人に話したくなる革の話 革の買い方や歴史編」

レザークラフトや革製品に興味がある人向けの革の歴史や雑学。

「ラウンドファスナーコインケースを目の前で実演して作るセミナー」

目の前で工具を使いながらコインケースを手縫いで仕上げつつ、「この工具は便利です」「こうやると時間短縮できます」など雑談をする。

「3Dプリンタデータ作成実演と雑談質問」

3Dプリンタで何ができて、そのためには何がいるか。いくらくらいかかるのか。聞いている人は何がしたくて、それが可能なのか?そのためにはどれを買えばいいのか、何を勉強すればいいのかをお伝えする。PCで実際にデータも作ってみる。


意識しないと消費者や初心者のつまずきは理解できない

これらのセミナー、2つ目、3つ目は有料ですが、主目的としてはお金がほしい、というわけでもありません。

目的は2つ。

1つ目は、客寄せパンダ。
ブースの取りまとめが私の仕事なので、素材博覧会開催中は特にやることはありません。
セミナーを開催することで、「このセミナーが聞きたいからこのイベント行こう!」と思ってもらうことがイベント開催中の私の仕事なわけです。まぁ、客寄せパンダ、ですね。

2つ目は、「初心者さんなり消費者が何がほしいか」を知ることです。

最初のセミナーはレザークラフト初心者さんや革製品が好きな人向けのセミナー。2つ目はレザークラフトを今後はじめよう、と思う人や実際始めたばかりの人が対象。3つ目は3Dプリンタ初心者か、買おうかどうか迷っている人が対象です。

革の販売や職人仕事をしていると、最初に自分がどう苦労したのか。何がほしかったか、という気持ちを徐々に忘れてしまうんですよ。

キャリアを重ねるごとに「自分はものを知っている」と勘違いしがちですが、それは同時に「初心者や消費者が何がほしいのか」という気持ちがわかりづらくなっている、ということもありえるわけで。
これが恐ろしい。ものすごく恐ろしいわけです。

だからこそ、こういうセミナーをすることで「どの部分にお客は食いついているか」「どこで寝そうになっているか」「何に頷いてくれるか」などを逐一見ています。人に教える、ってのは自分が教わることだな、と自分の心に入れるために初心者向けのセミナーをやっています。


3Dプリンタのセミナーで正しい質問をしないと、相手が望む願望を聞き出せない、と学ぶ

3Dプリンタセミナーでは受講生さんに聞き取り調査を最初に行います。

「あなたは何が作りたいですか?」と。

今回のケースでは、女性で「フィギュアを作りたいんです」とのことでした。この一言で、「じゃぁ、こういうプリンターで、こういうソフトで、ソフトと3Dプリンタで~くらいの金額かかりますよ」などはすぐ回答ができます。

ただ、見た限り相手さんはフィギュアがほしい、という感じではありませんでした。フィギュアなのか、ドールなのか、動物のフィギュアなのか、、、
じゃぁ、フィギュアを何にどう使って、どれくらいの大きさのフィギュアがほしいですか?と追加質問です。

「~~という工芸品を作っており、その中にフィギュアを入れています。それを自分で作りたいな、と」

ん?それは鉄道模型で使われる情景小物と呼ばれるものですよね?Nゲージの大きさにあわせて極小サイズの人間や動物、のやつ?最近はテラリウムや盆栽の添え物としても使われている小さなやつよね?


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「そう!それです!」

あぁ、なるほどなぁ。

受講生さんの言う「フィギュア」という単語と、私が脳内に設定する「フィギュア」の前提が異なりました。
最初の質問、「何が作りたい?」に対しての「フィギュア」だけ聞いて話を進めていたら、お互いが想定しているフィギュア像が異なるため、話す内容が受講生さんの望む内容と異なります。最終的に「聞きに来た意味なかったな」となりかねません。

あぁ、恐ろしい。正しい質問ってほんとに大事。そのためには相手の回答以外にも声色や表情、手の動き、年齢や性別などの実際の「言葉以外の情報」がないと正しい情報は得づらいです。


「ネットにある情報は情報過多すぎて、自分がほしい情報にたどり着けない」と言われた

受講生さん、正直私の知識や技術って3Dプリンタやっている人のトップレベルが10だとするならば、多分レベル2レベルです。それでも受講されて価値はありましたか?

「価値ありました!
私がやりたいことを理解してもらって、それに対応する知識を提供してもらえたと思います。

ネットにある情報って『3Dプリンタでこんなに細かいフィギュアが作れます!』などとよく書かれていますが、そうじゃないんですよ。最初の一歩で『私もそんな細かいフィギュア作りたい!』という人がいるのもわかります。ですが、私はそうじゃないんです。

私がやりたいことが困難なのか。それ以外の解決方法があるのか、ということが知りたいんです。ネットは情報過多すぎて、自分がほしい情報までたどり着けないんですよ!」

なるほどなぁ。

私以上に3Dプリンタに詳しい人はざらにいます。山程います。もっと詳しく専門的に話せる人もたくさんおられます。ですが、初心者がほしいのは「自分が作りたい、という願望に対する回答」なんだろな、と思います

そういう意味では私のセミナースタンスはあながち間違いではないな、と思います。ものすごい上級者の回答じゃなくて、「初心者がどこでつまづくか。どこで苦労したか。お金はどれくらいかかるか」などの話が受講生には必要なわけですから。


姫路で姫路革アピールのイベントを見てきた

で、横浜の次の日は電車で姫路までイベントを見に行ってきました。知り合いのタンナーさんが姫路駅ビルにて姫路革アピールのイベントを行う、とのこと。駅ビルのピオレ姫路の1Fイベントスペースで行っていました。

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姫路市民でも姫路が革の産地、ということを知っている人は3割位。これを5割にしたい

このイベントを行ったのは姫路レザーディレクション協議会。姫路の高木・御着の皮革組合員さんによるポップアップイベントです。

-- めちゃ失礼ですが、姫路レザーディレクション協議会ってのはいつできたの?

「4月に立ち上げます。このイベントは決起イベントというか協議会を行う前の事前イベントです」

-- 姫路の高木・御着、という2つの地区のタンナーさんがこのイベント行うのはなぜ?

「姫路市民でも、姫路が革の産地、ということを知っているのは3割くらいなんですよ、これを5割にしたいな、と思っています」

-- めちゃ失礼な話ですけど、「東京でアピールだ!」とか「世界だ!」とか思わないの?

「東京なら、東京向けに他の組合なりがアピールされています。世界に対してはそれこそJLIAさんがアピールしてくださっています。大きな方向はほかの人がやればいいんです。私たちはまずは地元からです。

ターゲットは狭く絞れば絞るほど、芽が出やすいですからねぇ」

-- 今回姫路の革を使った製品を展示されていますが、学生さんのも展示されていますよね?

「姫路工業高校専門学校と神戸ファッション専門学校の生徒さんの作品も展示しています。若い人に革を使って作品を作ってもらい、さらに若い人にはワークショップも行っています」

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-- 最後に挨拶お願いしますわ。

「姫路レザーディレクション協議会は4月から開始します。姫路の革をより知ってもらうための活動を行いますので、よろしくお願いいたします」


今回のまとめ 

消費者なりの考え方なりを理解するためには、他者の目を入れたり、実際に消費者に当たらないとわからないな

さて、3つのイベントを通して思ったのは、「消費者なりの考え方なりを理解するためには、他者の目を入れたり、実際に消費者に当たらないとわからないな」ということ。

自分一人だとどうしても視野が狭くなります。他者の目も入れるのも手ですが、自分から積極的に初心者なり消費者なりにぶつかりに行き、話をするのも手ですよ、というオチでした。


今後のイベントについて

5月の「レザーフェア」にあわせて「革日和♪ in 大阪」予定

イベント参加の際には、本日は革日和♪で告知します。


カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。2022年第一弾は、島根県江津市の苔の取り組みから見る「売る」難しさと革の話について。

村木さん独自の視点により、革の新しい可能性とその広がりが感じられるレポートです。ぜひ、ご覧ください。

*   *   *

通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしておりますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

人気イベント「本日は革日和♪」。今後の予定、スケジュールなどは下記のリンク先をチェックしてください。
  「本日は革日和♪」

*   *   *

毎度です!

「この時期って寒すぎるのでタンナーさん見学はしづらいんです」ムラキです!

月1回書かせていただいているこのblog、どうしてもコロナに触れざるを得ません。

年があけた2022年1月からコロナ オミクロン株の蔓延が進み、連日新規感染者数が過去最多を更新しています。オミクロン株は従来よりも軽症であるためか、現在は蔓延防止策のみが発令されている現状です。願わくば1年後なりに「そんなこともあったなあ」と読み返せていたら良いですな。

今月のblogは下記のような内容を書いていきます

・ポップなきのこ展と苔

・きのこと苔のイベントで見てきた
「こんなところで革」「売ることの難しさ」

・革屋さんの新作革

・今後イベント予定

ポップなきのこ展に行ってきた

1月に大阪の植物園「咲くやこの花館」で行われたPOPなきのこ展を見に行ってきました。

帰ってきた!POPなきのこ展 | 大阪の植物園-咲くやこの花館-

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きのこ自体も食べるのは好きですが、植生はそれほど興味もっていないです。同時開催の苔展に興味あったのと、「SNSでバズッた!?きのこリウムフォトスポットが今年も登場!」と書かれた写真が「あれ?これどうやって撮っているんだ」と興味を持ったので。
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会場の様子とフォトスポットはこうやって撮っていたのか!

会場はなかなか盛況でした。2年ぶりの開催となっていたのと、昨今の苔人気もあったようですな。
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ちなみにフォトスポットは下記のような撮り方でした。苔やキノコ部分は全部本物です。なるほど、これは面白いやり方だな、と感心。
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会場で見かけた革の使い方

会場で販売されているこちらのモスライト、という商品はガラス容器とLEDがセットになっています。
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こちらのライトを支えている土台は革にハトメで金具をつけて、ワイヤーをつけたものですな。

モスライトの販売業者さんがオプションパーツして販売されています。

革素材の便利なところは,「端っこの始末をしなくてもほつれてこない」「線維が緻密に絡み合っているので、頑丈」ということがあげられます。刃型を作れば量産しやすいですし、縫製の必要もないので作業効率も大変良い。

革素材はこういう些細な使い方でも使いやすい素材だと思うんだよなぁ。この業者さんもよく革を使ってくれたものです。ありがたやありがたや。


島根県江津市の苔の取り組みが面白い
会場では「コケトークショー あなたの知らないコケ園芸の世界」というものが行われていました。1時間程度でしたが、この話の中で聞いた島根県江津市(ごうつし)の苔に対する取り組みはなかなか面白かったです。
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江津市と書いて「ごうつし」と読む

江津市 - Wikipedia

江津市 - Google マップ

島根県江津市は「東京から移動時間がもっとも遠いまち」、 というのをうたい文句にするほどの日本海沿いの街だそうです。

かいつまんで説明すると・・・

・1970年から比べると水稲作付け面積が1つの市と同じだけの面積が減少。耕作放棄が進んでいる

・山沿いにあり日照が悪い場所や山際が多いが、苔栽培には最適

・2010年から苔栽培が始まった

・女性や高齢者でも持てるくらい資材が軽く、初期投資も安い

・作業的には日に当てつつ日々細かい雑草を手で除去していく

・現在は20の個人や企業が苔を栽培している

・2014年からは「ごうつコケプロジェクト」と銘打ってセミナーや展示会に出展。販売生産支援をしている。

・地方創生6次産業モデルとして「江津(ごうつ)のコケで世界を潤す」をビジョンとし、生産者・地元の企業・行政が一体となって取り組んでいる

6次産業?
1、2、3、4次産業はわかるけど、6次ってなによ?

1次産業+2次産業+3次産業で6次産業

1次産業は農業や漁業、2次産業は加工、生産。3次産業はサービスや販売です。


1次、2次、3次くらいはまぁ、中学社会で習うくらい一般的な用語です。4次産業となると、「情報通信・医療・教育サービスなどの知識集約産業」と呼ばれています。多分まだ教科書には書かれていない用語、のはず。

で、5次産業を飛び越えて6次産業ってなによ?


6次産業は、農畜産物、水産物の生産だけでなく、食品加工(2次産業)、流通、販売(3次産業)にも農業者が主体的かつ総合的に関わることによって、加工賃や流通マージンなどの今まで2次・3次産業の事業者が得ていた付加価値を、農業者自身が得ることによって農業を活性化させようというものである。

あぁ、なるほど。

1次産業の仕事、農業なり漁業の人が自分たちで製品づくり(2次産業)から販売(3次産業)までやって、利益得なさいよ、ってことか。なるほど、江津市の苔プロジェクトはこの6次産業を目指している、と。ふむ

この6次産業は国も提唱しており、実際にいくつかの成功例もあります。


メリットは雇用創出や利益アップ。デメリットとしては初期投資の大きさや、専門知識の習得などがあげられます。

じゃぁ江津市の6次産業化はうまくいったのか?

セミナー最後に会場から質問を募ったところ面白い質問が。

「江津市の苔プロジェクトは面白いですが、現状は苔素材の販売が多いと思います。

苔リウム(参考リンク:Mosslight-LED(@mosslight1955) • Instagram)を販売、などはされないんですか?」

回答「現在はしていません。
市内には苔を素材として栽培している農家さんもいますが、苔リウムを作っている人もいます。

当初はこの苔リウムを様々な地域に出荷して販売を、ということも考えましたが、うまくいきませんでした。

委託として苔リウムを置いてもらうと、販売されなかったものが返送されます。この返送料が高い。また、梱包も大変なため、現在は休止しています。

ですが、江津市の中では苔リウムを個人で作成し、販売されている方もおられますので、ぜひ遊びに来てください!」

異様にしゃべりがうまいな、この人・・・と感心しながら聞いていました。

HP:江津市観光協会 石見神楽・温泉など江津市の観光情報満載
FB: 江津市観光協会 | Facebook

作るよりも売るほうが難しいなぁ、と

普段からよく言っているのですが「作るよりも売る行為の方が5倍くらい難しい。でも、売れる品を考えるのはその10倍難しい」です。


作る行為って目標が明確です。納期までに、既定の品質を満たせば終わるわけです。

売る行為って終わりがわかりづらいです。

全部売ればいい、という問題ではなく、「利益があるように」売らなきゃいけない。

ですが、今の時代は「今日買ってくれたお客は数か月も数年後も買ってもらいたい!」、という優良顧客を作らなきゃ意味がないわけです。焼き畑農業的に「うっぱらっちまえばこっちのもの!この客とは二度と会わない!」、という楽な売り方はしづらいわけです。

売れる品を考える、のはさらに難しい。

売れる品を考えるためには、どの層に売るのか、そのお客は何を望んでいるのか、そのお客にとっての適正価格はいくらか。自分の手持ちのカード(技術、素材、デザイン)などは何があり、それをどう提供して、どれだけ利益を載せられるか、などを考えなきゃいけません。

江津市の取り組みは苔を栽培する、というアイディアと実行。それに加えて、「それを販売してく」というルートも試行錯誤しつつ確立させている最中なんだな、と勉強させてもらいました。
 

関西の革屋さんの展示会を見てきた

ちょうど今の時期、関西の革屋さん2社が展示会をしていたので見てきました。

※革屋さんの展示会はメーカーさん向けのものとなります。展示品から「じゃぁ、これを3色で10枚ずつ購入する」というようなシステムになっています。事前予約制。
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ミヤツグさん、今回の面白い革なに?

専務さん
「こちらの馬革どうですか?パラフィン、あるいはオイルを入れています。馬ってどうしても小傷が多いですが、それを見せつつもパラフィンを入れることでパラフィンの禿具合によるエイジングやオイルエイジングが楽しめますよ」
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専務さん
「このパラフィンは特殊で食いつきが強いです。そのため使い始めてすぐに白い部分がぼやけてきます、ということは起こりづらいです。じわじわ、と徐々に曲がっている部分の色合いが変わり、平面部分も変わっていく、という感じですね」
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ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ、、、、あ、ほんとだ。確かにパラフィンの食いつき良いですな。面白いなぁ、この革も。

ほかにもサステナブル対応のレザーもラインナップ。
「現在は展示会中で希望の方はお問い合わせください。展示会後もコロナのため、ショールームがオープンできない状況となっています。心苦しいですがご理解ください」とのことでした。

寿屋さんのNEW COLLECTION

ミヤツグさんから徒歩5分ほど。てくてくてくてく・・・

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寿屋 担当者さん
「寿屋では1月27日から個展を開催します。感染症予防のため、予約制での実施となります。お電話、メール、DMにてよろしくお願いいたします。来社の際にはマスク着用のご協力をよろしくお願いいたします」

【寿屋大阪個展】
1月27日(木)~ 10:00~17:00
大阪本社
 大阪市浪速区大国2-2-1
 06-6649-2377
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で、面白いのは?

寿屋 担当者さん
「展示会の最中だからあまり大っぴらに見せられないんですよねぇ。
それでもやっぱり、『寿屋の革がいい!』と言ってくださるメーカーさんもおられますので、寿屋らしい新作革を作っていますよ」
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ん?
これって以前私がイベントで見た革だよね?


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寿屋 担当者さん

「そうですよ」

どう見ても大理石の机にしか見えないけど、大理石模様の革なんだよなぁ、これ。目がおかしくなるなぁ

今後イベント予定

・Phoeninx Night 

1月28日(金) レザークラフトフェニックスが20:00まで営業


カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。今回は、皮革産地として知られる姫路の新しいレザー×コミュニケーションスポットで行われたファッションショーのレポートと、「買い物は投票」という言葉の重さ、について。

新しい生活様式へとシフトする新しい時代に向けて、ものづくり産地、姫路の新しい取り組みを探ります。2021年の最終更新です。ぜひ、ご覧ください。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしておりますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

人気イベント「本日は革日和♪」。今後の予定、スケジュールなどは下記のリンク先をチェックしてください。

  「本日は革日和♪」

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毎度です!

「これ書いている時点でコロナオミクロン株が日本で151人突破したなぁ」ムラキです。

10月に緊急事態宣言が解除されてからイベントが連続で開催され、ぐったりです。さて、来年はどうなることやら・・・。

イベント連発祭りが終わった矢先に、先日行われた姫路ペレテリアのレザーファッションショーを見てきました。

今回のblogでは、

・ペレテリアレザーファッションショー「レザーワールド」紹介
・タンナーをファッションショーで紹介する、という意味
・買い物は投票だ、という言葉の時代

というような流れで書いていきます。

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目次 [hide]

兵庫県姫路市高木にあるペレテリアという場所
高木地区にはタンナーさんが集積している
レザーワールド2021 by PELLETTERIA、というファッションショー
事前の様子
当日の様子
今からでも見られる「レザーワールド2021」
ユニタスファーイーストがこのイベントをやった、という意味合い
タンナーをファッションショーで紹介する、という意味
表に出てこないタンナー業が出てこざるえなくなってきているのかな、と。
買い物は投票、という言葉の祝福と呪い
2021年もありがとうございました&来年の予定


兵庫県姫路市高木にあるペレテリアという場所

高木地区にはタンナーさんが集積している

兵庫県の姫路市たつの市には日本全国のタンナーの7~8割が集まっています。その数は日本皮革産業連合会に登録されている数として130くらいはあると思います。

そのタンナー集積地のひとつである姫路市の高木地区でペレテリアは今年オープンしました。

姫高皮革事業協同組合

ペレテリア(Pelletteria)

村木るいさんの「人に話したくなる革の話」/革の新施設 ペレテリアを見てきた話&姫路の革イベントを紹介| JLIA 日本皮革産業連合会

過去に紹介blog書いていますので、またご覧ください。通常はカフェ、レザークラフト作業スペース、ギャラリースペースを運営している施設です。
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レザーワールド2021 by PELLETTERIA、というファッションショー

ペレテリアでファッションショーが開催されました。
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ペレテリアでファッションショー? ユニタスファーイーストさんが経営されているから、「革の手入れ剤をより知ってもらうためにやるのかな」と思ったのですが、180度違いました。


事前の様子

インスタグラムを見てみると、ファッションショー「レザーワールド2021」に参加するタンナーさんの紹介動画が作られていました。


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えっ、1社1社の紹介動画を作ったのか!
これってファッションショーというのにタンナーさんがほんとに主役なんだな!


当日の様子

12月19日の日曜日、2回公演で開催されました。行ってみると満席状態で立ち見もあるという状況。
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オープニングは自社で作ったタンナー紹介動画が流れました。

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タンナーさんを知ってもらう、というファッションショーというだけあり、実際に12社のタンナーさん社長に自社の革の紹介をしてもらっていました。「えっ、ほんとに全員社長が来ているやん! すごいな」と唖然としました。
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ファッションショーでは、神戸ファッションデザイン専門学校さんや姫路県立工業高等学校による姫路レザー使用の衣料も紹介されていました。

姫路県立工業高等学校さんは2019年のジャパンレザーアワード学生部門最優秀賞を受賞され、その作品も展示されていました。

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今からでも見られる「レザーワールド2021」

ファッションショーは盛況で無事に終了。インスタライブで生中継もされていました。

ユニタスファーイーストがこのイベントをやった、という意味合い

ペレテリアを作ったユニタスファーイーストは、東京レザーフェアにも参加している革のリペアの会社です。


このJLIAblogでペレテリアオープン時に社長にインタビューをしました。


下記の弁のまんまのイベントだな、と感心しました。ファッションショー内では自社のケア用品の宣伝とか一切ありませんでしたわ。

社長 「ペレテリアはイタリア語で革製品、という意味ですね。
この建物を作ったのは
革業界の交流の場として使っていただきたいからですね」

‐‐‐ 交流の場ってのは??

社長 「当社はご存知のように革の手入れ剤を販売しています。
この姫路の地で商売をしてきましたが、
姫路の地は革の生産地として知られていますが、
交流の場が存在しません。

この場合の交流の場は革の専門家であるタンナーさんだけではなく、
消費者や販売者、革の専門家、革製品のつくり手など、
いろいろな方々に交流してほしい。

当初は、まず姫路地域だけにしてもらっています」

 
タンナーをファッションショーで紹介する、という意味

このショーは、革の生産という意味では川上に位置するタンナーを打ち出したものでした。
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タンナーは、鞄職人や靴職人よりも人数が少なく、表に出てこない職種です。今回のファッションショーでは、よくまぁ、ここまで引っ張り出せたな、と驚きました。


表に出てこないタンナー業が出てこざるえなくなってきているのかな、と。

話変わりますが・・・
この高木のそばにヤマダストアー、というスーパーがあります。ちょっとお値段お高めなんですが、良い品を多く置いています。この10年で随分と増えたな、と思うのは生産者の顔が見えるようにした野菜が増えたものです。

このヤマダストアーでは積極的に生産者の顔が見えるようにしています。積極的に店内ポップで生産者の顔を本当に印刷して出しています。生産者の顔を見せたほうがメリットがでかい、とこのスーパーは判断しているってことですね。
上記の農家さんと同じようにタンナーさんの名前が消費者の間で高まれば、製品時のコピーのひとつにはなるわなぁ、とは思います。

前回紹介したニューレザーコンテストなんかもその一環といえるわけです。


革屋さんにせよタンナーさんにせよ、メーカーさんにせよ、職人さんにせよ、従来のやり方をより強く進めるのか、それとも新しいやり方を模索するのか。

維持をするにせよ、新しくするにせよ、大きな決断をしなきゃいけないんだろうなぁ、今の時代は・・・と思います。


「買い物は投票」という言葉の祝福と呪い

ペレテリアのファッションショーを見た帰りにヤマダストアーに立ち寄りました。だいたい姫路のタンナーさんに行った帰りはここで買い物しています。

前述しているようにこのヤマダストアー、良い品を良い値段で売っているスーパーです。いつも感心するのは良い品はこれだけ良いんだよ! と積極的にポップ書いて告知しているんですよね、この会社。

SNSやblog、YouTubeでバンバン!ではなくて、店内のポップやオリジナル製品のキャッチコピーなどがものすごく目を引きます。いつも買い物しながら勉強させてもらっていますわ。
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今回購入したのは、「姫路市の喫茶店「ムッシュさん」監修の茹で時間が13分もかかるパスタ(喫茶店ナポリタン用)」というものです。

「なんちゅう商品名つけるんだ・・・」と思いつつも、手にとっている時点でもうヤマダストアーの戦略にハマっています。自社ブランドで商品開発も行っているのですが、このポップと商品コピーの連動がほんとによく考えられているな、と感心します。

このパスタの裏面を見ると・・・。
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買い物は投票です。

という文字が。説明として下記が書かれています。

「労働集約産業である地域の喫茶店は労働人口減少の影響を受けやすく、持続可能な経営の維持のために、私達は地域の喫茶店の味を積極的に販売し応援することで地域の食の多様性を守っていきたいと考えています」

あぁ、なるほどなぁ。何を買うか。どこで買うか、ってのは投票行為なんだな、と。

その店が残ってほしいか。その商品の生産元が残ってほしいか、という意思の表明。SNSに写真を載せるための買い物、じゃなくて、意思を表明するための投票としての買い物。

相変わらずすごいな、このスーパー、と感心しました。とんでもない祝福と呪いをお客に投げかけてくるなぁ。


2021年もありがとうございました&来年の予定

今年も無事に書き終わりました。書く場をいただきありがとうございました。締め切りがないと動かない。来年の予定は、とりあえず今決まっているのはこれくらいですが、多分増えます。

2022 2/17-19

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プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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