August 19, 2011
Vol.2 日本の革との出会い
ブレント ガレス ロビンソン
僕は5年前、ニュージーランドから英語教師として来日した。いつもファッションには興味があり、街を歩く日本の人々の服装に関心を向けるようになった。ルイ・ヴィトンやグッチの一流ブランドに人気があることは気がついたけれど、僕が興味を魅かれたのは、シンプルでありながらスタイリッシュな、あるブランドだった。すぐにこのブランドの名前、「ポーター」に注目し、よく周りを観察してみるとほとんど全ての人がポーターの製品、ブリーフケースやキャリーバッグ、財布などを持っているようにみえた。最初は、東京でほとんどの人気の鞄ブランドがそうであるように、これはヨーロッパかアメリカの製品だと思った。いずれにしても、ポーターの商品を手に入れるのが、僕の優先事項になるのに長くはかからなかった。
家に帰ってコンピューターをつけ、グーグルで検索し、発見したばかりのこのブランドについてできる限り調べた。すると驚いたことに、「吉田カバン」として知られる、日本の会社のブランドだった。それにすべての製品は日本で作られているという。日本製品の品質、巧みさを考えれば、自分が吉田カバンの製品を持つことに納得がいくのだった。
ウェブサイト、http://www.yoshidakaban.comから「KURACHIKA YOSHIDA」のお店が東京駅の近く、丸の内ビルあることがわかった。東京駅に向かい、お店に入ってみると、接客サービスの高さに圧倒され、並んでいる商品を買い占めたい気分になった。しかしながら、僕が呼び戻されたのは、革の2wayブリーフケースだった。ステッチのラインから革の品質にいたるまで、このスタイリッシュなレザーバッグを買わない理由を探すのは不可能だった。値段は5万円(USドル588、1ドル=85円)と僕には安いとは思えなかったが、店員さんからアフターサービスについての説明を聞き、すぐに、これから長く使うことを考えれば購入するべきだという確信を得た。その時に店員さんが教えてくれたのが、日本語の漢字で書いてある「一針入魂」という表現。英語に直訳するなら、「一針一針に魂をこめる」という意味になるだろう。これを聞いた瞬間、僕は吉田カバンの大ファンになった。
言わせてもらうと、ここ日本と僕の母国ニュージーランドの接客サービスはかなり違う。ニュージーランドのショップスタッフはどちらかといえばフレンドリー、日本は一般的によく教育を受けていてそれ故知識があってプロフェッショナルだ。東京駅近くの丸の内ビルにある吉田カバンでは、店員さん達はお客さんが入出店する時には礼儀正しく挨拶をしてくれるが、商品のコレクションをみているときに話しかけることはないようだ。正直言って、商売熱心でしつこい店員に邪魔されずゆっくりみることができるのはよかった。でもスタッフが英語を話せないのか、話そうとしないようにみえ、吉田カバンは、日本に住んでいる外国人の間では成功するかもしれないが、もっと儲かるであろう外国人旅行者のマーケットで浸透するのは難しいだろうと感じた。従って、英語でポーターシリーズの説明ができるくらい、お店のスタッフは、基礎的な英会話ができるようにして欲しい。
その後2年以上このバッグを使っているが、状態は申し分ない。日本の職人魂がこもっているから、ときどき手入れをして毎日大切に使っている。現在は吉田の製品を何点か所有していることを誇らしく思っているけれど、僕のコレクションはまだ完成していない。吉田の製品は、日本の外国人コミュニティでも人気があって、友人や同僚が最新の吉田カバンの製品を持ち歩いている。僕のように世界中の人が吉田カバンの良さを発見して欲しいと思う。
日本に住む外国人や、海外に住む日本人から「日本の皮革製品」のよいところ・わるいところをご指摘いただきました。果たして「そとから」の評価 は、日本に住む日本人の方々にとって、どう映るのでしょう。「外からの目革思」は、見えないことを見せてくれるかもしれません。
- Vol.9 やっとわかった皮革製品の良さ
- Vol.8 日本製革バッグの魅力
- Vol.7 革の匂いから―懐かしいあのころへ
- vol.6 中国本土購買層にとっての皮革製品
- vol.5 身近な革製品と高価な革製品 ~韓国と日本の革文化~
- vol.4 ジャパンレザーアワード 2011
- Vol.3 日本へ来て初めて知った「ものづくり」のこだわり
- Vol.2 日本の革との出会い
- Vol.1 隠れた宝