2023年11月29日 の記事
November 29, 2023
【村木るいさん連載】関西のイベント報告と、「革がサステナブル」であることの情報発信の現状、という話
カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」
月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。関西のイベント報告と、「革がサステナブル」という意見表明、情報発信はいろいろなところでいわれるようになってきた、という話。
11月は関西の各地でレザー関連イベントが次々と開催。村木さんが現地をレポートしてくれました。また、「革がサステナブル」であることについての発信がいろいろなところで行われていることについて、感じたことをリアルにまとめてくれました。ぜひ、ご覧ください。
* * *
通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。
当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。
今後のスケジュールなどは下のリンク先をチェックしてください。
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毎度です!
「この数年でほんとに5年か10年分、強制的に時代が動いている感があるなぁ」と思うムラキです!!
怒涛のイベントラッシュが終わり、残るは営業出張2つと東京での「キッズレザープログラム」の会議となりました。あとは2024年1月の「本日は革日和♪」(大阪)の準備や、3月や7月の準備です。
今回は、
・関西の革のイベント報告
・いろいろな場所で見た「革って持続可能な素材です」という意見表明や動き
を紹介していきましょう。
先月の更新分でも書いたようにイベントがほんとに多かったですね、今年は。
11月2日(木)~6日(月)「姫路城皮革フェスティバル2023」
11月2日は平日でしたが、3日(金・祝)から6日の月曜日まで5日間続くこのイベント。陶器市なども開催されている大きめのイベントです。姫路城が見える大手前公園で行われました。
お世辞抜きにお客さん多めですし、この「姫路城皮革フェスティバル2023」目当てで来られたお客様も多めなように思えます。外国人観光客さんも多かったですね。
・11月3日(金・祝)~4日(土)新喜皮革「2023年レザーフェスティバル」(兵庫・姫路)
こちらは11月2日の準備している真っ最中にお邪魔しました。
11月10日(金)「Same-ol' トークセッション~革の世界でつなる人たち~」
皮革専門卸 ミヤツグ代表・宮前健次郎氏が、名門タンナー、地元大阪の「Same-ol'」ブランドを代表する篠田英志氏とともに、それぞれの背景や歴史、自分たちの仕事にかける情熱などについてのトークセッションが阪急うめだ本店で開催されました。
宮前健次郎氏インスタ
Same-ol' HP
Same-ol' オンラインストア
海外のタンナー・日本の革屋・大阪のSame-ol'の3社合同のトークイベント。
ミヤツグさんは革屋の立場。タンナーさんは海外での立ち位置から。そして大阪の鞄メーカー数社の共同ブランドSame-ol'の立場。それぞれから革製造や革の特徴、鞄の特徴の話などをしていました。
「Same-ol'」は参加者向けにストラップをつくる体験も行いました。
阪急うめだ本店 8Fにて常設展示を行っており、11月21日までイベントスペースでもポップアップを出展。また、阪急との共同のイベント体験製品も販売されています。
・11月18日(土)・19日(日)「ひょうご皮革総合フェア」「たつの市皮革まつり」(兵庫・たつの)
こちらは例年どおりバスツアーを組んで行ってきました。
11月18日(土)「タンナー見学バスツアー」(「本日は革日和♪」)
例年どおりニューレザーコンテストの動画を作成しています。
皮革まつり会場後には、例年どおり昭南皮革さんとオールマイティーさんを見学。
昭南皮革
オールマイティー
以前も当ブログでご紹介しました。
今回は猟師さんも来ていたので、「野山を駆け巡る鹿の原皮はこんな状態ののものもある」という原皮も見せてもらえました。
ヒライコーポレーション
今回特別に姫路・高木のヒライコーポレーションさんにもお邪魔しました。
ヒライコーポレーションさんでは、「当社の革はセッターで伸ばす工程を少なくしているのでシボありの革でもギュッと締まっています。そのため漉き作業などをするとやりやすい、と好評です」など説明をしていただきました。
サステナビリティについて発信する皮革業界
日本だけではなく海外タンナーも強く「サステナビリティ」を主張
前述の「Same-ol' トークセッション~革の世界でつなる人たち~」ではイタリアのタンナーが登壇していたのですが、「タンナーは食肉産業の副産物である皮を使っている」という趣旨の発言をしていました。欧州でもそんな主張を強くするんだな、と驚いたものです。
一般社団法人日本タンナーズ協会によるポスターやフライヤー
一般社団法人日本タンナーズ協会の事業である「日本革市」公式ウェブサイトをはじめ、イベントおよびショールーム型展示会会場において「本革は畜産副産物を有効活用したエコでサステナブルな天然素材」であることを発信しています。
先日はフライヤーを分けていただき、各種イベントでも配布させてもらいました。その節はありがとうございました。
革のサステナビリティを発信していくプロジェクト、Thinking Leather Action(TLA)
皮革・革製品などのサステナビリティを発信していくプロジェクト、Thinking Leather Action(TLA)事業にて、日経新聞をはじめとした新聞に1ページの意見広告を掲載しています。
公式ウェブサイトがオープンしました。皮革・革製品などのサステナビリティについてわかりやすく解説していますので、ぜひ、ご覧ください。
ニューレザーコンテストで環境負荷が低い製法の新しい革を出展
上記動画で紹介している嶋田悟製革所さん(目安タイム 19:17~)は新しい製法で環境負荷の低い革を開発しました。
その新しい製法による低環境負荷レザーは、今年度の「ひょうごニューレザーコンテスト」エコレザー部門を受賞。新しい製法については、兵庫県立工業技術センター皮革工業技術支援センター発行「兵皮支ニュース」(2023年No45)で紹介されています。興味ある方は兵庫県立工業技術センター皮革工業技術支援センターに連絡してみてください。
海外の薬剤を輸入し、実験的に鞣したのだそうです。この技法を採用すると次のメリットがあります
・30%の製造コスト削減
・硫酸を使用しないため作業者への劇物を扱うリスクを避けることができます
・ピックル工程を省くため通常の処方より1日以上工程を短縮できます
これらはコスト削減ではありますが、同時に環境負荷を下げていることにもつながっています。
皮革業界は日進月歩で新しい技術ができています。CO2にせよ、水質汚染にせよ、環境に負荷をかけない技法や薬品などが開発され、それらを採用しているタンナーは存在し、それらのタンナーがつくった革を使うメーカーも出てきています。
皮革のサステナビリティ、環境負荷の低さを、もっと発信するべき時代
このような活動は、「良いことをしていたら黙っていても知ってもらえる」というものではありません。逆にきちんと発信しておかないと、「主張している方に有利なように法律を変えます」となるのが今の時代です。
それどころか、きちんと反論をしておかないと、マスコミやSNSなどでのバッシングもありえます。
良い品はこういう点が良いんです、という説明はとても大事
タンナー見学バスツアーや「ひょうごニューレザーコンテスト」の紹介などをもう5年以上やっています。「ひょうごニューレザーコンテスト」の動画作成は4年目くらいかな?これらは「直接タンナーを見ることで革作りの現場や、タンナー社長の思いを知ってもらいたい」「日本のタンナーもこんな面白いことやすごいことをやっている」というのを見てもらいたいからです。「良い品なんだよ、これは」と知ってもらいたいからですね。
説明するために、SNSしましょう! 動画やりましょう! という話ではありません。
デザインが良い。革の手触りが良い。縫製技術が良い。体に良い。さまざまな「良い」点があると思いますが、それらは「なぜ」良いのかをきちんと消費者に伝える努力をしないと、今の時代はエンドユーザーも企業も購入しません。それくらい「伝える」という行為が重要になってきています。
SNSや動画が重要!というわけではなく、「ターゲットとするお客が見ている媒体は全部やるしかない」のが実情です。新聞やラジオ、テレビもそうです。ネット媒体もそうです。紙媒体であるフライヤー(チラシ)などもそうです。何よりもリアルイベントや店舗で「実際に触ってもらう」ことが重要なわけです。
「触らないとわからない」これが革という素材の強みと弱み
「触らないとわからない」というのは、今の時代において凄い強みです。どれだけネットが発達しても触覚や嗅覚、というのは伝えられません。だからこそ、売りづらい素材ではあります。個人的には「ネットで売りづらいからこそ、競合相手が参入しづらい市場」だとは思っています。
ムラキの直近のイベント
●「東京レザーフェア」12月7日(木)・8日(金)
私は今回全く上京しないのですが、上に書いたニューレザーコンテストの受賞作が展示されています。
●「革とものづくり~令和時代の外注との付き合い方」大阪府皮革業界総合研修 12月13日(水)~
毎年開催されている大阪府皮革業界総合研修。TLAの座長 川北氏の解説や、クレーム事例集を執筆中の稲次氏によるセミナーなどが開催されます。例年どおりムラキがピエロになってインタビューセミナーも行います。
●「本日は革日和♪ in 大阪」1月19日(金)~20日(土)
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プロフィール
鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター
東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。
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