欧米ブランドに「負けていないぞ!」

September 28, 2022

【村木るいさん連載】ニューレザーコンテストと魚の革の話

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
今回はニューレザーコンテストと魚の革の話。ものづくり、イベント運営、情報発信と幅広く活躍する村木さんが、皮革産地・兵庫県姫路市の現地で独自取材。つくり手の立場からリアルにレポートします。ぜひ、ご覧ください。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

人気プロジェクト「本日は革日和♪」の参加イベントが明日から横浜で開催されます。このほか今後のスケジュールなどは下記のリンク先をチェックしてください。

  「本日は革日和♪」


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毎度です!「コロナ前の秋の忙しさだけど、回復はもうちょっとかなぁ」と思っているムラキです。

コロナ前のイベントの忙しさが戻ってきたように思えます。その一方でコロナの影響+イベントが増えたことで人の取り合い+海外客が相変わらず入ってきていない、という状況が続いています。まぁ、限られたパイの奪い合いしているようなものですからねぇ。

来月からは国によるGoToトラベルや、諸外国からの入国条件緩和も予定されているようなのでどうなることやら、と思って記録しておきます。

さて、今月のblogは

・ニューレザーコンテスト見てきた!

・新喜皮革で魚の革の話を聞いてきた

という内容となります。

例年通りニューレザーコンテストが開催された



今年も無事に開催されたニューレザーコンテスト。タンナーさんが自分たちの技術とセンスを注ぎ込んだ革を見せてくれます。
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タンナーさん向けのコンテストなため平日開催、かつ、1日のみの開催となるため見に行きづらいイベントではあります。
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今年も動画を撮影してきて、気になった革を紹介していますのでまたご覧ください。

新喜皮革で魚の革の話を聞いてきた

動画でも紹介していますが、新喜皮革さんの馬革が今年も出展されていました。先日も新喜皮革さんの魚革が新聞記事に載っていましたので、取材を申込みをしました。

今どんな魚の革作ってみたんですか?

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ーーー5年前に見たときはブラックバスと近大マグロ作られていましたよね?そこから色々増えたんですか?

「やっぱりあれから色々な話が来たよ。現在はブラックバスや近大マグロ以外にも鮭やブリ、鯛などもやったよ」


ーーーブラックバスとは違うの、やっぱり?どういう点が苦労したんですか?

「近大マグロを一番最初にやりましたから、あとは楽でしたね。

近大マグロって脂が多い。脂が残っているとなめし剤がきれいに入らないし、脂の匂いが残るんだよ。で、その脂抜くのが難しい。近大マグロは脂がものすごく多いから、苦労した。その後にやったブラックバスや鯛やブリはいろいろな難しさはあるけど、近代マグロの脂抜きよりかは楽だね」

ーーーじゃぁ近代マグロに比べてブリや鯛は楽なの?

「ブリや鯛、サーモンなどもそれぞれの難しさがある。馬とは違う難しさが魚、というものにはあるね。

脱毛、、、ならぬ、脱鱗をしなくちゃいけない。業者によっては鱗を剥がした状態で皮が入ってくることもあるが、それでも1枚1枚鱗が残っていないかチェックは必要。そもそもの原皮が薄いから、鱗を外す際も気を使う。

さらには革の鞣しで重要な乾燥工程。これも現状1枚1枚釘で板に打ち付けて乾燥させている。今の枚数ならいいけど、数百枚とか鞣す必要があるときは今のやり方では無理だろうなぁ。手が足りなくなるね。

魚の鞣しでは水温管理が肝心。
魚、という時点でちょっと高い温度になると皮が溶けてしまう。さらにサーモンなんかは寒い地域の魚。でもブリなんかは回遊魚だから寒い地域、暑い地域で採ったかによっても変わる。また、寒い地域で脂が載っていると今度は脂を抜くのも大変」


ーーー大変なことばっかりじゃないですか!! 新田社長は社長だけど、新喜皮革創業の会長さんから「こんなのやるな」とか言われなかったの?

「全く言われなかったよ。新喜皮革はコードバンで有名やけど、会長が好奇心があったんだよ。人がやっていないことをやってみたい、と。だから、そういう気質をでやってきている」


ーーー社長的には魚の皮を鞣して革にしてバンバン市場に売っていこう、と思うの?

「この革素材はお土産物屋で扱う素材じゃないと思っている。もちろん素材は素材でしかないから、これでかばんや財布、靴などを作って市場に出てもらいたいとは思う。ただ、そのときに『誰でも買えます!』じゃなくて、素材の価値を高めていきたい」


ーーーこの素材とSDGsに関してはどう思われます?

「追い風だと思う。日本は島国で魚をたくさん食べているのに、魚の皮を有効活用しきれていない。だからこそ、有効活用して日本国内のみならず海外にもアピールしたい。海外のブランドにもこの魚革を使ってもらいたいと思っています」


ーーーこの革を今後主流にしたいの?

「していきたいね。新喜皮革のマークは今現在は馬のマークだけど、後々にはその隣に魚が飛び跳ねているかもしれないよね」

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魚革の製造工程

ーーー製造工程って見てもいいのかな?

「ええよ。映したらだめなものはきちんというからいいよ」

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ーーーーこれ、試験タイコみたいなものじゃないですか。

「小さいからこのタイコくらいでまだ足りる。今後需要高まったら大きくしないと無理」

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ーーーこれが乾燥工程?

「そう。小さいから板に釘で貼り付けていく。さっきも言ったように従来の馬革と違い大きさが小さいからこそ、手作業の割合が多くなるんだよ。ネット張りのほうが効率はいいんだけど、そういう設備がない。」

ーーー東京だったら豚革作っているからあっちのほうが設備小さいんじゃない?

「設備が小さくても豚革の設備では魚は鞣せないよ。ズタボロになるな」

ーーーまぁ、そりゃそうか。

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(※上記は皮革大学の製造実習でムラキが実際に行ったシェービング体験の写真です)


「例えばシェービングという皮の裏側の肉面を取る作業だけど、本来は機械で行うよな。でも魚は小さいから機械にかけたらズタボロになる。で、そうなると昔ながらの方法で1枚1枚手でやっていくしかない。現状の枚数では手作業でできるけど、これが5倍10倍になったらそういう機械が必要になる。」


ーーー現状の生産枚数ならば手作業でいけるけど、将来的には不安ですねぇ

「でもこの革はもっと知ってもらいたいなぁ」

とのことでした。
10月7日(金)・8日(土)、は新喜皮革とペレテリアによる「レザーフェスティバル」が開催されます。また、新喜皮革ではYouTubeチャンネルも開設されました。

ムラキの今後予定

2022/09/29−10/01
横浜「素材博覧会 横浜」
「本日は革日和♪」革日和ブースにてフェニックスとlizedが出展していますが、ムラキ個人が身内不幸に付き木・金は留守となります。



2022/10/14-16
東京 「浅草エーラウンド」



2022/10/21-22 
大阪 「本日は革日和♪」


2022/10/23
大阪 「テストシューズ製作(実演)セミナー」
 《熱可塑性フレキシブル透明マテリアルを用いたテストシューズ製作》


プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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