2024年1月31日 の記事
January 31, 2024
【村木るいさん連載】<多数来場御礼>「本日は革日和♪ in 大阪」セルフレポートと職人の待遇改善を考えてみた、という話
カテゴリー: ジャパンレザー トピック&イベント まとめ
月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
2024年第一弾は、大阪で開催した「本日は革日和♪」レポートと職人の待遇改善を考えた、という話。
ビジネスパーソンからクリエイター、レザークラフトファンまで幅広く来場し盛り上がった人気イベント、「本日は革日和♪」(大阪・大国町周辺エリア)レポートと皮革業界に従事している職人さんたちの待遇改善についての考察。
イベント、ファクトリー、それぞれの現場からリアルな声を届けてくれました。ぜひ、ご覧ください。
* * *
通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。
当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。
今後のスケジュールなどは下のリンク先をチェックしてください。
* * *
毎度です!「最近3Dプリンタ買い直しました」ムラキです。
昨年話題になった爆速の3Dプリンター、Creality K1を購入していたのですが、仕事とイベントで忙しくて封印状態。イベント終了で「人に会いたくない」「モノヅクリだけしていたい」モードに入ったので開封。そらもういじりまくりです。開封5時間後にはトラブルに会いましたが、ほんとに今の時代はトラブル解決が楽です。動画なりの解説見つつ無事に解決です。
今回のブログの内容は以下の通りです。
・「本日は革日和♪」(大阪)無事終了
・久々に行う テクテク徒歩ツアー大人の社会見学
・どれだけ機械があっても、それを使う人間がいないと意味がない
・会社、事業成長には新しいものに貪欲な人間がいないと成長しない
「本日は革日和♪ in 大阪」無事終了
1月19日(金)・20日(土)に開催した「本日は革日和♪」(大阪)は無事終了しました。
新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行したので、7社が集まって展示会を行ったり、大阪の革屋さん3社に協力をお願いして、金曜に感謝祭、土曜に営業してもらいました。革会社さんによっては展示会も重なっていたのですが、ご協力ありがとうございました。
展示会
今回大阪府立体育館・エディオンアリーナ大阪、の会議室をお借りして開催しました。
次の7社が集まりました。このイベントでは入場料1,500円を徴収しています。かつ、事前予約で3時間制限があります。
参加社のリンクは以下の通りです。
5類移行後の事前予約や入場料の必要性
それも考えましたが、展示会参加出展者に聞くと「圧倒的に有料のほうがいい」とのことでした。無料のお客さんは無料に価値を見出し、こちらの時間を延々と使ってきます。ですが、時間制限があると他のブースを見たいからこそ、自分の時間を大切にします。無料ではなく、有料だからこそ、価値ある情報なりものを得ようと考えます。
「本日は革日和♪」の展示会では、出展者に厳密にお願いしているのは「イベント出るから安売りして儲け出そう!と考えないで」「アウトレット品出すなら全体の2割。それ以外はきちんと定番品や、後日買えるものを持ってきて」と言っています。もっと言うなら、「出展料以上稼げると思わないで」と言っています。稼ごう!と思うと接客が雑になりますので。
今回のイベントでは2日間3枠で合計70人ほどしか参加できていません(土曜日は1枠にしたら、公開1週間で満席に・・・)。 「たった70人?」ではなく、「事前予約して、1,500円のお金を払ってくださった来場者が70人」です。それは無料だから来たお客さまよりも何倍も意欲があるお客さまです。だからこそ、わたしたちも丁寧な接客もできます。会場でも事前にもらった質問などに答えていますが、何度も私が言ったのは「ムラキさんはお金払ったら優しいよ」ということです。
嫌な言い方ですが、有料にもかかわらず来てくださるお客さまに時間を使うのはとても「効率がいい」わけです。
夜は懇親会
今回参加は26名でした。
この懇親会ですが、革でお金儲けしている人限定、と言っていますが、それがネットだろうが、イベントで販売だろうが、職人仕事していようが、メーカー仕事していようが、革屋だろうが一切問いません。
また、お金儲けしていないけど出たい、という人には「じゃぁこれなら喋れます!という専門知識や趣味を教えて」とお願いしています。整体師や企業で経理仕事している人、AKB48や地方で畳屋についてなら喋れる! という人も参加しています。自分から情報を出す気がない、という人をお断りするのがこの「お金儲けしている人限定+α」という飲み会です。
幹事の仕事は大変ですが、参加者の満足度は非常に高くなります。
革屋3社の感謝市
感謝市の3社はもちろん参加無料です。こちらは事前予約なしでお店にいって大丈夫です。普段は事前予約が必要だったり、一般にお店に行くことができなかったりします。
ニシカワレザー
土曜日は定休日(毎月第一週のみ営業)でしたが、今回のイベントに合わせて営業してくださいました。
寿屋
寿屋さんも土曜日は定休日ですが、営業してくださいました。また、イベント会期中のみ定番革の1/2切り売りも解禁となり、好評でした。
ミヤツグ
ミヤツグさんは自社ショールームがちょうど展示会に向けた準備もあったので、倉庫スペースで感謝市をしてくださいました。こちらも土曜日に営業してくださいました。
「本日は革日和♪」(大阪)漉き屋とカバンメーカーを見学するてくてくツアー
募集要項
革業界になくてはならない仕事、「割り漉き屋」さんを実際に訪ねて作業風景を見学。その後、鞄メーカーさんを見学します。当日、大国町の「西川商店」に集合してからてくてくと徒歩で向かいます。
割り漉き屋さん
ツアーはニシカワレザーに集合。参加者が18名ほどとなっており・・・「しまった、関係者とか呼びすぎたな」と焦りました。
漉き割り屋さんまでテクテクと。高速回転する機械、というのはものすごく怖い機械でして。ツアー参加者が機械に巻き込まれないように常時気を張っていました。「そんな機械のそばで油断しないよ!」と思っても、回転する機械というのはカバンの紐1本、スカートの裾を少しでも巻き込まれると大惨事になります。そのためこのツアー見学のときは非常に気を張っています。
そんなわけで、こちらでは写真撮影を控えておりまして、すみません。上の写真は以前撮影したものです。
漉き割り屋さんは大忙しでしたので、「今どういう作業をしているのか」「なぜこういう動作をするのか」「なぜ革を薄くするのか」などを適宜解説していきました。
バッグメーカーの西川商店
ニシカワレザーさんの母体である西川商店はバッグメーカーです。バッグのメーカー仕事が主要なお仕事ですね。
下の写真中央が社長の西川さんです。
こちらでも写真撮影をあまりしていません。
先程の会社ほど回転機械などはないのですが、クリッカーなどの重厚な機械や、OEM仕事のため撮影禁止ゾーンなどが存在するため気を張っていました。
西川社長も各部門各場所の説明をしていただき、場合によって働いている職人さんのコメントなどもいただけました。とても貴重な機会、ありがとうございました。
割り漉き屋でも西川商店でも機械があるが機械があるからって儲かるわけじゃない
今回探訪した割り漉き屋にはバンドマシンという機械があります。
西川商店では自動裁断機、という自動で裁断する機械や、コンピューターミシンン、というプログラム通りに縫製してくれる、ハイスペックなミシンも導入しています。自動裁断機に至っては置く場所として6畳スペースが必要ですし、設備投資はなかなか大変です。
機械は操る人間が必要
当たり前の話ですが、機械は操る人間・使いこなす人間がいないと全く役にたちません。以前のエントリでも紹介した野球グローブメーカーでも自動裁断機は存在します。
この機械を操作しているスタッフさんにお話しを聞きました。「以前はクリッカーで刃型で裁断していました。ですが、この機械が来るということで、会社に言われてコンピューターの使い方などを学びました」「この機械導入でサンプルなどが格段に作りやすくなり、速度も上がりました」とのことでしたね。
これらの機械ですが、社長自らが扱うわけにはいきません。社長は機械を扱う、という楽しい仕事ではなくて、「仕事をとって会社を大きくする」「社員の人件費をどうやって賄うか」「さらに人件費をアップするにはどうするか」「会社にとって何が必要で何が不必要かを判断する」という誰もやりたくない仕事をやらなきゃいけません。
「高額機械を導入するのに、それの勉強をしたり、操作するのは社員に任せなきゃいけない」という、"他人を信頼"する必要があるわけです。
もちろん、その社員が学ぶ費用や学ぶ時間に対しても給与が必要。さらに、学んだ社員が会社を辞めることまで考えて、サブの人間を育てておかないと大変なことになります。機械を扱う人間が辞めて数か月機械が止まったり、その人間が辞められると困るからその人間のワガママを放置し、他の人間が辞めたり、もありえます(あくまでも仮定の事例です)。
職人が収入を増やすには・・・
職人仕事で収入を増やすのは大変です。
会社勤めの場合、「こういう機械があるそうです」「会社に入れたらこういう利益出せます」「その操作を私が勉強します」といった提案が必要となります。
新しい技術を学ぶ、というのは選択肢の幅が増える、ということです。自社にせよ、転職時にせよ強いスキルになりえます。
というような話を踏まえると、3Dプリンタとか、CAD制作技術ってのはこれからの時代、革の職人でもそうじゃなくても選択肢の幅が格段に増えますよ。
3Dプリンタ、面白いよ
3年前に3万円で買ったものに対して、今回のはセール時で8万円弱くらいします。ですが、速度や調整作業が3倍は効率よくなっています。
ムラキの今後予定
2月1日(木) 「レザーソムリエ」タンナー見学・懇親会参加予定
2月13日(火) 「大阪府皮革業界総合研修」登壇
3月22日(金)・23日(土) 「本日は革日和♪ in 名古屋」
5月23日(金)・24日(土) 「本日は革日和♪ in 東京」
7月19日(金)・20日(土) 「本日は革日和♪ in 福岡」
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プロフィール
鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター
東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。
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