June 13, 2018
「第98回 東京レザーフェア」レポート (3)
カテゴリー: トレンド
「第98回 東京レザーフェア」レポート第3弾は、会場で見かけた新しい取り組みをピックアップしてみました。
「どういう人が使う革か」という視点の新しい革づくり
実験的なプロダクトがユーザーを笑顔に
創業107年を迎える株式会社 山陽が、100種類のヌメ革を一枚から購入できる「100 BASIC」に続き、クリエイティブエージェンシー POOL inc,とともに革のものづくりを再構築するプロジェクト「WHOSE LEATHER」をキックオフ。
第1弾として、大手文具メーカー コクヨ直営ライフスタイルショップ & カフェ<THINK OF THINGS>とコラボレートしました。東京・原宿の同店で期間限定ショップインショップ(5月10日~22日)をオープンし話題に。<THINK OF THINGS>のデザイナーが「Thinker(考える人)」をテーマにデザイン協力。7種のレザープロダクトをリリースしています。
「WHOSE LEATHER(誰の革?)」は、つくり手からの視点ではなく、「どういう人が使う革か」という視点から新しい革づくりを実験する、というビジョンを表現。
「THINKER'S HAMMOCK(革のハンモック)」、「THINKING ABOUT YOU(革のブローチ)」、「EUREKA!(革のペーパーウェイト)」、「NO THINK DAY(革の時計型ブレスレット)」、「IDEAMAN(革の小さなペン)」、「MILLIONAIRE THINKING(革の100万円封筒)」と、幅広い世代のユーザーを笑顔にするものばかり。
加工方法にも着目したプレゼンテーションも。こちらのレザーは木目調のプリントではなく、型押しされたもの。
本物の切り株を使い、とてもリアルな仕上がり。受け継いだ技術を生かした、歴史ある企業のチャレンジングが、皮革産業に新たなムーブメントを起こしています。
国内皮革の3大産地をつくられたレザーとともに紹介
それぞれの歴史、素材の個性が際立つ
日本タンナーズ協会では、国内皮革の3大産地ともいえる「姫路・たつの」「東京」「和歌山」を紹介。
産地ごとの歴史・強みに加え、つくられたレザーを展示し、それぞれの個性を発信していました。全国各地の有力百貨店とのコラボレーションによるPRイベント「日本革市」でも同様に行われ、人気を集めています。
「姫路・たつの」
生産量が日本で一番多い兵庫県姫路・たつのエリア。革好きユーザーにはお馴染みですね。大規模の工場から小さな工場まで、扱う種類も実に多様。現在でも200以上の工場が集積しています。
牛革をはじめ、馬革も盛ん。革のダイヤモンドといわれるコードバンを手がけるタンナーの存在が広く知られています。姫路のレザーのクオリティは国内外で高く評価され、東京・六本木 六本木ヒルズで行われた山本寛斎さん監督・総指揮のイベント「日本元気プロジェクト2018スーパーエネルギー!!」にも姫路皮革製品推進協議会が協力。
「ニッポンが世界に誇る姫路のレザー「姫革」をはじめ、御幸毛織の服地やエプソンの最先端プリント技術、オニツカタイガーのNIPPONMADE・・・など、日本のモノづくりを結集させた<KANSAI YAMAMOTO>の新作コレクション」がお披露目されました。当ブログの次回更新分でレポートをお届けする予定ですので、どうぞ、お楽しみに。
「和歌山」
明治維新による近代化にともなう軍靴製造に合わせて成長し、和歌山の地場産業として受け継がれています。床革、ヌメ革、セーム革、エナメル革など、それぞれの分野で優れた専門性を有するスペシャリストで構成されているのが特徴です。
ヌメ、床、シープ、そして和歌山を代表する仕上げであるエナメル。地域ブランド<きのくにレザー>も好評。展示会、ワークショップを開くなど、 さまざまな活動を展開しています。
「東京」
東京は日本全国でつくられる革と革製品のおよそ30%を製品出荷。特徴は豚革の取り扱いの多さ。関西など、そのほかの産地では牛革が中心ですが、東京のように豚革のタンナーが集積しているエリアは世界的に見ても珍しいのです。
ピッグスキンは現在利用されている皮革のなかで唯一全量を自給できる国内素材です。加工がしやすく、染色、仕上げ、型押し、インクジェットプリント、箔押し、転写フイルムほか多彩な表現が可能。メスカッター、塩縮加工、ウォッシャブル加工、撥水加工と新たなチャレンジングが続々。通気性、放熱性、摩擦に強い特性を生かしたスマートフォン、デジタルデバイス関連アイテムにも期待が寄せられています。
靴の街・浅草にオープンした新ショップが話題
レザーファッションの地産地消により、地域と皮革産業が活性化
日本の靴づくりのポテンシャルを伝える<Nippon Value>が今回もブース出展。優れた技術力をアピールしています。
パイロットシューズは、同社本社がある東京・東浅草に直営ショップ<Wisteria Fujiwara>をオープン。
「<ウィステリア>は花の〝藤〟で、<フジワラ>は海外では神秘的に映る〝富士山〟を連想する言葉でもあります。日本の靴産業が輸出産業となることを目標とし、そのときにも通用するブラント名にしたいと考えました。商品はベーシックなデザインパンプスですが、これらは全日本革靴工業協同組合連合会が7年前から進めている<i/288>の革靴認証事業の靴型を使用してつくられています。まずは組合事業でプレーンな靴だけを展開して、自分の足のサイズを知っていただき、次にメーカー各社がデザインを提供してバリエーションを増やすことを計画しています。当ショップには、現在140サイズの靴をそろえています。この靴でフィッティングをし、そこからヒール高やデザイン、素材、カラーを選んでいただきます。効率よく短時間で自分だけの靴を商品化できる、マスカスタマイズシステムを目指しています」とパイロットシューズ 藤原仁社長(「フットウエアプレス」4月号 インタビューより)。
革の街・靴の街 浅草にまたひとつ名所が誕生! レザーファッションの地産地消により、皮革産業の活性化につながりそうです。
靴の底縫いの工程を請け負う、若きつくり手が独立
底縫いミシンによる製品開発&サポート、ミシン調整の出張サービスも
インキュベーション施設<浅草ものづくり工房>も恒例のブース出展。
日本のシューズジャーナリストの第一人者、城一生さんがインキュベーションマネジャーをご担当。
入居者たちの活動とインフォメーションを掲げ、新鮮なクリエーション、ビジネスモデルなどが注目されました。
この春、新入居者 高野洋二さんが加入。紳士靴メーカー、登山靴メーカー勤務を経て独立、<セカンドオーシャン>を起業しました。
靴の底縫いの工程を請け負うことをメインに活動。底縫いミシンを使った製品開発、製品づくりのサポートから、ミシン調整の出張サービスなども予定しています。
また、ヴィンテージ機械の収集が趣味という高野さんはその知識を生かし、ヴィンテージ機械の調整・使い方相談にものってくれます。「もう使わないから譲るよ」ともらった機械・・・オブジェ、インテリア的に愛でるだけでなく、まだ現役で活用できる、うれしい新事業です。若い世代のビジネスパーソンや学生は興味津々。その場で熱いトークが続いていましたよ。
時代の変化、ニーズをキャッチした新たな取り組み、情熱を体感でき、感激しました。次回の「東京レザーフェア」も楽しみですね。
■ 参考URL ■
第98回 東京レザーフェア <http://tlf.jp>
株式会社山陽 <http://sanyotan.co.jp/>
日本タンナーズ協会 <http://www.tcj.jibasan.or.jp/>
Wisteria Fujiwara <https://wisteriafujiwara.jp/>
浅草ものづくり工房 <http://monokobo9.com/about>
プロフィール
鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター
東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。
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