March 27, 2024
【村木るいさん連載】姫路・御着「皮革フェア」&名古屋「本日は革日和♪」レポート
カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」
月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
今回は、皮革産地 兵庫県姫路市御着の恒例イベント「皮革フェア」と人気イベント「本日は革日和♪」(愛知県名古屋市)レポートです。
御着「皮革フェア」は4か所同時開催ですが、そのなかの一部を現地レポート。さらには、村木さんが主宰する人気イベント「本日は革日和♪」の名古屋開催分をセルフレポート。この春のジャパンレザーの動向を産地とユーザー参加型イベントから探ります。ぜひ、ご覧ください。
* * *
通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。
当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。
今後のスケジュールなどは下のリンク先をチェックしてください。
* * *
毎度です!「4日間喋り続けて喉が枯れた」ムラキです。
最高5日間セミナーとかやっていたんですが、コロナでイベント体力が鈍っているのと、革日和の最中に話していた「カッターの話」5回くらいで喉と体力がつきましたね。ドラッグストアで事情を話すと、800円の噴霧タイプの薬を勧められました。トローチよりも強力ですな。
さて、今月は・・・
・姫路市御着で行われた「皮革フェア」視察
・愛知県名古屋市で行われた「本日は革日和♪」報告
同時に・・・
・革日和に出展したからって儲かりませんよ
・じゃぁなんのためにイベントやるんだよ!
・コロナあけても有料、かつ、事前予約制にしている理由
などを解説します。
兵庫県姫路市、たつの市にはタンナーが集まっている
私がやっている「人に話したくなる革の話」というセミナーで、姫路&たつののタンナーについて説明しています。
日本全国でタンナーは、、、栃木県や山形県、長野県にそれぞれ1社~数社。東京・埼玉・和歌山にそれぞれ10社弱。で、兵庫県姫路市とたつの市で登録されている数で言うならば100社以上あります。
特に、姫路市とたつの市は全体で、というよりも地域に分かれています。
(「ひょうご皮革物語」より)
今回訪れる御着地域は、「戦前よりタンニンなめしの底革の一大産地でありまた草履用青革の生産も盛んな地域。
戦後はクロムなめしに転換し靴用革底、草履用青革、服装ベルト用革、ぬめ革の他にクロムなめしの靴用甲革、靴用革、袋物用革、衣料革等の生産が盛んに行われています」。
(テキスト:「ひょうご皮革物語」より)
昔より底革が得意であり、私が秋に行っているタンナー見学バスツアーで訪れる「昭南皮革」さんも、この地域で底革やベンズなどを昔ながらのピット槽で作っています。
この地域のお祭りとして開催されているのが、今回行く「皮革フェア」です。
兵庫県姫路市御着の「皮革フェア」を視察
毎年3月に開催されるこのイベントでは、当日は各センターで屋台やイベントが開催されています。開催時間はなんと日曜の10時~14時のみ。その間に各センターを巡るループバスも巡航されています。
各センターではタンナーさんによるアウトレットや食べ物の屋台などがオープンしています。
もし行くことがあれば西御着の総合センターの皮革資料室は見ておいて損はない
日本で革の資料を見ようと思うと・・・
・東京・教育資料室 きねがわ...「皮革と油脂」を中心とする木下川の産業資料と木下川小学校の学習成果を収集・保存・整理・展示
>
・東京・皮革産業史料館...
皮革産業資料館は、台東区の地場産業である皮革産業に関する製品や書籍、文献を収蔵・展示する資料館として昭和56(1981)年に開館しました。国内では唯一の皮革専門の資料館として貴重な存在です。展示品の中には元大関小錦の靴や長島茂雄氏のスパイクシューズなどもあります。
>
>
・東京・エース・世界のカバン博物館...革に限らずカバン、に関する資料館
>
これに加えて、今回訪れた兵庫県姫路市西御着の総合センターの皮革資料室があります。
・西御着の総合センターの皮革資料室
日本文化をになってきた皮革産業が、どのような工程でなされ、人々がどのように働いてきたのか、その歴史を示す資料を集め、皮革産業の歴史と文化を後世に遺すため、平成17(2005)年に西御着総合センター内に開室しました。
実際に昔使用されていた道具類や膠(にかわ)に関する資料、青革・タンニン革・クロム革・姫路革など、当時の「皮革のまち」を感じていただけるよう展示をしています。
皮革資料室の常設は、全国的にも珍しく、江戸時代から現代までの歴史的に貴重な資料も展示しています。
>
どういう資料室?
上記にあげている東京きねがわの資料室と同じ様にタンナー寄りの説明となっています。東京と違いゼラチンや膠などが重点的になっていますね。革に興味ある方は一度見ておいて損はないかと思います。
「本日は革日和♪」in 愛知県名古屋 をやってきた
3月22日(金)・23日(土)、「本日は革日和♪」を愛知県名古屋市で行いました。
4日連続日程でイベント前日と翌日、1人でセミナーしていました
イベント前日の3月21日(木)には、愛産商会さんで「しくじりハンドメイド作家さん」「お金の話をしよう! ハンドメイドの値段の付け方セミナー」を。翌日3月24日(日)には、レザークラフトぱれっとさんで「漉き機を活かすセミナーハイパー~実機を前にして」を行いました。
「本日は革日和♪」展示会・ワークショップでは11社が参加し開催
佐々木工房 ハンドプレス機展示体験
サンプル師が教えるバッグ教室
ミヤツグ
抜き型工房川崎
刻印焼き印のStudio Yamato
nijigamitool
レザークラフトフェニックス
ZIT TOOLS
Japan Leather Craft Association - International Leather Craft Exhibition
Lized
グッドレザー
11社は結構大規模ですな。
イベントは事前予約制・有料1,500円
イベントでは事前予約、かつ、1,500円の参加料をいただいています。
1枠3時間。1日2回。2日で合計4枠開催しています。以前は2時間×3回×2日、などだったのですが、やはり3時間ないとゆるりと見られませんね。
コロナもあけたのに予約制なの?
コロナが完全に終わったとは思っておらず、さらには麻疹の流行も言われています。いざというときの連絡先をきちんと確保しておきたい、というのが第1の理由。
第2の理由は、出展者から「有料制を維持してほしい」という声が多数あがったからです。
「無料だから行きます!」「予約なんてめんどくさい!」というお客よりも、「予約というめんどくさい手間を行い、きちんと情報を得るためにお金を払う」というお客のほうが出展者にしてもやり甲斐を感じるからですね。
5、6年前に愛知県一宮市で革日和を行った際は無料・予約制なし、にしていました。ですが、結果的に「全来場者の4割が開始2時間に殺到する」「翌日の午後からはすっからかん」という恐ろしい結果になりました。
ムラキさん、このイベントに出展したら儲かるの?
儲かりませんよ、さっぱり。特に革屋さんは儲かりませんね。
「じゃぁ出す意味ないやんか!」
アウトレット品なりセール品を販売すれば、そりゃ「やすい!」と儲かるかもしれません。ですが、それだけです。わざわざ出張費用かけて、ハギレなりアウトレット品を「無料だから来た100人」ではなく、「お金を払ってでも見に来た15人~20人 in 各枠」に叩き売ったとしても大した儲けになりませんがな~。
革は触らないとわからない情報が多すぎる。だからこそ、会場で革を触ってもらって「この革が気に入った!」という革を見つけてもらい、後日ネットから1枚でも買えるようにアピールする。そして革を売る、というのは会社の人を信用してもらう行為ですわ。「やすい革を売って儲ける」じゃなくて、「高いものを買うのだから、革屋のその社員個人が信用できるかどうか」を知ってもらうアピールをする。信用を売るのが目的ですわ。
だから、「アウトレット品は出展物の2割」までに限定。さらに、「初回の3時間枠でアウトレット品がなくなったから、後の時間のものも出して叩き売れ!」というのは絶対に許さないです。各枠のアウトレット品はきちんと保持しておいてください。「最終日の最終時間に行ったがアウトレット品はもうなかった」ってのは許さないです。それをすると、「最終日、最後の時間に行くと損だよ」と参加者から不信を買うからですわ。
革でも工具でも金具でも同じ。このイベントで売るのはその場こっきりの商品じゃなくて、"信頼"を売るわけです。
3時間もあって退屈しないの?
予約時にアンケートや「聞きたいこと」などをまとめています。個別に紹介や説明もします。会期中はずっと私が受付場所で会場に気配飛ばしています。退屈そうにしていたら声かけしたり、30分ほどで話す「技法の話~世にも奇妙なカッターのはなし」などを行います。
・カッターの致命的な欠点とそれに対する各社の回答
・ものが切れる原理と考え方
・最も切れるカッターナイフとその思想
・カッターナイフを最も多用する業種
・腱鞘炎にならないためのカッターナイフの使い方
これらを実際のカッターナイフで実演・体験しつつ会得してもらいます。上の写真にあるカッターナイフなんて普通は革業界では使いませんが、私の普段の特定の仕事では大活躍しています。
今回でしたらカッター以外にも、
・狩猟をしているが取った鹿の革などを鞣したい
>この国の害獣駆除助成の話や鞣し技術の載っている本の紹介
・芯材の使い方
・革会社の違い
などを個別に答えました。お金払って来てもらった以上は、きちんと得るものを得て帰ってほしいですから。
それらの講習はYouTubeでやってくれないんですか?有料でもオンラインでやってほしいんだが
YouTubeに載せない理由は2つ。
1つは、実際に触ってみないと凄さがわからないから。実際に目の前で実演し、相手に体験してもらう際に、「ここに力入れたら駄目」「あなたの手先は猫の手で、カッターが猫の爪の先端でひっかくかの如く切って」など、相手にあわせたアドバイスを与えないと技術は身につかないからです。
もう1つは、「ムラキさんはお金払ってくれる人に優しい」からです。これは、今回4日間毎日言っていたことですが、対価をもらわない限り優しくありません、私は。そして、お金なり対価を払わない人間は、それで会得したものを大事にしないですね。
今後の革日和やムラキ予定
・5月24日(金)・25日(土) 東京 浅草橋 文具共和会館
5月23日(木)・24日(金)は「東京レザーフェア」も開催しています。
さらには、5月23日(金)~25日(日)は、台東区南部エリア一帯で行われるビッグイベント「モノマチ」も開催されます。
・7月19日(金)・20日(土) 博多「本日は革日和♪」
予約ページなどは下記にて告知します。
プロフィール
鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター
東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。
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