欧米ブランドに「負けていないぞ!」

July 27, 2022

【村木るいさん連載】わからない、とわかってからがスタートだから革の勉強はどこでできるか、という話

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
今回は、わからない、とわかってからがスタートだから革の勉強はどこでできるか、という話。レザーを学ぶためのおすすめ講座を村木さんからご提案。ぜひ、ご覧ください。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

人気イベント「本日は革日和♪」および関連イベントが明日から東京で開催されます。このほか今後のスケジュールなどは下記のリンク先をチェックしてください。

  「本日は革日和♪」

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毎度です!「うだる暑さが続きます。でろり、と垂れそう」のムラキです。イベントが続いたり、勉強会が続いたりしていました。カレンダーを見返すと・・・

・レザーソムリエ初級大阪 講師お手伝い
・レザーソムリエ中級大阪 講師お手伝い
・キッズレザープログラム会議
・長野県でハンドメイドイベントお手伝い
・レザーソムリエ初級名古屋 講師お手伝い
・姫路の皮革大学受講
・「本日は革日和♪」宮城はコロナで中止

という1か月でした。忙しかったんだな、私。

さて。

「レザーソムリエのお手伝いをやっているくらいだから、ムラキさんは革にくわしいんですね!」と言われると、「うぅん・・・そう、かなぁ?」と首をひねります。だって、勉強すればするほど「わかっていない」「わからない」ことがわかりますから。

今回は「革素材を学びたい!」という人向けのblogです。レザーソムリエと皮革大学について解説していきます。

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レザーソムリエってなに?


レザーソムリエは日本革類卸売事業協同組合が実施している資格試験です。

皮革業界では、皮革及び革製品について正しい知識を持っていただき、皮革および革製品を愛用し、楽しみ、より多くの皆様に使っていただきたい、そんな想いから、皮革講座や皮革試験等を活用し、「レザーソムリエ」を育成することにいたしました。

革とは何か、皮革の種類や鞣しの方法、革の良さやお手入れ方法など幅広く学んでいただき、レザーライフを多くの皆様に楽しんでいただけたらと思います。

日本革類卸売事業協同組合/一般社団法人日本皮革産業連合会

初級・中級セミナー

初級レザーソムリエ | 皮革講座お申し込み

今後のスケジュールおよび予約状況はリンク先をご確認ください。


2022年度の中級(講座)は日程はすべて終了しました。

レザーソムリエ初級セミナーは無料でこういう内容

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講習は13時から16時。
内容は

・革の座学40分
・革の手入れ20分
・実際に革を触りながら実習18分×4回

となります。

実習18分×4回、とありますが、ここが私が手伝った箇所です。

18分×4回、という革の講義の秀逸さ

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受講生を4チームに分割。
「牛」「仕上げ」「小判モノ(豚、羊、ヤギなど)」「爬虫類」の4つのテーブルで実際に革を触りながら18分話して、移動。次の机の話を聞く、というローテーション方式です。

「これを受けたらソムリエ初級も大丈夫!」ということはありません。むしろテストに出ないような話もバンバンしているので真面目にテキストだけ見るよりも余分な情報が入っているかもしれませんね。

実際に革を触って手触りやハリ、コシの強さ、強度の違い、種や部位の違い、も実際に触ることができます。

上の写真ではフェイスガードでやっていますが、名古屋会場ではマスクで行いました。時間制限18分ありで4チーム分 話をするのはなにげにしんどいですね。1時間ペースで考えて喋るほうが楽といえば楽です。

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ソムリエ初級試験はいつやるの?どこでやるの?勉強は?

ソムリエのテストは初級は11月6日(日)に行われます。セミナーを受講していなくてもテストは可能ですし、公式テキストからでるのでセミナー受けていなくても受講可能です。合格率は7割超えているはずです。

中級は27,500円かかります。さらに参加資格もあります。ハードルあがるなぁ。


さらに時間も下記のとおりみっちりです。

皮革講座 牛、鞣し、仕上げ 60分
皮革講座 仕上げ工程 60分
皮革講座 皮革産業とSDGs 60分
皮革講座 エキゾチック 60分
皮革講座 ケア 手入れ 顔料染料実技 靴クリーム成分 革のPHについて 製品仕上げ
利き革テスト 30分

というもの。

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利き革テスト?

中級の講座ってもう講師の人たち決まっているから、私お手伝いいらないやん。何手伝えばいいんですかね?

「ムラキくん、利き革テスト、というのがあるんだよ。全部で仕上げ~種、革の動物種~種を2ds程度の大きさの革を触って判断してもらう、というもの」

・・・触って判断? 
無理やろ、そんなん。多分私も合格点取れないぞ、それ。

「合格点、というのがあるわけじゃないんだよ。ただ、中級ソムリエ試験本番の時に、この利き革で取った点数が本番試験に加点される」

重要やん!

「だから、利き革試験ででる革全部を会場の後ろに並べている。利き革テストまでにそれを触って、手先と目で学んでもらって利き革に挑んでもらいたいんだよ」

あぁ、それならなんとか点数取れるかなぁ。。でもそれも解説しないとムズいだろうなぁ

「そうだろ!大変だろ! だから、君を呼んだんだよ! 休憩時間の時に受講生たちに革を解説してくれ」

うわぁ、またムズいことを言うなぁ。

動物種はラムやキッド、人工皮革・PU、などがなかなかの難問です。利き革試験を実際に触った時、「こんなんしっかり勉強しないと無理やん!」と思わずいうレベルで難しいです。これだけの革が一堂に並ぶのはなかなか壮観、かつ、贅沢な話です。

ソムリエ中級試験はいつやるの? どこでやるの? 勉強は?

中級テキストが販売されています。初級は革素材や靴、鞄なども載っていましたが、中級はほんとに革素材、のみです。現状、革素材を勉強する上で手に入りやすいテキストだと思います。

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中級試験も11月6日(日)、全国のテストセンターで受講可能予定、だそうです。


中級に関してはかなりガチに革の勉強しないときついかなぁ、と思います。単なる暗記だけじゃなくて、応用問題も出る、と思います。

ムラキが会場で言っていたのは「わからないものはわからない、といって大丈夫」ということ

初級だろうが中級だろうが、私が会場で言っていることの本質は同じです。

「実際に触らないとわからない情報が、革には多すぎる。ネットが発達してもこの部分はカバーできない」
「革を勉強すればするほど、『これは~~』と断言するのは恐ろしい、と言うことがよくわかる」
「専門家になればなるほど、安易に断言できなくなる。だから、初級だろうが中級だろうがわからないことはわからない、と言って大丈夫!」

「私の買ったカバンは本革なのか合皮なのか、写真で判断してほしい」とか、「写真だけ見て手入れ方法を教えてほしい」というのは無理難題なわけです。

「お前は革屋なんだから革についてもっとくわしくなれよ!」と言われたとしても、革屋さんなんて「自分が売っている革のことしか知らない」というのが普通です。

八百屋だからって日本全国のオクラの品種を全部知っているわけないんです。鞄屋だからって全部の鞄屋が使っている資材や職人をわかるわけないんです。

「勉強し続けてもわからない、というなら、勉強する意味はあるのか?」

そりゃもちろんあります。
「わからない、という自覚を持ったからこそ、2回目のスタート地点に立てた」といえます。

レザーソムリエセミナーでは、初級だろうが中級だろうが実際の革を触って解説を聞ける、というのはものすごく価値があります。

ドラゴンクエストなりファイナルファンタジーでもウィザードリィなどのRPGと同じです。
レベル1からレベル3にレベルアップするのは15分もあれば可能です。ですが、レベル30から31にあがるには1時間以上時間がかかります。

でも、専門家に聞いたり、専門家のセミナーにお金を払えば、その時間を短縮することは可能です。たとえ数万円かけて専門家に聞いても、レベルアップしないこともありえます。2万円の本を買っても、学べることは1つしかないかもしれません。

「2万円払ったのにレベルアップできなかった!だから無駄金だった!」
違います。それは、あなたが中級レベルになった、ということです。2万円ごときではレベルアップできなかったってことです。これから先にレベルアップするためには時間とお金と手間がどんどんかかります。

それでも、死ぬまで、人は学び続けるしかないわけです。

じゃぁ、革の勉強したい、という人向けの話をさらに続けます。

「かわとはきもの」200号記念おめでとうございます!この本がものすごい!


東京都立皮革技術センターが年4回発行している「かわとはきもの」ですが、先日、200号が刊行されました。200号!!!!! ものすごい号数です。

この本は皮革技術センターが出しているだけあって研究発表などが中心なのですが、靴業界の動向やデザイナー話なども載っていておもしろいです。

「もっと勉強したい」「その時代時代の動向を見たい」という人にはおすすめです。


現在連載中の「かわのはなし」「クレーム事例から学ぶ革の特性」がものすごい
「かわのはなし」は鞣しの話をわかりやすく噛み砕いて書いてくれています。
「クレーム事例から学ぶ革の特性」は、皮革技術協会の方が数々の革製品のクレーム事例を解説してくれています。クレーム事例とその原因、というのは成功事例よりも格段に価値があるものですので、ぜひ読んでもらいたいです。


なんと過去80号分 20年分がPDFで公開されています

こちら、恐ろしいことに過去20年分から最新号まで全部がPDFで公開されています。ものすごいな、皮革技術センター。前述ふたつの連載を無料で読めるのはほんとにありがたいです。
過去のこちらのblogでも解説していた皮革大学が今年も開講されました。後述の姫路市の皮革工業技術支援センターで、兵庫県中小企業支援金の助成金を受けて毎年開講されています。ありがとう! 兵庫県様!

私個人はこの座学講習に2016年、2020年、と参加して今年で3回目です。
1回目より2回目、2回目よりも3回目のほうがよりおもしろく感じられます。「聞いてもわからないな」というのはまだいいんです。怖いのは「聞いてわかったかな」というものは怖いですね。今回3回目ですが、過去の資料を並べて聴くとよりわかったかな、という気はします。まぁもう4回、5回と聞いたら、さらに違うのかもしれませんね。

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皮革大学 受講者の属性は?

姫路の試験所でやっているだけあって、基本はタンナーさんで働いている人向けの内容となります。
今はコロナ禍のため、鞣し工程のみで5日間ですが、私が最初に受講したときは全12回ありましたね。

1、2回目はまだ革の鞣しの歴史や定義付けの話ですが、3回目あたりから徐々に「電解質が」「アニオンがカチオンが・・・」「マグネシウムが・・・化学式が・・・」などがバンバンと飛び交います。

鞄・靴メーカーの人が聞いても辛いだろうな、とは思います。

「タンナーさん以外どういう人が受講しているの?」と過去に聞いたところ、「鞣しを自分の自治体でやりたい、という地方の公務員さんが聞きに来たこともあるよ。その人は実際に法的問題もクリアして現在鞣しもやっている」と。法的な問題もさることながら、排水などの問題も関わってきます。鞣しは技術だけではなく、環境にどのように影響を与えるか、も踏まえて考えなきゃいけません。

皮革製造実習ってどんなので、いつやるの?

皮革大学基礎部門は革の鞣しを座学で学びます。で、秋口に5日間かけて行うのが皮革製造実習です。こちらは5日間で革の鞣し工程を実習で行います。これを習ったからと言って素人でも鞣しができるわけではありません。ですが、「鞣しの工程」を味わうことは可能です。無料ですが、皮革業従事者、など条件が存在しますので、くわしくはお問い合わせください。


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革素材の勉強は文字やwebだけだと難しい

どうしてもこのインターネット、ってやつは味覚嗅覚触覚を伝えることができません。革の勉強をする上で実際に触れるかどうかが非常に重要です。

私が開催している「人に話したくなる革の話:初級編」では、革を実際に触ってもらって革を学んでもらう、というものです。定期的に開催していますので、興味ある方はお越しください。

今後のムラキの予定

8/21(日) レザーソムリエ大阪会場
9/1(木)-9/3(土) 素材博覧会小倉...初心者向け講習会あります。
9/29(木)-10/1(土) 素材博覧会横浜...初心者向け講習会あります。


プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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