欧米ブランドに「負けていないぞ!」

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」 の記事

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
今回はコロナ禍以降のイベントの動向と、革で信頼をお金に変える、という話。西日本で行われたイベントのレポートとともに、イベント主催者でもある村木さんがコミュニティづくり、ファンづくりと信頼関係の大切さ、そして有料イベントについて伝えてくれます。ぜひ、ご覧ください。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

今後のスケジュールなどは下のリンク先をチェックしてください。



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毎度です! 「近所で大相撲春場所があったんですが、スーツケース転がしている外国人観光客・修学旅行生・大相撲力士が一緒になんばの繁華街を歩いている光景はなんてSFなんだろう」と感心したムラキです。

コロナ禍が一応、明けた、ということになっていますが、仕事場のある難波近郊は観光客の往来が激しめです。人の往来が激しくなった、ということで今回はイベント視察にからめて下の2点について書いていきますわ。

・コロナ禍以降のイベント動向 ~大阪・アート&てづくりバザール、名古屋革の相談会、姫路ペレテリア
・入場料を取るのは是か非か。コロナで変わったイベント参加者のマインド


オチとしては下の4点となります。

・各種値上げやコロナ禍により、消費者は価値ある、と思うものには有形無形問わずお金を出す
・失敗はしたくないから、「信頼」したところにお金を落とす
・「信頼」を積む行為を「継続」していくのが大事
・コロナ禍の最中になにか行動しているところは今、成長している

大阪アート&てづくりバザールを見てきた


3月18日(土)・19日(日)に行われた上記イベントを視察してきました。いつもお土産袋を作って革の出展者に話しかけます。



最終日の15時くらいに行きました。このくらいの時間帯ですとお客さんも少なくなり出展者もまったりとしているので、声かけやすいんですよ。接客中などは絶対声かけられませんので。

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行ってみると、休憩スペースでは「席をあけるように」などの注意書きもなし。入り口では消毒液はありますが、検温は強制ではなし。事前登録制などのシステムも一切なしでした。

来場者も多く、記憶にある限り最終日の15時過ぎでここまでお客さんがいるのは非常に珍しいです。

出展者に声をかけようにも、接客中の頻度が高く、挨拶しきれませんでした。(だいたいこのバザールでは革の出展者や、革を一部でも使っている出展者は50ブースはあります。)

コロナ禍の最中は来場者は少なくなっていましたが、昨年終わり頃から来場者数は急激に回復している気がします。また、出展者数も増えており、現在は抽選で落とされるようになった、とのことです。

このイベントはコロナ禍でこんなことをしていた


傍から見ているだけですので内情は詳しくわからないのですが、コロナ禍の最中でも「あぁ、こういう新しいことしているんだな」と見ていました。


・ハンドメイドがテーマのWebメディア構築


あなたの毎日を満たす、「好き」に出会う場所。

MeTAS+は
ハンドメイドのある暮らしに特化した
ライフスタイルメディアです。
ハンドメイド作家やものづくりに関わる人たちの
制作現場やこだわり、日常のお気に入りなどを共有していきます。

これ、すごいのは動画チャンネルも始めているんですよね。


このようなネット媒体やYouTubeチャンネルを作っても知名度なんて突然あがりません。ですが、リアルイベントでYouTubeチャンネルを宣伝できるので相乗効果が見込めます。

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さらに、会場で「会場で買ったものをハッシュタグ #てづバ戦利品をつけて投稿してね!」「投稿したのを見せてくれたら抽選でプレゼント!」なども行っている。つえぇなぁ・・・。



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動画やWebコンテンツ作成ってコスト(人的・時間・金銭)がかかりますので、手を出すのはかなり覚悟がいるのですが、よくやったなぁ、と驚きながら見ています。


・手作り品のイベント「アート&てづくりバザール」から猫限定イベント開始


次回は、7月1日(土)・2日(日)に開催されるそうです。こちらは手作り品限定ですが、猫がテーマのイベント。

このように特定もの(鳥なり犬なり)をテーマにイベント開催するのは個人のイベント主催者が多かったのですが、主催のテレビ大阪が猫限定で乗り出すとは、と驚きました。今年1月にも開催されていますが、おそらくこちらのほうを試験的に行い、来場者や出展者などを計算して大きなイベントにするか、と考えたのかな、と思います。


姫路 ペレテリアのレザーフェスティバル

3月24日(金)・25日(土)に兵庫県姫路市で行われたレザーフェスティバルを見てきました。

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このイベントは今後、秋口は新喜皮革で行い、春は今回のようにペレテリアメインで行われます。

今回はきたなか皮革さんのタンナー見学が行われました。以前こちらのblogでも紹介したことがありますね。





2日目の終わり付近に行ったのですが、初日は小雨・2日目曇りでしたが、前回よりも来場者も増えているようでした。タンナーや革屋さんによるアウトレットもありますが、製品販売もあり、賑わっているように思えました。

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このイベントはコロナ禍でこんなことをしていた


兵庫県姫路市の高木地区のタンナーは、このペレテリアと新喜皮革でイベントを大きくしようとしています。ペレテリアの運営母体であるユニタスは、「姫路高木地区のタンナーの革を小売販売」ということも始めています。こちらも2022年6月からスタートしています。



姫路高木地区はこれとは別に、姫路レザーという革素材としてのブランドを確立させようと動きを始めています。

名古屋 革の相談会


名古屋で開催された革の相談会。こちらは私が属しているレザークラフトフェニックスや染料会社、他の革屋と共同で行う小規模イベントです。なんと入場料1,500円で3時間しか滞在できません。



革で何かを作っている人または修理業の人、などというニッチターゲット、かつ、入場料が1,500円もかかります!
2日間で来場者が40名弱だったかな?

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このイベントはコロナ禍でこんなことをしていた


私個人が運営しているイベント「本日は革日和♪」でも同じですが、入場料を取ります。
入場料を取るとお客さんの数が確実に減りますが、その分接客する方としては「この人は入場料払ってでも聞きに来てくれた人なんだ」と、無料のイベントよりも格段に優しくなれます。

過去のblogでも書いていますが、革素材、というのは実際に触らないとわからない情報が多すぎです。表面のテクスチャーはもちろん、手触り・コシの強さ・ハリの強さ、などは触らないとわかりません。ネットの動画でどれだけ細かく説明しても触らないとわからないわけです。

私ムラキも「固定と摩擦」という話を名古屋ではじめて行いました。固定と摩擦、という概念。言葉にすると難しそうですが、実際に触ると一発でわかります。 当日は初級者・中級者・上級者問わず、きちんと理論だてて説明し、実際に体験してもらい、確実に何かを得てもらえた、と思います。

このイベントで重視しているのは「お金払ってくれた人に優しくする」「実際に触る、という体験を重視する人を大切にする」ということ。


「なんだ、金を払わないと客じゃないのか!初心者お断りなのか!」と思われがちですが、真逆です。
「聞くだけならコスト0!」「お店にTELで聞いたら無料で聞けるじゃないか!」という人はいます。
そういう人にお店サイドや会社サイドはコスト(時間・人・お金)が費やされてしまい、「お店の時間奪ったら申し訳ないから聞かないでおこう」という人が損をしてしまいます。

それなら、お金をくれる人を大事にしよう!というのは関西商人のえげつなさ、というわけではありません。当たり前ですが、お金を貰わないと生きていけないんです。だから、お金を払ってでも見にきたよ!という人を大事にしたいわけです。

お金払いたくない!という人は店頭に直接お越しください。今回ならば6社が集まりましたが、これらを1社ずつ回れば無料で話はできます。

このイベントに集まった会社は「商品を売って現金稼ぐぜ!」という思いではなく、「信頼」を稼ぎに集まったわけです。

コロナ禍で促進した「推しを応援する」「投げ銭」「オンラインサロン」などの直接お金を送るという行為


コロナ禍以前からもアイドルなりスポーツなりを応援する、という文化は強くありました。推し、という概念自体は2000年代のAKB48から強く始まったかな、と思います。(モー娘。などと違い、運営サイドが露骨に所属タレント同士を競わせたり、AKB48自体が複数の事務所による共同運営なので競争になりがち、とか)

コロナ禍以前、、例えばオンラインサロンは2011年頃から始まり、徐々に広まり、最盛期は2017年前後。その後も増えています。



YouTubeのスーパーチャット(=動画を見つつ、相手に投げ銭=お金を送る、というシステム)は2017年から。2010年頃からありましたが、この10年で市場規模は3倍になったとか。



クレジットカードの普及率の増加、メルカリや各種スマホのプラットフォームの課金システムの発展により、昔に比べると格段に「オンラインで送金する」という物理的心理的ハードルは下がりました。

これらの発展とコロナ禍は相性がよく、「オンラインでお金を払う」という行為は促進され、2021年時点でのオンライン市場規模は20.7兆円に迫っています。



個々人が個々人とやり取りする=メルカリやヤフオクやキャッシュレス決済などの「個人間が金銭を簡単にやり取りできる」システムの発展が身近でわかりやすい例かと思います。

実際の金銭のやり取りが手を介さず行われず、スマホやネットの数字だけのやり取りは、心理的なハードルが低く、使われやすい傾向になります。(ETCを導入したドライバーは確実に高速道路を使う心理的ハードルは下がります)

継続する、というのは信頼を高める行為


さて、有形無形問わず、人はお金を払いやすくなるシステムは整いました。では、どうやってそこからお金を儲ければいいか?

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1 信頼を積んでいるから、推し活なりスーパーチャットでお金がもらえる

「よぅし!ユーチューバーでお金を稼ぐぞ!」 全然違います

今更ユーチューバーになって稼ごう!なんてのは現実的ではありません。レッドオーシャン過ぎます、あの海は。そして費やすコストに対してお金が見合っていません。

現状、ユーチューバーにしてもYouTube運営からのお金は期待していません。釈迦の手のひらの上であがいているようなもので、運営のご機嫌を損ねると一瞬にしてお金がなくなる、というのはリスクが高すぎます。

ユーチューバーがメインにしたいのは、スポンサーについてもらい広告案件をすることでお金をもらう、もしくは自分で商品開発をして売る、視聴者からのスーパーチャットでお金をもらう、という3点がメインの柱かと思います。これらをどれにメインに据えるかで戦い方は異なります。YouTubeの運営からの収入をメインに戦えるのは上位数%のみです。

ユーチューバーが売っているのは「信頼」です。信頼を積むことで、広告を依頼され、商品を販売して利益が出せる。販売で利益があがるのは「信頼」の結果です。

「このアイドルを応援したい!」「ユーチューバーに頑張ってほしい!」なりは応援、ではなく、「この人を見ることで面白い・気持ちよくなれる」という安心感=信頼を積んでいるから、お金を払うわけです。

2 失敗したくない、という心理が年々強くなっている


下のリンクは20~39歳世代へのアンケート。


価値観に関する考え方を2つずつ提示し、それぞれどちらにあてはまるか聞いたところ、「失敗」に関しては「絶対に失敗したくない」が73.0%、「失敗を恐れずチャレンジしたい」が27.0%という結果に。また、「無駄」に関しては「無駄なことはしたくない」が68.0%、「人生に無駄なことはない」が32.0%と、失敗や無駄を避けたいと考える若者が多いことが明らかに。


まぁ、日本人自身が失敗を大きく見積もる国民性ではありますが、この「失敗したくない」という欲望は年々大きくなっています。

商品を買う。誰かを推す。応援する、にせよ、お金は使うのですが、「使ったお金が無駄だった」「失敗だった」というのが耐えられない・したくない、という考え方は増えています。

若い人だけの特徴?というとそんなことはありません。歳を取れば取るほど、失敗への恐怖心は強くなります。肉体的にせよ精神的にせよ、回復に時間かかるようになりますので。


1+2=「革製品や素材販売で信頼を積む意味があるの?」革だからこそ信頼を積まなきゃいけない

革という素材はあまりに不安定です。強度はきちんとあるのですが、供給や品質が市場や天候など諸条件で左右されすぎます。どれだけ需要が高くなっても所詮食肉産業の副産物です。誰かが肉を食わないとこの素材はこの世にでてきません。



「信頼」を積むことで、「ここから購入したら安心だ」「このブランドならば大丈夫」と思ってもらえる。それで購入してもらう。お金がほしいならば「信頼」を積み重ねていくしかないわけです。(まぁ、一時的に安売りして大量に稼ぐことも可能ですが、所詮は一時的です)

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どうやって「信頼」を積むのか?>継続すること


継続することです。お店を構えるにせよ、販売するにせよ、YouTubeをやるにせよ、SNSをやるにせよ、イベントをやるにせよ、継続していくこと。地道に。丁寧に。

来場者なりフォロワーなり視聴者数なりの数字をたくさん稼がなくてもいい。数字を稼ぐことを目的にするのではなく、継続をきちんとしていく。これが信頼を積み、結局お金を稼ぐことに繋がります。



上のリンクにある分析にもありますが、「気に入ったものにお金を払う」「自分が気に入った付加価値には対価を払う」というのは増えてきています。

推し活でアイドルにお金を払う、スーパーチャットでYouTubeの配信者にお金を払う、有料でもイベントに参加する、革製品を買う、革素材を買う。どれにしても、信頼の結果です。

継続しつつ、新しいことにチャレンジしていく


コロナ禍が落ち着いてきた昨年末から各種メーカーさんなりで忙しい!というところは、押し並べてコロナ禍の最中に「なにか」をしつつ「継続」していました。上記に各種イベントあげていますが、どれも「なにかチャンレジ」しています。もちろん失敗もありますが、失敗を気にしていたら前に進めません。

例えば、以前取り上げた山陽さんはコロナ禍の最中にホームページの刷新を行っています。その後、毎月blogを10投稿以上更新しています。毎月10投稿ってかなりとんでもないです。blog更新は地味ですが、ストック型のコンテンツは、フロー型のコンテンツ(SNSなど)に比べると効果が細く長く続きます。


今後のムラキ


●4月15日(土) 最近力を入れている染められる靴、のWSを行います。



●4月28日(金) 毎月最終金曜日に行っている営業時間延長のフェニックスナイト、でセミナーなどやっています。



●5月25日(木)~27日(土) 「東京レザーフェア」にあわせて東京・八広で「本日は革日和♪」を開催します。

昨年の内容

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
今回は当連合会の皮革・革製品のサステナビリティを発信していく「Thinking Leather Action(TLA)」事業とチャットAIの可能性について。勉強会のレポートと実際にチャットAIを活用した感想をご紹介。ぜひ、ご覧ください。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

今後のスケジュールなどは下記のリンク先をチェックしてください。


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毎度です!
「ほんとにもうこの半年のAIの進歩は・・・」村木です。

だいたい、「2022年はVR元年!」とか「2001年は電子書籍元年!」などと言われたりしますが、記憶にあるだけでVR元年と言われているのは3回目です。電子書籍元年は5回くらい「今年こそ歴史に残る元年なんだよ!」というものが起きましたねぇ。電子書籍元年、と一番最初に言われたのは確実に20年前ですよ。

ただ、昨年、「2022年はAI技術元年」と言っていいくらい進歩がすごかったですね。将来ターミネーターのスカイネットのように「AIが人類を支配だ!」という流れが生じたときは、「2022年が発端だったなぁ」と言われるのは間違いないですね。

今回は、

・JLIAで新しく始まった「Thinking Leather Action(TLA)」というものは何をするのか?

・革やレザー、という言葉をきちんと知ってもらう努力

・チャットAIに革、レザーを聞いてみよう!

・ChatGPTとBingの違い

・AIが得意なこと・不得意なこと

という内容です。

結論から先に書くと、「AIだって所詮道具」「道具を使える人はさらに使えるようになる。苦手意識持つ人はさらに苦手になる」というものになります。

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「Thinking Leather Action(TLA)」とは?


1月下旬に大阪で行われた「Thinking Leather Action(以下 TLA)」の勉強会。このほか姫路や豊岡、東京などで開催。日本皮革産業連合会(JLIA)会員団体や皮革産業の組合の関係者が参加していました。


TLA 事業の概要は?


皮革業界内において「天然皮革はエコ、サステナブルな素材であること」を立証し、自信を持って売れる環境をつくる。

皮革や革製品を売りやすい世の中へ。

皮革業界で働きやすい世の中へ。


皮革業界に限りませんが、キャリアを重ねれば重ねるほど、消費者が何を疑問に思っているか、というのは理解しにくくなります。

えっ!そこでつまずいていたの?とか、これは常識で皆さん知っていると思っていた、なんてことはザラにあります。




上記blogでもあげたように、日本タンナーズ協会は次の発信をこの近年強く行っています。

・革は食肉産業の副産物を利用している

下のようなパネルを展示したり、動画を作ったり。このような動きは即効性はないですが、100人のうち2人が「へぇ、そうなんだ」と思ってもらえたら、将来革に対しての炎上なりが起きた時に、「いや、それは違うよ」「ほら、こう言っているから調べようよ」という動きが出る可能性が多少はあがります。

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上のような動画やパネル展示以外にも、ちょうどこのblogを書いている日の「繊研新聞」(2023年2月21日 1面)に早速、このTLAのメッセージ広告が掲載されました。

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ウェブサイトやSNSは・・・


TLAは現在、ウェブサイトやSNSを準備中です。勉強会で配布されたパンフレットはありますが、勉強会参加者用のみとなっています。今後はビジネスパーソン向け、ユーザー向けの配布物もつくられると思われます。

革、レザーって???

皮と革の定義


多分80回以上やったと思いますが、「人に話したくなる革の話」、という初心者向けセミナーで最初に話すのは、革と皮の違いです。

写真は、JLIAの「皮革の出来るまで」というDVDです。

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2009年から販売かぁ・・・、多分日本で一番このDVD見たのは私のはずです。全セミナーで放映していますので。

さて、動画の中でも解説されていますが、皮を「なめす(鞣す)」ことで革が作られます。鞣しの定義は次の3点です。

1) 耐熱性を付与すること。コラーゲン線維を化学的に架橋することにより安定化させると耐熱性が向上する。鞣剤の違いによって耐熱性が異なるが、これは鞣剤による化学結合の違いを反映している。
2) 化学薬品や微生物に対する抵抗性を付与すること。
3)皮に必要な物性と理化学的特性を付与し、いわゆる「革らしさ」を与えることである。

皮革用語辞典 鞣し


端的に言うなら、耐熱性や耐薬品性を与えること。あとは「革らしさ」という「その定義はなに?めちゃくちゃ不明瞭だな!」という条件が入っています。よく革の専門家と飲むと、この革らしさってなんやねん!で議論になります。

「食肉業界から副産物としていただいた皮は鞣しをすることで革になる」わけです。

英語で皮と革はなんていうの?

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動画でも解説されていますが、

皮=skin
革=Leather

となります。人間の生々しい肌をケアするのは「スキンケアローション」であって、「レザーケアローション」ではないわけです。革の靴や鞄をケアする製品には、「レザークリーム」なり「レザーローション」なりが書かれているはずです。

ですが、このレザー、、という単語が曲者でして。

カタカナでレザー、と書かれると日本国内では明確に定義づけがされていません。

床革や合皮製品を「このカバンは本革です」と言って販売すると、家庭用品品質表示法で「それは駄目だよ」と規定がされています。ですが、~~レザーという単語に関しては明確な基準がありません。だって、「レザー」というのは英語をカタカタに直しただけの単語です。定義づけされていないわけですね。




チャットAIに革とレザーの違いを聞いてみよう

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さて、最近話題のチャットボットAIで遊んでみましょう。
使ったのはマイクロソフトBingです。

「革とレザーの違いってなに?」と聞いてみました。

一般の消費者向けの回答としては100点に近いかな、と思います。多分私が書くともっとくどくなります。ねちっこくなります。一般消費者向けならばこれくらいのほうが理解しやすいだろうな、と思います。


チャットAIがものすごく急激に進歩している



昨年のblogでも書いたようにイラストAIが進化していたのですが、この数か月でチャットAIがすごく進歩しています。遊んでみたのですが癖が強いです。

※チャットAIはどれもアカウント作成と認証が必要となります。ものによっては認証に3日ほど待たされたりします

回答の正確性は・・・

まずは最もメジャーなChatGPTですが・・・、日本語で質問したら答えてくれます。英語で質問したほうが回答は早くなりますが、もちろん英語で返ってきます。

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最近ちょっと調べていた「ももんじ屋」について。
ももんじ屋は江戸時代に肉料理専門の料理屋さんです。

で、歴史を聞いてみました。


この回答、誤認!?

岡山にそんなお店もないし、梅干し専門でもないです。チャットAIは所詮ネット上にある情報からしか引っ張ってこれないのですが、そもそも100%誤認の情報をどこから引っ張ってきたのかもわかりません。

さらに違う質問。大阪府における2019年の犯罪カテゴリトップ10の数字を調べてみました。回答口調は海原雄山口調で、と思って質問しています。さらに質問で多少誤字を入れています。

Maicrosoft Bingは出典書いてくれるのが素晴らしいが制限も多い



Maicrosoft Bingはマイクロソフトが提供するだけあって、「Webブラウザー マイクロソフトエッジを導入して」「スマホにもBingを入れて」などの導入が求められます。ここまでやりましたが、順番待ちで3日間待たされました。

で、このBingだと出典を書いてくれるのがとても助かります。

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今度は、「2019年の豚・牛・馬の国内からでてくる原皮の総量を教えてください。」という質問をしてみました。

こちらのBingでは出典元となった統計ページも書いてくれています。が、こちらの出典元の統計ページには牛馬豚の屠畜数は書いていますが、原皮の出荷量なりは一切書かれていません。回答にも「ただし、これらの数値は飼養頭数や屠畜頭数をもとにした推計値であり、実際の原皮総量とは異なる場合があります。また、馬に関しては重種馬と軽種馬に分けて考える必要があるかもしれません。」と書いてあります。これはものすごく良心的です。

見てみたい数字がどこにあるか、というのを知るためには便利なツールだと思います。ただ、正確さが判断しにくいので、データの確認は必須です。
blogタイトル5つあげてみて

「チャットAIについてのblogを書きます。関連事項は次のとおりです。これを踏まえてblogタイトルで適正なものを5つほど出してください。革素材、サステナブル、チャットAI、chatgptとbing」

今回のblog書く上でタイトルをあげてもらいました。

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あー、これは面白いですな。
革素材、サステナブル、チャットAI、ChatgptとBing、と4つの要素を入れてみたのですが、サステナブルは形容詞として認識しています。ネット上ではサステナブル、という単語は形容詞として使われているケースが圧倒的に多いからですね。「ChatGPTとBing」は共に名詞として認識しています。

その一方で、「革素材」「サステナブル」に対して「チャットAI」「ChatgptとBing」では絡み合った事例がネット上に存在しないためか、うまく絡めることができなかったようです。

結果的に、「チャットAIに対するblog」に対するタイトル付けとなっていますね。AI的には、「革素材」「サステナブル」という単語よりも「チャットAI」という単語に対する事例が多かったのでそちらを最優先にしたんでしょうな。

5つあげてくれたアイディアの中では、「革素材とサステナブルなチャットAIの可能性」が一番それっぽいです。でもサステナブルは形容詞として革素材に対してかかるものであり、チャットAIに対しては変なつながりとなっています。


以前のイラストAIでもそうでしたが、AIは所詮道具でしかありません。

100点な完璧を求めるよりも、「30点や50点や80点でもいいから、どんどん出して!それをこちらでアレンジするから!」という使い方が便利かな、と思います。

今回のblogタイトルで言うなら、「サステナブルな革素材とチャットAIの可能性」あたりがしっくり来るかな、と思います。この最後の10点アップは人間がやったほうがやはり今の時点では手軽だと思います(半年後はひっくり返っているとは思いますが)。

Bingは便利なのだが制限が増えてきている

2023年2月21日の時点で突然、「1日の質問は50回までね!1回の質問のやり取りは5回まで」などの制限を打ち出してきました。

新Bingのチャットは1回5ターンまで。1日のチャット数も制限 - Impress Watch

まぁ、Bingはこの制限よりも、「最初に登録したら順番待ち3日間」の制限が一番きつく感じます。

AIが得意なこと苦手なこと

さて、AIはこういうことができる!苦手だ!という前に、使い手である人間が「きちんとした文章を書く」「AI様にわかってもらえるように細かく書いていく」ことが現状では大事です。多分これが大前提、かつ、一番大事だろうな、と思います。

その上でAIが得意なこと苦手なこととしては・・・

ネタ出し・アイディア出し

上にも書いたように、文章のアイディアを考えつかせるのには便利なツールです。下は前回のblogのタイトルを考えてもらったものです。


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3個ほどあげてもらって、その後「10個あげて」といったら5個ほどあげて、「これで合計10個だよね!」と言ってくるなぁ。いやいや、合計8個やろ、それ。

一般的な知識

下はヴィーガンレザーについて訊いてみました。

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一般的なヴィーガンレザーに関するネット記事から構成されているように思えます。こういうまとめとしてはBingは便利だな、と思います。

ただ、当たり前のことですが、ネットに書いてあることからしか答えられない、というのが最大の欠点でもあります。本や新聞などのオフラインに書いてある情報は拾ってこれませんね。

ここらへんが致命傷ではあります。手持ちの電子書籍を読みこんでくれると助かるんですが、多分もう1年ほどかかりそうですね。それができたらものすごく楽になるんですけどねぇ、私の動き方的には。

統計ページ

統計ページから数字を拾ってくるのは得意です。ただ、必ず元の出典ページで数字の裏取りをしないと大やけどしそうではあります。「それじゃ使えないじゃん!」と思うかもしれませんが、「どこにその数字があるか」を教えてくれるだけでも大変助かるんですよ。

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上は革靴の輸出入の金額を知りたい、と聞いています。で、JLIAの統計ページから情報をまとめてくれています。JLIAの統計ページ、ほんとに意味あるんですが、そこからデータ探すのが大変なので、ある程度の場所を教えてくれるのは大変助かります。


今回の結論は、「AIだって所詮道具」「道具を使える人はさらに使えるようになる。苦手意識持つ人はさらに苦手になる」


2か月前に書いたblogと同じオチです。

所詮は道具ですので、これをどう使うかは人間次第です。あとまぁ、100%信用しきれません。裏取り調査をしなくてはいけませんが、「どこを調べたら良いか」がわかるだけでも便利な人には大変便利かと思います。

文を書く人やイラストを書く人、などに限らず、とりあえずは触ってみておいて損はないツールだと思います。

ムラキの今後予定



このイベントに客寄せパンダとしてでています。AIやYouTube見ても書いていない・教えてくれない・体験できない、「摩擦と固定」に関する話をします。体験してもらいます。



今回ご紹介したTLAやレザーと革の表記問題などを喋りつつ触ってもらいつつ、3月3日(金)に大阪で行います。日本最大級のタンナー、山陽さんの偉い人に来てもらって喋ってもらいます。

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
2023年第一弾は動画配信の普及とともに変わるものづくり技術習得、技術者、職人の育成の新しい潮流を、村木さんの体験からリアルにまとめてくれました。ぜひ、ご覧ください。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

人気プロジェクト「本日は革日和♪」参加イベントが2月中旬、横浜で開催されます。このほか今後のスケジュールなどは下記のリンク先をチェックしてください。


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毎度です!
「ものづくりもお金儲けも歴史調べるのも好きですよ」ムラキです。

先日イベント出展していまして、客寄せパンダ的にプチセミナーをしていたんですが、学びが多かったですわ。人生いくつになっても学ぶことは可能だなぁ。

さて、今回のblogは、

・実際に対面じゃないと「摩擦と固定」の話ができなかった
・動画のほうが学びやすいジャンルも確かにある
・技術や視覚・聴覚以外の情報を伝える難しさ
・左官屋の修行は動画でやる時代

という技術と動画の話となります。
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革にまつわる工具と工法、というイベント


普段ムラキが主催している「本日は革日和♪」というイベントは、革にまつわる会社さんや、ムラキ個人が面白いと思ったり、革に使えるな、と思った業者さんを呼んだりしています。

「革にまつわる工具と工法」は染料屋のlizedが主体に行っています。工具と工法、というだけあって出展するのは「工具」「工法」にまつわるものを提供できる会社さん。もしくは、lizedの柳澤さんが呼びたいと思った業者さんのみとなっています。


私の役割は客寄せパンダとして、ワークショップやぷちセミナーを担当しています。
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参加料1,500円かかるけど盛況でした

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コロナ禍のためイベントを行うのは難しくなりました。来場者が少ない、ということよりも、イベント会場運営サイドが「多数来場すること」に対して眉をひそめるのが今の時代です。

1,500円のお金を取るのは遠方の出展者が少しでも出展料を安くするため、という意味合いもありますが、それ以上に「一定時間、部屋の中がギチギチになるほど混雑させない」という目的のほうが重要です。「いつでも入場okよ!」「無料だよ!」とやると、特定の時間がギッチギチになってしまい怒られてしまうんですよ、今の時代は。

私がお手伝いしているフェニックスでは、今回は皮革素材や金具を一切展示していませんでした。

「革にまつわる工具と工法」ですから、皮革素材じゃなくて工具と技法を見せるためです。また、工具に関しても一切販売をせず、あくまで展示のみです。興味あったら後日ネットで買ってくださいね、という方式で行いました。
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会場では、フェニックス以外にも下記の会社が展示・説明などを行っていました。


客寄せパンダとして「摩擦と固定」の話をしつつ体験してもらう


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ムラキは来場しているお客さんが暇そうだったら、「500円くらいの価値ある摩擦と固定、の話聞いていきません?」とナンパして話をしていました。

・あなたが30cmなり50cmなりを2cm幅できれいに切れないのは工具と技法の問題だ!理解すれば簡単に切れる。こういう工具があれば更に簡単。
・100均で摩擦を高めて効率よく作業する方法
・100均で売っているレザークラフト工具のこれが悪いのは固定と摩擦の問題
・重りをケチると良くない。重りがあるとこんなことができる
・マスキングテープがどれだけ便利か体験してもらおう
・カッティング定規、高くても駄目なものは駄目。何が重要なのか。実際に体験。
・型紙から裁断するには固定が重要
・固定と摩擦の重要性

1/13.14 CIY!染靴ws+染めるラウンドコインケースws+体験できる"固定"と"摩擦"技法 in 大阪 革にまつわる工具と工法 | phoenix blog

100円均一御三家+αがなんば駅から徒歩10分圏内に出来た&私がやっている100均サイトの便利な使い方 | phoenix blog 


どういう話をしたかは上記blogにちょっとだけ書いています。基本的に文字にせよ動画にせよ技術を教えるのは限界があります。

動画というツールの便利なところ

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なにか学ぶときは「書籍があるかどうか」「動画で学べるかどうか」「泣きつける所があるかどうか」を重要視しています


過去に何度も行っている3Dプリンターセミナー。そこで聞かれるよくある質問は、「どの3Dプリンタを買えばいいですか?」という質問です。で、その際の回答の一つとして答えているのが、「YouTubeなりで解説や説明動画が載っている機種を選んだほうが良いです」というものです。

私が3Dプリンタのデータ作成する時はFusion360というソフトを使っています。これは使い勝手がいい、云々よりも、「書籍が出ている」「YouTubeなりTwitterで情報が多い」という2点から選んでいます。
書籍が出ているかどうか?
「何かを学ぶ」という時、私は書き込みができる書籍があるかどうかを重視します。これはまぁ、年寄りですので、今の時代から外れています。自分の手持ちの資料を電子化しまくるくせに、勉強するときは書き込みしないと頭に入らないんですよ。
動画で学べるかどうか?
動画で学ぶ、、要はYouTubeで学べるかどうか、ですが、意味合いが2つあります。

自分で検索して情報を調べるために「YouTubeに動画があるかどうか」を調べます。もう一つは、「情報発信している人が多いかどうか」を調べるためにYouTubeを見ています。
泣きつける所があるかどうか
YouTubeは一つの指標です。そこに情報が多いと、Twitterなどの各種SNSやYahoo知恵袋、さらにはココナラなどのアウトソーシングサイト、さらにはLineグループなど。一つのSNSだけではなく、複数のSNSやコミュニティで探します。「泣きつける相手がいるかどうか」という点を重要視しているわけです。


PCに関する技術を学ぶならば動画はすごく便利だ


3Dのデータ以外にもエクセルやGASなどもいじりますが、これらを学ぶときも動画で学びます。本で学ぶよりも「ここをクリックして~」などの動作が見られるのはすごく便利です。

今の小学生や中学生が羨ましいですわ、ほんとに。

動画バンザイ! でも、革の知識や技術は学びづらい


動画やSNSって便利! じゃぁ革の技術習得って動画やSNSで学びやすいか! というとそうもいきません。

上記の「摩擦と固定」の話ですが、動画でも一応伝えることはできます。ですが、私自身はそれをやる気がいまいちありません。

原因は2つ。


つは「人は無料で得たものを大事にしない」からです。

YouTubeで無料で見られる、というものを人は大事に見ません。「どうせまたいつでも見られるだろ」と思って見る人は手を動かさない率が圧倒的です。


もう1つは「動画で伝えられるのは音と視覚情報だけ」だからです。

3Dのデータ作成やエクセルなどはPC画面を見ながら行う知識や技術です。ですが、革に関する知識や技法は「手の感覚=触覚」じゃないと伝えられない情報が多すぎます。

特に今回の「摩擦と固定」というのは手で体験しないとわかりません。

滑る、というのはどういうことか。

100均の滑り止めを貼ると貼らないで、定規の使い勝手はどのように異なるのか?
オススメの4mm厚みのカッティング定規だとどれだけ効率よくなるか
きれいに切れないのはテコの原理が働くからだ!
固定は2箇所で行わないと遠心力が働く

などなど、これらは全部実際に触らないとまずわかりません。

動画で何かを伝えるには限度があります。

5分の指導で急激に進化して深化する

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私にかぎらず10年ものづくりをしていると、「初心者が何がわからないか」ということがわかりづらくなっています。ですが、「なんでも聞いてください」といっても初心者に限らず、とっさに「質問」というもののは出てきません。

眼の前で実演などをしていると、「そういえば、こういう疑問がある」などとポロッと出てきます。
今回聞いたのは、「定規を使っているけどきれいに切れない」というものでした。

「動画を見たりしてレザークラフトを始めているが、自分のやり方が正しいかどうかわからない。定規を当てているのにきれいに切れない。原因がわからない」ということでした。

材料屋に片足突っ込んでいる身としては、教室業をしている方たちの邪魔をするのはよくありません。ムラキ自身は教室業をする気は全くありませんが、こういうイベントやワークショップなどで短期的に教えることはします。

今回は質問者さんに、「じゃぁ、試しに道具と革貸してあげるから切ってみてください」と実技してもらいます。

で、一つ一つ質問者さんのミスした点を潰していきます。

「違う。カッターの刃がきちっと沿っていない」
「違う。カッターを切る時の視線の位置が悪い。見るのはココ」
「違う。左手の定規の押さえ方が弱い」
「使っているカッターが小さいので切りづらいのもある。それは私が悪くてあなたのせいじゃない」などなど

5分ほど教えると、ミスはほとんどなくなった、と思います。

「いま私が5分くらい教えて、あなたはこの5分でカッターのこの部分に指を添えて安定させる、ということを自分で編み出しました。私の手は大きいのでここに指を添える必要は一切ありません。あなたが生み出したのはあなたに最適な方法です。それで実際よく切れるようになっているので、そのやり方を進めてください。大丈夫、5分前よりもあなたは進化しています。私の言ったこともきちんと理解しています」

「やってみせ 言って聞かせて させてみて 誉めてやらねば 人は動かじ」は現代でも通じるか?


山本五十六の名言で上記の言葉があります。
眼の前でやってみて、説明して、させてみて、その後褒めるなりして継続させる、というもの。


広島の大和ミュージアムもいつか行きたいところの一つですな。

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重要なのは、「今なんの工程をしているか」「実際に自分でやってもらう」「それに対してこの点は良かった・この点は良くない、ときちんと指摘する」ということだと思います。

革の技術は、靴にせよ、鞄にせよ、財布にせよ、難しい点が非常に多いです。
それは「技術が難しい」というわけではなく、革の素材が「硬さ」「張り」「腰の強さ」などによって技術も変えなきゃいけない。結果的に「伝えづらい」という厄介な技術となります。

だからこそ、目の前でやってみて、説明して、相手にさせてみて。そのうえで更にやってみて、説明して。できたらきちんと褒める。これをやらないと人が育たないわけです。

上記の5分講義で教わった人は技術が伸びたとは思います。それは「私の教え方がうまい!」というわけじゃありません。初心者の方がきちんと聞いてくれたので5分で上達しました。それくらい初心者、というのは伸びやすいわけです。

これが中級者などになると必ず伸び悩みます。そういう時に、教室に行ったり、誰かに教わる、というメリットの一つは「失敗した時にそれを解説してくれる」ということがあります。

では初心者じゃなくて、中級者や、職人を育てる会社などはどうすればいいのでしょうか?違う業界の職人の育て方を見てみましょう。

左官屋さんの「新たなプロの育て方」


原田左官、という左官屋の社長さんが2018年に出した「新たなプロの育て方」という本では、修行に時間のかかる左官屋を若手に嫌がられることなく、技術をどう習得してもらったか、という内容を説明しています。




上記動画でも学べますが、要点まとめると・・・

・自分のスマホで録画して見返してもらう
・動画を見ながら復習
・若手の成長をきちんと祝う
・若手がやめるのは人間関係!

というものとなります。(興味ある人は本なり動画なりきちんと見てくださいね!)

山本五十六の「やってみせ 言って聞かせて させてみて 誉めてやらねば 人は動かじ」 と本質は同じだな、と思います。

革は実際に見て触らないとわからない情報が多すぎる


まぁ、実際に触ったり手を動かさないとわからない情報が多すぎます、革は。

「失敗するのはタイムパフォーマンスやコストパフォーマンスが悪い」「だから動画や説明聞いたほうが賢い」と思う気持ちはわかります。でも、失敗したくないなら、さっさとお金払って教室にいったり、働いて習得したほうが良いです。

動画で学びたい!というならば人の倍以上、作って失敗して、原因を考えて、リトライしていくしかありません。

YouTuberが「このやり方が正しいんです!」「この革がいいんです!」と言っていたとしても、それは「君の環境で」「君の買った革で」「君の作りたいものに対して」そのやり方が正しい、というだけの話です。それくらい革は不確定要素が多すぎます。タンニン革もクロム革も性質・性能全然違うのに、全部同じ「革」というくくり方なんだものなぁ。


さぁ、実際に触ろう、聞こう ムラキの今後予定

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直近では下記2つのイベントで客寄せピエロやっています。大丈夫!コワクナイヨ!ほんとダヨ!

2月17日(木)~19日(土) 開催



3月3日(金) 開催


上記研修事業は大阪府、と書いていますが「オンライン可能」となっています。実際会場では来てもらって触って知ってもらうものをなにか用意はしておきます。

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
今回は、皮革業界はAIで「革に役立つものを作る」という夢は見られるのか?という話。AIによるイラスト生成についてレクチャーしてくれます。ぜひ、ご覧ください。

*   *   *

通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

人気イベント「本日は革日和♪」および関連イベントが明日から東京で開催されます。このほか、今後のスケジュールなどは下記のリンク先をチェックしてください。

  「本日は革日和♪」

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毎度です!「確か中学生の頃にブレードランナーの原作は読んでいるはずなんだよ。ただ、読みづらくて内容覚えきれていないな」村木です。

まぁ、SFなりが一番おもしろいのって小学生高学年や中学生の頃じゃないかなぁ、と思います。SFは「こういう技術があれば社会にどういう影響が及ぼされて、どういう商売が出るか」という想定が行われているので読んでいて勉強になります。

で。今回の話は、

・まさかAIによるイラスト生成がこの4か月でこれだけ進歩するとは・・・
・AIイラスト生成で鞄や靴のデザインはできるのか?
・でも高額なパソコンが必要なんでしょ?いえいえ!そうでもないのよ
・じゃぁ、それがどのように革業界に影響を及ぼせられるのか

という話をします。

いつものごとくオチから話しておくと、

「玉石混交のデザイン100点は作りやすくなる。そこから玉に磨くのが人間の仕事かな」

というものとなります。

さて、今年も終わりで1年振り返ると・・・

今年もコロナは解決しませんでした。

前回のスペイン風邪が終結に5年の年月を要しましたが、今回もやっぱり5年かかりそうだなぁ、と。
スペイン風邪はちょうど第1次世界大戦時のパンデミックでした。今回はインターネットやら、世界も進歩したし、3年くらいでパンデミック終結かな、と思いましたけど無理そうですね!


スペイン風邪、というけどスペインは悪くないのに、疫病に名前つけれているのはほんとにかわいそう。

AIによるイラスト生成がこんなに進歩するとは・・・

今年前半ではテレビでVRがよく取り上げられていました。「あー、VRゴーグル買うかなぁ」「でもやりたいこといまいちないんだよな。でも新技術は体験したいしなぁ」「日本タンナーズ協会の360度VR動画はほんとに面白いんだがなぁ」「VR動画なり写真の記録はやっておきたいな」とウダウダと見守っていました。ThetaVを買って、360度写真撮影は以前からちょこちょことはしていました。



が、VR新年(記憶している限り3回くらいは言われているなぁ)になるかと思った矢先、発表されたのがAIによるイラスト自動生成。これが毎週ごとに進歩進化していきました。見ていてぞっとするレベル。

AIによる画像自動生成の流れ、が突然動き始めた8月

AIによるイラスト生成ソフトはStable Diffusionが8月に発表したのがスタートかな、と思います。ここから急速に進歩進化していきました。


プロンプト、と呼ばれる呪文を入れると自動でイラストなり写真を生成する、というものです。
どんなものでもOK!ということはなく、「自動生成は指が6本になる」などの問題があったのですが、急激な進歩や進化でどんどんと発達していっています。

AIによる画像自動生成の面倒くささと、パソコンのスペックと、突然楽になった10月
AIによる画像生成に要求されるパソコンスペックは結構重ためでした。性能が足りていないと生成するのに時間がかかったり、作られるイラストの大きさが小さかったり。わかりやすくいうと「最低でも10万くらい、、できれば15万円以上お金かけないとちょっときつい」というものでした。

また、導入もパソコンにプログラム入れるなり、1か月20$なり10$なりの費用もかかりました。まぁ、ちょこっと遊んだりしましたが、10月に「Web上で無料でできるよ!」というシステム「Mage」が発表されました。えっ!マジで!と叫んだものです。


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こちら、Web上で完結するため、画像生成に30秒ほどの時間はかかりますが、私のパソコン(8年前くらいに買っていて、1万円くらいのGPU放り込んでいるもの)でも動いてくれました。

実際に自動生成でバッグや靴や財布のデザインを作ってみよう!

このMageのおかげでAIによる自動生成は格段に楽になりました。実際にやってみましょう。


バッグのデザインを作ってみる

使い方は簡単。Mageのサイトを開いて単語を英語で入れていくだけ。


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イラスト生成のコツはひたすら、トライ and エラー and リトライ!

漠然とした単語を入れるよりも限定すればするほど狙ったものは出やすいかな、と思います。下は「bag alien」と入れたものです。

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なんだこりゃ。「エイリアン+バッグ」だとこうなるのかぁ。もうちょっと細かく「Bag alien space」と入れると・・・

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「バッグの外側に宇宙かけばいいだろ!」的になっているな、これ。「bag alien shape」と入れると・・・

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違うなぁ・・・バッグの外側にエイリアンかけばいいんだろ!的に考えていやがるなこいつ。エイリアンのイメージが古いな、これまた。

「alien bag green shape」と入れると・・・

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お!ちょっと良くなってきたな。やはり限定すればするほど良いように思えます。

AIに指示することを「呪文を入れる」と表現しますが、呪文をどのように入れるか、などは試行錯誤していくしかありません。いろいろ試してみました。

AIで作ったバッグや靴や財布

バッグ

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bag alien系列で生成。

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「shoes doraemon」で生成。あぁ、なるほど。色合いか・・・

財布

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「space+wallet」や「doraemon+wallet」

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AI 自動生成の仕組みを考えると何が得意で何が苦手かわかってくる

AIによる自動生成は単語を突っ込んで、Web上に出てくる検索結果を組み合わせている、というだけのものです。AIさんはspaceやらbagやらを明確に区別しているわけじゃありません。

正直、AIはそれほど賢いわけじゃありません。ただ、彼らはこの検索して組み合わせてアウトプットする、という作業を何十回、何百回、何千回繰り返して、どんどんと蓄積して賢くなっていきます。


AIでデザインをする際に何が苦手なのか?

例えば、doraemon+shoesを見るとわかるのですが、「こちらの求める具体的なキャラクター」を「靴に移す」という場合、キャラクター画像を載せておけばいいんだろ!ではなく、「キャラクターを構成する色彩を靴に載せれば良いんだろ」と考えているんでしょうね。doraemonのフォルムを靴で表現するというのは、私の呪文では難しいわけです。

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ただ、画期的な形や機能性を生み出すのは苦手です。財布あたりを見ればそれがよく分かるかと。

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既存品の財布の形を組み合わせたり、色合い変えただけですな。「コインしまうのにこんな画期的な方法があったのか!」というようなものは、できないわけです。
AIでデザインするうえで得意なのは?
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上のバッグは「alien+bag+shape+black」を延々と行いました。20点くらいやったかな。その上で「おっ!エイリアンっぽいね!」と思ったものです。

AIが得意なのは「何度も何度も何度も何度も同じ作業を繰り返す」ということです。
玉石混交、と言われる中で、石みたいな結果を100点1000点出すのが得意なわけです。その中から「これはいいやん!」と玉を取り出すのが人間じゃないとできない役割なわけです。

上記サイトのMageは、いちいち「単語入れる>駄目だったのでブラウザーバックする>再度クリックする」という手作業が必要となります。

ですが、これもこの数か月で「高性能なパソコンなら1クリックで10点以上のAI画像を出す」というものも出てきました。

AI画像は法律的に問題はないのか?


先に書いておくと、未だにグレーゾーンで喧々諤々やられています。

AI画像は「ネット上にある画像を勝手に拾って、無断で組み合わせて作り出す」というシステムです。素となる画像が絶対に存在するわけです。

自動生成AIの中には、「こちらで用意した画像を100点なり放り込んでそこから組み合わせを延々と出させる」というものも存在します。この際に用意した画像・・・例えば手塚治虫の漫画なり画像を100点用意して学ばせる。そのうえで、「手塚治虫風のバッグを出して」などとやれば格段にそれっぽいものができあがります。これは著作権的に間違いなくブラックとなります。

では、「ネット上にある画像を特定せずに勝手に使ったらどうなるか」というのがグレーゾーンで、現在、喧々諤々言われている最中です。


革業界はAIを使えるのか?

今回は画像自動生成AIの話をしましたが、この4か月くらいでイラスト以外も急激に増えています。多分1年後にこのblogを見ると大笑いするくらいに進化が急激すぎます。

文字を入れると3Dデータ作れる、というのはものすごいですね。


じゃぁこれらがあるなら今後デザイナーや文章を書く人はいらなくなるのでしょうか?答えはもちろんNOです。

AIで生成されたものには手を加えないと、まだ現実的じゃない


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上はSFマガジン2023年2月号の表紙ですが、下記のnoteはこの表紙を作った人の作業の紹介です。


見ていただいたらわかりますが、「なんか単語入れてポンッ、でできるんでしょ?」と言えないくらいに作業と時間をかけています。

結局、人間が「これは良くてこれはダメ」という作業が絶対に必要なわけです。上記ならば「SFマガジンの表紙としてふさわしいものは」というジャッジを下せるのは人間だけです。

「新しいもの」というのは無から生み出すのではなく、既存のデザインなり考え方の組み合わせです。それをどう良いかor悪いか、と判断するのは人間がやることですね。

画像生成AI「Stable Diffusion」を使って新しいインテリアデザインを作成しまくる試み - GIGAZINE

今月のまとめ:玉石混交の中から玉を見出して磨くのは人間じゃないと無理

AIによるイラスト生成は、ほんとにこの4か月でとんでもなく変化しています。

ですが、「これはいいものだよ」というのは人間がやるしかありません。

このblogでも何度も何度も書いていますが、「企画・デザイナーがいないと売れる商品は作れない」です。
AIはこのデザイナーを助けてくれるとは思うツールです。その一方で個人レベルでも無限にある石(=箸にも棒にもかからないような雑多なもの)を手に入れやすくなり、そこから玉(=実際に金に変えられるレベルのもの)に磨きやすくなった、とは思います。

AIって大仰そう!なんて思わずに、今回取り上げMageで単語を入れるだけでも結構遊べますので気楽にいじってみてください。AIは革業界でも今後役立つ知識で技術だと思います。



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今年も一年ありがとうございました。
また来年も取り留めもなく書いていくと思いますので、読んでいただけたら幸いです。

・先月のJLIAblogの裏側、というか、文字数調整のため掲載見送りとなったテキストを完全版として下記に書いておきました。


カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
今回は、「ひょうご皮革総合フェア2022」とタンナー見学バスツアーで見るタンナーの違い。皮革産地としてお馴染みの兵庫県たつの市で行われたイベントと、それに合わせて村木さんが主催したバスツアーでタンナーをめぐり、現地取材し、リアルにレポートしました。ぜひ、ご覧ください。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

人気イベント「本日は革日和♪」および関連イベントが明日から東京で開催されます。このほか、今後のスケジュールなどは下記のリンク先をチェックしてください。

  「本日は革日和♪」

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毎度です!「コロナ明けても明けなくてもこの時期は毎年苦しんでいるような気がするな」ムラキです。秋は忙しいんですよ、普段の仕事もイベントも。

さて、今月は3年ぶりに開催された「ひょうご皮革総合フェア2022」見学とタンナー見学バスツアーの模様。それを通じて、「タンナーによる革の違いってどういうの」という話です。

オチとしては「ここが一番いいタンナーなんです!というのは<それ、あなたの感想ですよね?>という程度でしかない」という話となります。

タンナー見学バスツアーってなに?


私が5~6回は企画運営しているバスツアーとなります。いつからやっているのか真面目に思い出そうとすると、結構大変なくらい前からやっていますね。

姫路駅集合・解散でバスでひょうご皮革総合フェアを見学して、タンナーさんを2軒巡る、という内容です。

今年のタンナーは昭南皮革とオールマイティー。そして、アルファレザーの皮革アウトレットを見てから解散となりました。

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「ひょうご皮革総合フェア2022」ってなに?


コロナ前は毎年、兵庫県たつの市で開催されていたイベントです。皮革総合フェア、というだけあって革のお祭りイベントとなります。次のようなイベントがあります。


レザーファッションショー
(赤とんぼ文化ホール 大ホール)
皮革を使って制作した衣装で、プリンセスたつのや龍野北高校生がモデルとなり、華やかなファッションショーを開催します。

革製品即売会
(青少年館体育室、赤とんぼ文化ホール前屋外テント)
国産の天然皮革で作られた靴、カバン、ベルトなどの革製品を販売します。

皮革素材即売会
(青少年館ホール、赤とんぼ文化ホール前屋外テント)
地元、たつの市、姫路市のタンナーが製造した皮革素材や、製品をタンナー自らが販売します。また、ペンケースや小物入れが制作できるレザークラフト教室も開催。

革細工体験コーナー
(赤とんぼ文化ホール 大ホール ホワイエ)
たつの市産の天然皮革を使った動物革細工などの制作体験コーナーを設けます。

学生による皮革作品の展示
(赤とんぼ文化ホール 中ホール ホワイエ)
龍野北高等学校総合デザイン科、上田安子服飾専門学校、神戸医療福祉専門学校三田校の学生作品の展示をします。

ひょうご皮革総合フェアではニューレザーコンテストの解説をした


ツアーに参加される方には会場の屋台なりでご飯を食べておいてもらい、会場のイベントや物販なりを楽しみます。

で、私が会場でやるのはニューレザーコンテストの解説です。

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会場で行われるニューレザーコンテストは、コロナになってからは9月頃に別会場で行われるようになりました。これはこれで見やすくなったので、今年はどうするのかな、と思ったらコロナ後と同じく9月に別会場で審査。11月のひょうご皮革総合フェアでは受賞作・入賞作だけ展示、という形式になりました。たしかにこのほうが見やすいかな、と思います。

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9月の審査会場の様子はこちらをご覧ください。

バスツアーでは希望者のみに入賞作品の解説をします。入賞した作品革はどう他とは違うのか、というのを推測ですが解説しています。まぁ、革って「ここが他と違う点なんだよ」なり解説しないとわかりづらいですからねぇ。

会場では昨年受賞した革をカバンや靴の職人にお願いして作ってもらった製品も展示されています。

この取組みは、「どれだけ魅力的な革だとしても製品にならなきゃ良さは理解できない」ということを実感させられますね。

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会場では学生の革作品も


龍野北高等学校総合デザイン科、上田安子服飾専門学校、神戸医療福祉専門学校 三田校の学生の革作品も展示されています。

学生さんの作品はセオリーなどに縛られず面白い発想が見られるので、見ていて面白いですね。

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革製品や革素材販売も

会場では革製品販売のメーカーさんやタンナーさんによる素材の直販も行われます。3年ぶりということで来場者さんは最盛期よりかはちょっと少ないかな、という印象を受けました。

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バスで昭南皮革へ


たつの市の赤とんぼホールからバスで40分ほどで姫路市御着の昭南皮革さんへ。

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こちらは日本でも数少ないピット槽を使ったタンニン鞣しでベンズ革を作っています。このタンナーさんがこだわるのは鞣しの技術と原皮。原皮を仕入れる際に最上の原皮を仕入れ、そこからピット槽を使った頑強なタンニン鞣しを、ベンズと呼ばれる背中の部位だけに施します。結果的に出来上がった革は頑強な革となり、ベルトや靴底に最適な革となります。



当日の模様

原皮倉庫から石灰漬け、ピット槽、乾燥などを見させてもらいました。ツアー参加者からは「ここまでこだわって作っている、というのがよくわかりました」と好評でした。

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姫路市高木のオールマイティーに



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こちらのblogでもちょくちょくと登場しているオールマイティーさん。今回のツアーでは鞣し工程や、自社で作った変わった革を紹介してもらえました。

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熊やらイノシシやら。。って、このイノシシ、やけに固くて強いな。もしかして冬原皮?

「せやな。冬にイノシシは脂肪を蓄えて体の前面が鎧のように固くなる。で、それがわかっていながら鞣してみたけど、到底これでカバンなどは作れないくらい固く仕上がっている。もしこれを使う、となると一度水戻しして裏からシェービング(裏面の肉取り作業)するしかないなぁ」

シェービングって、あぁた、これはもう機械にかけられないでしょ?

「だから手作業でやるねん」

うんざりだな、それは

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オールマイティーさんのところでは革、とそれで作った革製品も見させてもらいました。もちろん革製品は違う業者さんが作っています。

過去のJLIAblogでも書いていますが、オールマイティーさんは全国のジビエ消費された害獣などの革を積極的に請け負っています。先程の昭南皮革とはある意味真逆のタンナーさんといえます。

過去に紹介したこともあるアルファレザーさんが残念ながら来年頭に廃業される、とのことです。現在在庫として持っていた革のアウトレットセールをしています。

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で、今回のツアーでは最後に倉庫に伺って革を購入できるようにしてもらいました。

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ちょっと想定以上の枚数があり頭が痛くなるレベルでもあります。
このタンナーさんは仕上げがほんとにとんでもないレベルで、前述のニューレザーコンテストでも常連入賞者でした。


この後、30分ほどで17:30に姫路駅で解散しました。

今回行った3社のタンナーは真逆。だからタンナーは面白い


今回伺った昭南皮革、オールマイティー、アルファレザーの3社はそれぞれが得意分野が違います。

昭南皮革は原皮と鞣しにこだわり、オールマイティーは鞣しと変わった原皮や仕上げにこだわり、アルファレザーは仕上げにこだわっている。

兵庫県の姫路市とたつの市には100以上のタンナーが登録されていますが、それぞれに得意ジャンルが異なるわけです。設備や技術、仕入れルート、知識が各々で異なります。

このJLIAblogのタイトル、欧米ブランドに「負けていないぞ !」というのはたしかにそうだと思います。

ある面では欧米のタンナーのほうが優れていますが、違う面では日本の特定のタンナーのほうがはるかに得意、という面は数多いです。

色々な場所で革の説明を行いますが、「某タンナーだから良い革です!」なり「ある国で作られているから良い革です!」、なんてことはありえません。カバンなのか、靴なのか。それに対してハリや腰、硬さや色、なにを重要視するのか。それらを見極めた上で自分や製品にとって最適な革を見極めるわけです


模型のイベントに出展して革の話をしてきた

GARAGE WORKS COMMUNICATION



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11月の最終木曜・金曜・土曜の3日間行われた素材博覧会。その翌日、日曜には模型イベントに出ていました。で、そこでも革の話のセミナーをやりました。


イベント主催者「ムラキさん、セミナーやるにしても何て宣伝する?」

んー、それじゃ「模型に役立つ革の知識」という題名にしておいてください。


食肉産業の副産物の皮と革・革の鞣しの違い・価格の見方・レザークラフト工具の値段・縫い方やカシメによる革の固定方法

革の特徴・模型における革利用の提案(工具入れ・工具かけ・ディオラマの土台)


などを解説。会場では、「模型でただでさえ時間と気力とお金使っているのにこれ以上趣味増やせられるか!」という声もちらほら。

「革は極めようと思わなくていいですよ。ちょっと工具固定するポケットほしいな、と思ったときに、布や3Dプリンタよりも遥かに手軽に自分の思ったものが作れる。それは技術的にはレベル1か2までで十分。初期費用も5,000円あれば足りるし、床革使えば1,000円未満ですみますよ」と紹介しておきましたわ。

まぁ、ハマると時間とお金と気力はガンガンと吸い取られますが、それはどんな趣味も同じです。

知ってもらう努力を怠ってはいけないなぁ、と


こちらはひょうご皮革総合フェア2022の会場でみかけた掲示物です。

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さまざまなセミナーなどでもバスツアーの最中でも口酸っぱく言っているのですが、革は食肉産業の副産物、、というか、余り物を使っている産業です。

動物から肉をもらい、その上で皮を使わせてもらっているのが皮革業界です。皮革業界にいると当たり前の考え方なのですが、こういうことをきちんと伝える努力をしておかないと、何年何十年先にしっぺ返しを食らいます、確実に。


誰が見ても最高で最適な革やタンナーは存在できないし、革は食肉の副産物。
こういうことを今後も発信して消費者に理解してもらわないことには、現在のように革が普通に買える経済は維持できません。

これを見ている方が業界のためではなく、自分のために、「革って面白いんだ!」と発信してもらえれば幸いです。

ムラキの今後予定


とりあえずは年内予定(イベントなど)は終わり。イベントでパートさんにぶん投げていた仕事を早く片付けないと。

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プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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