December 25, 2019
村木るいさんの「人に話したくなる革の話」/豊岡鞄のセミナーを聞いたり、型紙セミナーを運営して思った 知ってもらう大切さの話
カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」
今月はイベント、セミナーを主催する立場でもある村木さんが、ものづくりに関する技術、知識、その魅力の奥深さを多くのかたがたに伝えること、ご理解いただくことについて、マーケットの現状とともに語ってくれました。一年の締めくくりに相応しい内容となっております。
さて、今回が2019年最後の投稿です。一年ご愛読いただき、ありがとうございます。2020年は1月8日(水)からスタートです。来年も引き続き、よろしくお願いいたします。
人気イベント「本日は革日和♪」。今後の予定、スケジュールなどは下記のリンク先をチェックしてください。
<http://ccrui.sakura.ne.jp/kawabiyori/>
毎度です!「今年の秋から冬のイベントの山場は無事終了!」のムラキです。
19年12月4・5日 水・木曜日に開催された東京レザーフェア。この9階で行われた革日和ブースの取りまとめを行いました。当日お越しいただいた方、ありがとうございました。
浅草エーラウンド主催イベント 同時開催 | TLF 東京レザーフェア - 革の展示
今回のblogでは、この革日和 in レザーフェアや豊岡鞄のセミナーを聞きに行った話を報告しつつ、思ったことなどをダラダラっと書いていきます。
目次 [hide]
今回のレザーフェアでエーラウンド&本日は革日和♪ということで1部屋借してもらえました
レザーフェア開催中、会場である台東区民会館はレザーフェア運営である協同組合資材連が全部借り切っています。
で、9階が空いているし、ということで浅草で行われているイベント エーラウンドと私が運営している「本日は革日和♪」に、「なにかやってくれ」とお声がかかりました。
運営サイドとしては「従来レザーフェアに来ないような層を増やしてほしい」ということでしたが、なかなか難しい注文です。なんせ展示や販売は一切禁止というお達し。
結局ワークショップとセミナー主体と言うことで、知り合いなどを呼んでワークショップとセミナーを行いました。
レザーフェアは水曜・木曜日のみ行われるため、ワークショップは集客がちょっとなぁ、というものでした。ワークショップは土曜・日曜日なり絡めないと厳しいですね。
それに対して、セミナーは平日にも関わらず遠方は青森からも来られたり、靴の専門家なども来て満席に近い状況でした。
革日和は何をやったのか
大阪から靴のパタンナー 古瀬勝一氏、バッグのサンプル師 中村保義氏を呼んで型紙実演セミナーを行っていただいたり、nijigamitoolさんに来ていただきワークショップを行ってもらいました。
ワークショップ
nijigamitoolは東大阪にある木工の夫婦ユニットが主宰しています。木工による革の工具などを作ったり、ワークショップを行ってくれています。
今回は「展示販売禁止」という条件だったためワークショップのみの参加でした。下記の工具などもワークショップで使ったものです。
靴セミナー
靴のパタンナーという仕事は、「靴の木型から型紙を実際に作る」というのがお仕事です。木型から作る実演ということですので、2時間で木型から型紙を作る、という濃い内容でした。
当日は撮影環境を整えて、受講した方には復習用に後日動画もプレゼントという体制を整えました。
・靴木型から型紙を作る実演 外羽根編 2019年12月4日(東京都) - こくちーずプロ
・靴木型から型紙を作る実演 ニーハイブーツ編 2019年12月4日(東京都) - こくちーずプロ
古瀬氏には外羽根、ニーフットブーツ、という2つのセミナーを2時間×2回で実演。聴講者は靴メーカーの方、教室生徒さん、教室運営者さんなど多彩に聞きに来られ、充実した成果を得られたと思います。古瀬氏は専門学校の講師をしていたこともあって、「なぜこのラインはこのようになるのか」などを論理的に説明し、作業をしつつ解説する、というテクニックも有しており、このセミナーでも手と口を止めることなく解説していただきました。
バッグセミナー
翌日12/5は、大阪の「サンプル師が教えるバッグ教室」主宰の中村保義氏に来てもらいました。
・サンプル師が型紙実演:つまみのついたハンドバッグ 2019年12月5日(東京都) - こくちーずプロ
・サンプル師が解説『バッグメーカーの面白さ、辛さ、お金の流れ、型紙の意味を解説するセミナー』 2019年12月5日(東京都) - こくちーずプロ
型紙実演は実際のつまみのついたハンドバッグの型紙の作り方を実演してもらい、こちらも動画を後日聴講生にプレゼント、という形式で行いました。
で、2番めの「サンプル師が解説『バッグメーカーの面白さ、辛さ、お金の流れ、型紙の意味を解説するセミナー』 」は座学セミナーで、中村氏による「メーカーという仕事はどういう仕事か」を喋っていただきました。
このセミナーは1年ほど前に大阪で行ったのと同じセミナーです。
なんでこういうセミナーを企画したか
中村さん、サンプル師やメーカーってどんな仕事か教えるセミナーをやってみようよ
中村さん「そんなんやって聞きたい人いるんかなぁ?」
例えばバッグや鞄メーカーに入っても実際にミシン踏んでサンプル切る人って少ないやん?メーカーってクライアントと職人の間にたって利益を稼ぐ仕事だけど、お金の流れや苦労って理解しづらいやん?そういう利益はどこから出しており、どういう苦労があり、どういう喜びがあるか、を知ってもらえたら将来的に革業界で働きたい人の選択肢に幅が出ると思うんだよね。ネットは発達してきたけど未だに革業界や鞄業界って内部の情報発信が全然足りてないと思うんよ。だからやってみたいんだよね。
「無料でやるん?」
無料はあかんよ。無料でもらったものを人は大切にしない。だから必ずお金はもらう。その分しっかりしたものを提供する、という縛りがセミナー講師にも主宰者にも出てくるよね。だから「はい!中村さんに任せた!当日は自由に喋ってください!僕は依頼しただけです!」なんてせぇへんよ。レジュメも整えて用意するし、中村さんが必要ならば狂言まわしなり司会もするよ。だからやってくれへんかなぁ。きちんとお金も払うよ。
「そういうことならええよ、協力するよ~」
という流れで行ったセミナーです。
当日はメーカーの人や、請負職人さん、青森から来た方など満席状態でした。
レザーフェア次回にも同じことを革日和は行うのか?
多分行いません。
ワークショップはやはり平日のみでは集客できず、ワークショップをやっていただく方にメリットがありませんでした。セミナーは喜ばれるとは思いますが、もう少しターゲッティングしないと講師の方にも悪いかな、と。
多分このblogを読んで「えっ!そんなことやっていたの!行きたかった!」という声も出るかと思いますし、イベントは3回やらないと周知されないので最低あと2回やらないといけないんですけどね。
個人的には日本皮革産業連合会(JLIA)が作った「皮革の出来るまで」や「鞄の出来るまで」のDVD上映会なり、他の革関係の上映会などをやったほうが一般層へのアピールにはなるかな、と思います。その際は「動画を流した。さぁ、あとは勝手に見てくれ!」では駄目で、「この動画ではこの点が見どころです」などの解説がないと意味がないかもなぁ。下記の「出来るまで」DVDは個人的に全部購入して見ていますが、出来が良いんですよ、これ。売り切れたら再生産しないんじゃないかな、これ、、
19.11/15には大阪で特別セミナー「豊岡ブランドができるまで」を聞いてきた
さて、大阪にて11/15に行われたシューカレッジおおさかによるセミナー、「特別セミナー「豊岡ブランドができるまで」を聞いてきました。
これがなかなか笑いあり涙ありの素晴らしい内容でした。
内容
このたびシューカレッジおおさかで、特別セミナーとして公開講座を開催することになりました。
2018年4月にシューカレッジおおさかを立ち上げた際に、地域の地場産業の振興の先進的な事例として、豊岡での取り組みを大きく参考にさせていただきました。人材の確保、育成(知識・技術の向上)、新規事業、地域との共生など、1つではなく、更にはお互いが絡み合う複雑さを増している課題を抱える状況の中、学校「Toyooka Kaban Artisan School」「鞄縫製者トレーニングセンター」を中心にしながら、「豊岡鞄」という地域ブランドづくりなどを展開することで好循環を作り出し、鞄の産地としての「豊岡」は内外共に輝きを見せています。
今回は数ある取り組みの中でも、「豊岡鞄」という地域ブランドについてのお話をお伺いしたいと思います。熟練の職人によって作られた高品質の鞄にしっかりとした品質保証をすることで、その価値を守り、結果として地場産業の振興や維持に大きな役割を果たしています。この地域ブランドの立ち上げに至るまでのきっかけや経緯、そして地域ブランドをどのように活用されているのかをお話しいただきます。
靴に関わる方だけでなく、広くどなたでもご参加くださいませ。自社のブランディングだけでなく、業界や地域を巻き込んでのブランディング戦略を考えられている方など、新規事業づくりや企画に新しい知識や事例を知りたいという方には特にオススメの内容になっております。
■セミナ-講師
植村賢仁 氏
兵庫県鞄工業組合 副理事長
マスミ鞄嚢株式会社 代表取締役
内容抜粋
細かく書いちゃうとセミナー主宰にも講師の方にも失礼ですので抜粋だけでも。ブランド構築の苦労や、組合の苦労などが偲ばれて泣けてくる良いセミナーでした。細かい数字もバンバンと出してくれる生々しさもあり、靴鞄財布タンナーなど限らずに「ものを作って売る」という商売をしている人全員聞いて損のないセミナーでした。
・OEMの限界。ブランド構築を考える。
・商標取るのに苦労した
工業製品としては第一号の商標認定。
・ブランド構築のために苦労したこと
将来この地がどうなりたいか、子どもたちがどのように働いているか、などの未来を見据えて、その上でどのお客をターゲットにするか、など
・買う人が何を求めているかは現場にしか落ちていない。
ある程度 主 になる人は販売員として立ってもらった。
・ブランドとは続けなければならない
・組合都合を一切排除
・豊岡鞄には製品保証
自社じゃない品でも豊岡鞄として修理する
・豊岡鞄の認定
合格率5割から6割。
検査してアウト、ではなくて、アドバイスも惜しまず出す。
仲間内でそういうことをやるのは勇気がいる。
・豊岡鞄の活動について
売れるようになると展示会募集が増えるけど、見極めはバイヤーやマネージャーが熱意持ってきちんと取り組んでくれるかどうか。
・周知活動
今後を考えると消費者にアピールしないと意味がない。
消費者に知ってもらう活動を続けている。
・ふるさと納税でカバンを買おう、という人も多い。
・派手に動くと便乗して入ってくるところも多い。
組合としては周知活動はするが、儲かるかどうかは各社の仕事。
豊岡鞄の今後予定
豊岡鞄フェア @髙島屋大阪店
毎年恒例の、大阪髙島屋でのフェアを新年早々に開催いたします!
【会期】1月3日(金)~1月7日(火)
午前10時~午後8時(最終日は午後6時閉場)
【会場】髙島屋大阪店 7階催会場マスミ鞄嚢のオーダー受注会を始め、カバンコンシェルジュキヌガワによりますカバン・財布の修理、お手入れ相談会も開催いたします。
いつもご好評いただきます、ミニチュアボストンのワークショップも開催いたしますので、是非ご参加ください。
皆様のお越しを、心からお待ちいたしております。
この国はモノづくり&職人、という言葉が好きな割にそれらにお金を出すのは渋る
「良いものを作っていたら売れるんだ」というのは今の時代には全く即していません。
知ってもらう。理解してもらう。
それはTVに出たり、タレントが宣伝すればいい、というものではなく、作っている本人や社長、ブランドプロデューサーなどが自分自身で心からアピールしないと相手に理解してもらえないと思っています。
これは「アピールしよう!頑張れ!頑張れ!」という精神論の問題ではなく、「Youtubeだ!インスタだ!」というSNSなりの技術の問題でもありません。
生産技術を持ち、どこにターゲッティングし、それに基づいてデザインし、完成した品をどの媒体でどのようにアピールするか、という戦略戦術論になります。ここらを考えるのが社長&幹部の仕事なわけです。
今回のレザーフェアの中で行った革日和の型紙製作セミナーにせよ、座学セミナーにせよ、豊岡鞄セミナーにせよ、「ターゲットに理解してもらいたい」という思いが骨子にあります。今の時代、消費者はタレントが紹介したり、高額だから買う、というわけではなく「自分が納得したものを購入したい」「失敗したくない」という思いが強いように思えます。だからこそ「知ってもらう」「その上で買ってもらう」ことがすごく重要です。
個人的には「ものを作るよりも企画して売るほうが10倍難しい」と思っています。このblogでは「日本の革の生産の裏側にはこういう苦労がある」「こういう苦労も楽しい」なども伝えてきました。
「えっ!最終回なの、ムラキさん!」
いえ、全然。(´・ω・`) 単に年末だから挨拶として書いているだけですわ。
革業界はさらに面白い世界が広がっていますので来年も紹介していきたいものです。( ´∀`)bグッ!
プロフィール
鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター
東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。
最近のブログ記事
- ジャパンレザー NEWS【まとめ】<9月第2週>
- 【村木るいさん連載】「人に話したくなる革の話」腱鞘炎にならないための考え方とカッターナイフの話
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