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2021年 大人の足サイズ計測から

足底アーチが低下している?

先の報告書(2008年資料)では、日本人成人の身長の伸びが最近20年間ほど停止しているにも関わらず、足長が伸長していることについて、足底アーチの低下に原因があるのではないかと論じています。

ところが最近、日本人の身長は増加停止どころか低身長になっているという研究報告が発表されています。Morisakiら(2017)(※1)は、1980年以降生まれの日本人成人の平均身長は低下しており、その一因が低出生体重児の増加にあるのではないかと論じています。また、Akiyamaら(2019)(※2)は、1978~1979年生まれ以降の日本人の平均身長は低くなっており、その原因として1000ゲノム・プロジェクトの日本人データ191,787人をGWAS(ゲノムワイド関連)解析にかけたところ、とても弱い効果ではあるが、身長を高くする遺伝的変異が自然淘汰されている可能性があると論じています。いずれにしても、本研究と照らし合わせると、日本人若年層の平均身長は停滞どころかむしろ低くなる現象が生じているにも関わらず、足長のとくに後足部だけが伸長し、ボールジョイント断面が扁平化し、母趾の外反度が大きくなるという変化は、前述したとおり、近年の日本人の足に足底アーチの低下が生じている可能性が否めません。

足長第一趾の伸び 内不踏長の伸び

足長の伸びは、内不踏長外不踏長の伸びとほぼ一致する。とくに女性はほぼ一致。
内側縦アーチの低下が生じている可能性。

この原因として、2008年調査報告書ではスポーツ機会の減少やモータリゼーションに頼りすぎる現代の生活様式を挙げましたが、それらに加えて健常者でも利用可能なバリアフリー化の目覚ましい普及、ITツール(スマートフォン、リモートミーティング等)の著しい進化とEC(電子商取引)の普及、家庭においても様々なリモートコントローラーや自動センサーの一般化、さらに宅配システムの多様化なども、運動器の弱体化に拍車をかけている可能性が挙げられます。
本報告書の第11章では、JISサイズの出現率の変化をみています。最多出現足囲についてみると、男性の全年齢群ではEEでしたが、45歳未満に限るとより細いEへとシフトしています。女性の全年齢群ではEでしたが、65歳未満に限るとDへとシフトしました。つまり、現代日本人女性の足囲は高齢者を除けば平均がDであるということで、ここまで細くなったのは過去に例をみません。
このように、日本人の足は益々きゃしゃで細長い形状へと変化しており、とくにこの現象が男性より女性で顕著であることも、2008年報告書と同様の結果です。

男性JIS足長 女性JIS足長
男性JIS足囲 女性JIS足囲

図11-1. 本資料と2008年調査のJISサイズ出現率の比較(全年齢)
*婦人靴に「G」表示は存在しないが、そこに該当する被験者が実在するので、ここではFの一つ上のサイズを便宜上「G」として記載した。

※1) Morisaki,N., Yuji,K., Yoshii,K., YOkoya,S. Ecological analysis ofsecular trends in low birth weight births and adult height in Japan.Journal of Epidemiology & Community Health, Vol.71, 2017.
※2)Akiyama,M., Ishigaki,K., Momozawa,Y., Horikoshi,M., Hirato,M.,et.al. Characterizing rare and low-frequency height-associatedvariants in the Japanese population. Nature Communications, Vol.10,2019.

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