December 27, 2023
【村木るいさん連載】革とイベントとインバウンドの話
カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」
月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
今回は、革とイベントとインバウンドの話。
新型コロナウイルス感染症の5類移行後初の年末年始を迎えるなか、ジャパンレザーを取り巻く現状とは?
村木さんのリアルな視点と肌感覚でとらえたレポートをお届け。2023年の締めくくりに相応しい内容です。ぜひ、ご覧ください。
* * *
通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。
当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。
今後のスケジュールなどは下のリンク先をチェックしてください。
* * *
毎度です!「1、3、5月の革日和は手配を進めていて、7月もどうしようかなぁ」ムラキです。
個人的にはイベントやるよりも本読んで調べ物まとめたりするほうが楽しいんですけどね。
さて、2023年も今月で終わりです。今回は次のような話をしていきます。
・阪急百貨店のジャパンレザーアワード展示を見てきた(1月4日まで)
・チャットAiはどう使っているか
・訪日外国人客の現状とそれに対して何をしておくべきか
・革とリアルの価値
オチとしては「インバウンド客はまだ本番じゃないから準備をしておこう、1日でも早く」「触らないとわからない、というのはデメリットじゃなくてメリット」です。
「ジャパンレザーアワード2023」受賞作品の展示(大阪・梅田)を見てきた
阪急うめだ本店 8階 b8ta Osakaにて、「ジャパンレザーアワード2023」受賞作品の展示が開催中です。グランプリ受賞作品や各部門受賞作品を実際に手に触れて見ることが可能です。実際に見て触ることで手触りや質感、重さや軽さなども感じることができます。見られる方はぜひ行ってみてください。
会場
b8ta Osaka(阪急うめだ本店 8階)
阪急「大阪梅田」駅から徒歩約3分
JR「大阪」駅から徒歩約4分
ジャパンレザーアワード、今年の受賞作で面白いな、と思ったのは
あくまでムラキ個人の観点です。良い、とか、悪い、とかじゃなくて、「面白いな」と思った点を載せておきます。どの作品も実際に触らないと面白さがわかりづらいのでぜひ触ってみてください。
グランプリ
パンチングレザー 刺し子ライダース
刺し子は東北地方に伝わる技法として知られています。刺繍の一形態ではあり、「ジャパンレザーアワード」歴代の部門賞受賞作品、応募作品でも取り入れている作品もあるのですが、革ジャンでここまでやった人は珍しいですし、パンチング加工のレザーを利用しているところもいいですね。ぜひ実際に手にとってもらいたい作品です。
バッグ部門 ベストプロダクト賞
トートバッグ
こちらは応募作品情報詳細でも触れているように、マチの特徴的な形状と革全体の艶やかさが非常に色っぽいバッグになっています。こちらも写真では伝わりづらい革の良さが出ていますね。
フットウェア部門 ベストプロダクト賞
擬態
こちらの靴は木目調に染色を施しており、見た目が木材のように見えます。ですので阪急展示でも小さな革の破片も一緒に展示しています。見たお客さんが「これは革なんだ」と知ってもらうためですね。
ウェア&グッズ部門 ベストプロダクト賞
ジビエ鹿革半纏 (見立文覚宗三郎滝行図)
ジビエの鹿革は何種類か目にしているのですが、シボがありここまでモッチリとした感触があるものは珍しいですね。手触りもよく、「あれ?これどうやって縫ったんだろ」と縫製も面白い作品でした。
名古屋のクリエイターズマーケットへ
名古屋で行われたクリエイターズマーケットに、営業をかねて革関係のブース巡りをしていました。差し入れ(お菓子詰め合わせ)を50袋用意したのですが足りませんでしたね。これは革関係の出展者がここだけで50以上も参加していた、ということです。
会場で驚いたことにブックオフが企業ブースに出展していました。「ブックオフがなんで手作り販売イベントに!?」と驚いて見てみると、和服をハンドメイドの材料として使ってくれ、というアピールでした。すごいことするなぁ。
・ブックオフは、同イベントに関連するような企業ではないのに、グループ企業の告知をメインに出展
・和服をリメイクに活用できる素材であることをアピール
・イベント会場で販売するのではなく、ブックオフ(同社リユース&リサイクルをしているハードオフ業態)に誘導するためのフライヤーを積極的に配布
・和服をリメイクに活用できる素材であることをアピール
・イベント会場で販売するのではなく、ブックオフ(同社リユース&リサイクルをしているハードオフ業態)に誘導するためのフライヤーを積極的に配布
コロナ禍を起点とした断捨離ブームで、和服を手放すユーザーが増え、買い取ったものの、販売面で苦戦しているのか、在庫が増え過ぎてしまったのか・・・需要と供給のバランスが悪いのでしょう。しかし、リメイク用の素材としてアピールするとは慧眼! これら含めて「すごいことするな」という感心しました。
チャットAiその後:ネタ出しやアイディアの壁打ち相手には最適ですね。
今年2月に書いたチャットAi。その後も使っています。
ただ、以前も書いていますが、「事実確認の場合は必ず裏付け調査必須」「ネタを出すときの壁打ちに使う」「ネーミングやブログのタイトルを20個出して」などで使っています。
事実確認はホント~~~~~~~~~に信頼に欠けますね。絶対に裏付け調査しないと不安で仕方ないです。
今回はこのように使いました。
ここからは日本政府観光局のウェブサイトを調べ始めます。
インバウンド客はコロナ禍前に比べてどうなったか?
上のリンク先は、日本政府観光局(JNTO) が提供してくれているサイトです。
日本を訪れる外国人旅行者の数はどのくらい?
外国人旅行者が訪れるのは日本のどの地域?
外国人旅行者は日本で何を買っている?
海外を訪れる日本人旅行者の数はどのくらい?
などがわかります。
数字を羅列するだけでなく、定期的に情報をまとめてプレリリースで発行してくれています。
これをどう活用するかは使い手次第なのですが、見ているといろいろわかって面白いです。
・関西圏はコロナ禍前ほど人が増えていない=中国人観光客がまだ戻っていない
・現状の訪日外客数を見ると韓国>台湾>中国>香港>タイなどの順位
・日本の地域によってコロナ禍前と後で訪日数が全然違う
インバウンドのために何をやっておけば良いのか
ここらへんはいろいろあるんですが、とりあえずは「相手の言語に合わせたSNS(今ならInstagramかなぁ)を用意しておく」のは最低限だと思います。SNSではバズり、とか、いいね!数を稼ぐ必要はありません。数を稼ぎはじめるのは楽な行為です。それよりも「連絡先手段としてSNSアカウントを開設しておく」のが重要なわけです。
メール、という手段はすでに伝達手段として非常に問題があります。スパムメール、迷惑メールが山程来ますので重要メールが埋もれてしまっています。
SNSは連絡手段として重要です。「どのSNSをやっておけばいいの?」と言われたら「ターゲットとしているユーザーが使っているSNSは全部やるしかない」です。
革とリアルの価値
今回は・・・
・「ジャパンレザーレザーアワード2023」受賞作品の展示を見てきた
・「ジャパンレザーレザーアワード2023」受賞作品のここが面白い!という解説
・名古屋のイベントを見てきた
・チャットAiをこう使っている
・インバウンドの現状とインバウンドの動向の調べ方
・インバウンドをターゲットにするならSNSはやっておいたほうがいい
というのが各項目です。全部バラバラに見えますので、読んでいて気持ち悪かっただろうな、と思います。
これらは一応、全部結びついているつもり、です。
・革という素材は実際に触らないとやはり面白さは伝わらない
・ネットというものがどれだけ進歩しても、この「手触り」「質感」「ツヤと艶やかさ」「匂い」「コシの強さ」etcetcなどは伝えきれない
・でも、置いておけば売れる!良いものを作れば売れる!という時代でもない
・だからこそ、SNSなりで消費者や受け手に興味をもってもらい、リアルイベントで実際に手に取ってもらうのが重要
・チャットAiにせよイベントにせよSNSにせよ、単なる手段でしかない。なんのためにその「手段」を使うか。
<着物をハンドメイドの材料として売り出し、そのためにイベントに出る、という判断はほんとにすごい。
「触らなきゃ良さがわからない革製品」という品は、非常に今の時代価値を伝えづらいものかもしれません。
だからこそ、その価値を伝えるためにありとあらゆる手段を使う。イベントにせよチャットAiにせよSNSにせよ、「伝えるための手段」です。
見て、聞いて、情報を摂取し、触ることで過去の情報を自分の中で統合させる。
「イベントに出て宣伝する」じゃなくて、「宣伝をしてイベントに来てもらい、触ることで購入」してもらう。
「触らないとわからない」という特徴は、「素材としての弱さ」じゃなくて「素材の強さ」という付加価値です。
今後のムラキの予定
・1月19日(金)~20日(土) 「本日は革日和♪」(大阪)
・2月13日(火) 皮革業界総合研修
革とものづくり~令和時代の外注との付き合い方、というタイトルの研修のサポートをしています。
・3月 「本日は革日和♪」(名古屋)予定
・5月 「本日は革日和♪」(東京)予定
今年も一年ありがとうございました! 来年も革や技術やビジネス、歴史やネット技術などを食べあさりたいと思いますわ。
プロフィール
鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター
東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。
最近のブログ記事
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