欧米ブランドに「負けていないぞ!」

February 28, 2024

【村木るいさん連載】大阪府皮革業界総合研修で、今年度も「革とものづくり」という対談を行った、という話

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
2024年第二弾は、大阪府皮革業界総合研修で、今年度も「革とものづくり」という対談を行った、という話。

恒例企画、大阪府皮革業界総合研修に村木さん自身も「革とものづくり」というテーマで登壇。村木さんのセミナーの内容についてポイント解説と、そのほかの回を受講者としてレポート。独自の視点でまとめています。ぜひ、ご覧ください。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

今後のスケジュールなどは下のリンク先をチェックしてください。


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毎度です!「段取り8割!対談もイベントも事前準備が大事!」ムラキです。

今年度も大阪府皮革業界総合研修を見てきました。そして、登壇してきました。登壇、というか、狂言回し役ですね。

今回の話は、

・大阪府皮革業界総合研修、今年も面白かった
・こういう話をしてきた
 「革業界の専門職種 メーカーという役割」
 「人の育て方」
・対談形式、って見た目以上に準備が大変

というような話です。

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大阪府皮革業界総合研修とは

この研修は、皮革関連産業の振興のため、関連企業の経営者並びに従業員の方々に、最新の業界の動向やトレンド、あるいは実践的な経営の知識等を身につけていただけるよう、各界の著名な講師を招いて時流にあったテーマで実施されています。

大阪府と近畿経済局が毎年開催してくれる研修事業です。私が見に行くようになって10年以上になるのか・・・ほんとにありがたいな。

セミナーの内容紹介は下記でまとめています。


今回は2つ聞きに行ってきた&喋ってきた

 12月13日(水) 皮革・革製品のサステナビリティ 

 1月16日(火) 天然皮革~知っておきたい基礎知識~ 

 1月23日(火) これだけは知っておきたい革の特性 クレーム事例から学ぶ 

 2月6日(火) [講義/工場見学] 皮革のできるまで 

 2月9日(金) 「かわ」とサステナビリティ

 2月13日(火) 革とものづくり~令和時代の外注との付き合い方 

このうち、「皮革・革製品のサステナビリティ」と「『かわ』とサステナビリティ」の2つを聞きに行きました。ほかの回も聞きに行きたかったのですが、満席で聞けませんでした。

上記セミナーの最後にある「革とものづくり~令和時代の外注との付き合い方」を元メーカー勤務者・現フェニックス部長の横井さんと一緒に喋ってきました。

「かわ」とサステナビリティ、というセミナー、すごかった


2月9日に行われた『「かわ」とサステナビリティ』の登壇者は、国内の靴ジャーナリストの第一人者、大谷知子さんでした。

こちらの方は靴ジャーナリスト、というだけあって、例年、海外の靴の展示会「ミカム」のレポートや靴業界の動向分析などをなさっていますが、今年度は「サステナビリティ」という内容で話すとのこと。従来とは違った切り口ですので驚きました。

「今までとは違う切り口でを話す」ということは、違う勉強をきちんとしなきゃいけない、ということです。勉強をしてきちんとアウトプットしている、ってのは敬意を払いますわ。

内容も

・かわはどこからやってくるのか
・屠畜とは
・皮から革を作る歴史はいつから始まったか
・食肉に伴い生まれる「革」以外の主要製品
 ゼラチン、写真フィルム

などの話から

・タンナーが取り組む環境負荷の低減とサーキュラーエコノミー
・サステナビリティに対する革の意味

などと話も深くなっていき、聞いていて「最初は広く浅く」話が展開し、その後に「深く狭く」となっており、興味を持ちやすい構成になっていました。

セミナー『「かわ」とサステナビリティ』は、JLIA「TLA」と連動



私がもうひとつ受講した「皮革・革製品のサステナビリティ」は、TLA座長である川北芳弘さんによるセミナーでした。日本皮革産業連合会にせよ、日本タンナーズ協会にせよ、私にせよ、今、この「革は食肉産業の副産物ですよ」というような主張や講演などを増やしています。

川北さんのセミナーもTLAの座長だけあって面白いのですが、大谷さんの講演は「靴ジャーナリスト」という切り口から違う側面で「革のサステナビリティ」が語られていました。このようにいろいろな切り口や側面があることで、多種多様な入り口から革への知識を深めてもらえるのは面白いな、と思います。

圧倒的な専門家が一人だけ喋る、のではなく、多様な専門家が多様な切り口から革という素材を解説してもらう、という「情報提供が多様な切り口である」というのは現在の革業界の強みではあると思います。

革とものづくり~令和時代の外注との付き合い方 という話


それに対して私が段取り、組んだセミナー「革とものづくり~令和時代の外注との付き合い方」は、さっぱりサステナビリティなどと関係はありません。今回のセミナーで私がその話をしても、違う登壇者が語るならばそちらに任せます。私が大阪府から望まれているのは「他の方と違うことを毎年提供してください」というものですので、今回も違う側面から話をします。

なんと高校生が聞きに来てくれた

いろいろあって、ちょうどセミナーの前に「将来つくり手として生きたい!」という高校生に出会いまして。ちょうどいいからこのセミナー聞きにきな、と言ったところ本当に来てくれました。最近の高校生は行動力あるなぁ、と感心しました。

セミナー内容紹介

革製品づくりにおいて外注、というのは色々な面で存在します。
外注の職人や、内職さん、専門職の方々・・・昨今ではランサーズやココナラ、などのweb外注も存在しています。

・これらをお願いする上での注意点やトラブル事例。
・実際に外注ではなく内製した場合の困った点。
・さらにはSNSを外注は可能かどうか。注意点は?
・外注を依頼する人と、外注をしたい人との意識の落差とはどういうものがあるか

などを横井さんがレクチャーしてくれました。

セミナー内容抜粋

●革の外注の種類
●革の外注先はなぜ見つからないか?
●外注に頼んだら安くなるのか?
●外注はどう見つけるか?
●外注への頼み方
●外注の育て方
●SNSを自社で行う、デザイナーを自社で抱える
●仕事を頼むときの心構え
●こういうクライアントは嫌だ!
●外注の問題点
●今の時代は職人なり外注との付き合い方はどういうものか?外注との付き合い方
●外注に依頼するメリット・デメリットは?
●外注を探す、ではなく、育てることは可能か?育て方

セミナーちょっとだけ紹介:メーカーという仕事は各種加工業者を走り回るのが仕事

会場ではレジュメと一緒に、このセミナー用にまとめた限定ブログも作成しています。
そこに載せているのは当ブログへのリンクです。過去に載せたメーカーの話や各種加工会社の紹介をリンクで載せています。

現状、日本の靴なりカバンなりのメーカー仕事や加工業者の仕事を知りたいならば、動画やネットの文章、過去の文献あわせて、当ブログで過去に私が書いたブログが一番くわしいです。下記がセミナー受講生に紹介した内容です。

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メーカーは、クライアントから依頼を受けて「金具」や「革材料」などを仕入れるリスクを負って、各種加工を行って「請負職人」に縫製を依頼する。

セミナーちょっとだけ紹介:社内での人の育て方・外注の育て方

内製なり外注なりでの人の育て方は難しいです。外注は、ぶっちゃけ相性が悪い・こちらの要求するレベルに達していないならば切ればいいだけです。ある意味とても楽です。ですが、縫製にせよデザインにせよ内製する場合は、雇うコスト・首を切るコストがこの日本でもとんでもなく高いため、教育がとてもむずかしい。この前提に基づいて下記の話をしました。

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もしあなたが内製でも外注でも、人に物を頼みたいならば・・・

内製するならば「育てる」覚悟がいる

・山本五十六の言葉

「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、誉めてやらねば、人は動かじ」

「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」

「やっている、姿を感謝で、見守って、信頼せねば、人は実らず」

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外注するならば

・定期的にきちんと仕事を発注する

・まめなコミュニケーション

・逃げられないように

終了後高校生に感想を聞くと・・・

「ネットやYouTube動画を見ても全く載っていない情報ばかりでした!」と答えてくれました。

ビル・ゲイツでも手に入れられないのが「時間」です。私から見たら、「高校生かぁ・・・あと4、5回くらいはデカい失敗してもリカバリーできるから羨ましいな」と思ってしまいます。彼には失敗を恐れず、いろいろと経験してもらいたいものです。

対談セミナーでも段取り8割


このようなセミナーですが、事前に2時間ほど登壇者と打ち合わせをします。そのうえで、どのエピソードやどの話が今回のセミナーにふさわしいかを取捨選択します。今回は会話内容を単元ごとにまとめて、付箋紙に書いてどの順番で話すか、どのエピソードがいるかいらないか、などを判断します。内容をまとめて、付箋紙に各種話題をまとめて、それを順番に切り貼りしていきます。結構手間かかるんですよ。

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これらをもとに脚本を作ります。
脚本は、「この順番で話を進めます」「このときにこのエピソード話してほしい」「そのために話をふっかけます」というようなもの。

この脚本で全体の8割を規定します。残り2割は当日の会場に来る人の反応や来場者の事前リストをもとに話をしていきます。セミナーしているときは会場内の受講者が興味もっているか、暇そうか、などを逐一確認しつつ、適宜方向を定めていきます。結論などは変わりませんが、聞いた受講者が何を聞きたいのか、などを加減していきます。

アンケートを見せてもらいましたが、今回も受講者さんに喜んでもらえた、とは思います。

ムラキの今後予定


3月22日(金)・23日(土) 「本日は革日和♪ in 愛知県名古屋」


5月24日(金)・25日(土) 「本日は革日和♪ in 東京都浅草」
7月19日(金)・20日(土) 「本日は革日和♪ in 福岡県博多」


プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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