欧米ブランドに「負けていないぞ!」

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」 の記事

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。今回は、「姫路城皮革フェスティバル」と「ニューレザーコンテスト」を見てきた話です。

皮革産地、兵庫県姫路市&たつの市の恒例イベントを村木さんが現地レポート。

恒例イベント「姫路城皮革フェスティバル」と「ひょうご皮革総合フェア&たつの市皮革まつり」の一環として行われている「ニューレザーコンテスト」。今年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を鑑み、「ひょうご皮革総合フェア&たつの市皮革まつり」は中止となりましたが、「ニューレザーコンテスト」は行われました。コロナ禍での開催状況は? ぜひ、ご覧ください。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしておりますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。
当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。
人気イベント「本日は革日和♪」。今後の予定、スケジュールなどは下記のリンク先をチェックしてください。
  「本日は革日和♪」

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毎度です!
「ちょっとイベントと仕事たてこんでいて・・・」のムラキです。

緊急事態宣言が解除されて、仕事とイベント山積みです。イベントは自分が参加するものもあるし、視察に行くものもあるし、動画とらなきゃいけないものもあるし・・・普段の請負職人の仕事と自分の抱えているほかの仕事ってのはつくづく相性が悪いものです。

今回のblogでは毎年行っている2つのイベント、「姫路城皮革フェスティバル」と「ニューレザーコンテスト」の紹介です。


目次 [hide]

「姫路城皮革フェスティバル」10/30~11/3
駅からはレンタサイクルが便利
イベントのコロナ対策
皮革フェスティバル会場風景
どこでこの情報は得られるの?
今年もやってきた「ニューレザーコンテスト」
「ニューレザーコンテスト」ってなに?
毎回自己紹介が大変だけど、今回は楽だった
今年は相方連れていきました。
動画での私のコメントは「私が勝手に思った感想」です
これから先のイベントは・・・
11/25~27は「神戸素材博覧会」で革日和ブース出展します
12/1~5は東京で3つのイベントに出ます


「姫路城皮革フェスティバル」10/30~11/3

毎年11月の連休中に開催されている姫路城皮革フェスティバル。日本全国の窯元が出展する「陶器市」や「姫路菓子まつり」と一緒に開催される このイベント、昨年は中止となり、2年ぶりの開催です。
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駅からはレンタサイクルが便利
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姫路周辺には「駅ちゃり」というレンタサイクルシステムがあります。電動自転車ではありませんが、60分以内利用ならば1日使い放題で100円という格安さ。クレジットカード登録も不要です。その場でチャリンと100円払って終わりです。


これを借りて駅から会場まで5分ほど運転しました。会場は姫路城大手前公園です。


イベントのコロナ対策
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会場入口で検温をしてもらい、問題なければ手首に黄色のバンドを巻いてもらえます。これを巻いている限り他のイベントに行っても検温なしで出入りできます。

このため、皮革フェスティバルにせよ、陶器市にせよ、すべてのイベント会場が柵で覆われていました。このイベント会場には期間中、20万人以上の来場客を想定しているそうなので、コロナ対策どうするんだろう、と思ったら、柵で全部覆ったのか。大変だったろうになぁ・・・。


「姫路城皮革フェスティバル」会場風景
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会場ではタンナーさんや組合による革の販売、作家さんによる作品販売なども行われていました。比率的、革素材販売のほうが多いですね。革素材販売が60%かな、というところです。私から見ても「あ、これは珍しい革だな」というものもあります。

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子ども向けのワークショップなども開催されており賑わっていました。


どこでこの情報は得られるの?

御着の皮革組合さんがSNSアカウントでイベント前に告知してくれるので、興味ある方はフォローしておいてください。



今年もやってきた「ニューレザーコンテスト」

例年楽しみにしている「ニューレザーコンテスト」を今年も見てきました。

今年も動画にまとめてきました。会場で見た革がどれだけ良くても、「実際見て触ってほしい!」としか言いようがないんですよねぇ。ネットがどれだけ進化してもここらの手触りや匂い、ってのは伝えきれないのがもどかしいです。
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「ニューレザーコンテスト」ってなに?

タンナーさんが革素材を出しているコンテストです。従来は毎年11月に開催される「ひょうご皮革総合フェア&たつの市皮革まつり」にあわせて会場で出展されていました。


今年は、「ひょうご皮革総合フェア&たつの市皮革まつり」が8月の時点で開催中止が発表されていました。「じゃ、コンテスト中止かぁ」と思っていたのですが、昨年に続いて今年も開催してくれました! 主催・運営してくれた方、ほんとにありがとう! 昨年見てきた様子は下記blogにて。


毎回自己紹介が大変だけど、今回は楽だった
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これまでは「ひょうご皮革総合フェア&たつの市皮革まつり」会場で展示されているものを見て、こっそりと動画を撮っていました。

昨年は受付で「動画撮りたいんですが・・・」と挨拶しますが、「えっ、それやってなんのメリットあるの? そもそも動画撮影する人が来るなんて思ってなくて・・・」というような、てんやわんやがあったりなかったり。

今回も自己紹介大変だよなぁ・・・と思いつつ受付に行くと、「あ! YouTuberの方ですよね! 昨年はありがとうございました!」と。

いえいえ、YouTuberじゃないんです・・・普段は単なる請負職人なんです・・・


今年は相方連れていきました

「ジャパンレザーアワード」にせよ、「ニューレザーコンテスト」」「にせよ、動画撮るときに相方がほしいな、と思いました。「これはここがすごいんだよ!!」「これはここが面白い!!!」という私が話す相手がほしいわけです。また、相方じゃないと気づかない私以外の視点もほしかったわけで。

この秋の「ジャパンレザーアワード」審査会の際は、染料屋のLized さんを連れて行って動画撮影しました。

今回は レザークラフトフェニックス の革担当 横井氏を連れて行って二人で好き勝手に見ていきコメントしました。これだけ多種多様な革が見ることができるイベントはほんとに貴重です。


動画での私のコメントは「私が勝手に思った感想」です

「なんでうちの革、褒めてくれないんだ!」「この良さがわからないのか」と言われたりしますが、あくまで触って、見た上での感想です。すみません、知り合いだから、とか、おごってもらったから、とか、取引あるから、などの忖度は一切していません。オモシロイと思ったかどうか、だけです。

実際、「ジャパンレザーアワード」の感想にしても、受賞した作品にコメントしているわけでもないので、私の視点は審査員とは全然違う視点ですよ。


これから先のイベントは・・・
11/25~27は「神戸素材博覧会」で
革日和ブース出展します


村木は3日間セミナーを行います。新作セミナー「眼の前で手縫いでラウンドコインケースを作りながら、工具や革、技法の解説をする」というものや、「3Dプリンターは自分が楽するための些細な道具を作るための工具。じゃぁ、データどう作るの? 運用コストはいくら? などを解説します」といったコンテンツを3日間行っています。

革日和ブースでは染料のLized さんによる革の染色体験・抜き型工房かわさき による刃型相談(26,27日のみ)、レザークラフトフェニックス による販売を行う予定です。
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12/1~5は
東京で3つのイベントに出ます


「浅草エーラウンド」セミナー開催

12/1~2「東京レザーフェア」会場の東京都立産業貿易センター台東館 9Fにて 「浅草エーラウンド」 が開催されます。この会場にてセミナーを2日間行います。「東京レザーフェア」会場では前述の「ニューレザーコンテスト」受賞作品も展示されています。

セミナーは「革の話」「鞭の話」「漉き機セミナーハイパー」と、「シュースティリスタ古瀬氏によるプラットフォーム製法のスリッパ型紙制作実演」が行われます。

「鞭の話」は下記動画の派生セミナーです。動画内では見せられなかった資料なども持っていきます。「革メーカーに役立つ3Dプリンタの話と鞭の話、どっちがいい?」とおえらいさんに聞いたら「そりゃ鞭のほうがいいだろ!」と・・・いいのか、ほんとに。

「シュースティリスタ 古瀬氏によるプラットフォーム製法のスリッパ型紙制作実演」は、古瀬シュースティリスタ研究会の古瀬さんを招いてプラットフォーム製法によるスリッパの型紙を木型から作成していただきます。4時間のセミナーとなります。当日撮影しておき、後日動画もVimeoにて会場受講者のみに配信予定です。くわしくはこちら をご覧ください。
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12/3~4は墨田区八広

革にまつわる工具と工法~レザークラフトをより楽しむinすみだ2021冬~セミナー

革にまつわる工具と工法~レザークラフトをより楽しむinすみだ2021冬~ 2021年12月3日〜2021年12月4日(東京都) - こくちーずプロ

こちらは人に呼ばれてのセミナーや、ただ漠然と喋ったりしています。レザークラフトをはじめた人向けの解説やセミナー主体となります。革で興味あることや歴史的なことなども喋れると思いますので遊びにまた来てくださいな。多分この2日間が一番自由に喋ったりしています。

12/5は

 Zittools in 練馬区 漉き機講習会

工業用ミシン専門店 - ZIT TOOLS | TAKING 工業用ミシン さんの ショールーム (東京 練馬区大泉学園駅)にてミシン漉き機講習を行います。

革用ミシンを買おうか迷っている人向けのミシンでかんたんなものを作る講習会です。「漉き機講習ハイパー」(セミナーと同じ内容)、「漉き機の押さえ加工講習」(漉き機講習を受講された方・普段から漉き機を使っている人向けの講習)を予定しています。「漉き機の押さえ加工講習」は今回初開催です。グラインダーを使いつつ漉き機の押さえの加工と考え方を学んでいただきます。


カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
今回は、この1か月で見てきたイベントや、出展したイベントでみたコロナ禍での戦い方、という話。
出展する立場、来場客としての立場をどちらも経験し、つくり手視点でリアルにレポートしました。ぜひ、ご覧ください。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしておりますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。
当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。
人気イベント「本日は革日和♪」。今後の予定、スケジュールなどは下記のリンク先をチェックしてください。
  「本日は革日和♪」

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毎度です!
「いきなり予定がガンガンと埋まってきた」ムラキです。

今回紹介するイベントでセミナーをいくつかやってきたのですが、1年以上まともにセミナーなどをしてこなかったからか、如実にセミナー体力・気力が減っていました。1時間喋るだけで気力集中力が如実に消耗していましたね。YouTubeで喋る、なども行ったのですが、違う体力使うものですな。

さて、出てきたイベントや見てきたイベントでのコロナ対策や、これからの話等をつらつらと。

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目次 [hide]

ジャパンレザーアワード審査会はコロナだけど開催したし、一般審査も行った

関西ものづくりワールドで見たコロナ対策

国立科学博物館で見た企画展とYouTube利用

素材博覧会 横浜

コロナでもイベントをやるべきかどうか

イベントで少しでも手ごたえを感じたいならば

2021年10月30日~2021年11月03日 姫路城皮革フェスティバル

ムラキの今後予定

ジャパンレザーアワード審査会はコロナだけど開催したし、一般審査も行った



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例年開催されている「ジャパンレザーアワード」審査会/応募作品展が10月2日(土)、3日(日)に行われました。従来は2日間とも応募作品展が行われ、一般の人も入場して審査が可能だったのですが、今回はコロナ、ということで3日(日)だけ一般入場可。2日(土)は審査員のみ、という短い日程で行われました。

2日(金)の設営日のお手伝いをさせてもらいつつ、作品を見させてもらいつつ、動画で感想などを述べたりしたけど、事細かな解説はまたの機会に、ということで。


主催者サイド(事務局含む)に「ねぇ、コロナだけど一般入場してもらうの? そもそもアワード自体やるの?」と再三訊いてみたのですが、「こういうイベントはね、一度止めると再開が難しいんですよ。主催も運営も是非やろう、という声は一致していましたね」とのことでした。


「RX Japan」は展示会を東京、大阪を問わず開催している会社さん。コロナ禍で展示会が開催できず大変そうだな、と常々思っていました。

この1~2か月ほど展示会が徐々に開催されており、3週連続で大阪の展示会に行っていました。

で、10月5日(火)、3Dプリンタや機械系を見るために展示会に行ってきたのですが、驚いたのが入場方法。

以前の入場方法は「入り口で名刺2枚と手書きなりプリントアウトした入場申し込み証を書く」というもの。下記写真にあるように机があり、ボールペンも置いてあり、書き終わったら受付担当スタッフに手渡しします。

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が、今回は机が一切ありません。えっ、どうしたん? 昼過ぎにいったからもう入場させてくれないん?

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受付担当スタッフが「事前に送った案内状か、ネットからプリントアウトした紙にQRコードがあると思います。それを読み込んでください。その後はタブレットで入力してください」

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「従来2枚用意していただいた名刺は1枚で結構です。この1枚をそこのスキャナーに設置してください。そうすると自動でイベント入館証に貴社名刺と一緒にプリントアウトされます」

えっ、私は未来に来たなぁ!!!と感心。

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コロナによりイベントに入る際の人と人との接触を絶とう、ということなんだろうが、それだけの人間の雇用がなくなったんだなぁ、と唖然としました。

国立科学博物館で見た企画展とYouTube利用


国立科学博物館 National Museum of Nature and Science,Tokyo


イベントの前日設営のために前日入り。ついでに国立科学博物館に行ってきました。好きなのよ、上野の美術館や博物館。久々にくると上野駅がきれいになっていましたな。私が小学生の頃から変わってなかったのになぁ。

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コロナによる緊急事態宣言が明けましたが、国立科学博物館は未だにオンラインによる事前予約制となっています。20分ごとに入場可能ですし、平日でしたので悠々と入れました。

お目当ては木工の木組みに関する企画展。


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上記案内のHPを見てもYouTubeの動画が多いな、とは思っていました。主催が国立科学博物館と竹中工務店道具館だったのでYouTube動画も色々と作られていたんですな。


会場でも木組み実物の上ではCG動画による解説が行われています。

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さらに会場を見ていると作品解説に頻繁にYouTubeのQRコードが書かれている。

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ほぅ、どれどれ、と見てみると下記動画。

YouTube動画だと声による解説があるので、会場では一切流されず。

会場の作品をより詳しく知りたい方はYouTubeで音と動画で詳しく見てね、という方式。

従来はこういう場合は音声解説の機械を有料で貸してくれたものですが、コロナのためか、竹中工務店道具館が頑張ったのか、YouTubeを活用するんだな、と感心しました。

音のみならず画像があるため、「あぁ、今説明されているのはこの箇所か」と非常にわかりやすい。山口県の錦帯橋は会場で作り方を見て、YouTubeを見て、実際に見てみたくなりました。

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さて、10月21日(木)~23日(土)に開催されたこのイベント。コロナにより3回中止され、2年ぶりの開催でした。

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感想を箇条書きで列記すると・・・

・出展者は3割減少

・地方出展者や企業出展社が減少した印象

・来場者はリピート率が3割減って、新規入場者が2割増えた感じ。「こんなイベントあったんですね!」とちょこちょこ言われる

・新規出展社もちょこちょこおられる

・「安いですよ!」的な出展者はこのイベントでは徐々にいなくなりますな

・会場の雰囲気などは下記SNSをご参照ください



で、このイベントのコロナ対策。

事前に、もしくは当日会場でメールで来場登録をしてもらい、必ず確認していました。

素材博覧会のコロナ対策については、昨年度の下記blogにて紹介しています。基本的にはこれと同じです。


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コロナでもイベントをやるべきかどうか


上記のイベント出展者や主催者、さらには違うイベントの主催者とも話をしています。

全く方向性が違うイベントの人でも訊いていて面白いのは、「オンラインイベントが実際のイベントの代用になるのは難しい」「イベントで実際に空気に触れて、見て、触るのはすごく意味がある」という点では皆さん似た意見を述べていました。

革は特に「手触り」「匂い」という、どれだけネットが発達しても伝えられない情報を持っている素材です(私が死ぬ時でも多分手触り・匂いはネットでは伝えきれないと思うなぁ。頭に電極埋め込まないと無理でしょ)。そういう意味では革素材はネットよりも格段に現実世界と親和性が高いと言えます。

イベントで少しでも手ごたえを感じたいならば


どれだけ大きなイベントだろうが、東京でやっていようが、「出たら売れる」「出たら反響がある」なんてことはそうそうありません。

事前に各種SNSや普段からの情報発信を行い、「今度このイベントに出るから来てね」という流れを作らなければ、反応は得られません。イベントでも場所でもなく、自分で、お客を呼んで、反応を得るしかないわけです。

お客は会いたい出展者なり、見たいものがあるからイベントに行く。出展者は会いたいお客を誘っておく。そしてイベントで会う。

だから、イベントは面白いわけで。
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カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
今回は1枚だけの皮を革にするのはとても大変、という話。革づくりはもちろん、タンナーに仕事を発注する側が知っておきたい心構えにもご注目を。農林業への被害を軽減するための有害駆除にかかわるかたにもご覧いただきたい内容です。また、皮革産地・姫路のつくり手の新作や最新スポットのレポートも必見ですよ。

なお、兵庫県在住の村木さんは、県内の移動により、新型コロナウイルス感染対策に配慮して取材を行いました。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしておりますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。
当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。
人気イベント「本日は革日和♪」。今後の予定、スケジュールなどは下記のリンク先をチェックしてください。

  「本日は革日和♪」

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毎度です!「ワクチン接種2回めで熱が38度」のムラキです。

38度出ているのに頭はまともに動く状態です。体温測ると「えっ、38度も出てるの!?」と驚きました。

さて、今回は「豚の皮を1枚だけ鞣してほしい、と言われて、どのように考え、タンナーさんを紹介したか。タンナーさんは何を恐れて、どこで苦労したか」という話を書いてみようと思います。

今、現在日本各地で害獣としてのシカやイノシシ、アナグマなどがメディアで取り上げられていますが、「肉で利益出ないから、皮で利益だそう!」と思うとどれだけ大変か、というのもわかっていただけると思います。

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目次 [hide]

豚の皮を1頭だけ鞣してほしい、という相談
今回紹介したのは姫路高木のオールマイティさん
経過が気になるので、見に行きました
原皮大丈夫やった?
毛皮にしたけど問題なかったの?
害獣駆除の皮の有効活用は可能か?
オールマイティさんの新作革
カーフクラッキングパール
カーフ柿渋染
墨染の革
帰りは姫路のペネテリアでお茶を
今後予定

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豚の皮を1頭だけ鞣してほしい、という相談

人づてで紹介がありました。「豚を1年肥育して、それを屠畜しました。この皮を鞣したいんですが、どこか紹介してもらえないですか?」というものでした。あ、基本的に私は紹介してほしい、と言われた際はお金をきっちり取ります。紹介した先が地獄だったり、紹介先に行った人が悪魔だった場合、確実に逆恨みされるのでお金の発生しない「紹介してくれ」要請は無視します。

八島良子 Ryoko Yashima(@yashimaryoko) • Instagram写真と動画

ここで聞いたのは下記の点と他にいくつか。

1 継続性はあるのか?

タンナーさんに限らずですが、職人仕事は継続が力となります。1回よりも5回、5回よりも50回作ったほうが確実に早くきれいになります。どれだけ凄腕でも、1回こっきりの仕事は次回に活かしづらいので、高額にならざるえません。

2 革づくりのポイントは?

何を重視し、何が妥協でき、どうでもいいポイントはなにか...今回でしたら「毛皮にしてほしい」「もとの豚の色合いを再現してほしい」「もとの厚みを残してほしい」「背中でぶったぎることなくもとの大きさで鞣してほしい」が重視する点でした。豚が生きていたころに近づけたい、ということでした。

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逆に「引っかき傷や穴などはそのまま残してほしい」「鞣し方はおまかせします」ということです。

3 何に使うのか?

靴用かばん用、ジャケット用など様々にあります。今回のケースでは「美術の立体作品として表現行為に用いる予定」とのことでした。

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今回紹介したのは姫路・高木のオールマイティさん

レザー素材オリジナル受注生産|姫路の皮革・革素材/タンナー オールマイティ

過去にタンナー見学バスツアーで何度かお世話になっているタンナーさんです。

タンナーさんは 何十枚を鞣してお金にする商売です。このオールマイティさんは稀有なことに「1枚からでも鞣します」ということをされています。おかげで全国から今回のような依頼も来たりしますが、その際に私が聞いたような「どの点が妥協できるか」「どの点が重視するか」「何に使うか」などを明確にしていると話がスムーズになります。

オールマイティさんは「1枚からでも要望の革を仕上げます」というのを謳い文句にされています。ただ、「どこを最重要視する」「ここは重要視しない」などを明確にしていかないとお互いの時間の無駄となりますのでお気を付けください。

経過が気になるので、見に行きました

オールマイティさんに「できたら呼んでね」とお願いしておいたので、実際に出来上がった際に見に行きました。おぉぉぉぉ!!よくまぁ毛付きで頭まできちんと鞣したなぁ!!

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原皮大丈夫やった?

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一番不安だったのは保存状態です。依頼者さんは屠畜し、皮をとったあと、冷凍庫保存ということでした。この冷凍庫ですが、ご家庭用では話になりません。普通の冷凍庫に入れている間にも徐々に腐敗は進みます。3月下旬に屠畜し、その後冷蔵庫保存、ということで「いけるかなぁ」と不安には思っていましたが。

「僕も不安やったけど、業務用冷凍庫やったわ。ほんとは塩2kg~4kgをまんべんなくまぶして畳んでおいてくれてもいいんやけどね。上記の写真の鹿革も他の地域の原皮だけど、こちらは塩漬けにして送ってもらっているよ」(オールマイティさん

それだったら半年とか保存できるの?

「無理やね。夏場で1か月。冬場で数か月。やっぱり傷んでくるよ。今回のは業務用だからほんとに良かった」オールマイティさん

毛皮にしたけど問題なかったの?

依頼者は毛付きで、とのことだったけど、タンナーさんは毛皮苦手なケースも多いのによくやったなぁ。

「豚は油が多いんだよ。普段うちはカーフ(生後6ヶ月未満の牛)がメインだから、こんなに油が多い動物は鞣さない。毛の根元にもベッタリと油があってなぁ。だから、この毛皮でもやっぱり豚の油の匂いがちょっとする。例えばこれでジャケット作るとかは不向きやね」オールマイティさん

傷は残してほしい、とのことだったけど、残したの?

「例えばこの部分の穴は屠畜する段階でついた穴や。鼻先や頭の部分は毛がないやろ?こういう部分は最初に『これはどうにもならんで。うちの技術の問題ちゃうからな』と念押ししておいた」オールマイティさん

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これ、胸の部分?

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「せやな。普通は腹のやわい部分は落としたりするが、なるべく全部残してほしい、という要望だったので残しておいたよ」オールマイティさん

害獣駆除の皮の有効活用は可能か?

姫路やたつの市のタンナーにも色々相談は来ていますが、害獣としての鹿やイノシシの有効活用は難しいのが現状です。問題はいくつかありますが、

1 屠畜場

ハンターさん3人がそれぞれバラバラな技術で肉を取ると、残った副産物である皮の状態もバラバラ。こうなると鞣しをするタンナーさんは「一番状態の悪い原皮にあわせたほうがいいのか、一番状態のいい原皮にあわせたほうがいいのか」で大変苦労されます。やはり1か所できちんとプロが屠畜する、というのは偉大です。

2 保存

上記にありましたように塩2kgなり4kgなりを散々まぶすでもいいんです。タンナーさんが鞣しやすい状態になるようにきちんと保存してくれるかどうかが大変重要です。

3 皮

そもそも害獣の皮は状態が良くない...これが難点なんですが、革は「原皮」「タンナーの技術」「仕上げ(お化粧)」の3つの要素が非常に重要です。中でも原皮の状態が大変重要。下記の写真はイノシシを冬に屠畜したものですが、冬のイノシシは脂肪を蓄え、この脂肪が鎧のように固くなります。この状態の原皮を持ち込まれても、この鎧部分は非常に固くなっており、鞣してもきれいな状態にはなりません。このイノシシに限らず、鹿なども肌の病気や散弾銃で穴だらけ、ということもありうるわけです。

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4 ビジネス

革ができてもお金になるわけではない...オールマイティさんとも喋っていたのですが、革は所詮「素材」です。ここからかばんや財布、靴などが作られ、それらの製品が販売されて利益になるわけです。面白い革ができたからってお金になるわけじゃないです。「害獣駆除で肉で利益出したが皮でも利益だそう!」という場合は、「その革でどう利益を出すか」「かばん作るなら誰に作ってもらって、誰が売るの?」などの道筋(ロードマップ)がすごく重要です。革ができてからスタートなわけです。革を作ることなんて工程としては初期の初期段階なわけですね。

オールマイティさんの新作革

「ムラキくん、どうせなら新作革見てけよ。俺らは材料作ってなんぼだから、今度この革もって材料イベントに出るんだよ。面白い革はデザイナーなりに見てもらわなんと意味ないからな」オールマイティさん

ごもっともだなぁ。革がどれだけ面白くても、それをお金に変えて売れるようにするのはデザイナーと企画、営業さんの仕事だよねぇ。

カーフクラッキングパール

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これ・・・クラッキングだけど、パール調で面白いなぁ。このクラッキング細かいな。

「うちはカーフ主体やろ?100枚中5、6枚くらいに分厚いカーフがあるんや。分厚いから、その分ひび割れしやすくなるんや。で、これは3回くらい工程かけてひび割れさせた。肌のキメが細かいからこそ、クラッキングも細かく割れてくれるんやで。で、その上にパール塗装している。青を地にして、その上にパールやね」オールマイティさん

カーフ柿渋染

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これ、穏やかな黄金色っぽいけど、なにしたの?

「これは、カーフのタンニン革を黄色に染めて、その後に柿渋を刷毛塗りで染めたんや。

柿渋にもタンニン成分があるので、柿渋が徐々に日に焼けていくやろ?この革も日に当てていると徐々に徐々に深い色合いに変わっていく」オールマイティさん

墨染の革

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「これは墨で染めたんや。全体を墨に染めたのもあるし、このように刷毛で染めたものもある」オールマイティさん

墨の黒ってのは独特の黒味があります。黒と藍の間みたいな色が表現されていますな。

帰りは姫路のペネテリアでお茶を

オールマイティさんからバイクで3分ほどの距離にあるペネテリアでお茶をして帰りました。土曜日に行ったのですが、貸工房スペースでは7、8人ほどが作業されていました。

村木るいさんの「人に話したくなる革の話」/革の新施設 ペレテリアを見てきた話&姫路の革イベントを紹介

21年6月のJLIAblogの裏側:350万円のエスプレッソマシーンで一杯おごってもらった話 | phoenix blog

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350万のエスプレッソマシーン~でお茶を飲み。限定というモンブランもいただきました。1,200円オーバーのモンブランですが、それに見合うだけの贅沢な逸品です。量がちょっと多いので、2人でシェアをおすすめしますわ。

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今後予定

コロナでいろいろな予定が飛んでいます(´Д`)ハァ...

素材博覧会 YOKOHAMA 2021 秋 2021.10.21-23

【同時開催】Bead Art Show & Embroidery 素材博覧会 神戸 2021 秋  2021.11.25-27


カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。今回は野球グローブの生産工程を見てきた話。村木さんの熱いレポート、ぜひご覧ください。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしておりますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。
当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。
人気イベント「本日は革日和♪」。今後の予定、スケジュールなどは下記のリンク先をチェックしてください。

  「本日は革日和♪」

*   *   *

毎度です!

「ワクチンようやく打てました」ムラキです。

7月中旬に予約して、実際に打てたのは8月中旬でした。2回めワクチンは9月中旬。まぁ、ワクチン打ったからって100%新型コロナウイルスに対して安全というわけではないので、依然として油断せずに過ごそうと思います。

通常の生活では、「消毒をこまめにする」「目鼻口などの粘膜部分を触らない。とにかく触らない。絶対触らない」を心がけています。

さて、今月はグローブ会社さんで生産工程を見に行ってきました。すごいよ! グローブ。面白いよ、グローブ!

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目次 [hide]

大阪の丸和株式会社という大阪の地でグローブ作っている

イカレ、、もとい、いかしているグローブを見た

えっ、大阪のど真ん中でほんとにグローブ工場あるの!?

野球グローブの産地って奈良県が有名

大阪の革の町大国町にグローブ工場があった、ほんとに。

グローブの丸和株式会社さん

工場見学に

裁断場

グローブのメインパーツは1枚の革から取れて2,3枚

刻印・漉き

縫製場

革業界で一番「叩く」工程が多いのが野球グローブ

ひっくり返す「返し」

型出し

張り合わせ、ヘリ巻き縫製

芯入れ・グリス入れ

紐通し

仕上げ

気になったことを遠慮なく質問

分業じゃないの?

職人さん若くない?

野球選手のグローブも作っているんだよね?

創業40年超えた会社が今、OEMだけじゃなくオーダーを始めたのはなんで?

野球はもっと、面白い、がキャッチコピーでオーダーを始めた

野球グローブのオーダー方法ってどんなのがあるの?

D-Questは2021年9月14日-17日に初めて自社工場で展示会やります。

ムラキの今後予定

大阪の丸和株式会社という大阪の地でグローブ作っている

イカレ、、もとい、いかしているグローブを見た

この会社が展開しているD-Questというブランドを知人がオーダーしたので、そこからご縁をいただけましたわ。

野球グローブ|カスタマイズグローブのことならD-Quest | チームやお店のアイキャッチにも使える、高品質で特徴的な野球グローブをご提供しております。カスタマイズグローブのことならD-questにおまかせください。

「ムラキさん、このグローブ会社さんスゴイですよ。オーダー品が届いたので、実際に見てくれませんか?」

ほいほい。青のグローブってのもすごい色だな。

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ほ~、グローブってオーダーできるのか。まぁ、そりゃそうだろうなぁ、、、って、ちょっと異色じゃないか、このグローブ群・・・

機能性じゃなくて、裏地が特殊な布地とか毛皮とかLED搭載で暗闇で使える、とか、、今まで革だけで作っていたところは異種素材あわせるとイチから経験値積み重ねしなおしだから大変なのになぁ。グローブなんてのは人体に沿わせて使う道具だから余計に異種素材は悩ましいはず。なかなかイカレ、、、もといイかしていることしているわねぇ。

ちょっとおもしろいから見学に行かせてもらおう、これは。 

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えっ、大阪のど真ん中でほんとにグローブ工場あるの!?


今回訪れたのは丸和株式会社さん。

大阪メトロ 大国町駅から徒歩5分ほどの場所にあります。フェニックスからなら13分だったかな。あれ??

ーーーー 大阪でグローブ会社?自社で生産しているの?

丸和さん「えぇ、大阪の会社で作っていますよ」

ーーーー 商社的な機能じゃなくて? 

      海外生産でも、奈良生産でもなくて、自社? 大阪の街ナカで!?

野球グローブの産地って奈良県が有名

歴史的に見てもグローブの生産地は奈良県が有名です。近年は海外生産も多いですが、今でも20軒くらいが固まって生産されています。

野球グローブ・ミット | 産業振興 | 事業者・入札 |奈良県三宅町

だからこそ、大阪の自社生産しているのは驚くわけです。

大阪の革の町大国町にグローブ工場があった、ほんとに。

うわ、ほんとに街ナカだ・・・何度もこの前通って「あ、なんか縫製場かな」と思っていましたが、まさかグローブだとはなぁ・・・

野球はもっとおもしろい | 野球グローブ、カスタマイズグローブのD-Quest

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グローブの丸和株式会社さん

事前にアポをとっておき、野球好きの知人と一緒に訪問しました。

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丸和さん「製造工程みたいならば僕が案内しますが、

            当日はグローブ3個仕上げなきゃいけないので、15時位に来てください」

ーーーー おいおい、営業さんじゃなくて製造担当の人じゃないか。

            貴重なお時間ありがとうございます。

工場見学に

大阪のベースボールショップさんがこの会社でのグローブ制作工程をあげてくれていますので、興味ある方はご覧ください。

裁断場

さて、つくり手以外ぶっちぎりで置いてけぼりにして (しまっていたらすみません)、つくる話だけをしてみましょう。

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刃型は38mm高刃だけですな。厚みがあるフェルトなどを裁断するのでこのほうが都合いいんでしょうなぁ。

で、驚いたのは自動裁断機がある。

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えっ! これって数千万円するし、置く場所は大変だし、集塵機も大変だし、という大変な機械なのによく買ったなぁ!!!

グローブのメインパーツは1枚の革から取れて2,3枚


丸和さん「この自動裁断機があるからこそ、グローブのオーダーができるわけですよ」

ーーーー まぁ、こんな複雑な形状しているしなぁ。手切りは嫌だな、これ・・・

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丸和さん「グローブはこの手のひら部分のパーツが重要で、1枚から2,3枚しか取れません。

      この部分は」

ーーーー えっ! なんでよ

丸和さん「この手のひら部分は指があります。矢印の向きに対して

            力がかかってほしいわけですよね。

             矢印見てわかるように親指と他の四指では力がかかる方向が異なるわけです」

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ーーーー !!

                親指は手に対して直角についているからか!

                なるほど!

                じゃぁ親指だけ別パーツにしたら

                取りがってはものすごく良くなるだろうに

丸和さん「でも、それをしちゃうと野球ボールを受け止める部分に

                縫製部分が入ってしまいます。

                縫製が入るとそれだけそこから糸がちぎれる可能性があります。

                ご存じのように何十キロの速度のボールを

               受け止めるための道具ですから、少しでも強度がないと困るわけです」

ーーーー 1枚の革で、この手のひら部分が2,3枚って

           ものすごく贅沢だな!

丸和さん「もちろん他の部分はグローブの他の部分に使います。

            ロスなく無駄にすることなく、使い切ります。

            今回の裁断ではこの3枚でこのパーツは終わりです。

            この後、手の甲パーツなどを裁断しますが、

            強度要求される手のひら部分は

            革の中でも特別頑丈な背中から腰お尻部分を使います。

             だからこその3枚なわけです」

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刻印・漉き

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丸和さん「漉く前に打刻していきます。温度は~~度」

ーーーー  ~~度!?  通常よりも格段に温度が高いやん

丸和さん「野球グローブは工程の中で何度も何度も曲げたり、裏返したり、叩いたりします。

         また、過酷な環境で使われる工具ですので、

         打刻をしっかりとガツンと入れなきゃいけないわけです」

ーーーー あぁ、なるほどなぁ。

         漉き工程もバンドマシンで均一に漉いていくんだね。

         あまり部分漉き(端っこヘリ返し漉きや斜め漉き)をしないんだね。

         内縫い(ひっくり返す工法)をするなら鞄財布などでは

         端っこ斜め漉きをしてひっくり返しやすくするもんだがなぁ

丸和さん「斜め漉きをするとその分強度が下がります。

         斜め漉きなどをする際は

         3枚4枚重なる部分が分厚くならないようにその部分だけ薄くします」

縫製場

縫製場では若い人が多く、5,6人で働いていました。

丸和さん「この工程の前に刺繍縫いミシンで名前や模様を入れたりします。

           下記写真のような刺繍ですね。で、その後この縫製場で縫製作業です」

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裏パーツと表パーツを縫製していきます。

内側である手のひらパーツは1枚革だけど、手の甲部分は曲線の集合体だから立体的な縫製ですねぇ。なるほど、これなら下送りのミシンのほうが立体縫製しやすいだろうな。ここらは曲線が主体な靴に似ているなぁ。

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ランドセルの縫製を見たとき、

「うわ、左肩と左腕ばかり筋肉付きそうだな」と思ったけど、野球グローブも大概左肩と左腕酷使だなぁ。

参考blog>

村木るいさんの「人に話したくなる革の話」/新しいタイコとブラックバスとランドセルのミュージアムの話

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手の甲部分だけど、間にデザインと強化のためにパイピング入れるんですねぇ。げ、これって4mmあるかないかだな。よく縫えるなぁ。

革業界で一番「叩く」工程が多いのが野球グローブ

でも、革が3枚ほど重なるから仕上げ縫製するときに段差があるとめちゃくちゃ大変ですやん。凸凹している部分は削ぎ落としたりするの? 漉きもしていないしなぁ。

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丸和さん「いえ、【叩き】ます」

ーーーー 叩く???

丸和さん「この動画の3分後半から見れますが、機械でガンガンと叩いていきます」

 ーーーー!?  なに、これ?  こんな機械あるんだ!?

ーーーー タカタカタカタカって気持ち良い音しているけど、これって指挟んだらどうなるの?

丸和さん「数年に一度くらい指挟む人いますけど、爪は砕けます。運が悪いと骨も砕けます」

ーーーー おっそろしい機械だなぁ!

                その機械のそばで高速で縫製部分の凸凹を叩いて慣らしていくのか!

                これは他の革業界では見たことないなぁ! ちょっと欲しいな、これ!


ひっくり返す「返し」


出来上がったものをこの工具でひっくり返します。

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ーーーー!? 

    指の部分をひっくり返すだけの工具か! 

    ぬいぐるみ業界が見たら羨ましがりそうだなぁ。

    まぁ、あの業界ではオーバースペックな能力だろうが。

    斜め漉きもしていないからひっくり返すのが

    大変な野球グローブだからこその工具だなぁ


丸尾さん「そうです。ひっくり返したら指の股部分をしっかりと

     癖づけするためにこのように指の股ぐり部分を

     グリグリと癖つけていきます」


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型出し

指の曲線部分がきれいに出るように形を出す「型出し」の工程です。

 

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張り合わせ、ヘリ巻き縫製

何度も「叩く」機械を使って段差をなくしていき、表パーツ・裏パーツを張り合わせて、仕上げ縫製としてヘリを巻いて縫製していきます。

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芯入れ・グリス入れ

仕上げ縫製をしていますが、内パーツと外パーツの隙間に芯材を入れて、グリスを入れていきます。

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丸和さん「熱で溶かしたグリスを入れていきます」

ーーーー どんなの?  触らして!

丸和さん「あぁ! 熱いですよ! ほんとに手がベタベタになりますよ!」

ーーーー あ、ほんとにベタベタだ。これ以降グローブ触っちゃだめなくらい

         ベタベタベッタン
         素人質問やけど、なんでこれ入れるの?

丸和さん「ボールを受け止めたときの音に影響します。

         また、このグリスがないと表パーツと裏パーツにずれが生じてしまいます。

         ズレがあると捕球した時に違和感がありますね。
         この表パーツと裏パーツはこの後「紐通し」工程で止めていきますので、

         例えば2年後にグリス補給も可能です」

ーーーー 微調整ができる工具なのに、ズレがあると困るってのは

         なかなか難しいこと要求されているなぁ。

紐通し

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丸和さん「このように紐で縛っていきます」

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ーーーー 思ったよりも紐を長く残すんだね。

丸和さん「購入者が自分で微調整するためですよ。その後に

         チョキンと切り落としてもらいます」

ーーーー こりゃまた大量の革紐使うなぁ。

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仕上げ

丸和さん「最後に丸まった木槌を使ってグローブをパンパンと叩いてなじませて

         仕上げ工程となります」

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気になったことを遠慮なく質問

分業じゃないの?

ーーーー 気になったが、裁断場は裁断と漉きで数人で作業。縫製場に入ると

         どれも専門仕事ばかりでしょ?それなのに分業制じゃないのねぇ

丸和さん「ほかは知りませんが、うちの会社では裁断場から上がってきたパーツを縫製して

         型付けして仕上げ工程までやる。この工程は一人が全部やります。

         だから今日もムラキさんが来る前に僕は3個仕上げましたよ。

         おっしゃるようにOEMで大量に作る際は40個を4人で作ったりします。

         でも、それにしても『僕はこれしかやりたくない』ってのは通りません。

         縫製も型つけも紐通しも仕上げも全員がやります」

ーーーー  ほ~、面白いなぁ

職人さん若くない?

ーーーー 今日案内してくれたあなたにせよ、働いている他の方にせよ若くない?

丸和さん「僕まだ~~歳ですからねぇ。会社の平均年齢は若いですよ。

         でも会社できて40年以上経ちますよ」

ーーーー なんで若いあなたが職人仕事しているの?

丸和さん「僕、グローブ職人になりたかったんですよ。で、学校に相談したら、

         学校がスポーツ店に相談。

         そこから大手スポーツ会社に相談して、OEMのこの会社を紹介してくれたんです」

ーーーー すごいな、途中で大人が誰か一人でも「めんどいからやめとこう」とかいったら

         頓挫していたな。野球グローブの職人ってのはまたすごくピンポイントだなぁ。

野球選手のグローブも作っているんだよね?

丸和さん「もちろんです! 写真は写したらだめですよ。例えば、これは~~選手のです。

         この選手は一度仕様を決めたらあまり変えずに毎年注文をくれます。

         指先3mm伸ばしたり縮めたりの世界です。

         他方、ある選手なんかは毎年仕様を変えてきます」

ーーーー プロ選手でもそんなチャレンジブルな人いるのね。結構怖くない、それ。

丸和さん「怖いですねぇ。でも僕らも経験値詰めるからありがたいですよ」

創業40年超えた会社が今、OEMだけじゃなくオーダーを始めたのはなんで?

ーーーー 普段OEMメインでしょ?

丸和さん「そうですね。D-Questを見たお客様から『通常のグローブはないんですか』と

         聞かれたりもしますが、通常のグローブのほうが普段たくさん作っていますよ」

ーーーー だろうなぁ。

         このオーダー部門ってコロナ禍で始めたんですか?

丸和さん「いえ、2019年くらいから立ち上げています。コロナ前ですね」

ーーーー あぁ、それはギリギリいい時にはじめましたねぇ。でもなんで始めたの?

野球はもっと、面白い、がキャッチコピーでオーダーを始めた

野球はもっとおもしろい | 野球グローブ、カスタマイズグローブのD-Quest

野球離れなんて寂しいじゃないか。もっと野球をして欲しい。グローブ職人に何ができる? もっと野球を楽しめるようなグローブをつくったらどうだ。今の野球を変えるようなグローブ。それでも野球は野球だ。低品質、低価格のグローブじゃダメだ。世界で活躍するプロ野球選手が惚れるグローブ職人がつくる、野球を変える「本物」のグローブで、もっと野球をおもしろくできる。

丸和さん「(上記の)コンセプトページにも書いていますが、野球人口がもっと

         増えてほしいからですね。

         また、OEM業をしている以上、OEM本業とかち合うことをするわけにはいきません。

         だからこそのオーダー業です。オーダーをやっていると勉強にもなるんですよ」

ーーーー どういう意味で?

丸和さん「OEMってどうしても情報が振ってくるのを待つ、という状態になってしまいます。
         スポーツショップなどは売るプロですので、彼らの意見は大事です。

         でもそれって競合他社も同じ情報を得ているってことです。

         オーダーをしていると 『なるほど!  野球プレイヤーはこういうことを求めているんだ』 

         ということを学ばせてもらい、それをOEMの営業会議の際に、

         こちらから提案ができるようになるわけです」

野球グローブのオーダー方法ってどんなのがあるの?

レザーブラザーズグラブ | 野球グローブ|カスタマイズグローブのことならD-Quest

丸和さん「例えば、こちらのレザーブラザーズグラブは下記コンセプトで作られています。

         牛一頭買いの牛肉のように、牛革一枚から複数のグラブを作製します。

         ポジション別に作る。憧れの先輩と作る。チームメイトとつくるなど、

         同じ革からつくる、グラブの兄弟の物語を応援します。

         で、これでしたらWebでこれだけの選択肢があります。

1 5色から選択

2 9種類のモデルから選択

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3 各ポジションで形状を選択

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4 革紐の色を選択

5 刺繍承ります

         とこれだけの工程があります。

         ちなみにこのグラブでは

         1つの革から裁断したよ!

         ということで裁断後の革もプレゼントです!

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         で、実際のオーダー受注会ではこのように

         手の形をとったりもします」

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ーーーー うわぁ、なんて大変・・・これ、実際には

         「でも人差し指は3mm長く」とかもありえるの?

丸和さん「もちろんです!でもそういう要望をくれる方がありがたいですね。

         弊社に来ていただいたら、オーダー相談のれますので、お気軽にご相談ください」

野球グローブ|カスタマイズグローブのことならD-Quest | チームやお店のアイキャッチにも使える、高品質で特徴的な野球グローブをご提供しております。カスタマイズグローブのことならD-questにおまかせください。


D-Questさんは工場見学などしないの?


今後、「本日は革日和♪ 秋」開催時に、工場見学などのご協力を相談しようと思います。


その場合は「本日は革日和♪」や下記D-QuestさんのSNSで告知されますのでフォローアップよろしくお願いします。



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野球が好きな人でも革が好きな人でも是非遊びに来てください、とのことです。詳細は公式インスタグラムをご確認ください。 


★D-QuestのオフィシャルYouTube ★D-QuestのオフィシャルYouTube
D-Quest Official Channel - YouTube D-Quest Official Channel - YouTube


★D-QuestのオフィシャルInstagram ★D-QuestのオフィシャルInstagram
D-Quest(@d_quest_baseball) • Instagram写真と動画 D-Quest(@d_quest_baseball) • Instagram写真と動画


★D-Questの日常アカウントInstagram ★D-Questの日常アカウントInstagram
D-Quest Everyday(@d_quest_everyday) • Instagram写真と動画 D-Quest Everyday(@d_quest_everyday) • Instagram写真と動画


★D-QuestのグローバルアカウントInstagram ★D-QuestのグローバルアカウントInstagram

D-Quest(@d_quest_baseball_international) • Instagram写真と動画


ムラキの今後予定

素材博覧会 KOBE 2021 夏が、兵庫県緊急事態宣言につき中止になりました。

レザーソムリエ の講師も呼ばれていましたが、中止となりました。

革にまつわる工具と工法~レザークラフトをより楽しむinすみだ2021秋~ 2021年9月23日〜2021年9月24日(東京都)  

こちらに呼ばれていますので行く予定です。緊急事態宣言発令・延期の場合は中止となります。


カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
今回のメインは、皮革における3Dプリンター活用と「ジャパンレザーアワード」受賞作品の技術変革です。
前回に続き、皮革産地、兵庫・姫路の取材を加え、つくり手ならではの視点で鋭く切り込みます。
(兵庫県在住の村木さんが県内のみの移動で感染対策を万全に行いました。)

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしておりますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。
当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。
人気イベント「本日は革日和♪」。今後の予定、スケジュールなどは下記のリンク先をチェックしてください。

  「本日は革日和♪」

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毎度です! 「暑いですな」ムラキです。

もうこの時期は「暑い」としか言いようがないですね。私が若いころは、もうちょい涼しかったんですけどねぇ。

秋口にあったイベントが飛んだり、飛ばなかったり、動画配信したり、イベント見に行ったり、量産仕事が忙しくなったり、と相変わらずといや相変わらずな日常です。

今回は7月17日に見に行った新喜皮革&新規オープン・ペレテリアの報告と3Dプリンタ話、関連してジャパンレザーアワードについてまとめました。

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目次 [hide]

新喜皮革のイベントとペレテリア見に行ってきたよ。
   ペレテリアのクロワッサン、すごいわ、あれは
   新喜皮革の「レザーフェスティバル」
で、先日配信イベントに参加しました。
なぜ3Dプリンタを買おうと思ったか
使用した3DCADソフト
3Dプリンタでこんなものが作れた
   ミシンの糸立て棚の補強
   ミシン糸判別用のキャップ
   USB充電器をピッタリ納めるためだけの保管道具
   糸切りハサミを入れるポケット
   スプレーノズルをなくさないための道具
   ボールベアリング
   30mm幅のベルトを直角に切りそろえるためだけの治具
   ファスナーを張り込むための治具
3Dプリンタは「自分の人生の時間を1分×100回以上削れるな」というのを実現するための引き出しの一つ
昨年のジャパンレザーアワード大賞受賞者は3Dプリンタを使いこなしていた
ジャパンレザーアワード2021の事前応募は8月2日まで
今後の予定


新喜皮革のイベントとペレテリア見に行ってきたよ。

7月17日(土)と18日(日)に開催された新喜皮革のイベント「レザーフェスティバル」を見に行ってきました。同日オープンのペレテリアも見てきましたさ。

「人に話したくなる革の話」/革の新施設 ペレテリアを見てきた話&姫路の革イベントを紹介

 

ペレテリアのクロワッサン、すごいわ、あれは

21年6月のJLIAblogの裏側:350万円のエスプレッソマシーンで一杯おごってもらった話 | phoenix blog


上記裏話でも書いたクロワッサンは食べてきました。あれは高いバター使っているわ。

Pelletteria(ペレテリア)- UNITERS Far East CO.,LTD

Pelletteria - Google マップ

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ペレテリア会場ではタンナーさんの革が展示されたり、今回のイベントにあわせて革屋さんのセールが行われていました。ワークショップも行われており、盛況でしたね。

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新喜皮革の「レザーフェスティバル」

2021年レザーフェスティバル | 馬革専業タンナー 新喜皮革|コードバン・ホースハイド・馬革


会場はコロナ対策をした上で人も多数来訪されていました。新喜皮革では皮革の感謝セールや皮革作家さんの作品販売、革屋さんの革や工具販売も行われていました。

興味ある方はぜひ新喜皮革さんのインスタグラムをチェックしておいてください。多分来年も同じ時期に開催されると思います。

SHINKI-HIKAKU co Ltd(@shinki_hikaku_co) • Instagram写真と動画

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で、先日配信イベントに参加しました。

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サンプル師が教えるバッグ教室が 7月25日(日)教えるフェスタ2021『夏』《プロの仕事術 12時間ライヴ配信》 | phoenix blog


3Dプリンタ使い始めて半年ほど立ったので、データ作成はこんなに簡単! 運用コストは? 注意点などを解説しました。

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で、さすがに当日と同じ内容をここで書くと参加された方に失礼ですので細かく書けません、書きません。

こちらのブログでは「こんな物が作れるよ」「データ作成はこれでやりました」ということを紹介してみようと思います。


なぜ3Dプリンタを買おうと思ったか

下記サイト見て「あ、これは便利だ」と実感しましたので

安価な3Dプリンターを買って1年で作ったもの68種の具体的な用途を全部紹介


使用した3DCADソフト

使用した3Dソフトは「fusion360」という非商用ならばフリーで使用できるソフトです。

Fusion 360 | 3D CAD/CAM/CAE/PCB クラウドベースのソフトウェア | オートデスク


勉強は下記の本を購入して、ノートパソコンと本持ってコメダ珈琲に2日ほど引きこもって学びました。全体の4割ほどしか理解できていません。

Fusion 360 マスターズガイド ベーシック編 改訂第2版 | 小原 照記, 藤村 祐爾 |本 | 通販 | Amazon


私は本に書き込みしながら学ぶのが好きですが、今の時代ならばネットや、YouTubeで勉強できると思います。


3Dプリンタでこんなものが作れた

レザーに関係あるもの or 私の仕事場限定で紹介するならば・・・


ミシンの糸立て棚の補強

多分これが一番最初に作ったものです。

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ミシンの糸を保存する棚を作りましたが、普段私は太さ20番と30番を使います。上糸を20番、下糸を30番で作るのですが、1色につき2本買うわけです。そうなると、この2本は一緒に保管しておきたい。2本の糸を1本の棒に指すと棒はとても不安定です。

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なんせ板厚12mmに、8mm程度の深さをあけて7mmの棒を差し込んでいるだけです。板に対して棒の接触面積が少なすぎです。ものの安定は接触面積がどれだけあるか、です。触れる面積が大きければ大きいほど安定するわけです。

で、作ったのがこちら。

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単に棒の根本を安定させるだけのパーツです。でも、これがあるおかげで糸を2本刺しても棒がグラつきません。

材料の値段は1g2.6円くらいですので、10円弱くらいです。


ミシン糸判別用のキャップ

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20番と30番の糸を使っていますが、見た目は対して変わりません。で、何度かやったくだらないミスが糸を手にとっては「これは、、20番、、と思ったら30番かよ!下のほうが20番だったか・・・」「白の糸は多めに買っているから、30番はどれかな・・・って、全部20番! 30番買い置きないじゃん!」とあたふたあたふた。

私の人生、こんなくだらないミスで5秒をいちいち失うのはもう嫌だ! と思って作ったのが「ミシン糸キャップ」です。

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単にミシン糸にカポッとはめるだけのパーツです。でも、これのおかげで「赤いキャップがついているミシン糸は20番!」というルールを決められたので人生の時間5秒×ミシン糸を手に取る回数分だけ、無駄な時間を減らすことができました。

ついでにミシン糸の端っこをいちいち引っ掛ける必要もなくなりました。糸の端っこを巻き込むようにキャップをはめたら、ミシン糸がダラリとみっともなく垂れたり絡まることもなくなりました。地味に便利。

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私が普段使っているミシン糸はダイヤフェザーという会社の糸ですが、このキャップはこのダイヤフェザーのミシン糸にしかはめ込ません。

3Dプリンタが便利なのは「なにかのためにベストフィットする寸法で作ることができる」のが素晴らしいわけです。


USB充電器をピッタリ納めるためだけの保管道具

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作業場の机の下ですが、スペースが空いており死んでいるスペースです。
で、作ったのがこちらの品。USB充電器を納めるためだけの道具です。片手で見ることなく滑らせるように出し入れが可能です。

このUSB充電器のためだけに作りました。この充電器をなくしたり、別の充電器を買ったら「その充電器にピッタリ沿った形」で作り直すだけです。


糸切りハサミを入れるポケット

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ミシンの脇に糸切りハサミを置いています。
このハサミですが、作業性良くするためにミシンの作業をしている最中に見ることなく片手で取れるようにしておきたいな、と思っています。

革でポケットを作ったのですが、これをくっつけるのが結構たいへんです。両面テープは必ずいつか落ちます。接着剤もちょっと不安です。写真のポケットはどのように設置しているかというと・・・

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3Dプリンタで3mmほどの厚さのプレートを作りました。プレートには2か所ネジ穴を開けておきました。
革を巻き込むようにプレートをねじで止めています。この革ポケットはもう落ちることはありえません。

プレートには穴を追加で3か所あけて、磁石を埋め込めるようにしています。もちろん磁石はピッタリサイズ。これによりハサミを戻す際に磁石で吸い付くようにポケットに入ります。万が一ポケットに入れそこねても磁石のおかげで落ちづらくなっています。作業している最中にハサミを戻す際にいちいち視線を向けるのが嫌だったんです。


スプレーノズルをなくさないための道具

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ミシンオイルやニッティングシャワー(有機溶剤。接着剤のベタつきを落とすためのスプレー)には付属のスプレーノズルがついています。このノズルをよくなくすんですわ。

スプレー本体につけているとスプレー上部からニョキッとノズルが出ていてとても邪魔。でも外しちゃうと無くしちゃうんです。

どうしたもんかな~と思って作ったのがこの道具。

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両面テープでスプレーに装着して、ノズルを差し込めるようにしています。
このノズルを差し込む穴も「この金属ノズルのためだけの穴」に調整してピッタリ作っています。

違うスプレー買ったら、ノズルのサイズも違うでしょうが、その際はまた作り直せばいいだけです。
多分これ読んでいる人でも「あぁぁ!!! これはほしいぃぃ!」と言っている縫製職人さんなりがいるはずです。


ボールベアリング

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自分の望んだ寸法の大きなボールベアリングは前から欲しかったものです。
でも中に入れる鉄球を買い揃えると結構高いなぁ、と悩みつつホームセンターや100円ショップをふらふら。で見つけましたよ、低価格な球体。8mmのビーズです。20個以上入っていて100円! 素晴らしい。

ボールベアリングを望んだ大きさで作れる、ってのは工具の幅が広がります。ただ、所詮はビーズですのであまりの重量物や高速回転には向きません。

 

30mm幅のベルトを直角に切りそろえるためだけの治具

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30mmのベルトパーツをそこそこの数作りました。100本作る! とかになると刃型を使いますが、せいぜい20本程度。じゃぁ、手で切るか、と切っていきましたが端っこがきっちり直角になっていない。それが気持ち悪いので、30mmベルトにかぶせて直角に切りそろえるためだけの治具を作りました。値段的にはせいぜい10円くらいですね。


ファスナーを張り込むための治具

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L字ファスナーの財布を作る際にファスナーをきれいに張り込むための治具です。

3Dプリンタで印刷するのに3時間弱くらいで、材料費は60g。180円弱ですね。

木工もやりますし、こういう治具は紙でも作ろうと思えば作れます。でも、その作成時間は2時間ほどかかるかなぁ。。

「なんだ、2時間でできるなら別に3Dプリンタで作らなくてもいいじゃん」と思われそうですが、3Dプリンタでの制作時間3時間弱、ってのは「他の作業をしていてok!」な3時間弱です。データ作成自体は15分ほどです。


3Dプリンタは「自分の人生の時間を1分×100回以上削れるな」というのを実現するための引き出しの一つ

3Dプリンタがあればフィギュアなり大きな物が作れるんでしょ! と期待される方もいるかと思います。そんな大仰なものは到底私は作れません。それを作るだけのデータ作成の勉強時間が確保できません。

上記のデータは本買って5時間真面目に自習すれば作れます。その程度のものです。

私にとってはこの機械は「ちょっとした日常のイラっとした5秒を減らす×100回」「ちょっとした治具を作らせて、自分は別のことをする」というのを実現するための引き出しの一つです。


2020年度「ジャパンレザーアワード」グランプリ受賞者は3Dプリンタを使いこなしていた!

2020年度の「ジャパンレザーアワード」グランプリを受賞したのはコインケースでした。

こちらの品は下記でも解説されているように3Dプリンタが活用されています。

応募作品 | Japan Leather Award 2020 | ジャパン レザー アワード 2020

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あぁ、2020年の当ブログのエントリでも解説していますが、この品はデザインが優れていた、ってのもありますが、実際に触ってみてわかる「使い心地」がものすごく気持ちいいです。

カポッと空気が押し出されて蓋が閉まる感触は「あぁ、何度もこれはテスト重ねただろうな」と感心します。

3Dプリンタで作った木型も1回だけじゃなく、2回、5回と試作して作ったはずです。試作時間を大幅に削減できたわけです。

村木るいさんの「人に話したくなる革の話」/「ジャパンレザーアワード2020」を解説してみる | | JLIA 日本皮革産業連合会


「ジャパンレザーアワード2021」の事前応募は8月2日まで

さて、上記作品がグランプリを受賞したジャパンレザーアワードが今年度も開催されます。コロナ2年目なのにやるんだな・・・と驚きました。ほんとに主催のJLIAも、運営会社も熱いなぁ。

「ジャパンレザーアワード2021」は事前応募は8月2日(月)までとなっています。

事前応募は「この部門に参加します」という表明をするためだけのものです。実際の品の締切は9月3日(金)です。

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「ジャパンレザーアワード」に応募した作品は、プロのカメラマンが撮影し、過去の出展作品をすべてネット上で公開してくれます。

過去10年分全部を今も公開してくれています。作品ページでは各種SNSへのリンクを貼っておいてくれます。

Japan Leather Award 2011 | ジャパン レザー アワード 2011

Japan Leather Award 2012 | ジャパン レザー アワード 2012

Japan Leather Award 2013 | ジャパン レザー アワード 2013

Japan Leather Award 2014 | ジャパン レザー アワード 2014

Japan Leather Award 2015 | ジャパン レザー アワード 2015

Japan Leather Award 2016 | ジャパン レザー アワード 2016

Japan Leather Award 2017 | ジャパン レザー アワード 2017

Japan Leather Award 2018 | ジャパン レザー アワード 2018

Japan Leather Award 2019 | ジャパン レザー アワード 2019

Japan Leather Award 2020 | ジャパン レザー アワード 2020


「ジャパンレザーアワード」はここがおもしろい! ここがビジネスにつながる! という話は、下記で載せていますので、また興味あるかたはご覧ください。

村木るいさんの「人に話したくなる革の話」/「ジャパンレザーアワード」はコロナでもやる、という覚悟を聞いた話 || JLIA 日本皮革産業連合会


今後の予定

「ハンドクラフト企業フェア2021」(大阪)

8/7(土)【ハンドクラフト起業フェア2021】にフェニックスが出るけど、ちょっと特殊なイベント | phoenix blog

素材博覧会 KOBE 2021 夏(神戸)8/26-28


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プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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