欧米ブランドに「負けていないぞ!」

2023年11月 8日 の記事

カテゴリー: ジャパンレザー トピック&イベント まとめ

11月03日「いいレザーの日」に続いて、11月7日「にかわの日」、11月12日「コラーゲンペプチドの日」と、さまざまな記念日がやってきます。皮革産業関連の記念日を通して、食肉の副産物としてサステナビリティが注目のジャパンレザーを知るきっかけになるよう、日々情報発信してまいります。
今週もレポートを含め、イベントや最新トピックをお伝えいたします。参考にしていただけますように。


【コンテスト情報】「ジャパンレザーアワード」

今年で16年目を迎えた国内最大の革製品コンテスト「ジャパンレザーアワード2023」。公式サイトで10月26日(木)、受賞作品が発表されました。受賞作品は、今年より新設された選定作品から特に優れた10作品が選出。さらにこの受賞作品からグランプリが決定し、11月03日(金・祝)
「いいレザーの日」に「ジャパンレザーアワード」公式サイトで発表されました。

一般社団法人日本皮革産業連合会(JLIA)では、毎年、「ジャパンレザーアワード」を開催することにより、国産のなめし革等を使用した作品を全国から募集し、審査により優れた作品を選出することで、新たな"発想・表現"のできる人材の発掘と育成に取り組んでいます。

9月30日(土)に審査会を開催。 2017年より同アワード審査員長を務める長濱雅彦(東京藝術大学美術学部教授)さんをはじめ、デザイン界、ファッション界の第一線で活躍する審査員により、厳正に審査されました。

「ジャパンレザーアワード2023」グランプリは、オベリスク 石橋善彦さんの「パンチングレザー 刺し子ライダース」が受賞。
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パンチング加工は革に通気性を持たせるための加工ですが、その規則正しい穴を利用することで、刺し子・スタッズワーク等のハンドクラフトを誰でも綺麗に仕上げることができますが、レザージャケットに転用しています。

袖のヒジ下・二の腕後ろのファスナーは、刺し子の糸が切れた際にファスナーから手を入れて刺し子を直すために配されました。初めから修理を前提とした作りになっていて、より長く愛着を持って着用できるように考えられているのもいいですよね。

続きまして受賞作品は・・・
    
フットウェア部門 ベストプロダクト賞
「擬態」西野靴店  西野裕二さん
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他にはないオリジナルのレザーを使用するため、姫路レザーの白ヌメ革を木目調に染色。脱ぎ履きのしやすいスリッポンで幅広い世代の方が履けるようにデザイン。ソールは本物の木に近づけるため、ヒドゥンチャネル製法で出し縫いの糸を隠し、コバは樹皮をイメージしてランダムにカット。存在感がありながらも、普段の着こなしにもマッチするような一足ですね。

バッグ部門 ベストプロダクト賞
「トートバッグ」&6  平田史明さん
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マチの形が特徴的。マチを捻って固定し、正面から見ても綺麗なシルエットになるようにデザイン。正面側に折られたマチのホックを外せば大容量で使うこともできます。国産プルアップレザーの中でも特に艶が美しい革を使っています。

マチの複雑な曲面に、プルアップレザー特有の透明感のある艶が綺麗に出ているところが作者も気に入っているポイント。光の加減や見る角度によっていろいろな表情に。マチの一部をつまんだり、ねじったりすることで個性を表現。遊び心のあるバッグに仕上げています。
   
ウェア&グッズ部門 ベストプロダクト賞
「ジビエ鹿革半纏 (見立文覚宗三郎滝行図 )」
chelsea leather art work  北崎厚志さん
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刺し子半纏などに見られる裏に絵付けを施した半纏を、革に染色で表現してみたいとの作者の思いから、広島のジビエの鹿革で制作。縫製は総手縫い。背中の紋は革賽九(革細工)の語呂合わせで、裏側は講談や落語にある名人の苦心談、「宗珉の滝(そうみんのたき)」を題材に描いたそうです。

ジビエ革のワイルドなニュアンスがかつて、火消しが着用していた革半纏の勇壮なイメージとマッチ。伝統的なアイテム、技法ですが、農林業への被害軽減を目的に有害捕獲された個体を利活用した革を用いることでアップデート。サステナブルなものづくりに昇華されました。

フットウェア部門 フューチャーデザイン賞
「cocoon」Takivi Leatherscocoon  青木健治さん
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足全体を革の袋で包み込むようにつくられる古来のモカシンを現代風に再構築。アッパーを上部、下部のふたつに分け、それを革紐により編み上げることでアッパー全体を袋状に仕上げ、インディアンモカシン本来の柔らかさを表現。ブラックラピド製法を採用することにより、しなやかさを維持しつつ、安定感のある歩行が可能となっています。

ウェッジ部に軽量なコルクを使い、スニーカー並の軽さを追求。革靴に興味のなかった新たな層にも訴求。若い世代はもちろん、既存のケミカルシューズ、ウォーキングシューズでは物足りない、おしゃれなアクティブシニア層にもぴったり。

こうした、使用シーンを想像しやすいことが、想定ユーザー像の明確化につながり、ユーザーにとっては、ものを選ぶ際の参考になりますね。そんな「使う人提案」を感じさせるプロダクトに今の気分を感じました。



フットウェア部門 フューチャーデザイン賞
REshuse16
[1998&2004 LEATHER x KNIT UPPER x vibram LB078 Canter]
紀井長さん
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本作は、25年前の革+ニット素材のシューズ+リペア用のソールにて制作。黒の革は1998年製、ベージュの革は2004年製だそうです。

「ジャパンレザーアワード」史上初! リメイク作品がついに部門賞を受賞。作者の紀井さんは、専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジ シューズコースの講師を務めるかたわら、ライフワークとして、リメイクシューズを数多く手がけ、2023 年8月には個展を開催し話題となりました。リメイクはもちろん、半世紀前につくられた革を使用し、レザーのサステナビリティを提示しているのも見事です。

バッグ部門 フューチャーデザイン賞
「have roots」OFF coast  多田智美さん
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メイン素材のレザーに加え、昭和の古新聞を使用。2022年に作者が旅をした際、「このリュックを背負い、自分のルーツを辿る旅に出かけよう、その旅はまたルーツが生まれるだろう」との想いがあり、人間のルーツをリュックという、ひとつの形にしたのだそうです。

経年変化を楽しむことができるレザーと歴史を振り返ることができる古新聞との組合せが素敵ですね。

フリー部門 フューチャーデザイン賞
「Memory of PAM」野沢浩道さん
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他界したPAM(パグ)をモチーフに作成したレザードール(オルゴール)。"うちの子"の個性の再現がドール作成の大きな目標とし、木工彫刻の経験がないつくり手が革でどこまでできるのか可能性を探ったそうです。切って貼って削っての一連の工程が、木やフェルトよりレザーは容易。革は繰り返し削り出すことができ、フェルトほどの難しさもなかったそうです。

「ジャパンレザーアワード2022」グランプリ受賞に続き、今年も部門賞受賞となった野沢さん。「ジャパンレザーvoice」出演時、次回は「うちの子ドール」を構想中と語っておられましたが、有言実行。革とは思えない仕上がりに驚きます。

学生部門 最優秀賞
「CORE」上田安子服飾専門学校  宮代結菜さん
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人間・骨をモチーフに人とのつながりや、支えを表現。人とのつながりは握手や協力など「手」からだと考え、大胆にバッグの顔となる表面に「手」を配しています。ショルダー部分では「背骨」を表現。背骨は人体でいう身体の支えを果たしています。背骨がないと身体を支えられない、バッグのショルダーと似ていると思い、背骨をショルダーで表現しています。

心臓と思わしきパーツがチラっと見えたり、人体にこだわりつつ、ご自身のテイストでまとめていて素敵です。人体模型のような怖さがなく、骨がモチーフとは気づかない、ポップなニュアンスもいいですね。

アーティスティックデザイン賞
「ミライツクルクツ」工藤サトミさん
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幼い頃の体験や経験は人の土台をつくる・・・こどもたちがデザインした靴を実際に制作することで成功体験や自己肯定感を高めることができると考えた工藤さん。こどもたちのデザイン画、自由な発想を基にいままでにない靴をつくるという新しい試みです。武蔵村山の「ものづくりカフェWORK+WORK」、フリースクール「まなクロBASE」、工藤さんのご友人の協力でデザイン画を集めました。デザイン画のイメージを壊さないよう、安全性などを考慮しつつ作品を仕上げています。

工藤さんは、専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジを2023年卒業。その卒業制作としてつくった作品です。卒展で拝見した際、エネルギーが詰まったパンチ力のある存在感に圧倒されました。

これらのグランプリおよび受賞作品の展示イベントが大阪で開催されます。体験型店舗「b8ta(ベータ)Osaka ‒ Hankyu Umeda」にて2023年12月1日(金)から2024年1月4日(木)まで行われます。くわしくは改めてお知らせいたします。



【メディア情報】「ジャパンレザーVOICEダイアリー」

10月18日(水)に配信された「TIME&EFFORT ジャパンレザーVOICE」(#レザボイ)の放送後記、「ジャパンレザーVOICEダイアリー」第16回が公開スタート。


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第一特集「キーパーソンインタビュー」のゲストはwaji 代表 菅野裕樹さん。ものづくり集団 wajiは、これまでのバッグ業界、革小物づくりの概念を更新するような新しい取り組みを次々と発表し、話題となっています。

第二特集「最新トピック紹介」は「レザーの季節・秋のイベント特集」。革づくり・ものづくり産地などで行われるイベントをまとめました。まだ間に合うイベントもありますので、ぜひ参考になさってください。

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次回放送は11月15日(水) 16:00からです。どうぞお楽しみに。



【記念日情報】「にかわの日」

「にかわの日」は、一般社団法人日本皮革産業連合会(JLIA)の会員団体、日本ゼラチン・コラーゲン工業組合により制定。1963年11月7日に大阪会館において日本にかわ・ゼラチン工業組合の創立総会が開催され、新たな一歩を踏みだしたことを記念し制定されました。

ニカワ(にかわ/膠)とは天然物を原料とする接着剤のこと。
食用のゼラチンよりも精製度の低いゼラチンをニカワ(膠)と呼びます。ニカワ(膠)は天然素材の接着剤として、化学接着剤が発明されるまで様々な分野で広く利用されていました。その他にも、写真用フィルムの乳剤、墨、石鹸原料、潤滑油など、私たちの暮らしを支える様々な分野で活躍しています。最近では文化財の修復に欠かせない天然の接着剤として、改めて注目を集めています。
(日本ゼラチン・コラーゲン工業組合 公式ウェブサイトより)

そのサステナビリティが再評価されるなか、「にかわの日」をきっかけに注目してみてはいかがでしょうか?



【イベント情報】「台東区産業フェア2023」

「つながり」と「学び合い」をテーマにみんなでつくる見本市「台東区産業フェア2023」が11月9日(木)~10日(金)、東京都立産業貿易センター台東館 7Fで開催されます。ものづくりの街として知られる東京都台東区の事業者の製品、サービスの魅力を実際に見て、触れて、つながることができるきっかけの2日間です。

フェア会期中はもちろん、出展者同士がつながり、学び合う機会として「台東区産業ゼミ」を全5回開催しており、出展者自身がどのような展示会にしていきたいか考え、取り組み、台東区の産業を盛り上げる機会となっています。

皮革産業からは株式会社久保柳商店が出展。
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(写真は2023年6月開催「したまち小粋マーケット」で撮影させていただきました)

革の新たな可能性を求めて立ち上げたレザーブランド「te saho( テサホー)」を展示。江戸、明治と皮革産業が発展してきた「革の郷」台東区浅草を拠点に創業80年を超える株式会社久保柳商店。日本各地の職人の「手技」を纏うレザープロダクトにご注目を。



【イベント情報】「ひょうご皮革総合フェア&たつの市皮革まつり」

兵庫県・兵庫県皮革産業協同組合連合会・たつの市・たつの市皮革産業総合推進協議会主催「ひょうご皮革総合フェア&たつの市皮革まつり」が11月19日(土)~20日(日)、たつの市総合文化会館赤とんぼ文化ホール、たつの市青少年館及び屋外特設会場で行われます。


地域に密着した歴史と伝統を誇る地場産業「皮革産業」が、地域住民とのふれあいを通して、全国一の生産高を誇る天然皮革産地のPRを行い、産地の活性化をめざし高付加価値製品の開発を推進。さらに需要開拓を行うことを目的に開催されます。
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たつのを拠点とするタンナー、皮革関連の事業者の皆さまが出展し、ファクトリー直送のレザーや、つくり手、クリエイターの皆さまが手がけた革製品が展示販売。会場では革のつくり手たちが自信作を競う恒例のコンテスト「ひょうごニューレザーコンテスト」の入賞作品のお披露目や国内最大の革製品コンテスト「ジャパンレザーアワード」の過去受賞作品を展示。皮革のデザイン作品展示(姫路皮革製品推進協議会、NPO法人TATSUNO LEATER、神戸医療福祉専門学校、上田安子服飾専門学校、エスペランサ靴学院ほか)も必見です!


当ブログ連載でお馴染みの村木るいさんによる「本日は革日和♪」恒例のバスツアーも。10月最終週の投稿をご覧ください。


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プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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