July 24, 2013
Vol.14 パーマカルチャーデザイナーと日本の革の出会い
セシリア・マックライ
こんにちは。私はメルボルンに住んでいるセシルです。パーマカルチャーデザイナーをしていて、何度か日本にも講演をしに行っています。パーマカルチャーとは、パーマネント(永久な)とアグリ(農業)そしてカルチャー(文化)を重ねた言葉で、「永遠に持続(循環)可能な生活をデザインする」といった考え方です。
パーマカルチャーデザイナーといったら、HANAME MORIのバッグには似合わないイメージですよね?泥だらけの長靴を履いて植物を植え、畑を耕す。実際、私もそんなイメージ通りの生活をしていますが、日本でHANAME MORIのバッグを買ったことは、とても良い決断であったと日々感謝をしています。
表参道にあるHANAME MORIの店舗でバッグを買ったのは、4年ほど前だったでしょうか。行くたびに、その贅沢な空間を楽しんでいました。映画「ティファニーで朝食を」の主人公のオードリーヘップバーンが憧れのTiffaniyの前で朝食を食べていたような感じです。実は、15年ほどHANAME MORIの店舗やギャラリーに通っていたのですが、何一つ商品を買ったことはありませんでした。ただ、写真を撮ったり、パーマカルチャーのデザイン制作のための刺激を受けたりしました。HANAEMORIの空間にはまさに女性らしい時間が流れているのです。
HANAE MORIのショーウィンドウで見たソファーにアイデアをもらい、黒い食べ物を集めた"ゴス・ガーデン"を制作。
ふとショーウィンドウの四角くて黒いバッグが目にとまりました。昔のお医者さんのバッグのようであり、同時に1960年台のスチュワーデスが持っていたような魅力的なバッグでした。
そのバッグは、頑丈で、独自の模様が入っていました。バッグの四つ角とジッパーは、なめらかでつやのある革で補強され、持ち手の部分は斜めに繋ぎ合わせてあるので、非常に握りやすくなっていました。革はやわらかく、高級感がありながら、温かく自然な革の匂いを放っていました。
その日は、翌日にオーストラリアに戻る日で、ワークショップで頂いたお金が少しあったこともあり「自分自身へのご褒美に」と考えました。
無意味なバッグルや輝くデコレーションもないため、このバッグの全ての特色が目的(サポートすること、強化すること)にかなっていました。まさに、私がなりたいと思う「役に立つ、美しい」女性のようです。だからこそ、「これを買おう」と思ったのかもしれません。
このバッグに合うピンクのお財布もあったので、一緒に買いました。
10日間のパーマカルチャー講義用の荷物。岐阜のMori-no-ie、農家、浜松大学。
渋谷のAppleストアの外で、友達のりこと偶然再会。彼女は私のイラストを使って、パーマカルチャーカレンダーを制作しています。私たち二人とも独身なので、子ども代わりに彼女は犬を、私は素敵なバッグを!
バッグは黒ですが、私の着る全ての服にも合うし、黒のパラソルにもマッチするので、夏も冬にも好んで使っています。
バッグが私を代弁してくれる
6ヶ月ほどホテル暮らしをしなければいけないときがあります。そんな状況でも、仕事を成功させるためには、出会う方たちに良い印象を与えないといけません。
高級感のある新品同様のバッグを持っていることは、相手に私のことを理解してもらう手がかりにもなります。「信頼ができ、仕事ができる女性である」と。(その方たちは、ペットボトルの蓋を閉め忘れてバッグに入れたりする私のことは知らないと思いますが・・・・)「信頼性」や「気配り」は仕事上で私が日々信念としていることであり、バッグがそれを体現しているといえます。
オーストラリア人の価値観:「大丈夫、気楽にいこうよ!」
パーマカルチャーの講義を行った松原地区(福井県)の景観を楽しむ。カバンを地面に置いているのを撮られたのは少し恥ずかしいですが・・・
HANAE MORIのカバンの内部はとても広く、物をたくさん入れても型崩れしません。私がよくやるように、着替えやらランチやら、丸一日分の大荷物を安いカバンに詰め込めば、すぐに壊れてしまうと思います。
カバンの底には金属の足が着いているため、地面に置いても汚れたり、磨り減ったりすることがないのです。日本では、地面にカバンを置くことは、良くないとされているため、私もその習慣を取り入れるようにしています。
一度、バスで立っていたことがありました。とても疲れたので、床にカバンをおいて、目をつぶっていました。すると、年配の女性が私の肩を叩き「カバンを落としましたよ」と教えてくれて、拾ってくれました。
シドニーのレストランでの驚くべき光景
日本人には、私たちオーストラリア人が持っていない「気づき」があるような気がします。ある日、シドニーにある素敵な屋外レストランで、女性が砂だらけの地面にバッグを置いたのを見て大変驚きました。追い討ちをかけるよう、その数分後に、7、8歳位の娘さんが来て、お母さんと話すための台としてそのカバンを踏みつけたり、とんだりはねたり、ダンスをしていました。
その光景を見て、この女の子もお母さんと同じように物を大切にしないだろうと思いました。
でも、この女の子もいつか大人になり、日本に行き、「物を大切にする文化」に惹かれ、変わっていくかもしれません。私がそうなったように。が日本から学んだことは、今の仕事をするきっかけになっています。「地球を本当に大切にするには、まず自分自身を大切にすることから始める」といった事を人々に教える、私にとって、まさに夢のような仕事です。
日本に住む外国人や、海外に住む日本人から「日本の皮革製品」のよいところ・わるいところをご指摘いただきました。果たして「そとから」の評価 は、日本に住む日本人の方々にとって、どう映るのでしょう。「外からの目革思」は、見えないことを見せてくれるかもしれません。
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