カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」 の記事
April 28, 2021
村木るいさんの「人に話したくなる革の話」/新しいタイコとブラックバスとランドセルのミュージアムの話
カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」
毎度です!「緊急事態宣言3回目が出ましたね」ムラキです。
普段は請負の職人仕事で、「自分で何かを売る」ということはほぼありません。「他の誰かが売れるor売れたor売りたい!、ということが発生して仕事が生ずる」のが請負の量産職人です。このように経済やイベントが止まると影響が出てきて頭が痛いものです。
「じゃぁ自分で企画してデザインして売ればいいのに!」とか「積極的に仕事を取りに行けばいいのに!」と言われたりもするのですが、そこら辺が量産職人の難しいところです。あ、この話するとblog2回分くらいかかります(ヽ´ω`)
さて、姫路市とたつの市を訪れて下記を見てきました。
・北中コーポレーションさんの新築鞣し現場が欧州のようなタンナー風景
・新喜皮革さんの水草染のブラックバス革
・たつの市のセイバンミュージアムでランドセルの歴史や工場見学
順番に紹介してみましょう。
目次 [hide]
北中コーポレーションさんの新しいドラムを見てきた
新喜皮革さんのブラックバスの革
ブラックバスの革はどんなもの?
ブラックバスとマグロの革って違うの?
たつの市のセイバンミュージアムへ
コロナ禍で予約必須です
セイバンの歴史が読み応え抜群
戦時中のランドセルが見れる部屋がすごい
ランドセルの構造解説の部屋がわかりやすい
工場見学が上から見られるのがものすごい
1Fではファクトリーショップ
最近やら今後のムラキさん
*
北中コーポレーションさんの新しいドラムを見てきた
皮なめし専門 きたなかコーポレーション | クロムなめし・タンニンなめしの委託加工
きたなかコーポレーションさんは、タンナーさんが各種工程を依頼する、というタンナーさんです。
で、このきたなかさんが「新しく鞣し設備を増やした」というのは噂で聞いており、今年になって正式に稼働が開始。まだピカピカの新品のドラム設備などを見に行ってきました。
この写真だけ見ると大きさがよくわからないでしょうが・・・
でっかーーーーい!!!!!圧巻です。迫力です!
あまりにタイコ設備が大きすぎるため、革を入れる場合は2Fフロアから入れなきゃいけません。
こちらは木製ではなくて、FRP製のタイコ設備。おぉ! これが! 皮革大学で話だけ聞いていたFRP製のタイコ! はじめて触れた!
これ、木製に比べると温度の保持が低くなるけど、中身の洗浄が楽になるので残留薬物がなくなる、という利点があるとか。
きたなかコーポレーションさん「そうですね。木製に比べると温度の保持が低くはなります。ですけど、そのために外周からスチームを当てて温度制御する、ということが可能となっています」
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ それはまたガンガン動いているときを見てみたいなぁ。面白そうな!なんで新しく設備入れたんですか?
きたなかコーポレーションさん「当社は既存の木製ドラムの工場ももちろんあるんですが、違う設備があるともっと幅ひろく革を鞣すことが可能となります」
あぁ、楽しそうな。この他にもフレッシングの現場も見せていただきました。貴重な体験をさせていただきました。きたなかコーポレーション様、ありがとうございました。
新喜皮革さんのブラックバスの革
で、お昼ごはん後には新喜皮革さんに。
新喜皮革 - コードバン・ホースハイド・馬革|兵庫県姫路市の馬革専業タンナー 新喜皮革
ブラックバスの革を以前から作り、自社で財布などだけに使っているのは知っていました。で、ネットのニュースを見るとブラックバスの革を琵琶湖の水草で染めた、という新作革ができたとか。
月に1000食出る人気の天丼、正体は外来魚...「食べられなくなる環境が理想」 : 社会 : ニュース : 読売新聞オンライン
活用は、その他の用途にも広がる。兵庫県姫路市の皮革製品会社「コードバン」は2017年、バスの皮を使った財布を発売した。独特のうろこ模様と光沢がバス釣り愛好者らに好評で、年間約200個が売れる。
バス釣りが趣味で毎週のように琵琶湖を訪れる社長の新田芳希さん(50)が「身は食べても皮は捨てる」と聞いたのがきっかけだ。臭いの強いぬめりを落とす処理方法を工夫し、製品化に成功した。より自然の風合いにしようと、今年は琵琶湖の水草を使って染めた新商品を29日から受注生産する。
色々あって手元にブラックバスの革を1枚だけ持っているが、「最近できたブラックバスの革は柔らかくなったよ」とも聞いていました。で、新喜皮革さんにお願いして革を触らせてもらいに行きました。
事前にアポイントを取り行きましたが、応対してくれたのは「バス釣りが趣味で毎週のように琵琶湖を訪れる」社長の新田芳希さん。うぅ、一番えらい人やがな 緊張するなぁ(ヽ´ω`)
ブラックバスの革はどんなもの?
‐‐‐‐‐ 社長、ブラックバスって元はもっと大きいですよね?鞣したら50%くらい縮むんですか?
新田さん「いや、そこまで小さくならないよ。せいぜい一回り小さくなるくらい」
‐‐‐‐‐ この大きさで40cmくらいだから、元は50cmちょいってことですね。
新田さん「バスは飲食として食べられます。スズキ科ですから、白身魚ですね。食べてみると美味しいですよ。
でも、養殖をしているわけじゃないですから、安定的な大きさが供給されるわけじゃないです。それが難しい点です。そのため、ブラックバスの革が『ほしい!』と言われても販売ができないのが現状です」
‐‐‐‐‐ でしょうねぇ。3年ほど前にブラックバスの革1枚手に入れましたが、その時はパリっとした風合いでしたよね?でも今はクタっとした感じになっています。これはなぜ?
新田さん「こちらの革は表面をラッカーなりウレタントップしていないので柔らかく仕上げていますね。今でも固く仕上げようと思えば仕上げられるし、柔らかくもできる。技術的な問題で柔らかさ硬さを決めるのではなく『柔らかい財布に使いたい』ならば柔らかく仕上げる、というだけですね」
‐‐‐‐‐ この革の表面に見えるのは鱗1枚1枚ですか?
新田さん「鱗は全部剥がしちゃいます。豚などならわかりやすいですが、毛を抜いたあとの毛穴の跡、というのが必ず残ります。このブラックバスの革の鱗に見える部分は『鱗を剥がした跡』です。鱗の根本部分ですね。鱗の根本部分も鱗のような模様になっているというだけです」
‐‐‐‐‐ へ~~。ブラックバスの革をセミナーなどで見せるんですが、よくある質問が「ブラックバスだからこのような模様なんですか?」と言われます。
新田さん「鞣した状態は上記の写真のように白い革に近いです。そこから染めていくわけですよね。だから、赤や黄色なども染めますし、ブラックバス模様に1枚1枚手で染めていきます」
‐‐‐‐‐ 琵琶湖の水草で染める、といいますけど、特定の草なんですか?
新田さん「こちらの革ですよね。琵琶湖の水草といっても特定のものではありません。各種草から染め上げています。そのため『いろいろな草で染めた平均的な色』が出ていますね。
こちらの水草染めのブラックバスの革は4月29日から下記サイトで財布などの受注販売をします」
ブラックバスとマグロの革って違うの?
‐‐‐‐‐ そういや、新喜皮革さんは近大マグロの革も作っていましたよね?
「近大マグロ」の革製品 第2弾を発売 近大マグロ革と馬革の組み合わせでリーズナブルな価格に | NEWS RELEASE | 近畿大学
‐‐‐‐‐ ブラックバスの革とマグロの革って違うんですか?
新田さん「全然違うんだよ、これが」
‐‐‐‐‐ それは淡水と海水生物の違いですか?
新田さん「いや、それじゃない。
マグロは赤身で脂肪分が多い。ブラックバスは白身で脂肪分が少ないんだよ」
‐‐‐‐‐ !!なるほどなぁ! 牛の革と豚の革の鞣しで違う点を以前聞いたら「豚は脂が多いから、その除去なりが大変」とは聞いていたが、それに近いですな!
‐‐‐‐‐ マグロならば大きいから革も大きく取れるんですか?
新田さん「取れませんねぇ。マグロの解体ショー見ればわかるけど、ぶつ切りにしてから身を切っていくだろ?だから大きな1枚革なんて取れないね」
‐‐‐‐‐ ブラックバスやマグロの革を鞣しています!と、このように言っていたら、全国から「うちの魚の革も鞣してよ」と言われたりしませんかね?
新田さん「それは難しい相談です。
やはり経済として食用として月々安定的に皮素材が供給されないと難しいです。これは魚に限らずそうですよね」
‐‐‐‐‐ つくづく革ってのは食肉業界の副産物ですなぁ。
新喜皮革さん、この度はありがとうございました
新喜皮革さんでは7月17日・18日の土・日でレザーフェスティバルを開催します。
新喜皮革のみならず他のタンナーさんによる革の販売やフードコーナーも設置されてのお祭りとなります。
たつの市のセイバンミュージアムへ
さて、新喜皮革さんからバイクで40分ほど運転して次はセイバンミュージアムへ。
ここは昨年オープンしてから関西のTVなどでよく紹介されていました。
コロナ禍で予約必須です
現在、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い予約が必須となります。1Fファクトリーショップ、2Fセイバンミュージアムともに予約が必要です。
セイバンの歴史が読み応え抜群
2Fのミュージアムショップはセイバンの歴史を学べる部屋「TIMELINE」からスタートします。こちらが 読み応え抜群。
「えっ!スタートは1919年で最初は小物会社だったの!?」「この頃から革に型押しってあったんだ!」「漁師さんの編みの補修テクニックから革細工がスタートしているの!?」など私も驚く話がボロボロと。
実際のランドセルも展示されているため「1980年で6年使われた革製品ってこんな表面になるのか」と驚きます。
ランドセルの開発史は「重さ軽減の歴史」だったり、「いかに背中にフィットして負担をかけないか」という研究でもあります。こちらの部屋でそれが存分に学べます。
戦時中のランドセルが見れる部屋がすごい
次の部屋「CLASSROOM」は教室を模した空間。机1つ1つに歴代のランドセルの紹介が書かれています。同時に給食の紹介があったり、黒板にはプロジェクトマッピングで解説が行われています。
すごいのは後ろのロッカー部分に陳列されている歴代のランドセル。なんと引き出し形式で陳列されており、前後ろ上から見ることができます。
は~、戦時中は戦時統制があったため、革資源は貴重でした。野球のグローブやランドセルに革を使うくらいならば、靴や背嚢のベルトなどに優先的に使われていました。
帆布のランドセルや紙製のランドセルは見たことがありましたが、ブリキ製は始めて見ましたねぇ。
ランドセルの構造解説の部屋がわかりやすい
LAB.
実験室をイメージした空間で、ランドセルの機能を体感性・耐久性・快適性・安全性・利便性の5つのコーナーに分けて紹介しています。
ランドセルは革業界の中でもトップクラスに基準が厳しいです。
靴もすごいですが、ランドセルの場合は「1年365日の間、200日×6年間使い」かつ「6年間保障」がつく、という恐ろしいカバンです。
そのため強度や快適さなど様々な工夫が行われ、技術が注がれている世界です。
この部屋では実際に触ったり体験しつつ、その技術や耐久性などを学べます。
工場見学が上から見られるのがものすごい
このセイバンの工場は既存の工場3つ分を1箇所に集約した場所です。
そのため100人以上の人が同時に働いています。この最後の部屋「FACTORY」では工場を上から見下ろすことができます。
撮影禁止ですが、事前に許可をいただき撮影させてもらいました。
もうちょっと詳しく見たい方は下記サンテレビの動画を御覧ください。
これはすごい。
色々と企業ミュージアムを見ますが、ここまで見下ろせる展示形式は始めて見ました。
見ていると、「あぁ、あのミシン使っているのか」「あっちのミシンは立って使って、こちらは座って使うのかぁ」「あ~、あの工程はこの工具使うんだ」などがわかります。
そりゃ撮影禁止なわけだ(´・ω・`)
こちらの部屋は工場が土日祝日がおやすみとなりますので、「工場の様子みたい!」と行くならば平日がおすすめです! セイバン広報ご担当者の方にお話しを伺いました。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 工場内の大きさと常時働いている人数はどれくらいなんですか?
セイバン広報ご担当者さん「工場の面積は約4,000㎡あります。生産現場の人数は200人強ですね」
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ このようなミュージアムを作った意図は? どういうことを消費者に知ってほしかったかのでしょうか?
セイバン広報ご担当者さん「ふたつあります。
ひとつは、たつので生まれ育った企業として、地元に貢献したいという想いがありました。工場や本社だけでなく、ミュージアムや直営店を併設した一体型の施設にすることで、たつのの一つの名スポットとしてこの地が活性化してほしいと考えています。
もうひとつは、100周年という節目を迎えるタイミングでしたので、これまでの歴史や現在のものづくりを形にすることで多くの方に知っていただきたいという想いです。ここに来たらセイバンのすべてが詰まっている、そんな場所になっていると思います。
昔から変わらず同じように見えるランドセルですが、<子どもたちを守り、幸せにしたい><どんな小さな改善でも、子どもたちにとってプラスになることならとことんやっていこう>という想いで、長い年月をかけてたくさんの機能を開発してきました。そんなセイバンのランドセルづくりにかける思いを知っていただきたい。
また、ミュージアムからは実際にランドセルの製造工場を見ることができるので、これだけたくさんの職人たちの手がかかって一つひとつ丁寧につくられているということを知っていただき、ランドセルに対する愛着を持っていただきたいという想いがございます」
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ コロナ禍における注意点はどのようなものでしょうか?
セイバン広報ご担当者さん 「現在は予約制(45分の完全入替制)
となっており、最大来店人数5名まで、マスク着用をお願いしています。世の中の状況に合わせて規制をしているので、以下のリンクで飛ばしていただくと最新の情報がご確認いただけるかと思います」
直営店一覧 | 取り扱い店舗 | ランドセル【天使のはね】セイバン (seiban.co.jp)
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ ミュージアムのみ見学は予約不要でしょうか?
「5月からはミュージアムだけの来場でも予約が必要となります。こちらも運用方法について変更がある場合は随時ミュージアムのページにてお知らせしております」
1Fではファクトリーショップ
1Fにはファクトリーショップがあり、実際にランドセルを背負うことが可能となっています。
現在は予約必須となっておりますので、下記サイトからご予約ください。
最近やら今後のムラキさん
革日和in大阪は無事に終了しました。今回始めて行った徒歩ツアーも好評でした。
4/2.3(金土) 本日は革日和♪in大阪 5社の革屋で開催&lized塗料相談会&徒歩ツアー開催 | 本日は革日和♪
次の予定ですが、色々あっても中止したり不明だったり。
確定しているのは下記イベントです。
素材博覧会 KOBE 2021 夏 2021年6月3日(木)〜6月5日(土)
March 31, 2021
村木るいさんの「人に話したくなる革の話」/水産皮革(鯨・鰻・鮫・エイ...)はどのように活用されてきたか?
カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」
毎度です!
「久々のイベント準備でてんてこ舞い」のムラキです。
4月2日(金)~3日(土)に久々の「本日は革日和♪ in大阪」を開催します。今回は革屋さんなどフル出展です。
4/2.3(金土) 本日は革日和♪in大阪 フルメンバーで開催&lized塗料相談会&徒歩ツアー開催 | 本日は革日和♪
で、前回のJLIAblogで紹介したナルトビエイの革ですが、今回は上記イベント出展の会社さんで実際に触れることが可能です。そこらも上記blog をご覧ください。
前回のblog掲載後に、
「鯨の革はどうだったの?」
「以前うなぎの革見たよ」
「鮫の革が刀で使われていた」
といった声をもらいましたので、
じゃぁ、これらの革=水産皮革、と呼ばれる革はどんなものがあり、歴史上どこで使われてきたのか・・・など、資料交えて解説してみましょう。
*
目次 [hide]
水に住んでいる生き物の革は水産皮革
鮫革とエイ革。隣同士で紛らわしい話
宮城県汽船沼では鮫革を作っている。今も。
宮城県汽船沼の鮫はヨシキリザメ
実際に手元にある鮫革はシボのあるふんわりとした革
戦時中は代用革として靴などに使われていた
鮫の革はゴツゴツ?ふわふわ?
私も見たことがない鯨の革の歴史利用
うなぎの革もあるけど、これもみんなが食べている鰻ではない
厚み0.5mmで幅が10cm弱
鰻の皮って食べるよね?
ただ単に見た目が似ているからって「ウナギ」とつけられたヌタウナギ
日本から 輸出されたヌタウナギは食べて鞣されているのか?
浦上製革所さんのナルトビエイの革がこうなった!ここで触れます!
地層のような表情が出たナルトビエイ
まだ試作品段階ですが、4/2.3の革日和で触れます
*
水に住んでいる生き物の革は水産皮革
水産皮革、という表現は戦前戦中くらいによく使われており、現在はそれほど見かける単語ではありません。
下記は1973年発行のストックグラフに掲載された昭和13年=1938年の水産皮革の鞣しの写真です。
(ストックグラフはストック小島さんが昔出していた業界紙。100冊ほどは手に入れたんですが、全巻揃えるのは大変だろうなぁ(´Д`)ハァ...)
内容としては、「海外からの原皮供給が途絶えてしまったが、日本は島国。おかげで海洋生物が多く取れ、その皮革が使える。クジラや鮫革があるよ!」というものです。
ここらの戦前戦中戦後の革の話をしだすとものすごく長くなりますので、置いておきます。話し出すとここらは長いんですよ(;・∀・)
さて、この写真から水産皮革の話をスタートしましょう。まずは写真にも写っている「鮫」から。
鮫革とエイ革。隣同士で紛らわしい話
宮城県汽船沼では鮫革を作っている。今も。
趣味と実益かねて漫画だろうが小説だろうがTVだろうが映画だろうが、革に関わりそうなものは手当たりしだいに収集しています。
どれだけ「TVよりもネットだよね!」という時代が来ても、TV屋さんが集めている映像資料やツテ、取材に使われる金額などはやはりすごいものがあります。ですが、このTVという媒体は厄介で、収集しそこなうと後日手に入れるのにものすごく苦労します。
個人的に「工場潜入!」「職人探訪!」的な番組は問答無用で録画していますが、数年前にこの宮城県の鮫の加工会社が映し出されました。こちらの会社では鮫を市場で購入後、かまぼこを作ったり、コンドロイチンを取った後に革も自社で鞣している、という説明。えっ!宮城県汽船沼で実際に鞣しまでしているのか!と革関係者で驚いたものです。まさか姫路市やたつの市のタンナーに外注ではなく、内製していたとはなぁ(;・∀・)
宮城県汽船沼の鮫はヨシキリザメ
こちらの鮫はヨシキリザメ、と呼ばれている鮫。
鮫で実際に価値があるのは肉よりもフカヒレ、と呼ばれる部分。ヒレ部分ですね。こちらが一番価値があります。中華料理の高級食材ですから。
実際に手元にある鮫革はシボのあるふんわりとした革
厚みは1.5mm前後。ふんわりとしており、シボ(=シワ)が入っています。引っ張るとシワが伸びるので伸びます。強度的なものは要求しづらいですね。
こちらの鮫革、現在は財布やカバンなどに使われていますね。結構カッコいい革ですよ( ´∀`)bグッ!
戦時中は代用革として靴などに使われていた
靴を勉強しようとして検索したら出てくる「靴の話 大岡昇平戦争小説集」という小説があります。
まぁ、靴の技術的な勉強には全くならないのですが、戦時中の靴の重要性を学ぶには最適な話です。
いやぁ、靴がないと戦争なんてできないな、としみじみ思います。この中で鮫の革の記述があります。
*
それはサイパンの玉砕頃から、前線行きの兵士に渡り出したゴム底鮫皮の軍靴であった。ゴム底は比島「フィリピンのこと」の草によく滑り、鮫皮はよく水を通した。
我々は魚類の皮膚がいかに滑らかに見えようとも、決して水を弾くようにはできていず、彼らの体は周囲の水と不断の滲透状態にあるのだという事実を体得した。駐屯中の討伐や出張、米軍が上陸してからの四日の山中の逃避行で、「植物」たる靴底は「動物」たる上皮と永遠の別れを告げた。
下記は正倉院の中に納められている金銀鈿荘唐大刀という刀。「把は鮫皮巻」とあります。
江戸時代の南蛮貿易のリストを見ると結構な枚数がわざわざ海外から輸入されています。
「宮城県汽船沼で鮫は取れていたのに
わざわざ海外から鮫皮を輸入していたのっておかしくない?」
「鮫肌って言うくらいだから鮫革は
ガサガサゴワゴワしていると思ったのに
ふんわりしているっておかしくない?」
そう、おかしいんです。
でもおかしくない。
理由は、「日本では昔からエイのことを鮫とよんでいた」ということを理解するとわかりやすくなるかと思います。
鮫の革はゴツゴツ?ふわふわ?
日本の歴史書物で革を調べるとちょこちょこと出てくる「鮫革」が、実際は「エイ革」であるケースが多いです。
例えば、、刀の柄=持ち手部分には滑り止めとしてゴツゴツとした鮫革が重宝されました。
これは実際に私達が現在イメージする「鮫」ではなく、「エイ」革です。
*
把の「鮫皮巻」は鮫皮特有の突起した鱗がなく、粒状の鱗であり、さらに真珠状の大きな粒があるので、噂(エイ)皮と判断する。
把の懸緒は明治の修理の会符がついており、この革はその時に修復された新しい革と見られる。
*
下記は私の手持ちの「エイ」革ですが、こちらは刀の柄に巻かれたようなゴツゴツが存在します。この手のエイは日本近海では生息しておらず、南洋に生息しています。そのため刀の柄に使うためにも江戸時代、南蛮貿易で大量に輸入されていました。
例えば、、、「わさびをおろすには鮫皮がいいのよ」とよく言われています。ですが、こちらもエイ革です。
*
「鮫皮」とは、【皮歯(ひし)】と呼ばれる硬い粒が表面を覆っている、ある種のサメ又はエイの背皮の総称です。そのため原料となる魚が「サメ」である場合も「エイ」である場合もあります。このうち当社が使用する「鮫皮」は皮歯の粒がきれいな凸型をしており、目詰まりがしにくく、山葵などをおろすのに最も適したものを厳選しております。
「鮫皮」と聞くと、映画に出てくる人食ザメのような鮫をイメージする方があるかも知れませんが、この様なサメからは「鮫皮」は採れません。現在当社が使用するのはエイの仲間である「ガンギエイ目、ウチワザメ科」の皮です。
ワールドヴィジョン株式会社 鮫皮おろしについて・鮫皮おろしの歴史・Q&A より
*
もちろん鮫の中には楯鱗、と呼ばれる鋭い鱗を持つものもいます。ですが、世間一般的にイメージする「ゴツゴツした鮫革」というものは実際には「エイ革」というケースは多いです。
実際前回のblogで紹介したエイ革もゴツゴツはあまりなく、「筋肉質だな!」というのがよく分かる革でした。
村木るいさんの「人に話したくなる革の話」/ナルトビエイの革づくりの現場を見てきた話&皮革業界の動画活用事情
私も見たことがない鯨の革の歴史利用
手元の文献で調べると鮫革の記述の脇によく並んでいるのが「鯨」革です。
*
昭和一六年(1941)一二月八日、わが国は日米交渉の打ち切りを通告、太平洋戦争に突入しました。皮革ならびに革製品の民需用は修理用の一部を除いて軍用に組み入れられ、そこで登場したのが「代用革」です。水産皮革と呼ばれるクジラ革、サメ革、あざらし革の他、犬や猫までが使用されました。
「皮革産業を支える人々」 58頁より
*
で、悔しいことに実物の鯨の革を未だに触ったことがありません。記述では色々見るんですけど、日本では鯨の革は盛んに使われた、とは言えません。食べちゃいますからね、日本人は鮫の皮部分まで。皮まで食べちゃうと革はつくられません。
戦時中には鯨の革を鞣し、特攻隊の半長靴(半長靴 - Wikipedia くるぶしと膝の中間あたりまでの長さのブーツ)として使われていたようですね。
*
「日本水産」に在職中の昭和十二年に大東亜戦争に突入しました。
「日本水産」は捕鯨が大きな仕事で鯨の皮を鞣すのですが、これが革屋に入るキッカケになったんです。
(鯨の皮を用いるのは)特攻隊の半長下ですね。鯨の皮っていうのは厚さが六〇センチ位あって上の黒皮を剥いで、その下が全部革になるんですよ。黒皮のすぐ下が一番良い銀面で何層にも剥くわけです。それを鞣して靴・バンド(薬盒)を作ったわけです。それを赤羽にあった陸軍の被服本署に納める担当をしていました。会社に軍から監督官という少佐が来ていて、私は徴兵されたものの三日で呼び戻されました。
(鯨の鞣しは)昭和二八年位までやっていましたよ。戦争が盛んになって軍が静岡に用地を買収してくれて「大洋漁業」と「極洋捕鯨」と「日本水産」と合弁で(=「日産皮革」)三島の大場に工場を建ててそこで鞣していたのですよ。_木下川地区のあゆみ・戦後編 37頁
*
この木下川地区では革を鞣すタンナーが存在し、鯨は油も取られていました。脂からは石鹸、グリセリン、硬化油も作られていました。
戦時中には水産皮革として鯨なり鮫が使われましたが、ここらは「優れている素材」だからではなく、単に戦争により海外から原皮を輸入できなくなったから仕方なく使った、という代用品です。
現在も汽船沼のヨシキリザメは使われていますが、もちろん戦時中と異なり、鮫革の良さを活かした革利用となっています。
・気仙沼のサメ~Vol.02 サメ革を使ってものづくりにチャレンジ! | 千駄ヶ谷大通り商店街-グリーンモール-(せんだがやおおどおりしょうてんがい)
・美しいシボが織りなすKESEMA | 最高級のメンズ革製品 GANZO(ガンゾ)公式WEBサイト
うなぎの革もあるけど、これもみんなが食べている鰻ではない
変わり種として鰻の革を触ってみましょう。
厚み0.5mmで幅が10cm弱
厚み0.5mmという薄さ。
ぺらんぺらんです。
実際に使う際には下記写真のように何枚も継いで1枚のA4くらいの大きさにしてしまいます。
使い方としては財布以外では見たことないですね。
鰻の皮って食べるよね?
さて、前述している鮫の革は現在も流通しています。鮫のヒレはフカヒレ。身の肉ははんぺんや、かまぼこなどに使われます。で、余った皮が革として有効活用されているわけです。
鯨の皮は日本人は食べちゃいます。ですので革は出回りにくいわけです。
で、鰻。たべちゃうよね、皮ごと。基本的に皮部分ってのは脂が載っているので美味しいんですよ。脂=旨さです(≧∇≦)b
じゃぁ、この鰻の革はどこから来たかというと、ヌタウナギです。
ただ単に見た目が似ているからって「ウナギ」とつけられたヌタウナギ
ヌタウナギは単に見た目だけ似ているから「ウナギ」という名称がつけられています。
「鮫≒エイといい、日本人は名称がいい加減だなぁ」とか思ったのですが、海外でもヌタウナギの革は「eel leather」と名付けていたりします。
>EEL Leather | DECORATIVE COLLECTIONS | FOGLIZZO 1921. Italian Custom Leather
このヌタウナギ、見た目がウナギに似ているだけで全然ウナギに近くないし、厳密に言うと魚からもちょっと外れています。(;・∀・)
wikipediaを見ていると日本では一部地域以外ではあまり食べられておらず、韓国に輸出されています。
*
韓国のヌタウナギ料理コムジャンオ・ポックン(꼼장어 볶음) - ヌタウナギをニンニクと炒めコチュジャンで味付けた料理
ヌタウナギの一大消費地は韓国であり、藁を燃やして丸焼きにしたり、ぶつ切りにして葱やコチュジャンで炒めたり、焼肉風に焼いて食べる。
日本では長崎県や新潟県など一部地域で塩焼きや干物などで食用にされるが、全国的にはほとんど食用として流通していない。秋田県の男鹿地方や新潟県においては「浜焼き穴子」「棒アナゴ」という加工食品が作られ、燻製や干物も生産されている。なお従来はクロヌタウナギと思われていたがキタクロヌタウナギだったことが判明している[16]。
アメリカではヌタウナギを食用とする習慣はなく、漁獲する関係者でも食べる習慣はない。アメリカのヌタウナギ漁業は、その革を目的とする物以外は、すべて韓国への出荷用途である。
ヌタウナギの革はイールスキン(eel skin)と呼ばれる。イールスキンは独特の模様を持ち、牛革より強度が有り、かつしなやかである。韓国やアメリカではイールスキンで作った財布などが革製品として流通している。繁殖力はそれほど強くないようで、食用や皮革用に集中的に漁獲すると資源が急速に枯渇してしまった事例が報告されている。
*
日本から 輸出されたヌタウナギは食べて鞣されているのか?
wikipediaの料理法を見る限り、韓国ではぶつ切りで炒めている。これ、鞣した状態で0.5mmということは、食用に皮を剥がして、ぶつ切りにしているだろうか?皮を剥がすと食感が変わってしまう。革のためだけに皮はぎとるのは非効率的だから、「皮を剥いだヌタウナギ料理」が存在するのかな??
で、つらつらと調べてみると、、
*
(4)韓国での市場調査
平成 18 年から毎年、韓国の釜山において、水産物の輸出業者とともに市場調査に行き、現地の ヌタウナギ取扱業者と情報交換を行っている。
韓国には、日本産ヌタウナギの外に、ニュージーランドやアメリカ産(以下、「外国産」という) の安価で大型の冷凍したヌタウナギが大量に輸入されており、主になめし皮の原料として利用され ていることが分かった(図6)。一方、日本産ヌタウナギは、外国産に比べて小ぶりであるものの、 食感が良いことから、食用として需要が高く、そのほとんどが活魚で輸入されていることが分かっ た。
これまでは日本産と外国産ヌタウナギの用途が異なっていたが、最近は外国産ヌタウナギも食用 として活魚で輸入される割合が増えており(図7)、小ぶりの五島産ヌタウナギは料理に手間がかか るため、サイズアップが求められている。
*
ってことは、韓国は食用として日本から輸入しつつ、観光資源なり国内革製品のためにも革素材としてアメリカからヌタウナギを輸入しているのか。なるほどなぁ。上記のPDFは2009年のものですので、12年前のもの。今はまた違うものになっているでしょうから、興味が持てますね。
つまり私の手元にあるこのウナギ革の財布(勉強のためにバラし済み)はアメリカで採られて、韓国に送られ、日本の観光客が買って日本まで持って帰ってきたと思うと、随分と地球を飛んできたなぁ、と感慨深いものがあります。
浦上製革所さんのナルトビエイの革がこうなった! ここで触れます!
水産皮革についてはまた書いていこうと思います。鮭とか鯉とかブラックバスとかあるのになぁ(´・ω・`) まぁ、おいおいと書いていきます。
「個人的にはナルトビエイは牛などの既存の革に近づけるのではなく、ナルトビエイらしい荒々しさを出したほうが絶対に需要がある。牛そっくりな革を作るならば、牛を使うもの」と好き勝手前回お伝えしていました。
で、2週間後
浦上製革所さん「ムラキさん!言われたようにシボを出してみたんだけどどうかな?」
おぉ!前向きだ
地層のような表情が出たナルトビエイ
下記は前回お預かりしたナルトビエイの革。
で、今回の革。左がヒレの腹側。右がヒレの背中側。
おぉ!前回は伸ばされてピン!とした感じだったが、細かな線上のシボが出るようになりました。まるで地球によって万年億年積み重ねたような地層のような表情。 カッコいいやん!
この筋1本1本が筋肉部分かぁ。。さぞかし鞣しづらいだろうに。。これは独特で面白い革ですなぁ。大きさがせいぜい3DS(デシ。1DS=10cm×10cm)弱しかないので、財布くらいにしか使えないですが、使い方で面白いものができると思います。
まだ試作品段階ですが、4/2.3の革日和で触れます
今週末の4/2.3の金.土、革日和in大阪で参加の山内商事さんで実際に触ることができます。10枚ほどしか用意されていないのですが、販売可能です。「4/3 土曜日にいったら売り切れているんちゃうの!?」という方向けに私が預かっているナルトビエイの革も展示してもらっておきます ( ´∀`)bグッ!
4/2.3(金土) 本日は革日和♪in大阪 フルメンバーで開催&lized塗料相談会&徒歩ツアー開催 | 本日は革日和♪
今回の革日和では8年ぶりに徒歩ツアーをします。
2021/4/2(金) 13時~16時 革日和in大阪 漉き屋とカバンメーカーを見学するてくてくツアー | 本日は革日和♪
以前このblogでも紹介した「割り漉き屋さん」を実際に訪れて紹介します。作業風景や実際の話しをきくと「職人ワザすごい」と唸ってしまいます。
村木るいさんの「人に話したくなる革の話」 革を薄くする仕事「漉き割り」の世界 | | JLIA 日本皮革産業連合会
February 24, 2021
村木るいさんの「人に話したくなる革の話」/ナルトビエイの革づくりの現場を見てきた話&皮革業界の動画活用事情
カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」
毎度です!「ちょっとアフターコロナの動きが見えてきているなぁ」と気配を感じているムラキです。
普段のお仕事は請負職人なので景気に左右される側面があります。で、ちょっとだけコロナ収束後の反動景気に備えた動きが始まっている気配がしてきましたね。
今回は
・兵庫県たつの市の浦上製作所でナルトビエイの革を見た
・NPO法人たつのレザーさんのZOOMセミナーを聞いたり、 東都製靴工業協同組合がセミナーをネット視聴して考えた
という2本です。
*
目次 [hide]
浦上製作所のナルトビエイ
前から気になっていたナルトビエイの革
で、実際に行ってみた
浦上製革所ってどんな革作っているか?
ここが大変だよ、ナルトビエイ
ここが面白いよ、ナルトビエイ
この革がほしい!と思ったら
コロナ禍だからこそ、動画でセミナーが見やすくなってきている
NPO法人たつのレザーのZOOMセミナーを聞いてみた
最近東都製靴工業協同組合がセミナー動画を公開している
動画の敷居がものすごく下がっている
*
浦上製作所のナルトビエイ
前から気になっていたナルトビエイの革
昨年秋のジャパンレザーアワードの応募作品一般公開で靴コーナーに展示されていたのが、このナルトビエイで作られた靴でした。見たときに「あ、これはアワードをこの革のお披露目会場として使っているな」と感心しました。
応募作品 | Japan Leather Award 2020 | ジャパン レザー アワード 2020
応募作品の会社名が「たつの市商工会」という名義だったのも印象的でした。
(以前アワードのblogでも書きましたが、作品紹介のポストカードは 絶対作っておいたほうが将来的に繋がります。この応募者はそこら辺を理解して、アワードを割り切って宣伝の場として利用していましたね。良いことだと思います( ´∀`)bグッ!>村木るいさんの「人に話したくなる革の話」/「ジャパンレザーアワード2020」を解説してみる | JLIA 日本皮革産業連合会)
下記動画でも紹介しています。
で、今年1月にJLIAのHPでも告知が載っており、気になったので連絡。
世界初の皮革素材 ! Mitsu Eagray (ナルトビエイ革)
で、実際に行ってみた
JLIAの皮革企業大図鑑で住所と電話番号調べて。。実際に電話して予約取り付け。2月の下旬、春間近な温かい日を選んで来訪しました。
浦上製革所ってどんな革作っているか?
|
タンニン鞣し・クロム鞣しで鞄用革やグローブ用革などが多く、タンニン鞣しにしてもドラムタンニンでソフトな風合いが多めでした。
で、ナルトビエイ。
ここが大変だよ、ナルトビエイ
ーーーーーーー浦上製革所さん、そもそもなんでナルトビエイ始めたの?
浦上製革所さん「ナルトビエイって害獣なんですよ。たつの市は漁港があり、アサリや牡蠣が取れるんですが、このナルトビエイはそれら貝類をバリバリと食べちゃうんですよ。潮干狩りのためにアサリをばらまきますが、奴らは薄いので浅瀬までやってきます。場合によっては浅瀬に埋まっています」
ーーーーーーー浅瀬に埋まっているなんてやつらにしたら潮干狩りのアサリは上から降ってくる餌でしかないですやん(´・ω・`)
浦上製革所さん「そうなんですよね。で、害獣駆除の一環でナルトビエイを捕獲して、缶詰まではできたんですよ。たつの市商工会が『皮が取れるが、これをタンナーサイドで革に鞣せないか』という呼びかけがあったんですよ。そのときに手を上げました」
ーーーーーーー ん?でも、今までやってきたのはタンニン鞣しが多かったし、牛中心でしょ?魚であるエイって全然違う世界なのによく手を上げましたね。
浦上製革所さん「今まで通りのことをやっていても面白くないし、違うことをやっておかないと将来怖いじゃないですか!それに魚でノウハウ積めたら爬虫類などもできるようになるかな、と思ったんですよ」
ーーーーーーー爬虫類と魚、、、全然違うだろうなぁ(;・∀・)
浦上製革所さん「爬虫類は鞣したことないから明確に違いはわからないですが、牛とエイは全然違いましたね。まず熱に弱いですから気を使います。ドラムで回すときに摩擦により熱が発生します」
ーーーーーーーあぁ、魚介類は常時水温の世界にしか行きていないから、皮が40度以上になると収縮なりするでしょうねぇ。厄介だな。。
肉は水産加工会社がとるでしょうけど、エイでしょ?今まで皮を有効活用するためにきれいにとる、という経験値が溜まっていないだろうから、大変だろうになぁ。
浦上製革所さん「そうです。うちに来た時点で10kgの重さがある原皮がシェービング(皮の裏側の付着している不要な肉部分除去)で5kgになります」
ーーーーーーー半分を手作業でシェービング!? それはきっついなぁ
浦上製革所さん「わかってくれますか!小さいし、エイってなんか筋があるんですわ。それがあるから余計に剥がしにくい。この画面右下部分のモシャモシャ舌部分が筋ですね」
ーーーーーーー あぁ、なるほど、エイヒレだから、居酒屋で食べるエイヒレ炙りと同じですね。端っこの部分の方が筋が硬いんでしょうな。下記動画はナルトビエイではないですが、基本的な構造は同じですね。このエイヒレ部分が硬いでしょうなぁ
浦上製革所さん「あと、背中と胴体部分で表情が微妙に異なりますね。こちらは実際に財布を仕立てたものです」
ーーーーーーー製品になった状態で見てもわかりますが、エイヒレの炙りに似ていますねぇ。
浦上製革所さん「そうですね。大きなナルトビエイは50kg、大きさ150cmまで行くんですが、取り都合は悪いです。鞣すとどうしても大きさが小さくなりますから」
ーーーーーーー水産皮革は水分が多いので、なめしたときに収縮率も高そうですなぁ。だから財布や靴を仕立てる際にもパッチワーク的に使うしかないでしょうなぁ。
浦上製革所さん「試験所で検査しましたが、引張強度は牛の2倍ほどは有りました」
ーーーーーーーそれだけあるなら靴にも使えますねぇ。害獣駆除なので養殖できるわけじゃないから爆発的に需要高まっちゃうと大変なことになりますね(;・∀・)
浦上製革所さん「それだけ売れたら良いんですけどねぇ。どうしても手間暇考えると値段は高くなりますね。DS単価で考えると1000円~2000円の間になります」
ーーーーーーーん~、良いんちゃいます、それでも。仮にDS単価500円でも買わない人は絶対買わないし、欲しい人はいくらでも買う。そういう素材でしょ、これは。
ここが面白いよ、ナルトビエイ
革としてはシボはなく、厚み1.4mm弱。エイヒレの様に平行四辺形のモザイク状の繊維が連なっています。
タンニン鞣し、かつ、繊維が不均衡なためヘリ返しに向きません。
また、大きさが不均一なため1枚革として使うならばオーダーメイドなどの1点物の使い方がオススメです。量産品で使うならば、パッチワーク的な使い方を考えないと難しい素材です。大きさが30cm×20cm程度しか有りません。
「きれい」という革では有りませんが、海の荒々しさが感じられる面白い革だと思います。
「エイヒレの炙り食べたことある?あの革」と言われて見てみると確実に「あ、ほんとだ!」というのはわかります。
ナルトビエイを素材として使いたいならば、ナルトビエイを取り巻く背景を知っておいたほうが良いと思いますので、下記サイトあたりオススメです。
漁師の敵?「ナルトビエイ」をおいしく食べたい :: デイリーポータルZ
有害魚「ナルトビエイ」を"エイっ"と加工 「御津の大根」も"ダイタン"に利用 兵庫・たつの市の新名産品 | ラジトピ ラジオ関西トピックス (jocr.jp)
「神戸新聞」(2月18日)
この革がほしい!と思ったら
現状では浦上製革所さんに直接お問い合わせください。
ただ、背中とお腹、1枚1枚で表情が非常に異なる革ですので、気楽に通販で買える、という革では有りません。また、手間暇のかかっている革ですので決して安い革では有りません。
浦上製革所さんが「販売の手間かかりすぎている!」と思ったら懇意にしている革屋さんが販売すると思います。その際はこちらの情報も書き換えます。
コロナ禍だからこそ、動画でセミナーが見やすくなってきている
NPO法人たつのレザーのZOOMセミナーを聞いてみた。
たつのレザーさんは兵庫県たつの市にあるタンナーさんで作られたNPO法人です。
たつのレザーさん「ムラキさん、今度『皮革産地のブランディングについて考える』というセミナーをzoomで行うんですが聞かれます? 講師は西村祐子さんで、、」
ーーーーーーーーー西村祐子さん! タンナーに取材して「革を作る人々」という本書いた人やん。それは面白そうだなぁ
ということで、浦上製革所さんの取材のあとに姫路駅近辺でZOOM受講。
こちらの内容、大学の先生らしく、途中受講生同士のミーティングなども行われます。
2月26日には後期が行われますが、22日のセミナーを受講した人じゃないとちょときついです。
3月2日、3月9日のセミナーはたつのレザー以外の人も受講可能ですので、興味ある方は下記からどうぞ
最近東都製靴工業協同組合がセミナー動画を公開している
東都製靴工業協同組合さんが最近行っているセミナーをYouTubeにて外部に公開しています。
「withコロナ時代」を生き抜く企画のヒントとトレンド分析、や、「売れているモノのかたち」など面白い話題も多いので興味ある方はぜひ。
動画の敷居がものすごく下がっている
コロナによってステイホーム=家での滞在時間が増えたこと、や、接触回避により「動画を見る」「動画で発信する」という行為の敷居が急激に下がっているように感じます。
ちょっと前は「当社がやるならば、かっちょいいプロの動画を!」「金かけなきゃ!」という風潮だったのですが、「お金かけるよりもとにかく発信を」という方向にシフトしているように感じます。
年々個人が発信する動画の質は高くなっているように感じます。撮影機材にせよ、技術にせよ、動画編集にせよ、です。その一方で視聴者の「プロ並みの動画じゃないと見れないよ」という層が「機材や編集がプロ並じゃないけど、内容が興味そそられるものならば見よう」というように「視聴者が動画に求めるレベル」も下がっているように感じます。(客観的なデータとしては世界的な視聴時間の変化、とか、YouTubeサーバーの負荷などがあげられますが、そのデータから「視聴者が動画に求めるレベルが下がっている」という結論はちょと導きづらいですけどね)
コロナにより「以前と同じ世界」は失われているように思えます。
いろいろな人が「今の自分達にできること」を模索して、Try&Error&ReTryしているのは見ていてワクワクしますねぇ。つくづく面白い時代です。
January 27, 2021
村木るいさんの「人に話したくなる革の話」/「ものつく」~つくりたいとつくれる、をつなげるマッチングサイトに話しを聞いてみた
カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」
毎度です!「緊急事態宣言が出たけど、自宅で仕事しろ、と言うならミシンとクリッカーを運んでくれよ、合計1トン!」とぐちっているムラキです。
腕ミシンとコンピューターミシンと、クリッカーで合計1トン越え。あと部屋に200v単相電源引いてもらいたいものですわ(´・ω・`)
さて、先日知り合いから「ものつくってサイト知っています?どんなの?」と相談が。
ものつく?んと、「つくりたいがつくれる」「つくりたい、と、つくれる、をマッチング」かぁ。
知らんなぁ。運営会社は、、、なんだ、大阪のナダヤさんか。財布メーカーだけど、こういうネットの商売はしていないはずだったんだが、、はて。
それじゃ実際に聞いてみよう、ということで聞きに行ってきました。
目次 [hide]
ものつく、という作り手と依頼者マッチングサイト
じゃぁ どういうサイトなのか実際に聞いてみよう
なんでこういうサイト作ったんですか?ナダヤ、という会社にとって旨味があるの?
工賃なども書いてあるのはすごいな、と思いましたが、、
想定している対象層は?
依頼の流れ的にはどうやるんですか?
安く! とにかく安く作って欲しい!という人が来たら?
引っ越しや車を相見積もりするサイトと同じように思われかねないですが、聞いてると違いますねぇ。
前払いは嫌だなぁ、という人は多そうですよね
ものつくに登録して受諾者になってみたい、という作り手・メーカーさん向けの情報
靴やベルトなども可能なんですか?
問屋さんなどをメイン取引先としたメーカーは登録するメリットは何があると思います?
例えば手作り作家さんが登録したい、と言ったらどう思います?
端切れで安く買ったので出来ませんか? という依頼は?
ーーのサイトで1万円で売っているものを4000円で作ってもらえるの? それで自分で8000円で売りたい!というのが来たらどうする?
ものつくに仕事を依頼する依頼者になってみたい、という人向けの情報
袋詰や検品はしてもらえないですよね?
メーカーさん的に、「ここを押さえてくれるとラクだ!」という依頼方法は?
依頼者の立場(店舗名なり)を書いてもらうのはありがたいの?お店の名前を出したくない、という人は山程いそう。
手作り作家さんなりが「自分の作品を量産してほしい」というのは可能?
受諾者も依頼者も確実なやり方ってなにがある?
ムラキの雑感
ものつく、という作り手と依頼者マッチングサイト
既存としてはnutteというサイトが以前からあります。
あなただけの縫製工場「nutte(ヌッテ)」 | あなたの「縫って!」を叶えます
こちらは布主体で革はそれほど得意ではありません。また、依頼者は量産、ではなくて、オーダーなり少量量産品が多いですね。
以前見ていたらとんでもない案件もあったり。。「防弾チョッキを縫ってください。今まで頼んでいたメーカーに断れられたので」と。そんな人様の命預かりかねないもの、怖くて縫えないよ((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
以前このblogで「何かを作りたいならばメーカーに頼んだほうが確実」と書きましたが、このメーカーさんを探すためのプラットフォーム、といえます。
村木るいさんの「人に話したくなる革の話」/自分の思った鞄や靴の量産依頼したい時にはメーカーに頼んだほうが確実、という話 | 欧米ブランドに「負けていないぞ !」 | JLIA 日本皮革産業連合会
じゃぁどういうサイトなのか実際に聞いてみよう
ということで、実際にサイト運営をしているナダヤさんの担当さんに遠慮なく話を聞いてきました。
ナダヤさんは創業60年の財布メーカーさんです。
実際に挨拶してみたら驚いたことにサイト運用も自社でやっている。あれ?てっきりこのサイトは外注運営だと思ったのに、ほんとにナダヤさんの会社スタッフさんがこのサイト運営・運用しているんですねえ。ちょっとびっくり。
実際に工場を見学した感想は下記にまとめました。
大阪の財布メーカーなだやさんに行って、現場を見てきた | phoenix blog
なんでこういうサイト作ったんですか?ナダヤ、という会社にとって旨味があるの?
事前に依頼者から全額前金で、ものつくがプール。で、終了後に5%差し引いて受諾者に渡す。これって御社的にあまり旨味ある事業じゃないですよね?よく会社が了解しましたね。
ムラキさん、ほんとに遠慮なく聞きますね(;・∀・)
社長は「やってみたらええやん」と後押しをしてくれました。
うちの会社はチャレンジを推奨している会社です。
これは常時危機感を持っているからですね。ご存知のように、財布などは今後キャッシュレスが増えていくので、新しいことをしないといけない、という危機感を持っています。このものつく、というサイト作りもこの危機感に対するチャレンジの一環ですね。
その分幅を持っていますね。例えば、トートバッグでしたら、1500円~6000円です。この幅は作り方・使う素材や、注文ロット数によっても左右されます。
つくれるもの一覧|ものつく -ファッショングッズOEMメーカーマッチングプラットフォーム-
まぁ、ザラッと見ましたが、確かにこのくらいかな、と思います。工賃のみで、部材などは別で考えたらまぁこの範囲内に収まりますね。
想定している対象層は?
対象は小売事業をしている方です。
例えば洋服屋さんでも駄菓子店舗でも、YouTuberでも構いません。条件が整えば、見積もりを出すメーカーはあります。
コロナにより販売機会は減っていますが、購入意欲は減っているとは思いません。売れているところはきちんと売れています。
「モノの売り方」というのが昔に比べると格段にハードルが低くなっていますよね。
新しくブランドを立ち上げる。クラウドファンディングをする。SNSをする。多様な手段で「モノを売る」ことが可能になってきたと思います。チャレンジしやすくなったんですよね。まぁ、逆に言うならば「モノを売る」という行為で競争相手が入りやすくなってきました。
それに対して「モノを作る」方は量産品に関しては未だにまだ情報が手に入れづらいのが現状です。
このサイトがその一つの手段になればな、と思います。
依頼の流れ的にはどうやるんですか?
依頼者向けご利用ガイド|ものつく -ファッショングッズOEMメーカーマッチングプラットフォーム-
こちらに書いてありますように、製作依頼として「財布」「使用素材」などを選んでもらい、その後に出てくる会社に仕様書を送ってもらいます。その後にサンプル作成と見積もり、となります。サンプル作成の時点でお金が生じます。
ムラキ「私が依頼者ならば、サンプル作成して、「思ったとおりじゃなかった!」と思ってもサンプル代金は必要なんですか?と言ってしまいそうですが。」
そこらは会社さんにもよりますが、基本的にサンプル代金は必要となります。
その後サンプルと見積もりに納得したら、全額をものつくに入金してもらい、その後製作に入ります。
例えば、「サンプルを見て納得出来なかったら半額返金」なりもありえますが、それらは受諾者さん次第です。
安く!とにかく安く作って欲しい!という人が来たら?
それも条件次第だと思います。ただ、私は「コスト感」と呼んでますが、これがかけ離れている人とは見積もりも難しいですよね。
引っ越しや車を相見積もりするサイトと同じように思われかねないですが、聞いてると違いますねぇ。
その手の相見積もりサイトは要件を入力すると、興味ある会社が連絡をする、という手段ですよね。
ものつく、では、依頼者が自分で条件を入力し、合致するのが6件出てくるならば、その6件に個別に連絡を自分でとってもらいます。
依頼者と受諾者のやり取りはサイト内でやってもらいます。
前払いは嫌だなぁ、という人は多そうですよね
多いでしょうねぇ。でも、受諾者サイドも初めてきたお客さんがきちんとお金払ってもらえるかどうか、ってものすごく不安なんですよ。
このサイトを通すことで、5%収入は減りますが、お金の回収が不可能になることは避けられるかと思います。
ものつくに登録して受諾者になってみたい、という作り手・メーカーさん向けの情報
靴やベルトなども可能なんですか?
もちろん可能です。
問屋さんなどをメイン取引先としたメーカーは登録するメリットは何があると思います?
当社もそうですけど、問屋さんからの仕事をメインにしてしまうと、どうしても消費者や販売者さんの声が聞きづらく、何が需要あるか、などがわかりにくくなります。
ものつく、に登録してもらうことで、そういう声を聞いてもらったり、逆に「あぁ、問屋さんの仕事をメインにした方が良いな」と思い至ったら、そちらにシフトをすれば良いと思います。
問屋さんの仕事を否定しているわけじゃないです。
問屋さんの仕事はフォーマットがきっちりしています。必要な情報が明確になっているわけです。
必要な情報、とは、大きさや使う革、使いたい金具や、納期、ロット、内縫いなのか外縫いなのか、などがわかりやすい仕様書にまとまっています。これがあるとないとでは、作業する際にものすごくリスクが高くなります。
ものつく、に登録して受諾者になる、というメーカーさんなりは、この仕様書を自分で全部聞き取って作る、ということです。
この覚悟が持てるならば、東京、大阪以外の地域でも仕事は取れると思います。
逆に言うならば、依頼者もなるべく細かく仕様書を整えたほうが、品は完成しやすくなります。
例えば手作り作家さんが登録したい、と言ったらどう思います?
別に問題ないかと思います。オーダーをお願いしたい!とか、10個だけ作って欲しい!とか、手縫いで作って欲しい!となると手作り作家さんのほうが格段に強いと思います。棲み分けは可能かと思います。
端切れで安く買ったので出来ませんか?という依頼は?
依頼者からの提供=部材の提供ですね。その部材が「ハギレ」というケースですよね。
これは十分考えられることです。
それが端切れなのか、革屋からの品なのか、どこかで5年眠っていた革なのかは、ものつく、としては干渉出来ません。交渉を受けた受諾者が「ハギレでも良い。やります」というならば、構わないと思います。
ただ、ものつく、ではなく、メーカーの立場から言うならば、端切れでの量産は非常に難しい。最初に依頼者から提案するときに「ハギレで作って欲しい」など明言してくれたほうが、後々のトラブルは減りますね。
ーーのサイトで1万円で売っているものを4000円で作ってもらえるの?それで自分で8000円で売りたい!というのが来たらどうする?
それも問い合わせされた先次第ですよねぇ。
ただ、その手の販売されている品は数百個を作っているからこその値段であり、例えば50個100個作ったくらいでは到底その値段では製作出来ないですよねぇ。
ものつくに仕事を依頼する依頼者になってみたい、という人向けの情報
袋詰や検品はしてもらえないですよね?
ものつく、というサイトはマッチングサイトです。
そのため、袋詰や検品などは一切できません。
また、トラブルが起きたときも基本的に当事者間で話してもらいます。
メーカーさん的に、「ここを押さえてくれるとラクだ!」という依頼方法は?
最低限イラストはほしいです。
「この写真に載っている財布で、ポケットを増やしてもらいたい。イラストはこんな感じ」と書いてもらったものを送ってもらう。その次の段階で該当する品の実物を送ってもらって「ここにポケット追加」など書いてもらえたらありがたいですねぇ。
次の段階としては気になっている商品の写真や、「こういう革がいいです」など指定してもらえると助かりますね。
依頼者の立場(店舗名なり)を書いてもらうのはありがたいの?お店の名前を出したくない、という人は山程いそう。
それは書かなくても良いと思います。依頼のハードルをあげたくないですね。
もちろん書いてもらえるほうが受諾者としては安心感はありますが。
手作り作家さんなりが「自分の作品を量産してほしい」というのは可能?
それも受諾者次第ですよね。
ただ、メーカーさんによっては他の作り手がサンプルを切った刃型は使えない、というところもあります。そこらも相談次第ですよね。
受諾者も依頼者も確実なやり方ってなにがある?
有り型や持ち革を利用してもらうのが一番確実といや確実ですよね。
例えば当社だったらOEM向けの財布の型紙や刃型があります。これらは当社で何百も作ったことがあるため、製作経験値が高いです。また、有り型を使えば、刃型製作代金が不要となりますので、その分安くなります。
依頼者さんが「これでok!ロゴはうちのを入れて!」というのが、ある種一番話しがスムーズに進みますね。
持ち革。要は当社で生産で使っている定番の革ですよね。
依頼者さんが「どうしてもーーという革を使いたいんだ!」となると、その革を当社で別に仕入れなきゃいけません。
それに対して当社で定番で使っている革を使えば、革の特徴も把握していますし、在庫も常時あるので安心感がありますよね。
有り型・持ち革で作り、ロゴは自分の会社なり名前を入れる、というのが一番安心ではあると思います。
ムラキの雑感
コロナの状況下にも関わらずナダヤ様にはインタビューに応じてくださりありがとうございました。
で、雑感
・当日もお伝えしましたが、依頼者としては「仕様書の実例」「有料でもいいので仕様書前の相談サービス」「受諾者が持っている有り型一覧や革のサンプル」などがほしいな、と思いました。
・受諾者としては「仕様書を見たあとにボタンひとつで『この依頼はお受けできません>技術的に無理or要求素材が困難or、、』と断りやすくするシステム」「有り型・持ち革使用可or不可などの選択肢」などがあれば便利かな、と思います。
・靴などは売れ筋の店舗では「当店オリジナルの靴を、、」と思っているだろうけど、実際は完全オリジナルよりも「靴メーカーが持っている有り型や木型を使う」ほうが手を出しやすいだろうから、そこらへんを解説したら需要あるだろうな、と。
・コロナがもたらしたメリットの一つとしてオンラインでの労働が一般的になったことが挙げられます。これにより、都市部じゃないと駄目、という思い込みが減り、地方への移住者が今後も増えるかと思います。
・同時に、テレワークの普及によりオンライン会議のハードルが格段に下がりました。ここらへんは今回の「ものつく」には追い風となり、地方のメーカー業なり職人さんは仕事を受け取りやすくなったかと思います。
100年に一度のイベントともいえるコロナですが、この環境下でもやれることや、考えなきゃいけないことは山積みだなぁ、と実感させられたインタビューでしたわ。
December 24, 2020
村木るいさんの「人に話したくなる革の話」/実際に触らないとわからない革素材の難しさと面白さを1年振り返りつつ話してみる
カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」
新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)|厚生労働省
問6 イベントを開催する際には、どのような点に注意する必要がありますか。
問7 イベントの開催には、具体的にどのような制限がなされていますか。
「イベント」という言葉は政府は「1万人規模のコンサート」から「数十人規模の展示会」まで指し示しますのでかなり大雑把な言葉と言えます。
今回の素材博覧会は押しなべて上記のガイドラインが遵守されていたように思えます。
イベント出る意味はあるのか?
あると思います。リスクはありますが、革素材などは触ってなんぼ、だと思います。
どれだけインスタなりTwitterなりYOUTUBEなりで十の写真を載せ、百の動画で伝え、千の言葉を費やしたとしても、手触り一つ伝えられません。革素材の面白さ、というのは「手触りがとても重要」「それはネットで伝えられない」、という点です。
「それはデメリットだ」という声も多いですが、私はメリットだと思っています。それだけネットで売りづらい素材だからこそ、実際に触れる機会は貴重です。
各種SNSや動画は重要だけど、最後のひと押しは「触る」こと
「Twitterやインスタ、動画、どれをやれば良いんですか?」
回答は「ターゲットとしている層がやっているものは全部やるしかない」です。
そして、SNSでもインスタでもライブでも動画でも、どれだけやっても最後に重要なのは「実際に触る」ことです。これだけはネットでは伝えきれません。
実際に触らないと情報を伝えきれない、というのが革という素材がもつ最悪のデメリットであり、最高のメリットといえます。
革屋、という素材に限らず、革の靴でもカバンでも財布でもこの「触ってもらう」のはとても重要です。だからイベントや実在店舗は重要なわけです。
今年開催されたジャパンレザーアワードではこの「手触り」が面白い作品が賞を受賞していました。
ジャパンレザーアワードの受賞作品で感じた手触り
今年秋に開催されたジャパンレザーアワード。
村木るいさんの「人に話したくなる革の話」/「ジャパンレザーアワード2020」を解説してみる | JLIA 日本皮革産業連合会
今回の大賞は個人的にとても驚いたことに小林仁太氏の小銭入れが受賞しました。
過去において財布や小物って大賞とったことないんですよ。
プロフィール

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター
東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。
最近のブログ記事
- ジャパンレザー NEWS【まとめ】<8月第1週>
- 【村木るいさん連載】わからない、とわかってからがスタートだから革の勉強はどこでできるか、という話
- ジャパンレザー NEWS【まとめ】<7月第3週>
- ジャパンレザー NEWS【まとめ】<7月第2週>
- ジャパンレザー NEWS【まとめ】<7月第1週>
カテゴリー
月間アーカイブ
- 2022年8月 ( 1 )
- 2022年7月 ( 4 )
- 2022年6月 ( 5 )
- 2022年5月 ( 3 )
- 2022年4月 ( 4 )
- 2022年3月 ( 5 )
- 2022年2月 ( 4 )
- 2022年1月 ( 4 )
- 2021年12月 ( 4 )
- 2021年11月 ( 3 )
- 2021年10月 ( 4 )
- 2021年9月 ( 5 )
- 2021年8月 ( 3 )
- 2021年7月 ( 4 )
- 2021年6月 ( 5 )
- 2021年5月 ( 3 )
- 2021年4月 ( 4 )
- 2021年3月 ( 5 )
- 2021年2月 ( 4 )
- 2021年1月 ( 4 )
- 2020年12月 ( 4 )
- 2020年11月 ( 4 )
- 2020年10月 ( 4 )
- 2020年9月 ( 5 )
- 2020年8月 ( 3 )
- 2020年7月 ( 5 )
- 2020年6月 ( 4 )
- 2020年5月 ( 3 )
- 2020年4月 ( 4 )
- 2020年3月 ( 4 )
- 2020年2月 ( 4 )
- 2020年1月 ( 4 )
- 2019年12月 ( 4 )
- 2019年11月 ( 4 )
- 2019年10月 ( 5 )
- 2019年9月 ( 4 )
- 2019年8月 ( 3 )
- 2019年7月 ( 5 )
- 2019年6月 ( 4 )
- 2019年5月 ( 4 )
- 2019年4月 ( 4 )
- 2019年3月 ( 4 )
- 2019年2月 ( 4 )
- 2019年1月 ( 4 )
- 2018年12月 ( 4 )
- 2018年11月 ( 4 )
- 2018年10月 ( 5 )
- 2018年9月 ( 4 )
- 2018年8月 ( 4 )
- 2018年7月 ( 4 )
- 2018年6月 ( 4 )
- 2018年5月 ( 5 )
- 2018年4月 ( 4 )
- 2018年3月 ( 4 )
- 2018年2月 ( 4 )
- 2018年1月 ( 4 )
- 2017年12月 ( 4 )
- 2017年11月 ( 5 )
- 2017年10月 ( 4 )
- 2017年9月 ( 4 )
- 2017年8月 ( 4 )
- 2017年7月 ( 4 )
- 2017年6月 ( 4 )
- 2017年5月 ( 4 )
- 2017年4月 ( 4 )
- 2017年3月 ( 5 )
- 2017年2月 ( 4 )
- 2017年1月 ( 3 )
- 2016年12月 ( 4 )
- 2016年11月 ( 5 )
- 2016年10月 ( 4 )
- 2016年9月 ( 4 )
- 2016年8月 ( 4 )
- 2016年7月 ( 4 )
- 2016年6月 ( 5 )
- 2016年5月 ( 3 )
- 2016年4月 ( 4 )
- 2016年3月 ( 5 )
- 2016年2月 ( 4 )
- 2016年1月 ( 4 )
- 2015年12月 ( 4 )
- 2015年11月 ( 4 )
- 2015年10月 ( 4 )
- 2015年9月 ( 5 )
- 2015年8月 ( 3 )
- 2015年7月 ( 5 )
- 2015年6月 ( 4 )
- 2015年5月 ( 4 )
- 2015年4月 ( 5 )
- 2015年3月 ( 4 )
- 2015年2月 ( 4 )
- 2015年1月 ( 4 )
- 2014年12月 ( 4 )
- 2014年11月 ( 4 )
- 2014年10月 ( 5 )
- 2014年9月 ( 4 )
- 2014年8月 ( 3 )
- 2014年7月 ( 5 )
- 2014年6月 ( 4 )
- 2014年5月 ( 4 )
- 2014年4月 ( 5 )
- 2014年3月 ( 4 )
- 2014年2月 ( 4 )
- 2014年1月 ( 4 )
- 2013年12月 ( 4 )
- 2013年11月 ( 4 )
- 2013年10月 ( 5 )
- 2013年9月 ( 4 )
- 2013年8月 ( 3 )
- 2013年7月 ( 5 )
- 2013年6月 ( 4 )
- 2013年5月 ( 5 )
- 2013年4月 ( 4 )
- 2013年3月 ( 4 )
- 2013年2月 ( 4 )
- 2013年1月 ( 4 )
- 2012年12月 ( 4 )
- 2012年11月 ( 4 )
- 2012年10月 ( 5 )
- 2012年9月 ( 4 )
- 2012年8月 ( 4 )
- 2012年7月 ( 4 )
- 2012年6月 ( 4 )
- 2012年5月 ( 5 )
- 2012年4月 ( 4 )
- 2012年3月 ( 4 )
- 2012年2月 ( 5 )
- 2012年1月 ( 3 )
- 2011年12月 ( 3 )
- 2011年11月 ( 5 )
- 2011年10月 ( 4 )
- 2011年9月 ( 4 )
- 2011年8月 ( 5 )
- 2011年7月 ( 4 )
- 2011年6月 ( 5 )
- 2011年5月 ( 4 )
- 2011年4月 ( 4 )
- 2011年3月 ( 5 )
- 2011年2月 ( 4 )
- 2011年1月 ( 4 )
- 2010年12月 ( 4 )
- 2010年11月 ( 5 )
- 2010年10月 ( 4 )
- 2010年9月 ( 4 )
- 2010年8月 ( 5 )
- 2010年7月 ( 4 )
- 2010年6月 ( 4 )
- 2010年5月 ( 5 )
- 2010年4月 ( 4 )
- 2010年3月 ( 5 )