欧米ブランドに「負けていないぞ!」

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」 の記事

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
今回は、「ジャパンレザーアワード」と「レザーソムリエ」は、実際仕事につながるのか、を考えるという話。関西人 村木さんのストレートな想いをぶつけ、皮革業界のビジネスパーソンやクリエイター、学生の皆さんの疑問を解消してくれます。

レザーソムリエの「皮革講座 Basic(初級)」はご好評につき、全会場満席となっております。皮革講座を受講してくださった皆さま、資格試験にトライしてください。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

今後のスケジュールなどは下のリンク先をチェックしてください。



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毎度です!「お金の話大好き」ムラキです。

関西人であるメリットのひとつは、お金大好き!と言っても軽くスルーされることですかね。失敗したら、「これは後日笑い話にしないと元が取れない!」と考えられることも関西人の強みです。

さて、みんな大好き「お金」の話です。今回はタイトルにありますように、「資格や賞とお金」「お金につながるのは資格や賞をとった人の意志ひとつ」という話です。

レザーソムリエってなに?

日本革類卸売事業協同組合/一般社団法人日本皮革産業連合会の行っている事業で2016年に始動しました。数年前から私もお手伝いしています。

レザーソムリエは誰が対象なのか?

皮革業界では、皮革及び革製品について正しい知識を持っていただき、皮革および革製品を愛用し、楽しみ、より多くの皆様に使っていただきたい、そんな想いから、皮革講座や皮革試験等を活用し、「レザーソムリエ」を育成することにいたしました。

革とは何か、皮革の種類や鞣しの方法、革の良さやお手入れ方法など幅広く学んでいただき、レザーライフを多くの皆様に楽しんでいただけたらと思います(レザーソムリエ 公式ウェブサイトより)。



革製品の作り手・メーカー・趣味の人や販売員さん、さらには革製品がスキ、という方でもokです!

実際、私が解説する際には「販売員の方」「作り手の方」に手を挙げてもらいますが、販売員が4割弱、作り手の方が4割くらいかな、と思います。

作り手もメーカーさんから、趣味の方、セミプロの方まで幅広いですね。

レザーソムリエはどんな試験か?

「レザーソムリエ Basic(初級)資格試験」は4つの選択肢がある試験問題50問を60分で解きます。「レザーソムリエ 中級(Professional)資格試験」は4つの選択肢がある試験問題75問を60分で解きます。



全国にあるテストセンターで受験できるコンピューターを使用した試験(CBT方式)になりますので、どこでも受験が可能です。

試験内容としては公式テキストを基本としてそこから出題されます。


「レザーソムリエ Basic(初級)資格試験」は、その中でも初心者を対象としたものです。皮革素材の特徴や違いに始まり、クツやカバン、ベルト、レザーウェアなどに関する基礎知識、さらにはケア・お手入れなど、革に関する基礎知識を網羅的に問う資格試験です。

「レザーソムリエ Professional(中級)資格試験」は、レザーソムリエ Basic(初級)合格者または、皮革及び革製品(販売業含む)取扱歴5年以上の方を対象とした資格試験です。より専門的な知識や技能を測り、証明する資格となっております(レザーソムリエ公式ウェブサイトより)。



個人的に言うならば・・・初級は浅く広く、です。靴や鞄の知識なども問われます。中級は逆に狭く深く、です。革の作り方などを中心に試験が作られています。

初級と中級では方向性がまるで違います。タンナーさん(革を作る工場)から見たら中級のほうが楽です。むしろ初級のほうが難しく感じるはずです。

レザーソムリエのテキストは結構オススメです。

レザーソムリエにあわせて作成された初級と中級のテキストですが、結構オススメです。

初級は浅く広くですので、革や革製品づくり、革製品の手入れに関して浅く広く学ぶのに最適です。読んでいて面白いです。

中級は深く狭く。革づくりのみに関する解説です。現状、手に入りやすくて革づくりに関して学ぶならば、このテキストはオススメです。


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中級はほんとにマニアックですね・・・。

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お金はどれくらいかかるの?

初級は5,500円、中級は11,000円かかります(2023年7月現在)。



初級・中級ともに各地でセミナー(「皮革講座」)が行われています。

初級は無料です。一般社団法人日本皮革産業連合会からの支援で無料で受講可能です。

中級は有料となります。27,500円かかります。

レザーソムリエ(「皮革講座」)初級は2.5時間で革に触れます



初級の資格試験は鞄や靴、手袋、革などもまんべんなく出ますよ、というのにセミナーでは革素材と手入れの話のみとなります。セミナー受けたからって、「セミナー受けた人だけこっそりと試験問題を教えるよ!」なんてことはありません。

座学を受けてもらい、18分×4回で「牛」「爬虫類」「仕上げ加工」「各種動物」について実際にそれぞれの革を触って解説します。

この「実際に触る!」というのがとても価値があります。これだけの革を実際に触れる&きちんと解説される、というのはそうそうできない体験かと思います。

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レザーソムリエ中級は27,500円の価値を感じてもらえる内容



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中級は「27,500円」というハードルに加えて、「レザーソムリエ Basic(初級)合格者、ないし皮革及び革製品(販売業含む)取扱歴5年以上の方のみです」という高いハードルが要求されます。

1日で8時間弱の講習となります。くわしい内容は上記のリンク先で。

会場では40種類超の革が並んでいます。爬虫類や牛・馬・豚などから、起毛させたスウェードやヌバックなどの各種仕上げ加工を施した革だけでなく、合成皮革なども並んでいます。それも大きいサイズで一枚一枚。

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最終的に講座の最後にある「利き革テスト」での点数が中級の資格試験で加点されます。

「講座受けないと合格できないじゃないか!」「金で点数買うのか!」という声も実際に聞きましたが、逆です。

「中級のソムリエを受けるならば、知識だけじゃなくて、実際に革を触ってその上で資格試験を受けてください」という意味合いがあると思います。


何度も何度もこのブログで書いていますが、「革は実際に触らないとわからない情報が多すぎ」です。


中級の資格試験は4つの選択肢がある試験問題75問を60分で解きます。知識をきちんと勉強すれば中級は合格できます。ですが頭でっかちに知識だけじゃ駄目なわけです。

セミナー会場では40種類以上の革が並び、それらの革を触ってもらい、最後には「利き革」テストがあります。全国にあるテストセンターで受験できるコンピューターを使用した試験(CBT方式)が、

「ちゃんと革を触った」「僕はヌバックとスウェードの違いをきちんと指で感じました」「PVCとカンガルー革の違いをきちんと手で触りました」「コシの強い革・ハリの強い革、というのを実感しました」という、「触った実感」と「自信」を持ってもらえます。

それらを持った上で中級のソムリエを名乗ってほしいな、と運営サイドは思っているわけです。

40種類以上の革を実際に触れて、各種専門家が座学で教える、というのは現在の日本では存在しません。また、どれだけ登録者数が多いユーチューバーさんがどれだけ言葉で説明しようが、実際に触らないとわからない情報が革には多すぎます。革を触って専門家が解説する、ということに27,500円の価値を見いだせる方ならば意味があると思います。

ジャパンレザーアワードって?

一般社団法人日本皮革産業連合会が主催している国内最大の革製品コンテストです。



私が初めて同アワードの応募作品展示会場に行ったのが2012年かぁ・・・まさか10年以上の付き合いになるとはなぁ・・・。

ジャパンレザーアワードに出すメリットは?







このアワードは出展するだけでメリットがあります。
「応募するとプロのカメラマンが撮影してくれる」「それをきちんとWEB上に受賞・非受賞の応募作品問わず載せておいてくれる」「その際に自分のブランドネームなりSNSリンクを繋いでくれる」が、受賞する・しないを問わず最大のメリットだと思います。

他には、審査会/応募作品展では一般来場者にもアンケートを書いてもらい、「この作品のここがスキだ」と書いてもらうと、後日作品返送時にそのコメントも一緒に返送されてきます。

他にも、「作品展示時にハガキ1枚サイズのプロフィールが書ける(これ、宣伝としても、作品アピールとしても、ものすごく有効です)」「出展者限定の懇親会がある(感染症対策のため今年も行われません)」などのメリットがあります。

一切の忖度がない、厳正な審査

「ジャパンレザーアワード2022」グランプリは、野沢浩道さんが受賞。

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なんと鉛筆1本を入れるケースです。




大賞結果を聞いたとき、「審査員さんたちは全く忖度してねぇなぁ!!!」と大笑いしたものです。

受賞者さんはメーカー勤務というわけでもないですし、大量生産・販売するわけでもありません。それでも大賞です。実際受賞者自身が一番驚いたそうです。歯医者さんですから、受賞者さん。

本職が別にあり、クリエイティブを追求している作家さんが「ジャパンレザーアワード」のグランプリを受賞したのは初のことです。



デザイン、ファッション、各分野の第一線で活躍する審査員たちの厳正な審査により、この作品が選出されました。一切の忖度がないことに改めて驚きました。それは、メディア関係者も同様で、「毎日新聞」や「めざましテレビ」(フジテレビ系)で取り上げられるなど、注目を集めました。


<審査員長 総評>
レザーアワードというと、どうしても既存の製品の進化や質の向上に視点が行きがちだが、もっと大切なことは、その提案が、どれだけ人々の生活やモノの見方を変えるか、その可能性があるかではないだろうか。無論それは大変難しいことなのだが、この作品はそれを見事に乗り越え、「こんなの欲しかった」、と言わせる強さを持っている。
一本100円足らずの鉛筆の価値が、この作品によって100倍になると言っても過言ではない。鉛筆が短くなるとできるスペースは、「思考を働かせた標」、とする発想も今の時代にマッチする。モノとコト、二つのデザインアプローチが見事である(「ジャパンレザーアワード2022」公式ウェブサイトより)。


「ジャパンレザーアワード」を受賞するには?

選考基準は、ものづくりの技術だけではありません。凄腕の職人さんが受賞を逃して、その無念の想いを聞いたこともあります。一方、2022年度学生部門の最優秀賞「牛さんの爪サロン」という作品は無縫製で仕上げられたものです。



「ジャパンレザーアワード」だけでなく、創作系のコンテストで受賞するためには、応募要項・概要を調べるのが重要だと思います。



審査員の属性や履歴については、下記ページで掲載されています。審査員がデザイン系なのか、ファッション系なのか。歴代の受賞作品の審査員は・・・結構重要です。



長濱審査員長のインタビュー(「JLIAtv」)も重要なヒントとなりそう。


上記のことをふまえたうえで、「自分は何を作るか」「ジャパンレザーアワードというコンテストと審査員の考え方」と自分の作るもの・作りたいものをどうすり合わせていくか、です。

この考え方ややり方はある意味邪道的な思考方法です。ですが「受賞したい!」と思うならば重要な考え方です。受賞していない私が言っても説得力ないですが・・・。

レザーソムリエの資格やジャパンレザーアワードの受賞によって、お金が儲かるのか? 給料が上がるのか?

「レザーソムリエの資格を有したり、アワードを受賞したからってお金が儲かるのか?」と聞かれたら、「そんなの儲かるわけないやん」と答えます。

ですが「これまでに、ソムリエの資格保有者やジャパンレザーアワード受賞者でお金儲けしたorお金儲けにつなげた人はたくさんいる」と答えます。

ワインのソムリエってそんなに高給取りじゃない?

資格・雇用・収入の関係性はシンプルではありません。資格なんて意味ないか? というと、そうは思いません。

資格は「(その資格を取るために)きちんと勉強した」証です。資格をもつ人の「箔」や「トロフィー」のようなものがひとつ増えたにすぎません。それを生かすかどうかは、その人次第です。

受賞しなくてもお金儲けた人もいるし、受賞してもお金儲けていない人もいる



「ジャパンレザーアワード」で受賞した職人を有した某メーカーさんは、イベント出店の際に「ジャパンレザーアワード受賞!!」というのぼりを作り掲げたそうです。

「ジャパンレザーアワード」を認知しているユーザーの割合はともかく、受賞という言葉だけでスゴイ、と伝わるわかりやすさは抜群で、着実にビジネスに活用したわけです。

一方、同アワードで受賞後、状況に変化がない人も残念ですがいらっしゃいます。

また、手作り作家さんがイベントで「レザーソムリエ初級 有資格者」と掲げているのを3人は私は見ています。これも「箔」として利用しているわけですね。

「箔」をどう使うかはその人の意志次第

初級ソムリエや中級ソムリエ講座の際に言います。

「ソムリエを取る・取らないはご自由に。ですが、今日、あなたは、これだけの革を実際に触った。これから先の人生で『僕はこれだけの革を実際に触った』と誇ってほしい。それは4択試験だけで手に入れたソムリエ資格よりも意味があることだと私は思う」

「アワードなんて応募してなんぼ儲かるねん?」という人にも言います。

「100%確実に儲かりたいならば、ものづくりなんてしないほうがいい。自分で商売もしないほうがいい。なにか行動して、それで得た成功にせよ失敗にせよ、それをどう活かすかは自分次第でしょ」

どんなものでも、手に入れたものをどう使うか手に入れたその人の意志次第なわけです。

ちなみに革の箔押しもおもしろい世界で過去に下記のブログで紹介しています!


ムラキの今後予定

8月5日(土)、「皮革講座 Professional(中級)」大阪会場 レザーソムリエのお手伝い。



8月26日(土)・27日(日)、イベント「革にまつわる工具と工法」(東京・八広)技術解説しています。今回はカッターの使い分けの話とか。



9月15日(金)・16日(土)、lized工場見学&染め靴ワークショップ(千葉) ワークショップのお手伝いしています。



9月30日(土)・10月1日(日)、「ジャパンレザーアワード」応募作品展。くわしくは次回以降お知らせします。


カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。

今回はオンラインとリアルは相互に補う、という話。コロナ禍による変化と、オンライン、オフラインの特長を生かしたワークスタイル、レザーイベントの運営の今を村木さんの視点でリアルに提示します。ぜひ、ご覧ください。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

今後のスケジュールなどは下のリンク先をチェックしてください。


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毎度です!「イベント終わるとしばらくはぐったり」ムラキです。

先日、東京レザーフェアにあわせてイベントを3日間行ってきました。

無事に終わりましたが、コロナ禍による強制的な10年の進化は色々なところで影響を及ぼしています。
コロナだからテレワーク!オンライン!と思われがちですが、最近は「やっぱりオンラインは限界がある」とも思います。

今回は下記について報告や説明をします。

・コロナ禍で急激に出てきたオンラインシステムの昨今

・オンライン飲み会・テレワークにおける新人教育

・リアルイベントの減少

・ではリアルイベントは駄目なのか?

結論としては、「革やものづくり、なんてのは実際に触らなきゃわからない情報が多い」「だから、リアルとオンライン、情報で補完しあわなきゃいけない」、です。

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コロナ禍で10年は時代が強制的に進んだ


コロナですが、良いことも悪いことも10年の時間は強制的に進んだ、と思います。実際問題、革業界でも各種会社で「高齢の社長が引退された」、「高齢のじいちゃん職人がやめた」「重要な内職のおばちゃんがやめてしまった」などの悲鳴を聞きました。

コロナ禍で出てきたオンラインシステムは今見返すとどうなっているか、ということを簡単に書いていこうと思います。

オンライン飲み会、どうだった?

コロナの初期に出てきたオンライン飲み会を何度か試してみました。で、現在はさっぱり行っていません。

実際にやってみてわかりましたが、オンライン飲み会ですと「あ、私は喋りすぎたから次はあなたがしゃべる番だね!」「相手がしゃべりたそうだ」などの些細な情報が拾いづらい。これが致命傷でした。

また、「こいつの話くどいから、私は違う人と話そう」ということもできないのも致命傷だったように思えます。

ただ、オンライン飲み会やオンライン会議が増えたことにより、「場を管理する管理者を任命しないといけない」「管理者はトップの人じゃない方がいい」「たとえトップでも管理者の言うことは聞く」などのルールを守ろう、という暗黙のルールはできたように思えます。この暗黙のルールにより、これ以降のオンライン会議のルール作りは急速に広まり、高齢のえらい方でも参加する空気が形成されたように思えます。

実際、「60歳越えて高校の同窓会をオンラインをやったよ。翌週、その中で仲のよかった友達5人でオンライン飲み会したよ!」や、「名古屋、兵庫、鹿児島の機械屋同士でオンライン会議したよ」など、今までそういうことを一切拒否していた年代が使うようになったのには驚いたものです。

テレワーク時代の新人教育や社員のコミュニケーション

コロナ最初期の時の新入社員や新入学生はほんとに大変でした。特に学生さんは入学、即座に休校でオンライン、ということでしたので現場の先生方の苦労を考えるとほんとにお疲れ様です、と心から言いたくなります。

このドタバタで被害も大きかったのですが、このコロナがなかった場合、学校や仕事場におけるオンライン化・テレワーク化は不可能だったんじゃないかな、とすら思っています。

若手に聞いたところ、IT業界などではすでに新人などは「テレワーク化されていない職場では働きたくない」という声も出てきているとか。

私のような若手じゃない人間からしたら「じゃぁ今の時代若手は楽だな!」「おじさんの若いころはなぁ・・・」と愚痴ろうかとも思ったのですが、先日読んだ本や実際の若手に話を聞くとそうでもないようです。


上記は、「ゆるい職場」という 今年頭に出た書籍の著者による記事です。文中で著書の8割はまとめられているように思えます。

内容をまとめると、

・現代はコロナによるテレワーク増加や、人手不足により間違いなく若い人にとって働きやすい環境になっている

・働き方改革や法整備によりブラック企業、と呼ばれる環境も減っている。残業も減っている

・その一方で残業減少により給与が減っているのも事実

・これらにより、若手は職場が『ゆるい』と感じており、自分の若い時代のキャリアをここに使っていいのか、と不安に思う

というようなもの。

また、テレワークが増えたことによりOJT(オンザジョブトレーニング=実際の仕事を通じて指導する)がやりづらくなっているとか。上司も上司で若手がどこで躓いているかを判別しづらい。若手も「これを上司に言ってもいいのだろうか」というので悩みが聞きづらいとか。

多分、今現在は失われた30年からの脱却をする過渡期であり、若手も上司も新しい環境に慣れる時期なんだと思います。オンラインですべてを終わらせるには多分まだ5年から10年くらいは慣れる時間が必要です。同時に「そんなの慣れられない!」という人間が出て行くのにもう10年かかるかな、と。

コロナが一段落ついた今、いろいろな企業、事業者を見ていて思うのは、「コロナの最中に将来のために何かをやっている会社は、落ち着いた今伸びているな」ということ。

今の時代は、コロナ前の成功体験なりにすがりつくのではなく、10年進んだ未来に適合しないと生き残れないんだろうな、個人も会社も、とは思います。

オンラインは10年は進んだと思う。では、リアルは?


上記にあげたのは、「コロナになり人間もオンラインに対応できるようになった」という一例として書いています。その一方でリアルはどうなったでしょうか?

リアル展示会が消えていっている

この数年で驚いたことはたくさんありますが、印象的だったのは下記の事例です。

●高級時計の展示会 バーゼルワールドが中止





イベント出展社にしたら、コロナで強制的に「オフラインイベントに出なかったらどうなるか」「その浮いたお金をネット広告に費やしたらどうなるか」という実験ができてしまったわけです。ほんとに10年進んだなぁ、世界は。そして「リアルイベントに多大なお金でなくていいんじゃね?」「やるなら自分たちでやればいいんじゃね?」と気づいてしまったわけです。

これらの商材は五感のどれに訴えているのか? リアルイベントはだめなのか?

ゲームなどはゲーム実況やeスポーツがより知られるようになったから、というのはよくわかります。ゲームは五感のうち、視覚と聴覚に頼り切っている媒体ですので、オンラインと相性が良すぎます。

他方、高級時計も五感のうち、視覚情報が強すぎました。持ったときの質感なども重要だったのですが、やはり消費者的には視覚情報が第一義だったようで。

革は触らないとわからない情報が多すぎる

先日行った「本日は革日和♪ in 浅草エーラウンド」イベント報告

「東京レザーフェア」会場9Fにて行われた「浅草エーラウンド」にて、「本日は革日和♪」としてセミナーを二つ取りまとめました。

一つは、大阪の靴の型紙制作の古瀬さんを招いての実演を見学するセミナー。他方は、当ブログ4月更新分でお伝えした千葉レザーの話。




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両セミナーは「実際に見る」「実際に触る」のがとても重要でした。


「本日は革日和♪ in 東京・八広」
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「東京レザーフェア」の会期が木曜・金曜なので、「本日は革日和♪」は金曜・土曜に行いました。


コロナになり来場者の緊急連絡先を確保しておかないといけない、費用捻出のために事前予約制かつ有料化(入場料1,000円で2,5時間滞在可能)。1日2,5時間✕3枠✕2日、という設定ですね。

トータルで来場者は2日で60人くらいです。

「わずか60人?」と思われるかもしれませんが、入場料1,000円、かつ、事前予約までしてきた60人以上もの方が来場してくださいました。つくり手対象のイベントですので、そもそもの市場規模も小さいですしね。

お金払わない1万人よりもお金払う100人のほうが大事

このイベント、出展料は私個人が運営していますのでそれほど高くないです。ただ、来場者はせいぜい数十人くらいしか呼べません。そもそも数百人来たらイベントが破綻します。

出展者の中にはほぼマンツーマンで1時間以上喋っているだけ、という人もいます。私などは客寄せパンダ的に来場者に20分くらいで「人に話したくなる革の話」や「固定と摩擦」の話をしていたくらいです。


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これらの話などをオンライン動画であげたらそりゃ1年やれば数千再生なり稼げるかもしれません。ただし、それは「無料で、単なる作業しながら見ているだけ」の数千回です。

それよりも、確実にお金を払ってきちんと聞いてくださる10人のほうが遥かに価値があります。そして、その10人は1,000円払ってきちんと聞いてくださっているわけです。

革は丁寧な接客を心がけないと売れないし、革素材と食材は似ている

革素材は金属や布に近いと思われますが、個人的には食材に近いと思います。触感や匂い、聴覚、なども使って判断するわけですから。

どれだけきれいな写真を使って説明したり、小綺麗なお兄ちゃんが商品説明したとしても、それは見た目と機能性しかアピールできません。革素材は触らないとわからない情報が多すぎます。

オンラインが悪いわけではない。リアルとオンライン、両方で補わないといけない


例えば、インフルエンサーなりユーチューバーなりに仕事を依頼すると「登録者数✕~~円」なりが要求されます。ですが、この登録者数の「質」がさっぱりわかりません。お金で買った登録者かもしれませんし、登録しているだけで見てくれない人かもしれない。更には無料だから見ているだけの人かもしれないわけで。

今回、革日和の出展者にしても動画なりSNSをやっている人は多いです。ですが、漠然とオンラインだけでやっていても登録者数も増えませんし、お金も儲かりません。

リアルイベントで見てもらって、そこから登録してもらったり。逆に、オンラインでSNSや動画を見て、そこからリアルイベントに来てもらう。そのうえでお金を払ってもらう。

現状の登録者数を稼いでお金儲けする、というシステムはどこまでいってもYouTube=グーグル、という神の手のひらの上です。彼らの都合一発で売上などぶっ飛んでしまいます。更にはどんどんと競争相手は増えていっています。それがわかっているからこそ、ユーチューバーさんたちも数年前から準備をしてきていました。今から、オンラインの数字を増やすことに価値を見出してももう遅いわけで。




数を稼ぐよりもきちんと革は触ってもらって、信頼してもらって、お金を稼がなきゃいけないわけです。
鞄でも靴でも革素材でも、革の販売は、売り手の信頼を売る商売だな、と思うわけですわ。

実際に革を触ってもらいたい、ムラキの今後予定




カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
今回はタンナーに革製作を依頼した人のセミナーをやりつつ、「最悪は想定を乗り越えるからこそ最悪だ」と実感した話。村木さん主催セミナー(トークイベント)で、千葉県の獣害対策により生じた原皮を利活用している事業者が登壇。サステナブルな革づくりの現状を村木さんがまとめました。
また、オンラインイベントの運営についても紹介されていますので、自社で企画する際や担当になった場合の参考になさってください。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

今後のスケジュールなどは下のリンク先をチェックしてください。


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毎度です!「失敗の話を嬉々として話すのは関西人だけですよ」と言われた村木です。

関東では、「失敗話をすると自分の評価が下がると考えられるのでわざわざ失敗話をしたがらない」と言われましたわ。失敗のほうが学べることは多いのになぁ。あと、「自分じゃない失敗の話」って聞いていて面白いですしね!

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さて、今回の話は、
・セミナーの内容「鹿・イノシシを獣害対策から経済の円環に入れるチバレザーの面白さ」
・先日行ったオンラインセミナーのやり方とトラブル・対応策
というものです。

オチを先に話しておくと、
「オンラインセミナーも革づくりもトラブルの原因追求が一番たいへん」
というものです。

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獣害対策のイノシシや鹿から作られているチバレザー


今回、千葉県の獣害対策から原皮を引っ張り、タンナーで革を作っている1008(センノハ)株式会社さんを招いてセミナーを行いました。




獣害と害獣の違い

獣害は、「イノシシやシカ、クマ、サル、ネズミなどの、野生動物によって起こる害のこと 」。


害獣(がいじゅう)は、「人間活動に害をもたらす哺乳類に属する動物一般をさす言葉である。人間の多い地域では、家畜などの飼育動物以外はほとんどがこれに含まれる可能性がある」。


獣害対策、害獣駆除、という言葉は正しいわけです。
ですが、獣害駆除、というのは言葉的にちょっと違うわけです。

チバレザーはこの獣害対策として狩られたイノシシや鹿を千葉の解体場で解体し、そこから出てきた原皮を姫路のタンナーさんで作ってもらっています。

セミナーで「こんな人に聞いてほしい!」ターゲット層を設定

第一部は作り手。革でなにか作っている人・商売している人。獣害の鹿やイノシシはどういう革?自分のものづくりに応用できるかな?と思っている人向けです。

第二部は第一部の上級バージョン。ならびに、「自分でタンナーに頼んだら安く済むんちゃうか!」と思っている人。獣害駆除で肉で利益出ないから革で利益だそう、と思っている人。

結論から言っておきますが、「タンナーさんがいても革づくりはめちゃくちゃ大変!」「お金が溶ける!」。

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土に還る、のが特徴のチバレザー

獣害対策、としてイノシシや鹿が狩られ、肉を使い、皮も有効活用、というのがチバレザーのコンセプトです。その代償、というか、特徴として、必ず傷があります。ダニ傷や喧嘩傷、ひっかき傷、など確実に傷があります。まぁ、牛、豚なりの肥育農家で育てられていない動物である以上は傷があって当然です。ですので、「傷がない革がいい!」といっても不可能です。

で、ジビエでは当たり前の特徴以外に、この革の特徴として「土に還る」が生産のコンセプトとなっています。

使っているタンニンの薬剤は土に還ります。さらに仕上げ加工もしていませんので、汚れも吸いやすいです。それが嫌な人はご自身でレザーラッカーなりで仕上げ加工をしてください、というものです。

第一部は肉を食べよう!という話が半分。そうしないと革が出ない、というオチ


 


今回のセミナーはオンラインとオフラインの両方で行いました。


オンラインの参加者は北は北海道、南は高知県までご参加していただきました。ご参加いただいた皆様、トラブルが多かったのにほんとにありがとうございました!

出席者は、作り手さんや、ハンターさん、地方行政の方などもおられ、多彩なメンツでした。その各々に興味ありそうな話をしてもらいました。くわしくは上のブログをまた見ておいてください。

第一部は革の特徴や「イノシシや鹿の肉食ってくれないと革は出てこないんだよ!」という話を重点的にしてもらいました。前半20分は肉の話ばっかりです。下の画像はプロジェクタ資料です。

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ちょうど、TLA(Thinking Leather Action)に通ずるところのある熱い内容でした。


第二部は「タンナーで革づくりってこんなに大変!」という技術、じゃなくて、依頼する立場の苦労の話

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「解体場とツテができて原皮が手に入ってタンナーに持っていったら革は作れるのか?」「革屋飛ばして金積んでタンナーと付き合えば、安く革は手に入るのか?」というような意地悪な質問をしました。

結論から言うと「おすすめできない」というものでした。だろうなぁ・・・。

不確定要素が多すぎるのです。
革は。

下の動画で彼の失敗話をしてもらっています。



 


失敗しないと経験値は積めない

専門家だからこそ、失敗をする。新しいことをするなら失敗をして当然

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上の動画でも言われていますが、8~9月に仕込んだ革は革の吟面(革の上部部分。一番頑丈)が溶けてしまったそうです。

この場合の原因ですが、複数考えられます。
・タンナーの技術なのか、薬品なのか
・元の原皮の保存方法か
・原皮を取る解体の方法なのか
・屠畜した時期なのか
・イノシシや鹿がどれだけの栄養状態にあったのか

これらすべての原因をひとつひとつ調べたり、対照実験をするしかありません。

対照実験>ある条件の効果を調べるために、他の条件は全く同じにして、その条件のみを除いて行う実験。 除いたときと除かないときの結果を比較する。 医療や統計学では対照試験ともいう。 コントロール実験。

失敗のお金は誰が払うか?

失敗はマイナス、ではなく、「同じの条件下でやれば同じ失敗をするのか」まで調べなきゃいけないわけです。では、その費用は誰が負担するのでしょうか?もちろん「革を依頼した人間」です。

さらには、各々の専門工程のどこに問題があるのか、を調べなきゃいけません。
タンナーさんも解体場の人も誰も他業種のところにまでいって原因追求なんてしてくれません。
電話して怒鳴られたり、実際に行って説明するのは誰でしょうか?

もちろん、「革を依頼した人間」です。 これが従来では革屋さんがやる仕事なわけです。

労力を提供して、お金を払うのも「革を依頼した人間」です。

失敗したからお金払わない、は駄目なわけです。依頼者はお金を払って、「あぁ、専門家がこうやれば失敗するんだ。お願いしている専門家さん、失敗を次に活かしてね!お金は払うから」と言わなきゃいけないわけです。

ちなみに、前述の8~9月の革づくりがうまくいかなかったのは「水温が上がりすぎるため、8.~9月は仕込まない」という結論になったそうです。

失敗はほかでも生かせるのか?

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専門家は失敗を積んだならより良くなるし、ほかでも生かせるのか、というとケースバイケースです。

例えば、上記のセミナー中に北海道の方が、「水温高いならば北海道でタンナーを作れば問題ないのだろうか?」というとても良い質問をいただきました。

これも本編で言っていたのですが、「多分、今度は冬には寒すぎるから違うトラブルが起きる」とのことです。過去に聞いた話では、「姫路の革を作る製法は姫路のタンナーだからできる。例えば違う地域の川の水を使うと同じレシピでも作れなかった」ということもあるそうです。

違う地域に行くと今度は違う失敗があります。例えば、この革などはあくまで「千葉の地域で捕れた鹿やイノシシの原皮から作った」革でしかありません。

捕獲した地域や時期によっても微妙に皮は変わり、革に影響します。

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だから、このチバレザーを鞣しているタンナーさんが習得しているのはあくまで「千葉の特定地域の皮を鞣して革にする技法」です。もちろん埼玉なり高知の鹿やイノシシでもうまくできるかもしれませんが、それを知るためには一度作らないといけません。

設備がでかいので、量産のことを考えると20~30枚を一気に仕込まないと同じデータは取れません。「練習で1枚鞣してよ!」といってうまくできても、20~30枚仕込むと問題が発生しかねません。これが革づくりの恐ろしいところです。

第一部、第二部はまた後日お知らせします。下のリンクをご覧ください。



ここからはネットでどう配信するか。環境はどういうものだったか。実際にどう失敗してリカバリーしたか、を載せていきます。興味ない人は全くないでしょうし、興味ある人は以下の箇条書きでもご理解いただけると思います。

配信はこういう環境でやろうとした

・マイクロソフトTeamsの会議機能+ノートパソコンのOBSで配信
・カメラはビデオカメラをノートパソコンに接続。OBS経由で取り込み予定
・音声はボイスレコーダーを保険として録画しておく
・ビデオカメラには外部マイクを接続
・事前募集はこくちーずで作成。支払いは銀行振り込みか、paypalによるクレジットカード支払い
 ※こくちーず、便利ですよ、ほんとに。
・保険and後日販売用にビデオカメラで全体撮影
・私自身MVNOを2つ契約。それぞれでテザリング予定。さらには会場となるレザークラフトフェニックスのwifiも保険として使う予定
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実際にあったトラブル

・会場となるフェニックスの教室スペースだが、docomoが恐ろしく回線速度が遅い。300kpsなんて数字久々に見た
・手持ちのMVNOの1つはdocomoだが、他方はau。こちらは80MBなり速度があるので、配信大丈夫だろ!と思ったら、テザリングしたら速度が10MBなどに低速になってしまう。この時点で真っ青
・近くにいた知人にグローバルwifiを端末ごと借りたが、これもdocomo回線なのか、配信場所だけ速度がものすごく遅い
・セミナー開始の時間が迫る どうする!?

対処法

・スマホのau回線は爆速だったので、最終的には2時間のセミナー中、ずっとスマホを片手で保持してプルプル震えながら参加
・スマホをスタンドで立てかけていたら、途中で「バッテリー20%ですよ!」と
・手持ちのPD充電対応のモバイルバッテリーをPD充電可能なタイプCケーブルで充電。おかげで20%以下にはならずに配信を続けられた
・オンライン参加者には謝罪して、撮影していた動画を無料でプレゼント、と言っておきました

反省点と良かった点

・定額で多人数・事前徴収の必要があるセミナーは、こくちーずの有料プランで参加料を回収代行依頼したほうがいいな。依頼しておくと一覧で「この人は払った」「払っていない」が一目瞭然。paypal経由でクレジットカード振込も可能。
 ※こくちーずは「キャンセル待ち」や参加者csvダウンロードが基本機能としてあるので、とても楽です。


・まさか4つの回線を使っても全部死亡寸前とは思わなかった。想定が甘かったな、と。今どき都会のど真ん中であんなにdocomo回線が通じづらい場所があったんだなぁ
・スマホ用の三脚買っておこう
・PD対応のバッテリーとケーブルなかったら多分止まっていたな


・ウェビナー専門ツールをあきらめて月額サブスクで契約するべきか?


・ビデオカメラ用意しておいてほんとに良かった。カメラと録音機材はどれだけ持っていても無駄にならない。高い機材一つよりも信頼おける型落ち品のカメラ2つのほうが安心感あります。(私が使っているSONYのビデオカメラ、多分8年ほど前のやつです)


最悪を想定していてもそれを乗り越えてくるのが最悪

配信話については興味がない人は全くないと思います。ですが、技術の話を聞いてほしいわけじゃありません。

「最悪に備えていたが、そんなものはあっさり乗り越えてくるのが最悪」「それでも色々な対抗策用意していたのでなんとかなった」=「卵を一つのかごに盛るな」ということです。


これはオンラインの話に限らずです。最初に話したチバレザーで走り回っている1008(センノハ)株式会社さんも同じです。失敗なんて起こり得るんです、必ず。その時に走り回るか、手持ちの秘密道具なり、人の縁を使えるか、です。


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なにかひとつの選択肢にすがりつくのではなく、いつでも最悪を考えて、選択肢を複数用意しておかないといけない。それでも最終的には覚悟決めたら大概のトラブルは解決できるよ、という話でした。

今後予定(&お知らせ)


●4/28(金) 「フェニックスナイト」
 「レザークラフトフェニックス」(大阪・奥なんば)で月末恒例の夜間延長営業「フェニックスナイト」を開催(20時まで営業)。革の無料セミナーなど行います。



5/25(木) 「本日は革日和♪ in 浅草エーラウンド」
「東京レザーフェア」と連動して行う「浅草エーラウンド」の会場内で「本日は革日和♪ in 浅草エーラウンド」を予定しています。毎年5月の恒例になってきている"ぷち革日和"です。

午前は上記の千葉レザーさんを招いて大阪でやったのと同じセミナーを開催予定です。午後は大阪の古瀬シュースティリスタ研究会の古瀬氏を招いての靴の専門セミナーをとりまとめしています。


5/26(金)~5/27(土) 「本日は革日和♪ in 東京」
「本日は革日和♪ in 浅草エーラウンド」の翌日は会場を変更して、「本日は革日和♪ in 東京」を開催予定です。今回も事前予約制(有料・お土産あり)です。

●最近メールマガジンのやり方を変えました。
何を言っているやら、と思いますが、写真使ったり、リンク繋いだり、と考えるとこのほうがいいかな、と思いまして。これで遠慮なく写真とか使えます。古いネット利用者なのでメール容量が大きくなるのには罪悪感感じますので。メールマガジンの冒頭と末尾にはそこだけでしか書いていない雑談をちょっとだけ書いています。


カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
今回はコロナ禍以降のイベントの動向と、革で信頼をお金に変える、という話。西日本で行われたイベントのレポートとともに、イベント主催者でもある村木さんがコミュニティづくり、ファンづくりと信頼関係の大切さ、そして有料イベントについて伝えてくれます。ぜひ、ご覧ください。

*   *   *

通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

今後のスケジュールなどは下のリンク先をチェックしてください。



*   *   *

毎度です! 「近所で大相撲春場所があったんですが、スーツケース転がしている外国人観光客・修学旅行生・大相撲力士が一緒になんばの繁華街を歩いている光景はなんてSFなんだろう」と感心したムラキです。

コロナ禍が一応、明けた、ということになっていますが、仕事場のある難波近郊は観光客の往来が激しめです。人の往来が激しくなった、ということで今回はイベント視察にからめて下の2点について書いていきますわ。

・コロナ禍以降のイベント動向 ~大阪・アート&てづくりバザール、名古屋革の相談会、姫路ペレテリア
・入場料を取るのは是か非か。コロナで変わったイベント参加者のマインド


オチとしては下の4点となります。

・各種値上げやコロナ禍により、消費者は価値ある、と思うものには有形無形問わずお金を出す
・失敗はしたくないから、「信頼」したところにお金を落とす
・「信頼」を積む行為を「継続」していくのが大事
・コロナ禍の最中になにか行動しているところは今、成長している

大阪アート&てづくりバザールを見てきた


3月18日(土)・19日(日)に行われた上記イベントを視察してきました。いつもお土産袋を作って革の出展者に話しかけます。



最終日の15時くらいに行きました。このくらいの時間帯ですとお客さんも少なくなり出展者もまったりとしているので、声かけやすいんですよ。接客中などは絶対声かけられませんので。

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行ってみると、休憩スペースでは「席をあけるように」などの注意書きもなし。入り口では消毒液はありますが、検温は強制ではなし。事前登録制などのシステムも一切なしでした。

来場者も多く、記憶にある限り最終日の15時過ぎでここまでお客さんがいるのは非常に珍しいです。

出展者に声をかけようにも、接客中の頻度が高く、挨拶しきれませんでした。(だいたいこのバザールでは革の出展者や、革を一部でも使っている出展者は50ブースはあります。)

コロナ禍の最中は来場者は少なくなっていましたが、昨年終わり頃から来場者数は急激に回復している気がします。また、出展者数も増えており、現在は抽選で落とされるようになった、とのことです。

このイベントはコロナ禍でこんなことをしていた


傍から見ているだけですので内情は詳しくわからないのですが、コロナ禍の最中でも「あぁ、こういう新しいことしているんだな」と見ていました。


・ハンドメイドがテーマのWebメディア構築


あなたの毎日を満たす、「好き」に出会う場所。

MeTAS+は
ハンドメイドのある暮らしに特化した
ライフスタイルメディアです。
ハンドメイド作家やものづくりに関わる人たちの
制作現場やこだわり、日常のお気に入りなどを共有していきます。

これ、すごいのは動画チャンネルも始めているんですよね。


このようなネット媒体やYouTubeチャンネルを作っても知名度なんて突然あがりません。ですが、リアルイベントでYouTubeチャンネルを宣伝できるので相乗効果が見込めます。

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さらに、会場で「会場で買ったものをハッシュタグ #てづバ戦利品をつけて投稿してね!」「投稿したのを見せてくれたら抽選でプレゼント!」なども行っている。つえぇなぁ・・・。



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動画やWebコンテンツ作成ってコスト(人的・時間・金銭)がかかりますので、手を出すのはかなり覚悟がいるのですが、よくやったなぁ、と驚きながら見ています。


・手作り品のイベント「アート&てづくりバザール」から猫限定イベント開始


次回は、7月1日(土)・2日(日)に開催されるそうです。こちらは手作り品限定ですが、猫がテーマのイベント。

このように特定もの(鳥なり犬なり)をテーマにイベント開催するのは個人のイベント主催者が多かったのですが、主催のテレビ大阪が猫限定で乗り出すとは、と驚きました。今年1月にも開催されていますが、おそらくこちらのほうを試験的に行い、来場者や出展者などを計算して大きなイベントにするか、と考えたのかな、と思います。


姫路 ペレテリアのレザーフェスティバル

3月24日(金)・25日(土)に兵庫県姫路市で行われたレザーフェスティバルを見てきました。

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このイベントは今後、秋口は新喜皮革で行い、春は今回のようにペレテリアメインで行われます。

今回はきたなか皮革さんのタンナー見学が行われました。以前こちらのblogでも紹介したことがありますね。





2日目の終わり付近に行ったのですが、初日は小雨・2日目曇りでしたが、前回よりも来場者も増えているようでした。タンナーや革屋さんによるアウトレットもありますが、製品販売もあり、賑わっているように思えました。

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このイベントはコロナ禍でこんなことをしていた


兵庫県姫路市の高木地区のタンナーは、このペレテリアと新喜皮革でイベントを大きくしようとしています。ペレテリアの運営母体であるユニタスは、「姫路高木地区のタンナーの革を小売販売」ということも始めています。こちらも2022年6月からスタートしています。



姫路高木地区はこれとは別に、姫路レザーという革素材としてのブランドを確立させようと動きを始めています。

名古屋 革の相談会


名古屋で開催された革の相談会。こちらは私が属しているレザークラフトフェニックスや染料会社、他の革屋と共同で行う小規模イベントです。なんと入場料1,500円で3時間しか滞在できません。



革で何かを作っている人または修理業の人、などというニッチターゲット、かつ、入場料が1,500円もかかります!
2日間で来場者が40名弱だったかな?

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このイベントはコロナ禍でこんなことをしていた


私個人が運営しているイベント「本日は革日和♪」でも同じですが、入場料を取ります。
入場料を取るとお客さんの数が確実に減りますが、その分接客する方としては「この人は入場料払ってでも聞きに来てくれた人なんだ」と、無料のイベントよりも格段に優しくなれます。

過去のblogでも書いていますが、革素材、というのは実際に触らないとわからない情報が多すぎです。表面のテクスチャーはもちろん、手触り・コシの強さ・ハリの強さ、などは触らないとわかりません。ネットの動画でどれだけ細かく説明しても触らないとわからないわけです。

私ムラキも「固定と摩擦」という話を名古屋ではじめて行いました。固定と摩擦、という概念。言葉にすると難しそうですが、実際に触ると一発でわかります。 当日は初級者・中級者・上級者問わず、きちんと理論だてて説明し、実際に体験してもらい、確実に何かを得てもらえた、と思います。

このイベントで重視しているのは「お金払ってくれた人に優しくする」「実際に触る、という体験を重視する人を大切にする」ということ。


「なんだ、金を払わないと客じゃないのか!初心者お断りなのか!」と思われがちですが、真逆です。
「聞くだけならコスト0!」「お店にTELで聞いたら無料で聞けるじゃないか!」という人はいます。
そういう人にお店サイドや会社サイドはコスト(時間・人・お金)が費やされてしまい、「お店の時間奪ったら申し訳ないから聞かないでおこう」という人が損をしてしまいます。

それなら、お金をくれる人を大事にしよう!というのは関西商人のえげつなさ、というわけではありません。当たり前ですが、お金を貰わないと生きていけないんです。だから、お金を払ってでも見にきたよ!という人を大事にしたいわけです。

お金払いたくない!という人は店頭に直接お越しください。今回ならば6社が集まりましたが、これらを1社ずつ回れば無料で話はできます。

このイベントに集まった会社は「商品を売って現金稼ぐぜ!」という思いではなく、「信頼」を稼ぎに集まったわけです。

コロナ禍で促進した「推しを応援する」「投げ銭」「オンラインサロン」などの直接お金を送るという行為


コロナ禍以前からもアイドルなりスポーツなりを応援する、という文化は強くありました。推し、という概念自体は2000年代のAKB48から強く始まったかな、と思います。(モー娘。などと違い、運営サイドが露骨に所属タレント同士を競わせたり、AKB48自体が複数の事務所による共同運営なので競争になりがち、とか)

コロナ禍以前、、例えばオンラインサロンは2011年頃から始まり、徐々に広まり、最盛期は2017年前後。その後も増えています。



YouTubeのスーパーチャット(=動画を見つつ、相手に投げ銭=お金を送る、というシステム)は2017年から。2010年頃からありましたが、この10年で市場規模は3倍になったとか。



クレジットカードの普及率の増加、メルカリや各種スマホのプラットフォームの課金システムの発展により、昔に比べると格段に「オンラインで送金する」という物理的心理的ハードルは下がりました。

これらの発展とコロナ禍は相性がよく、「オンラインでお金を払う」という行為は促進され、2021年時点でのオンライン市場規模は20.7兆円に迫っています。



個々人が個々人とやり取りする=メルカリやヤフオクやキャッシュレス決済などの「個人間が金銭を簡単にやり取りできる」システムの発展が身近でわかりやすい例かと思います。

実際の金銭のやり取りが手を介さず行われず、スマホやネットの数字だけのやり取りは、心理的なハードルが低く、使われやすい傾向になります。(ETCを導入したドライバーは確実に高速道路を使う心理的ハードルは下がります)

継続する、というのは信頼を高める行為


さて、有形無形問わず、人はお金を払いやすくなるシステムは整いました。では、どうやってそこからお金を儲ければいいか?

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1 信頼を積んでいるから、推し活なりスーパーチャットでお金がもらえる

「よぅし!ユーチューバーでお金を稼ぐぞ!」 全然違います

今更ユーチューバーになって稼ごう!なんてのは現実的ではありません。レッドオーシャン過ぎます、あの海は。そして費やすコストに対してお金が見合っていません。

現状、ユーチューバーにしてもYouTube運営からのお金は期待していません。釈迦の手のひらの上であがいているようなもので、運営のご機嫌を損ねると一瞬にしてお金がなくなる、というのはリスクが高すぎます。

ユーチューバーがメインにしたいのは、スポンサーについてもらい広告案件をすることでお金をもらう、もしくは自分で商品開発をして売る、視聴者からのスーパーチャットでお金をもらう、という3点がメインの柱かと思います。これらをどれにメインに据えるかで戦い方は異なります。YouTubeの運営からの収入をメインに戦えるのは上位数%のみです。

ユーチューバーが売っているのは「信頼」です。信頼を積むことで、広告を依頼され、商品を販売して利益が出せる。販売で利益があがるのは「信頼」の結果です。

「このアイドルを応援したい!」「ユーチューバーに頑張ってほしい!」なりは応援、ではなく、「この人を見ることで面白い・気持ちよくなれる」という安心感=信頼を積んでいるから、お金を払うわけです。

2 失敗したくない、という心理が年々強くなっている


下のリンクは20~39歳世代へのアンケート。


価値観に関する考え方を2つずつ提示し、それぞれどちらにあてはまるか聞いたところ、「失敗」に関しては「絶対に失敗したくない」が73.0%、「失敗を恐れずチャレンジしたい」が27.0%という結果に。また、「無駄」に関しては「無駄なことはしたくない」が68.0%、「人生に無駄なことはない」が32.0%と、失敗や無駄を避けたいと考える若者が多いことが明らかに。


まぁ、日本人自身が失敗を大きく見積もる国民性ではありますが、この「失敗したくない」という欲望は年々大きくなっています。

商品を買う。誰かを推す。応援する、にせよ、お金は使うのですが、「使ったお金が無駄だった」「失敗だった」というのが耐えられない・したくない、という考え方は増えています。

若い人だけの特徴?というとそんなことはありません。歳を取れば取るほど、失敗への恐怖心は強くなります。肉体的にせよ精神的にせよ、回復に時間かかるようになりますので。


1+2=「革製品や素材販売で信頼を積む意味があるの?」革だからこそ信頼を積まなきゃいけない

革という素材はあまりに不安定です。強度はきちんとあるのですが、供給や品質が市場や天候など諸条件で左右されすぎます。どれだけ需要が高くなっても所詮食肉産業の副産物です。誰かが肉を食わないとこの素材はこの世にでてきません。



「信頼」を積むことで、「ここから購入したら安心だ」「このブランドならば大丈夫」と思ってもらえる。それで購入してもらう。お金がほしいならば「信頼」を積み重ねていくしかないわけです。(まぁ、一時的に安売りして大量に稼ぐことも可能ですが、所詮は一時的です)

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どうやって「信頼」を積むのか?>継続すること


継続することです。お店を構えるにせよ、販売するにせよ、YouTubeをやるにせよ、SNSをやるにせよ、イベントをやるにせよ、継続していくこと。地道に。丁寧に。

来場者なりフォロワーなり視聴者数なりの数字をたくさん稼がなくてもいい。数字を稼ぐことを目的にするのではなく、継続をきちんとしていく。これが信頼を積み、結局お金を稼ぐことに繋がります。



上のリンクにある分析にもありますが、「気に入ったものにお金を払う」「自分が気に入った付加価値には対価を払う」というのは増えてきています。

推し活でアイドルにお金を払う、スーパーチャットでYouTubeの配信者にお金を払う、有料でもイベントに参加する、革製品を買う、革素材を買う。どれにしても、信頼の結果です。

継続しつつ、新しいことにチャレンジしていく


コロナ禍が落ち着いてきた昨年末から各種メーカーさんなりで忙しい!というところは、押し並べてコロナ禍の最中に「なにか」をしつつ「継続」していました。上記に各種イベントあげていますが、どれも「なにかチャンレジ」しています。もちろん失敗もありますが、失敗を気にしていたら前に進めません。

例えば、以前取り上げた山陽さんはコロナ禍の最中にホームページの刷新を行っています。その後、毎月blogを10投稿以上更新しています。毎月10投稿ってかなりとんでもないです。blog更新は地味ですが、ストック型のコンテンツは、フロー型のコンテンツ(SNSなど)に比べると効果が細く長く続きます。


今後のムラキ


●4月15日(土) 最近力を入れている染められる靴、のWSを行います。



●4月28日(金) 毎月最終金曜日に行っている営業時間延長のフェニックスナイト、でセミナーなどやっています。



●5月25日(木)~27日(土) 「東京レザーフェア」にあわせて東京・八広で「本日は革日和♪」を開催します。

昨年の内容

カテゴリー: 村木るいさんの「人に話したくなる革の話」

月1回のスペシャルコンテンツ、村木るいさんの「人に話したくなる革の話」。
今回は当連合会の皮革・革製品のサステナビリティを発信していく「Thinking Leather Action(TLA)」事業とチャットAIの可能性について。勉強会のレポートと実際にチャットAIを活用した感想をご紹介。ぜひ、ご覧ください。

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通常、皮革産業のさまざまなトピック、イベントのレポートなどをお届けしていますが、人気イベント「本日は革日和♪」を主宰する村木るいさんが月1回スペシャルコンテンツをお届けしています。イベント、セミナーなど精力的に活動する村木さん。皮革に関する確かな見識を有し、幅広い情報発信に支持が寄せられています。

当ブログでは、レザーに関心をもちはじめた若い世代のかたや女性ユーザーにお伝えすべく、わかりやすい解説とともに西日本の皮革産業の現状をご紹介しています。独自の視点・レポートが大好評です。

今後のスケジュールなどは下記のリンク先をチェックしてください。


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毎度です!
「ほんとにもうこの半年のAIの進歩は・・・」村木です。

だいたい、「2022年はVR元年!」とか「2001年は電子書籍元年!」などと言われたりしますが、記憶にあるだけでVR元年と言われているのは3回目です。電子書籍元年は5回くらい「今年こそ歴史に残る元年なんだよ!」というものが起きましたねぇ。電子書籍元年、と一番最初に言われたのは確実に20年前ですよ。

ただ、昨年、「2022年はAI技術元年」と言っていいくらい進歩がすごかったですね。将来ターミネーターのスカイネットのように「AIが人類を支配だ!」という流れが生じたときは、「2022年が発端だったなぁ」と言われるのは間違いないですね。

今回は、

・JLIAで新しく始まった「Thinking Leather Action(TLA)」というものは何をするのか?

・革やレザー、という言葉をきちんと知ってもらう努力

・チャットAIに革、レザーを聞いてみよう!

・ChatGPTとBingの違い

・AIが得意なこと・不得意なこと

という内容です。

結論から先に書くと、「AIだって所詮道具」「道具を使える人はさらに使えるようになる。苦手意識持つ人はさらに苦手になる」というものになります。

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「Thinking Leather Action(TLA)」とは?


1月下旬に大阪で行われた「Thinking Leather Action(以下 TLA)」の勉強会。このほか姫路や豊岡、東京などで開催。日本皮革産業連合会(JLIA)会員団体や皮革産業の組合の関係者が参加していました。


TLA 事業の概要は?


皮革業界内において「天然皮革はエコ、サステナブルな素材であること」を立証し、自信を持って売れる環境をつくる。

皮革や革製品を売りやすい世の中へ。

皮革業界で働きやすい世の中へ。


皮革業界に限りませんが、キャリアを重ねれば重ねるほど、消費者が何を疑問に思っているか、というのは理解しにくくなります。

えっ!そこでつまずいていたの?とか、これは常識で皆さん知っていると思っていた、なんてことはザラにあります。




上記blogでもあげたように、日本タンナーズ協会は次の発信をこの近年強く行っています。

・革は食肉産業の副産物を利用している

下のようなパネルを展示したり、動画を作ったり。このような動きは即効性はないですが、100人のうち2人が「へぇ、そうなんだ」と思ってもらえたら、将来革に対しての炎上なりが起きた時に、「いや、それは違うよ」「ほら、こう言っているから調べようよ」という動きが出る可能性が多少はあがります。

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上のような動画やパネル展示以外にも、ちょうどこのblogを書いている日の「繊研新聞」(2023年2月21日 1面)に早速、このTLAのメッセージ広告が掲載されました。

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ウェブサイトやSNSは・・・


TLAは現在、ウェブサイトやSNSを準備中です。勉強会で配布されたパンフレットはありますが、勉強会参加者用のみとなっています。今後はビジネスパーソン向け、ユーザー向けの配布物もつくられると思われます。

革、レザーって???

皮と革の定義


多分80回以上やったと思いますが、「人に話したくなる革の話」、という初心者向けセミナーで最初に話すのは、革と皮の違いです。

写真は、JLIAの「皮革の出来るまで」というDVDです。

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2009年から販売かぁ・・・、多分日本で一番このDVD見たのは私のはずです。全セミナーで放映していますので。

さて、動画の中でも解説されていますが、皮を「なめす(鞣す)」ことで革が作られます。鞣しの定義は次の3点です。

1) 耐熱性を付与すること。コラーゲン線維を化学的に架橋することにより安定化させると耐熱性が向上する。鞣剤の違いによって耐熱性が異なるが、これは鞣剤による化学結合の違いを反映している。
2) 化学薬品や微生物に対する抵抗性を付与すること。
3)皮に必要な物性と理化学的特性を付与し、いわゆる「革らしさ」を与えることである。

皮革用語辞典 鞣し


端的に言うなら、耐熱性や耐薬品性を与えること。あとは「革らしさ」という「その定義はなに?めちゃくちゃ不明瞭だな!」という条件が入っています。よく革の専門家と飲むと、この革らしさってなんやねん!で議論になります。

「食肉業界から副産物としていただいた皮は鞣しをすることで革になる」わけです。

英語で皮と革はなんていうの?

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動画でも解説されていますが、

皮=skin
革=Leather

となります。人間の生々しい肌をケアするのは「スキンケアローション」であって、「レザーケアローション」ではないわけです。革の靴や鞄をケアする製品には、「レザークリーム」なり「レザーローション」なりが書かれているはずです。

ですが、このレザー、、という単語が曲者でして。

カタカナでレザー、と書かれると日本国内では明確に定義づけがされていません。

床革や合皮製品を「このカバンは本革です」と言って販売すると、家庭用品品質表示法で「それは駄目だよ」と規定がされています。ですが、~~レザーという単語に関しては明確な基準がありません。だって、「レザー」というのは英語をカタカタに直しただけの単語です。定義づけされていないわけですね。




チャットAIに革とレザーの違いを聞いてみよう

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さて、最近話題のチャットボットAIで遊んでみましょう。
使ったのはマイクロソフトBingです。

「革とレザーの違いってなに?」と聞いてみました。

一般の消費者向けの回答としては100点に近いかな、と思います。多分私が書くともっとくどくなります。ねちっこくなります。一般消費者向けならばこれくらいのほうが理解しやすいだろうな、と思います。


チャットAIがものすごく急激に進歩している



昨年のblogでも書いたようにイラストAIが進化していたのですが、この数か月でチャットAIがすごく進歩しています。遊んでみたのですが癖が強いです。

※チャットAIはどれもアカウント作成と認証が必要となります。ものによっては認証に3日ほど待たされたりします

回答の正確性は・・・

まずは最もメジャーなChatGPTですが・・・、日本語で質問したら答えてくれます。英語で質問したほうが回答は早くなりますが、もちろん英語で返ってきます。

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最近ちょっと調べていた「ももんじ屋」について。
ももんじ屋は江戸時代に肉料理専門の料理屋さんです。

で、歴史を聞いてみました。


この回答、誤認!?

岡山にそんなお店もないし、梅干し専門でもないです。チャットAIは所詮ネット上にある情報からしか引っ張ってこれないのですが、そもそも100%誤認の情報をどこから引っ張ってきたのかもわかりません。

さらに違う質問。大阪府における2019年の犯罪カテゴリトップ10の数字を調べてみました。回答口調は海原雄山口調で、と思って質問しています。さらに質問で多少誤字を入れています。

Maicrosoft Bingは出典書いてくれるのが素晴らしいが制限も多い



Maicrosoft Bingはマイクロソフトが提供するだけあって、「Webブラウザー マイクロソフトエッジを導入して」「スマホにもBingを入れて」などの導入が求められます。ここまでやりましたが、順番待ちで3日間待たされました。

で、このBingだと出典を書いてくれるのがとても助かります。

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今度は、「2019年の豚・牛・馬の国内からでてくる原皮の総量を教えてください。」という質問をしてみました。

こちらのBingでは出典元となった統計ページも書いてくれています。が、こちらの出典元の統計ページには牛馬豚の屠畜数は書いていますが、原皮の出荷量なりは一切書かれていません。回答にも「ただし、これらの数値は飼養頭数や屠畜頭数をもとにした推計値であり、実際の原皮総量とは異なる場合があります。また、馬に関しては重種馬と軽種馬に分けて考える必要があるかもしれません。」と書いてあります。これはものすごく良心的です。

見てみたい数字がどこにあるか、というのを知るためには便利なツールだと思います。ただ、正確さが判断しにくいので、データの確認は必須です。
blogタイトル5つあげてみて

「チャットAIについてのblogを書きます。関連事項は次のとおりです。これを踏まえてblogタイトルで適正なものを5つほど出してください。革素材、サステナブル、チャットAI、chatgptとbing」

今回のblog書く上でタイトルをあげてもらいました。

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あー、これは面白いですな。
革素材、サステナブル、チャットAI、ChatgptとBing、と4つの要素を入れてみたのですが、サステナブルは形容詞として認識しています。ネット上ではサステナブル、という単語は形容詞として使われているケースが圧倒的に多いからですね。「ChatGPTとBing」は共に名詞として認識しています。

その一方で、「革素材」「サステナブル」に対して「チャットAI」「ChatgptとBing」では絡み合った事例がネット上に存在しないためか、うまく絡めることができなかったようです。

結果的に、「チャットAIに対するblog」に対するタイトル付けとなっていますね。AI的には、「革素材」「サステナブル」という単語よりも「チャットAI」という単語に対する事例が多かったのでそちらを最優先にしたんでしょうな。

5つあげてくれたアイディアの中では、「革素材とサステナブルなチャットAIの可能性」が一番それっぽいです。でもサステナブルは形容詞として革素材に対してかかるものであり、チャットAIに対しては変なつながりとなっています。


以前のイラストAIでもそうでしたが、AIは所詮道具でしかありません。

100点な完璧を求めるよりも、「30点や50点や80点でもいいから、どんどん出して!それをこちらでアレンジするから!」という使い方が便利かな、と思います。

今回のblogタイトルで言うなら、「サステナブルな革素材とチャットAIの可能性」あたりがしっくり来るかな、と思います。この最後の10点アップは人間がやったほうがやはり今の時点では手軽だと思います(半年後はひっくり返っているとは思いますが)。

Bingは便利なのだが制限が増えてきている

2023年2月21日の時点で突然、「1日の質問は50回までね!1回の質問のやり取りは5回まで」などの制限を打ち出してきました。

新Bingのチャットは1回5ターンまで。1日のチャット数も制限 - Impress Watch

まぁ、Bingはこの制限よりも、「最初に登録したら順番待ち3日間」の制限が一番きつく感じます。

AIが得意なこと苦手なこと

さて、AIはこういうことができる!苦手だ!という前に、使い手である人間が「きちんとした文章を書く」「AI様にわかってもらえるように細かく書いていく」ことが現状では大事です。多分これが大前提、かつ、一番大事だろうな、と思います。

その上でAIが得意なこと苦手なこととしては・・・

ネタ出し・アイディア出し

上にも書いたように、文章のアイディアを考えつかせるのには便利なツールです。下は前回のblogのタイトルを考えてもらったものです。


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3個ほどあげてもらって、その後「10個あげて」といったら5個ほどあげて、「これで合計10個だよね!」と言ってくるなぁ。いやいや、合計8個やろ、それ。

一般的な知識

下はヴィーガンレザーについて訊いてみました。

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一般的なヴィーガンレザーに関するネット記事から構成されているように思えます。こういうまとめとしてはBingは便利だな、と思います。

ただ、当たり前のことですが、ネットに書いてあることからしか答えられない、というのが最大の欠点でもあります。本や新聞などのオフラインに書いてある情報は拾ってこれませんね。

ここらへんが致命傷ではあります。手持ちの電子書籍を読みこんでくれると助かるんですが、多分もう1年ほどかかりそうですね。それができたらものすごく楽になるんですけどねぇ、私の動き方的には。

統計ページ

統計ページから数字を拾ってくるのは得意です。ただ、必ず元の出典ページで数字の裏取りをしないと大やけどしそうではあります。「それじゃ使えないじゃん!」と思うかもしれませんが、「どこにその数字があるか」を教えてくれるだけでも大変助かるんですよ。

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上は革靴の輸出入の金額を知りたい、と聞いています。で、JLIAの統計ページから情報をまとめてくれています。JLIAの統計ページ、ほんとに意味あるんですが、そこからデータ探すのが大変なので、ある程度の場所を教えてくれるのは大変助かります。


今回の結論は、「AIだって所詮道具」「道具を使える人はさらに使えるようになる。苦手意識持つ人はさらに苦手になる」


2か月前に書いたblogと同じオチです。

所詮は道具ですので、これをどう使うかは人間次第です。あとまぁ、100%信用しきれません。裏取り調査をしなくてはいけませんが、「どこを調べたら良いか」がわかるだけでも便利な人には大変便利かと思います。

文を書く人やイラストを書く人、などに限らず、とりあえずは触ってみておいて損はないツールだと思います。

ムラキの今後予定



このイベントに客寄せパンダとしてでています。AIやYouTube見ても書いていない・教えてくれない・体験できない、「摩擦と固定」に関する話をします。体験してもらいます。



今回ご紹介したTLAやレザーと革の表記問題などを喋りつつ触ってもらいつつ、3月3日(金)に大阪で行います。日本最大級のタンナー、山陽さんの偉い人に来てもらって喋ってもらいます。

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プロフィール

鈴木清之

鈴木清之(SUZUKI, Kiyoyuki)
オンラインライター

東京・下町エリアに生まれ、靴・バッグのファクトリーに囲まれて育つ。文化服装学院ファッション情報科卒業。文化出版局で編集スタッフとして活動後、PR業務開始。日本国内のファクトリーブランドを中心にコミュニケーションを担当。現在、雑誌『装苑』のファッションポータルサイトにおいて、ファッション・インテリア・雑貨などライフスタイル全般をテーマとしたブログを毎日更新中。このほか、発起人となり立ち上げた「デコクロ(デコレーション ユニクロ)部」は、SNSのコミュニティが1,000名を突破。また、書籍『東京おつかいもの手帖』、『フィガロジャポン』“おもたせ”企画への参加など、“おつかいもの愛好家”・”パーソナルギフトプランナー”としても活動中。

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